この記事では、BUMP OF CHICKEN 6枚目のアルバム「RAY」収録曲の「トーチ」について紹介します。トーチは、RAY期の楽曲の中ではシンプルなアレンジで構成され、初期楽曲を彷彿とさせる疾走感のあるナンバーです。
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「RAY」制作後期の楽曲
トーチは2013年の春に書かれました。世間的にはベストアルバム発売とスタジアムライブを発表する少し前くらいですね。RAYの中でも、比較的終盤の楽曲になります。全ての楽曲は不明ですが、わかる範囲で作曲順をまとめてみました。
RAY作曲順(レコーディング日ではなく藤原の作曲日)
2009年8月7日(作曲) | (please) forgive |
2010年7月(作曲) | morning glow |
2010年 秋(作曲) | 友達の詩 |
2010年12月28日(作曲) | サザンクロス |
2011年1月20日頃(作曲) | ゼロ |
2011年3月(作曲) | smile |
2012年5月(作曲) | firefly |
2012〜2013年上半期(作曲) | 虹を待つ人 |
2012〜2013年上半期(作曲) | ラストワン |
2013年春(作曲) | トーチ |
2013年夏〜秋 | ray |
*white noteは推測できず
藤原 – 「トーチ」は割と後の方に書いたんじゃないですかね。
升 – そうですね。録ったりしたのは去年なので、アルバムの中で言うと結構新しい方になる。
2014年3月6日 BUMP LOCKS
レコーディング作業も2013年秋のツアーWILLPOLISの合間を縫って行われました。一番最後に書いたrayを除けば1~2番目に新しい楽曲ですね。
全員でアレンジする布石となる1曲
2013年の春、藤原さんはアコースティックギターで弾き語りデモテイクを録音しました。そしてそれをメンバーに聴かせて全員でアレンジの肉付けを行います。
藤原 – (直井と升の)ふたりがそれぞれリズムのデモを持ってきてプレゼンをする、みたいな。最初がチャマで次がヒデちゃん、みたいなのが何回かあった。
MUSICA 2014.04
バンドとしては普通の発言です。でも、なぜこの発言を取り上げたかというと、BUMP OF CHICKENの楽曲制作スタイルの変化を表しているからです。
<曲の求める姿を追求する>という姿勢を体現したユグドラシル〜orbital period期は、藤原さんが編曲をリードする形で、シーケンサーやデモテープの段階で詳細なアレンジの方向性を決め、メンバー各自がそれを解釈して再構築していきました(全部ではないですが)。
COSMONAUT期から曲量産体制が整うと、徐々にメンバー全員でアレンジ作業をすることが多くなります。次の増川さんの発言からもその事が伺えます。
増川 – シンプルなデモを聴いて、そこから4人でいろいろやり始めたっていうシリーズの、かなりわかりやすい例なんじゃないですかね。
MUSICA – 2014.04
Butterfliesのシングル曲以外のアルバム曲は、藤原さんがデモを作り3人が別のスタジオで練習するという流れで生まれました。トーチはその布石となる楽曲です。
二人だけでスタジオに入り試行錯誤する升と直井
トーチの前に録音した「ラストワン」では、二人がバラバラに考えたアイデアを合わせた為、藤原さんからNGをもらいました。その為、直井さんと升さんは一緒に自宅でPro Tools(音楽編集ソフト)を使ってアイデアを打ち込んだりしてベーシック部分のアイデアをまとめていきます。
おはようございます🙌🏻朝からヒデちゃんとリズムトラック制作中🚧 pic.twitter.com/EJbDVkfYJ4
— CHAMA (@boc_chama) 2015年9月25日
直井 – 家のあと、今度は二人でスタジオに入ったんじゃないかなぁ。生で音を出してみないとわかんないとか。その期間、何曲か並行してやってたよね、そんなことばかりを(笑)
升 – やってたやってた(笑)
藤原 – なんかね、いっぱいいろんなことやってるアレンジを聴かせてくれて。すっげぇいろいろやってたの!リズムギミックもすっげぇあって、情熱は超伝わるんですけど、すっげぇわかりにくいっていう(笑)
MUSICA 2014.04
別のインタビューでも語っていましたが、シンプルな構成の楽曲ほどアレンジの時間がかかると言っていました。確かにリフも少なくて、シンセやストリングスもないバンドサウンドですが、その背景にはとてつもない数の試行錯誤があったんですね!
リハーサル中に勢いで付け足した大サビ
3番のラスサビは原曲のデモテープでは1回しか繰り返しませんでした。しかし4人でスタジオで合わせている時に勢いが余って「もう1回繰り返そう!」となり大サビを付け足します。藤原さんは、その場で歌詞を書き加えました。
増川 – 基本的に、藤君の曲は完成させた状態からほとんど変わることはないんですけど。
藤原 – 99%そうだよね。
増川 – “トーチ”は曲のムードとかはそのままなんですけど、尺が伸びたり、いろいろあって
藤原 – 尺が伸びるにつれ、歌詞も増え。
増川 – そういうものがデモの現場で一緒になされていって、楽しかったですね。
MUSICA 2014.04
バンドでオリジナル曲を作る愉しみというのが体現されています。例えば、チャマさんがMTRにベース2本重ね録りしてコード進行を決め、おおいわのガレージで藤原さんがメロディを付けるような(後の彼女と星の椅子)、そんな源流的な光景が想像できる1曲ですね。
レコーディング前日の最終リハーサルでも、藤原さんは直井さんのベースにリクエストをします。藤原さんが間奏の動くベースラインのアイデアを伝えて、直井さんは急遽本番前にベースラインを変更しました。近年のBUMP OF CHICKENの楽曲の中でも、すごくバンドらしさが溢れる曲ではないでしょうか。
泣いて歌えなかった藤原
藤原さんは弾き語りでデモを録る時も、バンドで合わせる時も、泣いてしまい歌うことができませんでした。自分の中で歌詞を消化することができませんでした。
藤原 – みんなで合わせても、一人で弾き語りしても泣いちゃって全然歌えなくて(笑)それはきっといいことなんでしょうけど・・・そこを消化するのにちょっと時間がかかりましたね。
MUSICA – 2014.04
MUSICAのインタビューでは<君>や<あなた>、<ひとり>について言及していますが、かなり複雑で詩的な発言なので(そして長いので)、変に切り取りをせずに置こうと思います。ただ藤原さんのなかでは、記憶や実体験、経験、感情、現実、非現実が複雑に入り交ざった歌詞だということだと述べています。気になる方は書店で購入されてみてくださいね。
個人的に考えられるのは、時期的なものかなと思います。2013年の春はベストアルバムの発売が公表される直前です。ベストアルバムについてバンドやスタッフとで多くの議論を経た後くらいですね。当時のインタビューでわかるように、この頃のメンバーはよく会議で泣いていたと発言しています。バンド、BUMP OF CHICKEN、友達というものに対して敏感になっている時期です。歌詞を書くきっかけがバンドにせよ、バンド以外の外的要因にせよ、藤原さんにとって多感な時期だったのでしょう。
ライブ演奏記録
トーチはWILLPOLIS2014とPATHFINDERで演奏されています。WILLPOLIS 2014のツアー終盤では3番Aメロはベースとドラムだけのシンプルな演奏になり(藤原がギターを弾かない)、すごく歌詞が入ってくるので好きです。その様子はBlu-ray「WILLPOLIS 2014」でも確認できます。
藤原使用機材
WILLPOLIS 2014 | TOKAI Les Paul Special モデル(青) |
PATHFINDER | Gibson Les Paul Special(黄) メイン機 |
以上、トーチについて紹介しました!