カップリング曲

楽曲解説:「プレゼント」「Opening」「Ending」(後編)

カップリング曲

BUMP OF CHICKENの「プレゼント」はアルバム「present from you」の収録曲です。

「プレゼント」は過去作品「Opening」「Ending」の原曲でありながら、8年の時を経てアルバムに収録されたエピソードがあります。

今回は「プレゼント」が「present from you」に収録されることになった経緯と、歌詞の解釈などを紹介します。

「プレゼント」基本情報

「present from you」

作詞・作曲藤原基央
作曲時期1999年12月〜2000年1月
録音時期2008年春
収録作品2008年6月「present from you」

「プレゼント」「Opening」「Ending」の関係

前回の記事(楽曲解説:「Opening」「Ending」「プレゼント」 (前編))では、「Opening」「Ending」がアルバムに収録される過程や、2曲に分割された背景を紹介しました。

後編となる今回は、「プレゼント」として収録された経緯についてまとめています。

「プレゼント」制作背景

「THE LIVING DEAD」以降のアルバム(左から「jupiter」「ユグドラシル「orbital period」)

「プレゼント」が「Opening」「Ending」として「THE LIVING DEAD」に収録されて以降、3枚のアルバムが生まれました。「プレゼント」の存在は、BUMP OF CHICKENのメンバーの間でも忘れ去られていました。

BUMP OF CHICKEN唯一のカップリングアルバム

2008年、BUMP OF CHICKEN初のカップリングアルバムの制作が決まります。メンバーは昔からカップリングに陽の目を当てたいと考えていました。

 

升 – ライブでもカップリングの曲を演っていくわけですよ。でもね、お客さんの中には、この曲知らないなって人もいてね。「新曲ですか?」って聞かれたり(笑)。まぁ、そういうこともあって、いつかカップリングの曲たちを日の当たる場所に出してあげたいな、という気持ちがあったわけですよ。そして、このタイミングでちょうどアルバムになるくらいの数がたまった。

 

アルバムのリリースが決まり、「present from you」というタイトルを藤原基央さんが決めました。「これしかない」という感じだったと語っています。

「プレゼント」の記憶が蘇る

アルバム名「present from you」をメンバーに伝える前に、藤原さんは自分が書いた「プレゼント」を思い出します。そして録り直すのは今しかないと考えました。

 

藤原 – このタイトルで行こうと思って、メンバーに確認取る前だったんですけど、「あれ?確か”プレゼント”っていう曲書いたぞ!」ってなって、俺の頭の中のパズルがはまって。今しかないと思ったんです。

出典:MUSICA 2008年6月号

 

もともとずっとやりたいと思っていて、1度ライブリハまでした「プレゼント」(前編参照)。また別の機会に録音するとなると「なぜ今なのか」という意味が余計に強くなります。

カップリング集という昔の楽曲を再発売するアルバムだからこそ、うまく馴染むのだと藤原さんは考えました。

「プレゼント」の歌詞の意味

なにひとつ変えていない歌詞

「プレゼント」をレコーディングするために、藤原基央さんは自宅にあった当時の古い作曲ノートを引っ張り出します。

 

藤原 – そのときのノートが残ってたんですけど、「K」とか「リリィ」とかも、同じノートに書かれてましたね。

出典:「SCHOOL OF LOCK」

 

レコーディングにあたっても、藤原さんは歌詞は全く変えなかったといいます。

「THE LIVING DEAD」のジャケットの人物(=ラフメイカー)の視点で書かれた歌詞

お訪ねします この辺りでついさっき
涙の落ちると音が 聴こえた気がして
かけつけたんだけど 誰の涙かな
そういや君は ずいぶん赤い目をしてるね

「Opening」「プレゼント」 / BUMP OF CHICKEN

 

冒頭の歌詞は「THE LIVING DEAD」のジャケットや歌詞カードに登場するヒゲの生えて帽子をかぶった男性の視点で書かれています。

本名は「ラフメイカー・グリーフウォーカー」

藤原さんはこの男性の職業に、次のような裏設定をつけていました。

 

藤原 – 涙落ちる音を聞き取ることに卓越した人なんですよ。その才能を見込まれて、凄いデカイ組織から『お前は涙が落ちるところ一杯物語を持っていく役』とか言われて。

引用:ROCKIN’ON JAPAN

 

藤原さんはなかなか細かい設定を練っていて、すごく優しい人物のため物語を売らなきゃいけない立場で家を訪問するのに、泣いている相手にタダで物語を渡してしまう性格、さらに人に優しくしすぎて家に帰ると奥さんに怒られてしまう、というところまで考えていました。

 

「プレゼント」書いた朝の情景が現れる歌詞

前編で紹介した通り、「プレゼント」は「THE LIVING DEAD」レコーディング最終日、スタジオで全員が寝ている間に藤原さんがひとりだけ夜通し起きて書きました。

急いで書いた物語形式のアルバム曲には「自分がいない」と感じ、それに悩んだ藤原さんは「プレゼント」を書きました。

世界に誰もいない気がした夜があって

自分がいない気分に浸った朝があって

「プレゼント」BUMP OF CHICKEN

 

