楽曲解説:スノースマイル vol.1 – ラブソングではなく藤原基央が伝えたかった意味 *12/10更新

基本情報作詞作曲:藤原基央
作曲時期:2002年9月
リリース:2002年12月18日
5th Maxi Single『スノースマイル』M-01
4th Album 『ユグドラシル』 M-09

「スノースマイル」はBUMP OF CHICKENの通算5枚目のシングル曲です。バンプの楽曲としては珍しく「冬」の季節を感じさせる歌詞、アコースティックなサウンドが印象的なバラードとなっています。

今回は「スノースマイル」の作曲過程や歌詞解釈について解説します。



ロストマンの作詞期間に思い浮かんだアイデア

6th Maxi Single 「ロストマン/sailingday」
2002年9月、「スノースマイル」はボーカル・ギターの藤原基央さんによって書かれます。1〜9月までの9ヶ月間、別の曲(「ロストマン」)の作詞に時間を費やした後のことでした。

「ロストマン」のときは毎日ずっと作詞をしているわけでなく、書いては消し、たまに息抜きをして、という日々を繰り返していました(オンリーロンリーグローリーを作り始めたのもロストマン制作時に遡ります。)

同時期の作品この頃藤原さんの中にはオンリーロンリーグローリーの原型、花の名の歌詞の一節がすでにありました。

“手グセ”のフレーズから生まれた曲

Aメロのギターのアルペジオは、藤原さんがスタジオなどでよく爪弾いている“手グセ”のフレーズでした。

藤原 – これの前の曲(※ロストマン)を書いてるとき、ずっとこのアルペジオが頭の中で鳴っていた。半年以上、その曲を書いてた時にずーっと、詩を書いてる時もずーっと鳴り響いていた冒頭のアルペジオと、<冬が寒くって 本当に良かった>のワンフレーズがずっと鳴ってて。

ROCKIN’ ON JAPAN 2002.12

「花の名」も”手グセ”のフレーズから生まれます。ずっと弾いていることで自然にコードに合ったメロディが生まれてくるようです。


ラブソングではない

スノースマイルは曲名や歌詞を見ると冬のラブソングような響きがあります。しかし作曲した藤原さんはラブソングという意識はなかったといいます。

-(スノースマイルは)非常に少ない、美しいラブソングのひとつなんですけれども。

藤原 – あんまりラブソングって感じはしてなかったんですけどね、人と人っていう感覚で。

bridge 2013.6 vol.75

・・・気になる一節が頭に浮かびます。

スノースマイル
冬が寒くって本当に良かった
君の冷えた左手を 
僕の右ポケットにお招きするための
この上ない程の理由になるから

ラブソングでないのになぜこんな情景描写を書いたのか、と思いますよね。そのことに対して次のように説明しています。

藤原- でもちゃんとわかりやすく伝わるように男女の話の雰囲気で書かれてますけど。

bridge 2013.6 vol.75

この詞の主題を伝ええやすくするための材料として、意図的に男女のモチーフを使用したということですね。では藤原さんが伝えたいこととは一体なんだったのでしょう。

スノースマイルで伝えたいこと

藤原- だからその、結局 <君のいない道を> ってところを一番言いたいんですよ。そこに至るまでのところにどういう哲学が生まれるかっていうのを表現するために適していたのが、そういう男女の感じだったんでしょうね。

bridge 2013.06 vol.75

スノースマイル
君に出会えて本当に良かった
同じ季節が巡る
僕の右ポケットにしまってた思い出は
やっぱりしまって歩くよ

君のいない道を

<君のいない道を>という寂しさ、その寂しい道を歩く小さな勇気のようなものに主題を置いています。確かに藤原さんらしい歌詞に見えてきましたね。

「夢(物語)」「君のいる景色」や「君のいない道」という表現はRAY期~Butterfies期〜現在に“あなたがそこにいなかったこと”、 ”そこにいたこと”という表現にあてはまります。藤原さんの詞の主題はずっと変わっていないことがわかります。


藤原基央はなぜ季節ソングを書かないのか?

“スノー” スマイルの言葉通り、冬を連想させるタイトルにしています。

しかし藤原さんが付ける曲名は特定の時代や季節を感じさせるものはほぼありません。それは、曲の持つ意味や印象をタイトルによって限定的にしてしまうのを避けるためでした。

藤原 -ここまで季節限定っていうのは初めてだった。季節ものっていう時点で色々なものを放棄している感じがするんだ。

ROCKIN’ ON JAPAN 2002.12

これ以前の楽曲を振り返っても、『くだらない唄』の<たんぽぽ>や『K』の<二度目の冬を過ごす>ほどしか季節を連想させる言葉はないですね。

関連記事:くだらない唄 vol.1 – 電車の中で作った唄-

冬、それでいいやって感じ

しかし『スノースマイル』の<冬>は単純に”それでいいや”という脱力的な感覚で書きました。

藤原 – 最初に出て来ちゃったアルペジオになにげにワンフレーズのせてみたら<冬が寒くって 本当に良かった>っていうは、それでスタンダードなんだなって思ったから、それでいいやって感じで。この曲にはね、いつも以上に力の抜けた俺がいる。

ROCKIN’ ON JAPAN 2002.12 

プロデューサーから与えられたテーマで書いた「Merry Christmas」や「pinkie」を除けばほとんど季節の曲が見当たりませんね。いきなり「真夏の〜」なんて曲が発表されたら驚いてしまうと思います。。。笑



旅行、引っ越し、チャマの家と近くなる

BUMP OF CHICKENのメンバーは、ツアーPOKISTA21終了後、5〜6月まるまる休みをもらいます。藤原さんは、友人と京都、箱根、奄美大島(友人と家族1回ずつ)へ旅行をしました。

ベーシストの直井由文さんの家と徒歩2分のマンションに引っ越し、一緒に朝ご飯を食べたり、互いの家で遊んだりするという時間を過ごします(ほんと仲が良いですね!)。

息抜きや環境に変化をつけながら、ロストマンの詞を書く日々。そして9月に入り「ロストマン」を書き上げます。ようやく生まれた1曲から解放され、”ほどよく力の抜けた状態”(藤原談)で書いた曲が「スノースマイル」でした。

ホリデイも作曲カップリングの「ホリデイ」も9月に書いており、9月だけで3曲が生み出されます。

以上、スノースマイルの歌詞の意味や解釈、制作エピソードについて紹介しました。次はレコーディングやライブの使用機材について紹介する予定です、