カップリング曲

BUMP OF CHICKEN「pinkie」- 「桜」と「小指」に込めた歌詞の意味

カップリング曲

「pinkie」はBUMP OF CHICKENのシングル『HAPPY』に収録されているカップリング曲です。

「桜」をテーマにして書かれた歌詞とストリングス&ピアノの入った清廉なバンドサウンドが魅力となっています。

この記事では「pinkie」の歌詞の意味と解釈、楽曲制作エピソードを解説します。




「pinkie」基本情報

シングル「HAPPY」(2010年4月14日発売)

作詞・作曲 藤原基央
編曲 BUMP OF CHICKEN & MOR
作曲時期 2009年秋頃
録音時期 2009年末〜2010年2月
リリース 2010年4月14日 シングル「HAPPY」
ライブ初披露 2017年9月16日「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」幕張メッセ公演

「pinkie」作曲エピソード

2009年夏〜秋、BUMP OF CHICKENはバンド初となる2週連続CDリリース(『魔法の料理〜君から君へ〜』『HAPPY』)の企画が決まります。

CD収録するカップリング曲をどうするかという話になり、この時点でBUMP OF CHICKENの未リリース曲は「透明飛行線」「66号線」「セントエルモの火」「分別奮闘記」「angel fall」がありましたが、『HAPPY』収録のカップリング曲を新たに1曲書き下ろすことが決まります。

BUMP OF CHICKENの楽曲はこれまでも”カップリング用”として生まれが曲が多数存在します(下表参照)。

カップリング用として書かれた楽曲一覧

リリースCD 収録内容
オンリーロンリーグローリー」(2004年)
カップリング曲として「乗車権」を制作
※曲の主張が強くアルバム曲収録へ変更
オンリーロンリーグローリー」(2004年)
カップリング曲として「睡眠時間」を制作
プラネタリウム」(2005年)
カップリング曲として「銀河鉄道」を作曲
supernova/カルマ」(2005年)
カップリング曲として「supernova」を作曲
*レコーディング後に両A面として収録
HAPPY」(2010年)
カップリング曲として「pinkie」を作曲
「firefly」(2012年)
カップリング曲として「ほんとのほんと」を作曲

それまでの楽曲と異なる点はプロデューサー・MOR氏が作曲テーマを与えていたことでした。さて、そのテーマとは一体どんなものだったのでしょうか。

「桜」をテーマにして書いた歌詞

2009年秋、藤原さんは新曲づくりをします。このときプロデューサー・MOR氏から与えられた歌詞のテーマは「桜」でした。『HAPPY』リリースのタイミングが2010年春だったためです。

藤原 – 「『HAPPY』のカップリングとして桜をテーマに曲を書いてくれ」というリクエストがあったんです。

引用:natalie music

当時、BUMP OF CHICKEN(というより藤原基央さん)は新しい作曲手法が試されていました。プロデューサー・MOR氏が出したテーマに応えて作曲する方法で、格段に作曲ペースが上がります。

MOR氏が出したテーマ 藤原基央が書いた曲
シングル曲 分別奮闘記」 
シングル曲 R.I.P.」 
四つ打ち 「宇宙飛行士への手紙」 
“ジャカジャン” (please) forgive」 
クリスマス Merry Christmas
「pinkie」
「pinkie」も同時期のテーマ楽曲群に生まれが楽曲の1つです。つまり「pinkie」という楽曲は、作曲経緯と歌詞のテーマのどちらも外的要因によって生まれた曲といえます。その環境で「pinkie」のようなクオリティの高い楽曲を書ける藤原さんの作曲能力の高さが「aurora arc」「Iris」期におけるタイアップ作曲の連発に繋がっていえるでしょう。

コード縛りのリクエスト

「pinkie」作曲にあたり、藤原さんはプロデューサー・MOR氏から音楽面のリクエストも受けていました。

藤原 – 音的なリクエストっていうのは、「コード進行がずっと同じな曲を書いてよ」って。で、自分の中でルールをもう少し増やして、「トニックで始まらないしトニックで終わらない曲がいいな」と。

