楽曲解説:ひとりごとvol.1 ひとりよがりな価値観を届けるということ *12/16更新

ひとりごと:基本情報:作詞作曲:藤原基央
作曲時期:2007年 
録音時期:2007年夏以降 (時空かくれんぼの次)
録音場所:一口坂スタジオ
リリース:2007年12月19日「orbital period」 
ライブ初披露:2008年1月11日「ホームシック衛星」

「ひとりごと」はBUMP OF CHICKENの『orbital period』に収録されている楽曲です。今回は「ひとりごと」の歌詞の意味、解釈、制作エピソードについて紹介します。



「心のままの作詞」へ

orbital period M-11 ひとりごと

藤原さんはユグドラシル〜orbital period期は曲を届ける相手を前提にした作詞をするようになります。

藤原 – 俺、毎回、聴いてもらう時は『生きるか/死ぬか』みたいな気分ですよね。聴き手がいてこその音楽だという思いは以前より強くなっていて、それ以降にこの”ひとりごと”を作ったので –

MUSICA vol.9 2008年1月号

表現力のリミッターが外れた藤原基央

28歳当時の藤原基央 embedded from excite music

「ひとりごと」の歌詞は抽象性、独白の世界が際立ち、言語化できない藤原さんの心の図像をそのまま書き起こした歌詞が特徴です。

ひとりごと “0:47″〜
ねぇ君のために生きたって 僕のためになっちゃうんだ
本当さ 僕が笑いたくて 君を笑わせてるだけなんだ
ごめんね

もしFacebookなど SNSにあげてしまったら少し恥ずかしさを覚えてしまうような、心配されてしまうような言葉です。

しかし藤原さんは”よそ行き”の文章ではなく、自分の心の中の難解な思いを難解なまま書き出すことにします。

藤原 – (表現力の)リミッターが外れると、難解なものは難解なまま届ける状態になるから。それをわかりやすく届けようとすると、真実から遠ざかることになるし。

MUSICA vol.9 2008年1月号

伝えたいことが伝わるかわからない、伝えるための表現がわからないという葛藤を経て、”心のままに詞にする”という作詞法をとった藤原さん。これはorbital period以降の作詞に影響を与えるきっかけでした。

「スノースマイル」に登場する男女藤原は<君のいない道を>という主題を伝えやすくするために男女を歌詞に登場させた。それをラブソングと解釈するインタビュアーの発言があり、インタビュー中に藤原本人が否定する出来事があった。

関連記事:スノースマイル vol.1 – ラブソングではなく藤原基央が伝えたかった意味

ひとりよがりな価値観を届けるということ

MUSICA vol.9 2008年1月号 

藤原 – この曲の前にできた”時空かくれんぼ”のあたりから、独りよがりの極みの中で書いてんじゃねえかな?って思ってて。(中略) 当たり前のように俺とリスナーは同じ感覚を共有してるって思ってたし。

