5th Album『orbital period』歌詞・楽曲解説

楽曲解説:プラネタリウム vol.2 バンド初のシンセサイザー使用

5th Album『orbital period』

「プラネタリウム」はBUMP OF CHICKENの楽曲で初めてのシンセサイザーを利用した曲で、その後の制作に大きな影響を与えた転機となりました。本記事は制作エピソードについて紹介します。

*この記事は「楽曲解説:プラネタリウム vol.1  四畳半の宇宙と『夢』『君』『光』『星』の物語 」の続きです。



メンバーの前で「プラネタリウム」弾き語り初披露

2005年初夏のBUMP OF CHICKEN embedded from excite.jp

 「カルマ」の練習をしていた3人

2005年4月、新曲「カルマ」のレコーディングに向けて、BUMP OF CHICKENの増川弘明さん、直井由文さん、升秀夫さんは3人でスタジオ練習をしていました。

そこへボーカルの藤原基央さんが「新曲が出来た」とひょっこり現れ、「プラネタリウム」をアコースティックギター1本で歌います。

 

増川 – レコーディングの前の日くらいにスタジオでちょこっと聴かせてもらったんですけど、その瞬間から凄い最高で(笑)。アコギと歌・・歌と言ってもその時は♪ふんふん♪くらいのちょっとしたものだったんだけど、でもそのメロディーのコードだけで『凄い素晴らしいな』って、『綺麗だな』って思いました。

 

藤原さんの新曲を一番最初に聴くのはいつもメンバーとスタッフ陣です。目の前で弾き語りで披露してくれるなんて、とても豪華ですね。「プラネタリウム」を聴いたメンバーは翌日プリプロ制作に進みます。

 

・・・が、制作はスムーズにはいきませんでした。

 

ドラムとベースのアレンジに時間をかけた

藤原さんの弾き語りデモテープに合わせて、升さんとチャマさんはドラムとベースを付けていきます。しかし理想的なアレンジがうまくいかず相当悩みました。

 

・歌とギターだけで完成系に近かった
・歌を汚さないアレンジを何度も考えた
・ドラムは藤原から「fire sign」と同じ成分のリクエストがあった
・最終的にシンプルなリズム隊のアレンジに決まった

 

直井 – 最初はもう、藤くんの演奏をめちゃくちゃ汚してるようにしか思えなくて。・・完璧だったの、アコギと声だけで。それで凄いヤダって思って。だから俺も秀ちゃんと同じようにベース&ドラム抜きヴァージョンとベース抜きヴァージョンのデモだけを聴いて、もう一度曲がどういうものを求めているのかを見つめ直した。

 

ムードメーカー的存在のチャマさん。ベース対して本当にセンシティブに考えていることがわかります。

 

直井 – もっとこの曲のいい部分をすぐに引き出してあげたかった、プリプロで音を入れるという作業がこれほどきついと思わなかった。リズムを感じられてない、グルーヴを感じられてない、コードの和音すら感じられてない、繋ぎ目も上手く繋げてない。・・だから単純にプレイに腹が立つ。そうすると歌が響かない。歌とギターがこんなにいい和音鳴らしてるのに、それを殺してしまう。秀ちゃんがやろうとしてることと自分がやろうとしてることがまったく違う方向に行ってる。・・そういうので、自分に対して悔しいなって思いが強くなっていった

 

疾走感のある「sailing day」のような曲では8ビートで大まかに作られますが、ミディアムテンポの「プラネタリウム」の場合、リズム隊(ベースとドラム)のアレンジで曲の印象が大きく変わります。楽曲の個性を活かすアレンジ作りのため沢山の試行錯誤が行われました。

 

直井 – 『jupiter』の頃は、例えばベースラインだけ決まってドラムが決まってなかったりする時って、“ああ、オレ完成形だな”って思っちゃってました。でも、『ユグドラシル』では、升君が決まらないとオレも決まらない、と思うようになって。ベースとドラムという一つの楽器になっていれば、上から乗せるギターとかが絶対しっくりくるんです。

 

ユグドラシル以降からバンドの制作理念である<曲が求める音>を体現するという考えが、各メンバーの意識の中にしっかりと根付いていました。

 

直井 – もうほんと邪魔したくないなって思って。一番シンプルな形に落としていったって感じですね。

テレビ東京系「COUNTDOWN JAPAN」2005.07.xx

 

最終的に藤原さんの弾くアコースティックギターに寄り添う形でシンプルなアレンジに決まりました。



紆余曲折を経たブリッジ部分のボーカル

 

9th Single「プラネタリウム」(2005年7月21日)

プラネタリウム  2:34〜
やめとけばよかった
当たり前だけど本当に触れてしまった
この星は君じゃない 僕の夢
本当に届くわけない光 でも消えてくれない光

引用元:プラネタリウム / 藤原基央 (2005年)