これほどまでに藤原さんの夜から朝にかけての心情を表している言葉はないのではないでしょうか。

「物語形式」のプレゼントの中に、しっかりと藤原基央の「実体験」を書こうとしていることが読み取れます。当時のインタビューで「物語形式と実体験を融合した」と発言していた裏には、こういう事実が隠されていたのです。

 

「プレゼント」と「ラフ・メイカー」の関係

そうやって作った頑丈な扉

この世で一番固い壁で作った部屋

ところが孤独を望んだはずの 両耳が待つのは

この世で一番柔らかいノックの音

プレゼント / BUMP OF CHICKEN (2008年) 

 

「プレゼント」を書いた4〜5ヵ月後、藤原さんは「ラフメイカー」を書きます。「プレゼント」が「外からドアを叩く人」、「ラフメイカー」は「部屋の中で泣いている人」の視点で書かれています。

 

涙で濡れた部屋に ノックの音が転がった

誰にも会えない顔なのに もう なんだよ どちら様?

ラフ・メイカー/ BUMP OF CHICKEN (2000年) 

お蔵入りさせたプレゼントの歌詞の内容とリンクさせて、ラフメイカーを書き上げた藤原さん。普通だったら、未発表の部分を転用して別の曲を書いたりしそうですが、そういうことはしなかったんですね。

扉・部屋・鍵

「プレゼント」作曲後の作品、「オンリーロンリーグローリー」「太陽」「虹を待つ人」「トーチ」などにも出てくるキーワード「扉」、「部屋」、「鍵」といったモチーフがすでに登場しています。藤原さんの中ではずっと変わらないモチーフであるようです。

「プレゼント」レコーディングエピソード

バンドアレンジも当時のまま

藤原 – これアレンジとかも当時、寝てない状態の頭で30ぐらいでバーっと書いたんですよ。もう同時にバンドサウンドがなってたと思うんだけど、Aメロのギャンギャンっていうギターの刻みも、ソロのツインリードもそうだし、こういうことしようって思ってたのは全部当時のアイデアで。

出典:「MUSICA」 – 2008.06 

 

初めてプレゼントを聴いた時、AメロのリズムがすごくBUMPの中で斬新で新鮮でした。この頃はまだメンバー全員が洋楽に影響を受けていたので、その名残なのかなと思います。

 

THE LIVING DEAD期の特徴である転調が使われている

藤原 – あのブリッジは、当時まだ転調を覚えたてで、さっそく使われてるんだよね。

SCHOOL OF LOCK インタビュー

「THE LIVING DEAD」の頃は、藤原さんは転調(途中でキーが変わること)を覚えた頃でした。

全体の楽曲の中で、藤原さんが作曲する楽曲は転調曲は多くはありません。そのようなスタイルの中で、「THE LIVING DEAD」では多く転調が使われており、一つのアルバムの特徴を成しています。

 

BUMP OF CHICKEN 転調曲一覧

曲名転調前転調後
デザートカントリーGA
BOCのテーマEF
グングニルAC
ランプAC
Ever lasting lieFD
プレゼントGE
Stage of the groundEG
星のアルペジオGE
飴玉の唄FD
HAPPYAC
友達の唄AC
パレードAC
Hello, world!!EG
流れ星の正体A#G
リボンGA#

ちなみに藤原さんが使う転調にはいくつかのパターンがあります。いつかまとめてみますね。

 

「プレゼント」ライブ演奏記録

BUMP OF CHICKEN ドラム

演奏回数16回
演奏頻度★☆☆☆
初披露2008年5月18日 ホームシップ衛星 さいたまスーパーアリーナ公演
最終演奏2014年7月6日 WILLPOLIS 2014 沖縄コンベンションセンター
演奏ツアー2008年「ホームシップ衛星
2014年「WILLPOLIS 2014
2023年「be there

「プレゼント」はこれまでに16回ライブで演奏されています。

使用機材

2008年「ホームシップ衛星」、2023年「be there」

担当機材
藤原基央Gibson J-45
増川弘明Gibson Les Paul Standard 

2014年「WILLPOLIS 2014」

担当機材
藤原基央Gibson Les Paul Special
増川弘明Gibson Les Paul Standard 

藤原さんがアコースティックギターからエレキギターに変わっているのが特徴です。2014年は藤原さんがエレキを弾くことにより、ロックな雰囲気の曲調になっています。

リハーサルで楽器を試す様子

2008年の全国ツアー「ホームシップ衛星」の様子はNHK「スーパーライブ」で取材されており、リハーサルスタジオで新曲「プレゼント」を練習する様子が写っています。

一瞬、藤原さんはエレキギターを試していましたが、本番ではアコースティックギターを使用しています。

藤原と増川のツインリードギター!

2014年「WILLPOLIS」では藤原さんと増川弘明さんによるギターソロの掛け合いが披露されました。「くだらない唄」「リトリブレイバー」「Ever lasting lie」以来の演奏です。

 

さて、以上2回にわたりプレゼントを紹介しました。次のツアーでは演奏されることはあるのでしょうか。




フォロー
The Chickens