カップリング曲藤原基央

楽曲解説:睡眠時間 vol.1 – おじいさんに向けて大慌てで書いた曲 *解釈・意味

カップリング曲

睡眠時間はBUMP OF CHICKENのシングル「オンリーロンリーグローリー」に収録されているカップリング曲です。

 

アコースティックギターのアルペジオと歌声というシンプルな音で構成されているこの曲は、ボーカル・ギターの藤原基央さんが入院中のおじいさんのことを思いながら書きました。


この曲は今回は睡眠時間の歌詞の意味や解釈を紹介します。

「睡眠時間」基本情報

「オンリーロンリーグローリー」(2004年7月)

作詞・作曲 藤原基央
作曲時期 2004年3〜5月
制作時期 2004年3〜5月
収録作品 2004年7月7日 「オンリーロンリーグローリー」
2008年6月21日「present from you」
ライブ初披露 2014年4月6日「BUMP OF CHICKEN TOUR 2014 “WILLPOLIS 2014″」千葉県幕張メッセ国際展示場

「睡眠時間」は2004年7月発売のシングル「オンリーロンリーグローリー」のカップリング曲として収録されています。2008年6月発売のカップリングアルバム「present from you」にも収録されています。

「睡眠時間」の作詞・作曲エピソード

「睡眠時間」は2004年春頃、藤原基央さんが入院していたおじいさんのことを考えながら書いた曲です。一体、どのようにして「睡眠時間」は生まれたのでしょうか。

BUMP OF CHICKENに対して辛口コメントだった藤原のおじいさん

2004年初頭、BUMP OF CHICKENのメンバーはアルバム「ユグドラシル」の制作を行うとともに、千葉県佐倉市での招待制フリーライブ「BUMP OF CHICKEN 5th anniversary ~ BUMP DAY FREE LIVE in 佐倉」 の企画が進んでいました。

 

その頃、藤原さんは、入院していたおじいさんに見舞いに行きます。おじいさんは昔からバンプの曲を聴いてくれていたものの、いつも辛口なコメントをしていました。

藤原 – おじいちゃんは僕らの音楽をよく聴いてくれてたんだけど、「全然わかんない」って目の前で言われたんですよ(笑)。「ちょっとわかんないんだよね。なんか早口だし。あとおじいちゃんが学校で習った音楽っていうのはドで始まってドで終わるっていう決まりがあってさ。」

出典:「MUSICA」vol. 15, 2008

それでもおじいさんとおばあさんは、BUMP OF CHICKENの歌詞カードを拡大コピーして置いていたり、お煎餅の缶の中に雑誌記事の切り抜きを入れるなど、藤原さんの活動を応援し続けていました。

「おじいさんの耳にわかる曲」として”睡眠時間”をつくる

藤原さんはどうにかしておじいさんの耳に残る音楽を届けたいと思い、大慌てで1曲つくります。こうして書かれたのが「睡眠時間」でした。

 

眠るのがもったいなくて あなたに会いたくなって

「睡眠時間」/ BUMP OF CHICKEN

 

「睡眠時間」の歌詞には、おじいさんを想う藤原さんの気持ちがストレートに描かれています。

「睡眠時間」とおじいさんのエピソードは、曲のレコーディングがほとんど終わるまで他の3人のメンバーには話をしなかったといいます。(ちなみにこのおじいさんは「魔法の料理〜君から君へ〜」に出てくる"ヒゲじい"ではありません。)

 

「睡眠時間」制作エピソード

「睡眠時間」は藤原さんによるソロワーク作品です。2本のアコースティックギターとボーカル、コーラスを全て藤原さんが行っています。

“弾かないプレイをする” といった他のメンバー

直前のシングル「アルエ」のカップリング曲「Everlasting lie ~ acoustic version~」に続き、「睡眠時間」も弾き語りソロ曲となることに、一瞬葛藤を覚えたという藤原さん。

 

藤原 – この曲をベストな形で再現するにはギターのみの伴奏で歌うっていうのが適してるんだよなって思っちゃって。それが「Everlasting lie」から2曲続いちゃって・・・せっかくバンドなのになっていうのと、でも曲がこういう曲だからなっていうところのジレンマがあって。

Musica vol. 15, 2008

 

その葛藤を振り払ってくれたのは、他の3人のメンバー(直井さん、増川さん、升さん)でした。

 

藤原 – でもこいつら(メンバー)が「今回は弾かないっていうプレイをするから」って言ってくれて。

Musica vol. 15, 2008

 

ユグドラシルはバンプオブチキンのサウンドの大きな転換となるアルバムです。各々の出したい音、アイデアをぶつけ合うスタイルから、「曲の求める音」を最優先するという音楽性へと変化します。

 

直井 – 前までは結構それ(演奏しないこと)がヤで、「俺もバンドなんだから、色々やりたい」って気持ちがあったのが、この頃から”Everlasting lie”や”睡眠時間とか、自分が音を出していない曲でも全然胸を張れて、焦ることもなくなった。

Musica vol. 15, 2008

アルバム制作の佳境に入っていたこの時期には、メンバーはすでに自分のエゴを捨てていました。

ライブ演奏 –  睡眠時間 (Band ver.)

発表後10年間はライブで演奏されたことのなかった睡眠時間。しかし2014年のツア「WILLPOLIS 2014」の恥ずかし島(サブステージ)でライブ演奏されました。CDではアコギの弾き語りで弾かれた睡眠時間ですが、ライブではバンドバージョン(!)での演奏でした。

 

1番は藤原さんの弾き語りで歌い上げ、2番から升さんのドラム、直井さんのウッドベース、増川さんのアコースティックギターが入ります。曲の大サビではとても力強いサウンドになり、静と動が強調されるアレンジになっています。

 

この1番弾き語りで2番からバンドサウンドという構成は銀河鉄道とよく似ていますね。余談ですが、2014年の恥ずかし島のセットリストは共通点ある楽曲が選ばれています。これはキーを合わせることで演奏しやすくするのが目的で、意図的にそうしていると思われます。

 

WILLPOLIS2014 の恥ずかし島キーとリズム構成

曲名 キー 拍子
銀河鉄道 D 3/4
歩く幽霊 A 4/4
睡眠時間 D 3/4
グロリアスレボリューション A 4/4 
プラネタリウム G 4/4 

レコーディングの時に自分たちのエゴをこらえて、「弾かないプレイ」に徹したチャマさん、升さん、増川さん。10年後にバンドで演奏ができてよかったですね。いつかまた、ライブだけの貴重なバンドバージョンを演奏してほしいと思います。

 

以上、睡眠時間の紹介記事でした。