9th Album『aurora arc』歌詞・楽曲解説

楽曲解説「流れ星の正体」-コラム「Fujiki」連載から生まれた名曲

9th Album『aurora arc』
アルバム「aurora arc」

「流れ星の正体」はBUMP OF CHICKENのアルバム「aurora arc」の収録曲です。

 

「流れ星の正体」の歌詞は、ボーカル・藤原基央さんの雑誌コラム「Fujiki」の最終回にリスナーへのメッセージとして書かれた曲です。

 

藤原さんはなぜ、曲のタイトルに「流れ星の正体」と名付けたのでしょうか。この記事では「流れ星の正体」の歌詞の意味や初期の楽曲との対比を紹介します。

 



「流れ星の正体」基本情報

アルバム「aurora arc」

作詞・作曲 藤原基央
編曲 BUMP OF CHICKEN & MOR
作曲日 2017年1月19日〜20日
収録作品 2019年7月11日 アルバム「arurora arc」
公開デモ音源
2017年1月(公開終了)
2019年4月 YouTube(アコギ弾き語り)
2019年4月 Instagarm(エレキ弾き語り)
ライブ初披露 2019年7月12日「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark」 埼玉県メットライフドーム

「流れ星の正体」作曲エピソード

「Fujiki」最終回で生まれた曲

「流れ星の正体」の歌詞は、2017年1月19日深夜から20日にかけてボーカル・ギター藤原基央さんによって書かれました。

 

正確に言えば、読者・リスナーへのメッセージとして綴った言葉が「流れ星の正体」という曲の歌詞になったという表現が正しいです。

 

「BACK STAGE PASS(B-PASS)」という雑誌で連載していたコラムの最終回を書く中で「流れ星の正体」が曲として生まれました。

 

藤原 – 今浮かんだ言葉をぽろぽろと書いていたら、なんか詩のようになり始めてしまって、その流れでギターを持ってみたら、なんか歌い始めて、最終的に曲になってしまった。

引用元:「B-PASS」2017年3月号

 

第154回「Fujiki」B-PASS embedded from https://pbs.twimg.com/media/D35zI28UEAE6AtO

 

「流れ星の正体」はリスナーとの明確なコミュニケーションによって生まれた曲であり、BUMP OF CHICKENの楽曲の中で特徴的な1曲だといえます。

 

「流れ星の正体」の意味

リスナーから届いたおたよりの全てに目を通していたという藤原さん。リスナーからの言葉は自分にとってどんな存在か、それを突き詰めるところから作り始めました。

 

藤原 – 俺自身もそれ(読者からのお便り)を読んで、いっぱいいろんなことを感じていたんですよね。だから、そういうみなさんからの声が自分にとってどういう意味を持っているか、というのをすごく考えていたんでしょうね。

引用元:「CUT」2019年7月号

 

「aurora arc」発売時のインタビューでは、藤原さんはめずらしく歌詞の構造について明かしています。

 

「CUT」2019年7月号「aurora arc」インタビュー

 

藤原 – 僕の歌がどう機能してほしいかっていうことを、次に書こうと思ったんでしょうね。それで1番は動機の部分で、2番は僕がしたいことになっていったのかな。

引用元:「CUT」2019年7月号

 

「流れ星の正体」の1番の歌詞がWHY、2番がWANTを表しているといいます。1番の歌詞には藤原さん自身がリスナーからの手紙を通して、想いや感情を受け取った証左を綴っています。

 

流れ星の正体  1:09〜
僕の上にも届いたように 
君の空まで届いてほしい
君に見えるくらいには 輝いてほしい
流れ星の正体を 僕らは知ってる

引用元:「流れ星の正体」 / 藤原基央 (2019)

 

そして2番では「流れ星の正体」を通じてリスナーに何をしたいのかを表現しています。

 

流れ星の正体  3:03〜
君が未来に流す涙が
地球に吸い込まれて消える前に
ひとりにせずに掬えるように

引用元:「流れ星の正体」 / 藤原基央 (2019)

 

<一人ひとりの涙を掬いたい> というのは最初期の「リトルブレイバー」「ラフメイカー」から通じる楽曲を通して謳われるテーマです。

 

「FLAME VEIN」(1999年)

リトルブレイバー  1:27〜
だからもう 泣かないで
僕が守るから

引用元:「リトルブレイバー」 / 藤原基央 (1999)

18歳前後に描いた「リトルブレイバー」のストレートな表現に比べて、38歳で描いた「流れ星の正体」ではより深く表現性が増しているように見えます。

 

ひとつ「リトルブレイバー」の頃と異なる点は、単純に「泣かないで欲しい」のではなくて「泣いたあとに寄り添っていたい」という点です。「流れ星の正体」では決して泣くことを否定していません。

 

どちらもそれぞれの良さがあっていい歌詞ですね。

「藤原インテリ日記」略して「Fujiki」

「Fujiki」とは音楽雑誌「B-PASS」で連載されていた藤原基央さんのコラムです。1999年から掲載され、当初は「藤原基央のインテリ日記」というタイトルでした。

 

第1回「藤原基央のインテリ日記」B-PASS 1999年10月号 embedded from Pinterest 

 

「Fujiki」では藤原さんの考えや暮らし、バンドの状況、読者からの質問に答えたりをして情報発信をしてきました10代から30代まで、BUMP OF CHICKENの変化を知る上で貴重な資料となっています。

