4th Album 『ユグドラシル』

BUMP OF CHICKEN「スノースマイル」 ラブソングではなく藤原基央が伝えたかった意味

4th Album 『ユグドラシル』

「スノースマイル」はBUMP OF CHICKENのシングル曲です。バンプの楽曲としては珍しく「冬」の季節を感じさせる歌詞、アコースティックなサウンドが印象的なバラードとなっています。

今回は「スノースマイル」の歌詞の意味、作曲過程や歌詞解釈について解説します。



「スノースマイル」基本情報

作詞作曲 藤原基央
作曲時期 2002年8〜9月
シングル 2002年12月18日 『スノースマイル』
アルバム 2004年8月25日 『ユグドラシル』
ライブ初披露 2002年12月3日「LOVE & PORKIN」名古屋クラブダイアモンドホール公演

 

「スノースマイル」作曲エピソード

2002年9月、藤原基央さんは「スノースマイル」を作曲します。

「別の曲」と向き合い続けた9ヶ月間

2002年1〜9月、藤原さんは別の曲の作詞に向き合います。他の曲作りに逃げずにひたすら1曲と向き合い、書いては消し、たまに息抜きをして、という日々を繰り返します。

シングル「ロストマン / sailing day」

毎日歌詞を書いていたわけではなく、プライベートで旅行に出かけたり、BUMP OF CHICKENとしてライブ活動で全国を回ります。その頃にひとつのギターフレーズが生まれます。

藤原 – これの前の曲を書いてるとき、ずっとこのアルペジオが頭の中で鳴っていた。半年以上、その曲を書いてた時にずーっと、詩を書いてる時もずーっと鳴り響いていた冒頭のアルペジオと、<冬が寒くって 本当に良かった>のワンフレーズがずっと鳴ってて。

引用元:「ROCKIN’ ON JAPAN」2002年12月号

夏にはインディーズ仲間と回った対バンツアー「B.O.C Presents BAUXiTE page1」が刺激的で(特に憧れのsyrup 16gと回ったのが嬉しかった)、自分の作った切ない響きのフレーズ(スノースマイルの原型)が曲になるとは思わなかったといいます。

藤原 – 原型みたいなものができたのは8月ぐらいかな、多分。夏のイベントの最中に、冒頭のアルペジオをずーっと弾いてたんですど。

引用元:「B-Pass」2003年1月号 p.25

インタビューによって半年以上(3月頃)〜夏と期間の幅がありますが、概ねこの頃に「スノースマイル」の原型があったことがわかります。

アルペジオから「スノースマイル」を作る

2002年9月、向き合い続けた”別の曲”の歌詞が完成し「ロストマン」と名付けます。解放された藤原さんは堰を切ったようにアルペジオの続きを作って曲にします。

藤原 – 前の曲のアレンジをどうしようって悩んでる時に、俺は俺でもう一曲作っちゃおっていう感じで、アルペジオから起こしてきて。

引用元:「B-Pass」2003年1月号 p.25

「ロストマン」作詞の後半にはアルペジオを曲にしたい気持ちが芽生えていたといい、冒頭の続きのフレーズの続きを1〜2週間で書き、「スノースマイル」が完成します。

ちなみに同じ月にカップリング曲「ホリデイ」も作曲しています。



「スノースマイル」はラブソングじゃない

MV「スノースマイル」サムネイル(YouTubeより埋込)

「スノースマイル」は曲名や歌詞を見ると冬のラブソングような響きがあります。しかし作曲した藤原さんはラブソングという意識はなかったといいます。

-(スノースマイルは)非常に少ない、美しいラブソングのひとつなんですけれども。
藤原 – あんまりラブソングって感じはしてなかったんですけどね、人と人っていう感覚で。

引用元「bridge」2013年6月号 vol.75

気になる一節が頭に浮かびます。

スノースマイル
冬が寒くって本当に良かった
君の冷えた左手を 
僕の右ポケットにお招きするための
この上ない程の理由になるから

引用元:「スノースマイル」 (2003年) 作詞・作曲 藤原基央

ラブソングでないのになぜこんな情景描写を書いたのか、と思いますよね。そのことに対して次のように説明しています。

藤原- でもちゃんとわかりやすく伝わるように男女の話の雰囲気で書かれてますけど

引用元「bridge」2013年6月号 vol.75

この詞の主題を伝ええやすくするための材料として、意図的に男女のモチーフを使用したとなります。それでは、藤原さんが伝えたいこととは一体なんだったのでしょうか。

 

スノースマイルで伝えたいこと

まずリリース時のインタビューでは、以下のように語っています。

藤原 – 精神性で言っても、“冬が寒くて本当に良かった”っていう一行目で完結してる曲だから。

引用元「B-Pass」2003年1月号

雪が積もるほどの外気の冷たさをあえてポジティブ捉える逆説的な感覚、関係性、そして精神性を藤原さんは主張しています。

11年後、ベストアルバム『BUMP OF CHICKEN BESTⅠ1999 – 2004』リリース時の インタビューでは次のように語っています。

藤原- だからその、結局 <君のいない道を> ってところを一番言いたいんですよ。そこに至るまでのところにどういう哲学が生まれるかっていうのを表現するために適していたのが、そういう男女の感じだったんでしょうね。