MUSICA vol.9 2008年1月号

ひとりよがりな価値観/言葉を詞にすることに対して、藤原さんは不安を感じました。特にメンバーに最初にプリプロ音源を聴かせる時は恐怖を覚えたといいます。

藤原 – とにかく怖かった。白装束を着ている気分で、まずはメンバーのいるプリプロのスタジオに持って行った思い出があります。

MUSICA vol.9 2008年1月号

心のままの詞「ひとりごと」の前に書いた「時空かくれんぼ」から”心のままを詞にするモード”が始まる。

関連記事:時空かくれんぼ vol.1 – 藤原自身も説明できない歌詞の世界



スタンダードな作曲法で書いた「ひとりごと」

「ひとりごと」はギターを弾き語りながらメロディと詞を同時作る方法で書かれました。「ガラスのブルース」からのかなり初期から行わているスタンダードな作曲法です。

作曲法ユグドラシル期〜orbital period期前半までは詞を先に書く、いわゆる「詞先」の曲が多かった。

元のタイトルは『(心の)外の中』

藤原 – 最初に付けたタイトルが”外の中”だったんです(笑)。そん次に、じゃあ”心の”って付けてみたら余計わけわかんなくなって(笑)。

ROCKIN’ ON JAPAN 2008.02

ひとりごと “2:48″〜
ねぇ 優しさって知ってるんだ 渡せないのに貰えたんだ
きっとさ 人と人との間の心の外の中だけに在るんだ
ひとりごと

優しさとは何かを問い続けてきた詞の終盤に、その居場所を示す部分です。元のタイトルにもなっている通り、この部分は藤原さんにとって大きな要素であることがわかります。

「人と人との間の心の外の中」、いったいどこなんでしょうか。「無意識のうちに」とかが一番当てはまるのかなと思います。主観です。

優しさの純度について

藤原さんは「純度100%の優しさ」を受け取ったこと記憶があり、それが何なのかをずっと考えていました。

藤原 – でも僕はそのやさしさをどうやら知っていて。ほんと純度100%のものを。(中略) 1回から2回以上。それは一体なんのかなっていう、なんなのかねーってずっと考えてた。

ROCKIN’ ON JAPAN 2008.02

藤原さんは「優しいね」と言われることに対して、優しいという現象自体がそんな簡単なことでいいのかと思うところがありました。それらの優しさとは違う、純度の高い優しさを考える中で、小学校の頃の思い出や色々な人々との思い出を駆け巡りながら歌詞を書いたのです。



夏フェス以降のレコーディング

2007年9月以降、「時空かくれんぼ」「ひとりごと」「arrows」の3曲をレコーディングします。夏フェス出演が終わった後の期間でした。

プロデューサーのアイデアを却下して残したスネアのリズム

embedded from Twitter@boc_chama

この曲は藤原さんがシーケンサーでおおよそのアレンジを詰めて持って来ました。スネアをハイハットのように連打するパターンも藤原さんのデモ音源の段階から入っていました。

升 – 何回も何回もやって、最後に藤原の歌が入った時にその必然性というか鳴るべくして鳴ってる音だなと強く思いました。

MUSICA vol.9 2008年1月号

升さん、かっこいいですね。これに対してプロデューサーが何度か対案を提示したそうです。しかし直井さん達メンバーはこれを断ります。

直井 – 何回かウチのプロデューサーが違うパターンを提示したけど、これだけは絶対崩さないようにしようと。

WHAT’s IN? 2008年1月号 No.247

プロデューサーの意見を却下してまで残したリズム、改めてそこに重点を置いて聴いてみたくなります。

『COSMONAUT』以降、プロデューサーの意見がバンドに影響を与える割合が大きくなります。タイトルを付けたり、リズムを作ったり、シンセサイザーを弾いたり。メンバーがプロデューサーと意見が割れる少ないエピソードです。

関連記事:メンバー vol.6 – プロデューサーMORの正体



ライブ演奏記録

embedded from tfm.co.jp

使用機材

2008年
藤原基央 Gibson Les Paul Special (2カポ) 
増川弘明 Gibson Les Paul Standard (2カポ)
2016年 藤原基央 Gibson J-45 (2カポ)
増川弘明 Gibson Les Paul Standard (2カポ)

ホームシック衛星(2008年) 
ホームシップ衛星(2008年) 
・BUMP OF CHICKEN 20周年記念ライブ 20 (2016年)

『orbital period』のレコ発ツアーとなったとなった「ホームシック衛星」「ホームシップ衛星」ではAパターンのセトリ曲として演奏されました(Bパターンでの対応曲は『時空かくれんぼ』)

藤原さんがエレキギターの時はクランチサウンドがベーシックな音域を響かせることで全体的にバンド感のあるサウンドになっています。

2016年、8年ぶりに演奏!藤原はエレキからアコギへ!

2016年の20周年記念ライブ『20』では8年ぶりに演奏されました。『20』ではアコースティックギターを使用しています。藤原さんのギターがアコースティックギターに代わり、音の粒が綺麗になった洗練されたサウンドが聴けました。

この模様はBlu-ray/DVD「BUMP OF CHICKEN Special Live 20」に収録されています。

以上、「ひとりごと」について解説しました。またライブで聴ける日が来るといいですね!ご覧いただきありがとうございました。