 

 



「流れ星の正体」制作エピソード

藤原の作曲新章のはじまりとなる1曲

 

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ギターに3カポをつけて演奏する藤原基央 

「流れ星の正体」はBUMP OF CHICKENの作曲論においても重要なターニングポイントとなった楽曲です。

 

別記事「メンバー vol.10 – 楽曲キーの分析と変」で書きましたが、2017年以降に藤原さんの作曲手法に大きな変化が見られます。

 

れは半音下げチューニングにおけるA#キーの使用です。

 

「流れ星の正体」以降、多くの楽曲で半音下げチューニングA#キーが使用されるようになり、その派生系として3カポ使用楽曲が生まれます。

3カポの楽曲「記念撮影」「涙のふるさと(Pathfinder ver.)」「月虹」「話がしたいよ」「新世界」 「Aurora」 etc.

 

『aurora arc』以降の楽曲の流れとなる新しいキーの誕生ときっかけとなったのが「流れ星の正体」でした。

 

関連記事:メンバーvol.10 BUMP OF CHICKENにおける楽曲キーの変遷と分析




デモ音源公開(1回目) 2017年1月

「流れ星の正体」 0:52~ 期間中に誤字を訂正したバージョンが再アップロードされた。

2017年1月28日20:00〜30日23:59まで、期間限定で「流れ星の正体」のデモ音源が公開されました。

アコースティック・ギターの弾き語りと本人手書きの歌詞によるリリック・ビデオ形式の映像です。この年はバンド結成20周年の1年間であったため、結成日である2月11日を迎える前に間に合わせるように公開されました。

 

誤字「飛び越える」を「飛び込える」と誤字をして公開されたが、期間中に訂正(文字消し)バージョンと差し替えられた。

フルコーラスが完成するも・・・

1月のうちに藤原さんは「流れ星の正体」の2番以降も完成させます。しかし2番以降の情報公開はなく、フル音源がいつになるのか、レコーディングがされているのか一切不明のまま時間がすぎました。

 

藤原 – もうフルコーラス書いてるんですよ。だから、なんでフルコーラス聴いてもらえてないんだろうみたいな(笑)

引用元:「ROCKIN’ON JAPAN」 2017年7月号

 

このあたりのTOY’S FACTORYやLONGFELLOWのマーケティング戦略はさすがです。

デモ音源公開(2回目) 2019年4月

2019年4月11日、2年2ヶ月ぶりに「流れ星の正体」 の続編(2コーラス目)が公開されました。こちらは期間限定ではなく2019年5月現在も映像を確認できます。

 

YouTube動画:BUMP OF CHICKEN – 「流れ星の正体」

 

1コーラス目に付け足されて2コーラス目が公開されています。1番の部分は2017年当時の音源がそのまま使われています。

1コーラス目と2コーラス目の録音ボーカルテイクの音量レベルを合わせているが、音質が異なり録音環境や録音日が異なる可能性がある。2017年1月に1コーラス目を録音、その後2コーラス目を録音し繋ぎ合わせたと思われる。

藤原弾き語り映像 (別録り)も公開

2019年4月11日、藤原基央さんの40歳誕生日前夜に公式Instagramにて2コーラス目の弾き語り映像が公開されました。

 

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歌ったから聴いてー。藤原

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前述のYouTubeのアコースティック・ギターのバージョンと異なり、Gibson製Les Paul Specialのエレキギターで弾き語る映像です。

 

YouTubeとinstagramで楽器を使い分けるところが藤原さんのこだわりを感じます。デモはデモ、弾き語りは弾き語りと別の表現を追求しているように感じます。

関連記事:流れ星の正体 vol.1 コード解説

作曲〜デモ〜完成版の流れを公開した楽曲

楽曲のデモ音源が公式に公開されたのは「カルマ」(2005年)の「ラフ映像版」以降初めてのことでした。(「カルマ」は完成音源リリース後、タイアップゲーム作品の特典内での公開だったため「流れ星の正体」とは意味が異なる)

 

「流れ星の正体」は作詞からデモ版、完成版(アルバム収録想定)までをファンが目撃した1曲といえます。「Fujiki」でのファンとのコミュニケーションの17年間が作曲のきっかけとなったという意味でも、BUMP OF CHICKENの中で非常に特徴的な楽曲といえるでしょう。

 

「流れ星の正体」フルMV

MV監督 林響太郎
出演 唐田えりか

2019年7月16日に「流れ星の正体」のミュージックビデオがフルサイズで解禁されました。監督は「Aurora」に続き林響太郎氏、女優の唐田えりかさんが出演しています。淡いパステルカラーとスローで繰り出される映像美が綺麗です。

 

「流れ星の正体」ライブ演奏記録

演奏回数 19回
演奏頻度 ★★☆☆☆
初披露 2019年7月12日「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark」 埼玉県メットライフドーム
最終演奏 2019年11月4日「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark」 東京ドーム
演奏ライブ 2019年「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark」 
2019年「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」

 

「流れ星の正体」ライブ映像

映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark TOKYO DOME」


 

早く新アルバム、そして「流れ星の正体」のライブでの披露を楽しみにしたいですね!ご拝読ありがとうございました。