引用元「bridge」2013年6月号 vol.75

スノースマイル
僕の右ポケットにしまってた思い出は
やっぱりしまって歩くよ
君のいない道を

引用元:「スノースマイル」 (2003年) 作詞・作曲 藤原基央

<君のいない道を>という寂しさ、その寂しい道を歩く小さな勇気のようなものに主題を置いています。確かに藤原さんらしい歌詞に見えてきます。

「夢(物語)」「君のいる景色」や「君のいない道」という表現はアルバム「RAY」「Butterfies」で歌われている“あなたがそこにいなかったこと”、 ”そこにいたこと”という表現にあてはまります。藤原さんの詞の主題はずっと変わっていないことがわかります。


藤原基央はなぜ季節ソングを書かないのか?

“スノー” スマイルの言葉通り、冬を連想させるタイトルにしています。

しかし藤原さんが付ける曲名は特定の時代や季節を感じさせるものはほぼありません。それは、曲の持つ意味や印象をタイトルによって限定的にしてしまうのを避けるためでした。

藤原 -ここまで季節限定っていうのは初めてだった。季節ものっていう時点で色々なものを放棄している感じがするんだ。

引用元「ROCKIN’ ON JAPAN」2002年12月号

「スノースマイル」以前の楽曲を振り返っても、「くだらない唄」の<たんぽぽ>や「K」の<二度目の冬を過ごす>ほどしか季節を連想させる言葉はないですね。

関連記事 BUMP OF CHICKEN「くだらない唄」

冬、それでいいやって感じ

しかし「スノースマイル」の<冬>は単純に”それでいいや”という脱力的な感覚で書きました。

藤原 – 最初に出て来ちゃったアルペジオになにげにワンフレーズのせてみたら<冬が寒くって 本当に良かった>っていうは、それでスタンダードなんだなって思ったから、それでいいやって感じで。この曲にはね、いつも以上に力の抜けた俺がいる。

ROCKIN’ ON JAPAN 2002.12 

プロデューサーから与えられたテーマで書いた「Merry Christmas」や「pinkie」を除けばほとんど季節の曲が見当たりませんね。いきなり「真夏の〜」なんて曲が発表されたら驚いてしまうと思います。



旅行、引っ越し、チャマの家と近くなる

 

BUMP OF CHICKENのメンバーは全国ツアー「POKISTA21」終了後、5〜6月まるまる休みをもらいます。藤原さんは、友人と京都、箱根、奄美大島(友人と家族1回ずつ)へ旅行をしました。

 

ベーシストの直井由文さんの家と徒歩2分のマンションに引っ越し、一緒に朝ご飯を食べたり、互いの家で遊んだりするという時間を過ごします(ほんと仲が良いですね!)。

 

息抜きや環境に変化をつけながら、ロストマンの詞を書く日々。そして9月に入り「ロストマン」を書き上げます。ようやく生まれた1曲から解放され、”ほどよく力の抜けた状態”(藤原談)で書いた曲が「スノースマイル」でした。

「スノースマイル」ライブ演奏記録

演奏回数 78回 
演奏頻度 ★★★☆☆
初披露 2002年12月3日「LOVE & PORKIN」名古屋クラブダイアモンドホール公演
最終演奏 2023年5月27日「TOUR 2023 be there」さいたまスーパーアリーナ公演
演奏ツアー 2002年「LOVE & PORKIN」*全公演演奏
2003年「NINJA PORKIN」*全公演演奏
2004年「MY PEGASUS / PEGASUS YOU
2006年「run rabbit run
2012年「GOLD GLIDER TOUR
2013年「WILLPOLIS」*アコースティック編成
2019年「aurora ark
2022年「Silver Jubilee
2023年「be there
2024年「Sphery Rendezvous

「スノースマイル」はリリースした2002年〜現在までコンスタントにライブで演奏されています。雪を連想させる季節性のあるタイトルのため、近年では冬のライブのアンコールで披露されることが多くなっています。

「スノースマイル」ライブ映像

映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」(初回限定特典BONUS映像 2018年2月10日さいたまスーパーアリーナ公演収録)
アルバム「aurora arc」*特典Blu-ray/DVD(2018年12月28日「COUNTDOWN JAPAN 18/19」収録)
映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark TOKYO DOME」(2019年11月4日公演収録)
映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be there at SAITAMA SUPER ARENA」(TOY’S STORE限定盤特典 DAY1 2023年5月27日公演収録)

その他TV映像

  • 2002年12月18日「LOVE & PORKIN」ZEPP SAPPORO公演(SPACE SHOWER TV)
  • 2004年12月11日「PEGASUS YOU」幕張メッセ公演(NHK「スーパーライブ BUMP OF CHICKEN」)

 

以上、「スノースマイル」の歌詞の意味や解釈、制作エピソードについて紹介しました。