夢の飼い主
作詞/作曲 藤原基央
作曲時期:2004年 (ユグドラシル以降)
リリース:2004年12月1日 (9th Maxi Single「車輪の唄」収録)
夢の飼い主はBUMP OF CHICKENのカップリング曲です。通算9枚目のシングル「車輪の唄」に収録されています。前回、楽曲解説:夢の飼い主 vol.1 – 藤原基央の夢に対する想い の記事(歌詞編)にて“夢”と”彼女”の関係を物語調で綴った歌詞と藤原さんの「夢」に対する考えについて解釈・解説しました。
今回はレコーディング編としてユグドラシル期の完結ともいえる深みのあるエフェクトサウンドについて紹介します。
Contents
短期間のレコーディング
embed from @boc_chama
夢の飼い主に言及したインタビューは多く残されていません。当時、MY PEGASUSツアーの最中でライブレポート系の記事が中心だったのと、リリース作品(車輪の唄)がシングルカットであったためです。
そんなプロモーション事情の中、夢の飼い主について語られることのほとんどが 短い時間でレコーディングした という話が中心でした。
升 – まあ割と僕らにしては、すごい早さで録った感じだからね。あんまり録った時の記憶とかないんだけどね、その時の瞬間がぎゅっと・・・。はい。
2004.11.28 PONTSUKA!!
升 – 夢の飼い主は…僕等にしてはすごい制作期間が短く、すごい速さで録った曲だよね。
excite music 2004 「車輪の唄」発売ビデオコメント
とにかくレコーディング期間の短さについての話題ですね。以前の記事(メンバー vol.4 – 作曲から音源化までの流れ-レコーディング(前編))で紹介した通り、通常4人はデモ制作〜本番レコーディングまでの間にスタジオで練習をします。夢の飼い主はツアー直前から東京公演後のレコーディングであったため、練習時間は全くありませんでした。
ツアー中のレコーディング
*2004.09 MY PEGASUS at ZEPP TOKYO (03.sailing day) embed from excite blog
2004年9月スケジュール
9月17日 | MY PEGASUS at ZEPP TOKYO |
9月18日 | MY PEGASUS at ZEPP TOKYO |
9月19日-22日 | レコーディング at 一口坂スタジオ |
9月23日 | MY PEGASUS at ZEPP FUKUOKA |
9月24日 | MY PEGASUS at ZEPP FUKUOKA |
12月1日 | 9th Maxi Single「車輪の唄」リリース |
※福岡出発日が不明のため22日は推定である。
東京2daysの翌日から福岡2daysまでの4日間という短期間でレコーディングを行います。福岡出発日が22日だった場合、3日間になります。同時に福岡公演に備えてライブのリハーサルもしていたはずですので、いかに短期間の中で制作作業だったことがわかります。
藤原 (MC) –
またレコーディングやってたんですよ僕ら。レコーディングやってた時は、1曲録ったんだけどね。(中略)その曲はまだちょっと・・・ライブとかではできねえからさ(笑)
2004.09.23 MY PEGASUS at ZEPP FUKUOKA
MY PEGASUSの東京公演2daysを終えてライブの演奏について反省点などを確認しつつ、同時に夢の飼い主のレコーディング・・・というのは客観的に多忙なスケジュールですよね。それでも、その違和感を感じさせないくらい綺麗で繊細なサウンドです。
腱鞘炎でプレイした藤原
藤原さんは夢の飼い主のレコーディング中、左腕の腱鞘炎を罹っていました(画像は右腕ですが・・・)
藤原 – 何か俺…初めて腱鞘炎的なものにかかって….。で、ギターを弾いてはアイシングして弾いてはアイシングしての繰り返しでしたね。
excite music 2004「車輪の唄」発売ビデオコメント
4年後のカップリング集「present from you」でのインタビューでも、
藤原 – 左手が腱鞘炎だったことは覚えてますね。左手が痛くて。(中略)レコーディングでー前日のライブで、その時痛えぞって気づいたんですけどーバレーコード弾く時に親指が突っ張って。その時にリズムがゆるくなっちゃうんですよ。
