楽曲解説:銀河鉄道 vol.1 – 不思議な世界を走る列車

9th single 「プラネタリウム」収録 / M-02
作詞作曲:藤原基央
作曲時期:2005年4-6月

銀河鉄道は2005年に発表したシングル「プラネタリウム」のカップリング曲です。神秘的なタイトルと冒頭の繊細な弾き語りが印象的なミディアムナンバーです。BUMP OF CHICKENの中では数少ない3拍子の楽曲でもあります。




一晩で書いた曲

2005年春、メンバーへ聴かせた新曲「プラネタリウム」をシングルリリースすることが決まります。当時のストックがカルマ(秋にリリース決定)しかなかったため、カップリング曲が必要になりました。

藤原さん本人は、「そんなすぐには出来ないだろう」と思いながらも作曲にとりかかったところわずか一晩で書きます。

藤原 – わりと長いスパンで考えてたら、あっさり書けちゃったんで。一晩で。-(中略)- はい。3時間くらいで、ホントに。

B-PASS 2005年9月号

この頃の藤原さんは歌詞に推敲を重ねて何日、何ヶ月も書いたりして比較的作曲ペースが遅い作品が多いですが、車輪の唄やギルドなどあっさり書いてしまう曲もあります。銀河鉄道や車輪の唄など物語調の作品は簡単に書けるのかもしれませんね。

「不思議な世界」を表現した詞

銀河鉄道 / BUMP OF CHICKEN

僕の体は止まったままで 時速200kmを超えている

考える程に可笑しな話だ 僕は止まったままなのに

「銀河鉄道」というタイトルをからすると、宮沢賢治の小説「銀河鉄道」や松本零士の漫画「銀河鉄道999」のようなイメージが頭に思い浮かびます。

藤原 – これも宇宙にレールが引いてあったりするわけではなくて。要は(銀河鉄道)999じゃないんです。でも、現実でもない。

B-PASS 2005.9

(タイトルは宮沢賢治の「銀河鉄道」から?)

藤原 – いや、全然知らないです。

MUSICA vol.15 2008.7 

知らないわけないでしょう!(笑)って感じですよね。藤原さんはたまにこういうところあります。「銀河鉄道」という語感だけ引用したようです。

この作品には「車輪の唄」で登場する”自転車を漕いで手を振る人”が登場します。藤原さんは宇宙だけを走る列車でなく、現実(だけど現実でもない)世界にも停まる列車であり、ようは何でもありの「不思議な世界」という設定にしています。

藤原 – 車輪の唄”ってのは朝焼けから始まって、あとは街が賑わうまでの時間経過を書いてる曲なので、この”銀河鉄道”は厳密にいうと、朝日が昇ったあたりの時間にその駅(車輪の唄の駅)を通過することになるんですけど。その辺りから時間帯がちょっとおかしくなってくるわけです。- (中略)- 時間軸的にも空間的にも不思議なんですよ。電車の中にも、外側、景色の側にも不思議が存在してて。だからなんでもいいんです。




幼少期の父親とのスキー旅行

銀河鉄道 / BUMP OF CHICKEN

誰もがそれぞれの切符を買ってきたのだろう

荷物の置き場所を必死で守ってきたのだろう

ギルドに関するインタビューで「権利」について代償を払うことによって得られると言及していました。そこでは<電車に乗っていいのは切符を買ったから>と具体的な例を挙げて説明していましたのを思い出します。

藤原さんは5〜6歳の頃、お父さんとお姉さんと3人でスキー旅行に行きました。バス停で帰りのバスを待っている間に、お父さんが列を外れて出かけます。すると幼い姉弟を目にもしなかった大学生5〜6人が割り込みし、戻ってきた藤原さんのお父さんが大学生たちに一喝するという出来事がありました。藤原さんはこの時の出来事がすごく印象に残っているそうです。

藤原 – 俺と姉ちゃんはずっとそれ聞いてて、子供心ながらにすごい感じたことがあったんですけど、みんな荷物の置き場所だったりとか、必死に守ってるんですよね、本当に。親父にとっては俺たちが荷物だったんでしょうね。大事な荷物だったんでしょうね。

自分自身がいていい理由だけでなく、経験、記憶、家族、財産、罪と行った生きる上で経ていく「荷物」は本人に帰属するものであり、奪われないように守っているということですかね。藤原さんのお父さんが登場するエピソードは珍しいです。

藤原の才能が詰まったデモ音源

藤原さんは一晩で書いたこの曲をデモテープに録りメンバーに渡します。その時のデモテープの音源は、2本のアコースティックギターでパーカッション・リズムと和音を表現した綺麗なギターアンサンブルバージョンでした。

直井 – 俺はラッキーなことにプリプロヴァージョンも聴けてるから。カッティングとかで表現してるんですよ、この人は。ドラムの感じをジャカジャカジャスズジャジャジャスって、アコギでミュート奏法ってやってるんですよ

Musica vol.15 2008.7

藤原さんのエレキギターだけでなくアコースティックギターの音の強弱の付け方、メリハリのつけ方がすごくうまいと思います。アコギ単体でいくつもの音を作り出しています。銀河鉄道のプリプロ音源はEverlasting Lie (Acoustic ver.)のようなものでしょうか。

強弱だけで勝負したリズム

2番から始まるバンドアンサンブルの部分では、アンサンブルのリズム決めについてメンバーでかなり話し合いました。ドラムの升さんは「場面を表現しよう」と提案します。不眠続きだったベースの直井さんが寝ている間に(笑)、デモテイクを制作して聴かせました。

自転車に乗って手を振る人を見る場面、真っ赤なキャンディを渡す場面、それぞれのシーンごとに合わせたリズムを表現します。中にはドラムロールを録った部分もありました。しかし、最終的にシンプルなリズムパターンにして、強弱だけで場面を表現することにします。

藤原 – みんなで話して、結局のところ生楽器の強弱だけっていうことになったんだよね。

升 – どういうプレイをするかっていうよりも、何を思ってプレイするかっていうのが大事だったというか。

MUSICA vol.15 2008.7 

ライブBlu-ray WILLPOLIS 2014のサブステージでオーガニックアレンジの銀河鉄道の演奏を観ることができます。そこでは強弱だけのアレンジが見事に反映されています。皆さんもぜひ観てみてください。

ちなみにサビの後のキーボードのような音もギターで表現されています。レズリーアンプという音を振動させるアンプを使って「ペラいリード」を表現しました。藤原さん曰く、ホリデイ以降の必要なところに必要な音をいれるという流れがきているそうです。

ライブ演奏記録

藤原パート(アコギ) 増川パート(エレキ)
2006 run rabbit run イントロからきちんと演奏。AメロとBメロの間にアドリブのアルペジオを1小節挟んだりする マンドリンパートは簡易的な演奏
2014 WILLPOLIS 2014 イントロを弾かず直接Aメロを歌い始める マンドリンパートはきちんと再現されている

2006年のrun rabbit runで演奏され、8年後のWILLPOLIS 2014ではサブステージ(恥ずかし島)で演奏されています。

藤原さんと増川さんのパートの演奏動画を紹介します。
藤原パート
増川パート

GOLD GLIDER TOUR後のインタビューでベースのチャマさんが「次回の恥ずかし島は銀河鉄道のようなアンプラグドで映える曲をやりたい」と発言していましたので、それが実現されたようです。Blu-rayで確認できますが、チャマさんの柔らかいウッドベースの音での銀河鉄道はかなり大化けしましたね。

個人的に大好きな楽曲なので、またライブで演奏してほしいなと思います。以上、簡単な銀河鉄道の楽曲紹介でした。