このブリッジ部分は一番歌いたい部分で、”声を近くに聴かせるため”にリバーブ・エコーを外すアイデアでした。しかし紆余曲折を経て逆にディレイをかけることになったと語っています。

 

 

大きな決断!バンド初のモーグ・シンセサイザーの使用

「プラネタリウム」のトラックにはモーグ・シンセサイザーの音が入っています。BUMP OF CHICKEN史上初となるシンセサイザーの使用で「命をかけた決断だった」といいます。

 

直井 – それまでのバンプ・オブ・チキンは、なるべくギター、ベース、ドラム、ヴォーカルだけで表現しようとしていて。(中略) 初めてディレクターからの提案で、フジ君がムーグを弾いたんです。実際には普通の人は聴こえない領域の音かもしれない。でも俺らにとっては”命の決断”だった。

出典:MUSICA vol.9 p.46

 

BUMP OF CHICKENの楽曲では全てE-BOW(ギターの音をシンセのように持続させる装置)を使用して表現していました。藤原さんは4人のバンド編成にこだわりを持っており、全てギターで表現することを意識していたといいます。

 

しかし「曲が求めてる姿」を追求するということを”耳にタコができるくらい”メンバー内で確認し、シンセサイザーを使用することを決めました。

シンセの音量を巡っても議論

Image embedded from excite.jp

バンド側もモーグ・シンセサイザー使用を巡って相当議論しました。ミックスの際もシンセの音量を巡って意見が出ました。藤原さんはシンセの音が大きすぎると思ったのに対し、他の3人は特に違和感はなかったといいます。

 

藤原 – 僕は『すっげぇいいけど、デカいんじゃないか』と言ったんです。で、他のメンバーがあまり言わなかったんです(笑)。それで、メンバー4人で集まって、結局僕は我を通して「じゃ、間を取ろう」と。

出典:MUSICA vol.9 p.46

 

重要な場面では4人全員で話し合うこと、必ずしも藤原さんの独断で決まっていないことを確認できます。4人全員でBUMP OF CHICKENの当時の楽曲が作られていることがわかるエピソードです。

 

この決断をきっかけに、鍵盤楽器やストリングスなど多様な楽器を取り入れていきます。「プラネタリウム」は、曲の求める音を出すという究極理念を体現するための大きな転機となった1曲と言えるでしょう。

ライブ演奏記録

2005年8月5日 ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2005 にて「プラネタリウム」をライブ初披露するBUMP OF CHICKEN embedded image from rijfes.jp

演奏回数74回
演奏頻度★★★★
初披露2005年8月5日「ROCK IN JAPAN FESITVAL 2005」GRASS STAGE
最終演奏2019年11月3日「aurora ark」東京ドーム公演
演奏ツアー2005年 夏のイベント *全公演演奏
2006年「run rabbit run」*全公演演奏
2007年 夏のイベント *全公演演奏
2008年「ホームシック衛星
2008年「ホームシップ衛星
2011年「GOOD GLIDER TOUR
2012年「GOLD GLIDER TOUR」*7月7日(七夕)のみ演奏
2013年「WILLPOLIS
2014年「WILLPOLIS 2014」*サブステージ
2019年「aurora ark
使用機材


藤原基央 – Gibson Les Paul Special TV Yellow 
増川弘明 – Gibson Les Paul Standard Historic Collection 1959
直井由文 – Sonic Jazz Bass Chama Blue  (通称:初号機) 
コード弾き藤原基央:2011年「GOOD GLIDER TOUR」〜 現在まで
増川弘明:初披露〜2008年「ホームシップ衛星」まで

「プラネタリウム」はバンプの楽曲でも演奏率の高い曲です。

2011年以降ライブでのサウンドに変化

藤原と増川の演奏パートの変遷

ツアー名藤原パート増川パート
2005夏のイベントボーカルに専念。イントロ・アウトロ間奏のみ演奏コード演奏
2006run rabbit run
2007夏のイベント
2008ホームシック衛星
ホームシップ衛星
2011GO0D GLIDER TOURコード演奏(EVENTIDEのディレイをかけながら)イントロはハモリのアルペジオ

曲中はリフ演奏

2013WILLPOLIS / イベント
2014WILLPOLIS 2014

 

2008年までは藤原さんはボーカルに専念し、拍をずらしたり抑揚をつけた歌い方をしています。増川さんはエッジの効いたコード弾きを担当しています。2011年以降、藤原さんがディレイをかけたコードバッキング、増川さんがリフを担当することで一気に曲の表情が豊になりました。

 

以上、プラネタリウムの紹介vol.2でした。




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