MUSICA 2008.06
発売から4年経っても言及しており、藤原さんにとってこの腱鞘炎は印象に残っているようです。余談ですが、MY PEGASUSでバレーコードを多用するのは Ever lasting lieです。東京2Daysの曲中では痛みを感じながらのライブなんですね。
ユグドラシル期の象徴であるきめ細かいサウンド
夢の飼い主はボーカルエフェクトやギターディレイがかけられ、浮遊感と奥行きのあるサウンドが特徴です。私の感覚では、(please) forgive (2014年)と同カテゴリーに入ります。ユグドラシルリリース後の作品ですが、ユグドラシル期にカウントできます。
タムを多用したドラム
ドラムはスネアよりもタムを多用しています。曲の冒頭では土着的で温かみのあるリズムを演出し、曲の終盤に連れて熱のこもったドラムプレイになっていきます。
1番 ハイハット+バスドラムのみ
2番 温かみのあるタムの多用
終盤 熱を帯びたプレイ (首輪じゃ〜からのスネア16分音符)
単純に叩くドラムの種類の変化以上に、叩く強さや音の質感からも熱を帯びていく感じが伝わります。他にタムが多用されている楽曲は(please) forgiveです。ベンチとコーヒーともコンセプト的に似た部分がありますね。
動物的なベースライン
動物的な〜というのは私の主観的な感想です。この曲のベースラインはすごく可愛く好きです。まるで4足歩行の小動物が歩いているようなそんな風に聞こえます(私の感想です)。Bメロ前半(”忘れられたくないから〜”)のベースラインはギターとユニゾンしており、ハードロック、プログレな部分があります。本人達もカップリング集発売時のインタビューで「すごくロック」と表現しています。
ディレイによる空間的なギター
シングルコイルのギターサウンド前回の粘り気のある単音リフを交えたサウンドです。言語化できないのですが、まさにユグドラシル期、という感じです。普通にジャーンと弾くのではなく、1音1音を意識した繊細な奏法になっています(藤原さんが得意とする奏法です)。アルペジオとストロークを織り交ぜた奥深いギターです。
藤原さんは今までディレイなどの空間系のエフェクターは目立つような使い方はしてきませんでした。しかし夢の飼い主はディレイが特徴的に使われています。
エフェクトをかけたボーカル
2004年当時、ここまでコーラスエフェクトをかけた楽曲はありません。藤原さんの声は高音と低音が混ざった多層的な声だと思っています(個人の印象です)。普通の人の声がギターのクリーントーンの音だとしたら、藤原さんはクランチサウンドです。コーラスエフェクトをかけることにより、藤原さんの声がより多層的に聞こえてきます。ちなみにボーカルテイクの声はライブ翌日ということで喉が枯れていました。
藤原 – 喉もちょっと枯れてて、全開じゃなかったし。
MUSICA 2008.06
藤原基央 x コーラスエフェクト の楽曲は夢の飼い主を単著に、プラネタリウムやR.I.P. 宇宙飛行士への手紙、morning glow、(please) forgive、パレードなど色々な楽曲で重宝されています。
ライブではストラトキャスターを使用
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夢の飼い主のライブ演奏回数
2004.12.11 TOUR FINAL PEGASUS YOU at 千葉幕張メッセ | 計3回 |
2004.12.12 TOUR FINAL PEGASUS YOU at 千葉幕張メッセ | |
2004.12.19 LIVE at 韓国ソウルROLLING HALL |
使用機材
藤原基央 | SONIC製ストラトキャスター (黒) |
増川弘明 | Gibson製 Les Paul |
夢の飼い主はリリース直後に3回演奏されて以降、14年間演奏がありません(2018年8月現在)。2004年のライブでは藤原さんは黒指板のソニック製ストラトキャスターを弾いています。Aメロ, Bメロは増川さんに任せ、サビだけを弾いていました。CD音源よりもロックに、かなり熱を帯びた楽曲にアレンジされており、またいつかライブ演奏をして欲しい1曲です。
以上、夢の飼い主のレコーディング・ライブ編について紹介しました。ご拝読ありがとうございます。