引用元:「B-PASS」2010年5月号 

コード縛りとはAメロ・Bメロ・サビを同じコード進行で作ることを指します。BUMP OF CHICKENの楽曲としては「(please) forgive」「宇宙飛行士への手紙」「新世界」「宝石になった日」などが該当します。

「pinkie」歌詞の意味

藤原さんは「桜」というテーマが嫌だったと語っています。しかしプロデューサー・MOR氏の自分への作曲家としての期待に嬉しさを感じ作曲にとりかかりました。

藤原基央にとっての「桜」

 

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藤原さんは「桜」というテーマの意図を「卒業の歌」や「未来」だと解釈し、「桜」のもつイメージの意味や抽象的概念をもとに詞を書いていきます。

藤原 – 「桜の歌」って、つまりは「卒業式の歌を書いてくれ」っていうことだったと思うんですけど、僕の中では“桜”というものの観念的な曲しか書けなくて。

引用:natalie music

藤原さんのいう「”桜”というものの観念的な曲」とはどういう意味でしょうか。それはタイトルに隠されています。



「pinkie」のタイトルの意味

「pinkie」のタイトルは「桜の色」と「小指」のダブルミーニング(二重の意味)になっています。英語で「pinkie」は「小指」を意味し、それと桜の花の色(pinky)を掛けていると語っています。

“ピンキー”というのは桜の色のことなんですか。

藤原 – (意味は)掛けてます。小指っていう意味も

引用元:「B-PASS」2010年5月号 

「約束」の象徴である小指

約束を示す”指切りげんまん”でも小指と小指を掛け合わせるなど、小指は「約束」の象徴として使われ、「pinkie」の歌詞にも「約束」が登場します。

pinkie  1:21〜
約束は誰かと作るもので 誰かが頑張り屋で
追い付けなくて離れて 自分だけがまだ待ってる

引用元:pinkie / 作詞作曲 藤原基央 (2010年)

SNSでも詳しい解釈を説明していらっしゃる方がいます。

前述の「未来」という藤原さんなりの「桜」からの連想を参考にすると、過去と未来の双方向の超時空的な「約束」を謳っているように思えます。



「pinkie」制作エピソード

「pinkie」作曲後、藤原さんは単独でデモテープを制作します。この段階でドラム、ベース、ストリングスといった主要なアイデアが固まっていました。「HAPPY」「魔法の料理〜君から君へ〜」のレコーディングが予定されており「pinkie」はデモ段階で寝かせることになります。

2009年末、「HAPPY」のレコーディングの場で藤原さんは他のメンバーに「pinkie」のデモテープを聴かせコードを取っておくように依頼します。本格的なレコーディングは年末から翌2010年2月まで行われました。

曲のオン/オフのスイッチ的な役割のドラム

BUMP OF CHICKEN ドラム

ドラムス・升秀夫さんは「pinkie」の制作について、”曲のオンとオフを切り替えるスイッチのようだ”と述べています。

升 – スイッチのオン/オフ的な存在ですね、ドラムは。曲は長いけどあんまり叩いてない(笑)

引用元:「What’s IN?」2010年5月号

「pinkie」のドラムは楽曲の位置に応じて異なるテンションで叩いています。8ビートを叩き続けるのはDメロとギターソロ程度で、それ以外は有機的にパーカッションすることで楽曲をよりドラマティックする役割を果たしています。

こだわりの音作りで臨んだギターソロ

BUMP OF CHICKENの楽曲は「ユグドラシル」〜「orbital period」期にギターソロが少なくなります。「R.I.P.」「HAPPY」など曲が多産される「COSMONAUT」期ではソロが復活します。

藤原 – あれはもう、フルダウンピッキングで弾いてます。そうじゃなければ出ないニュアンス、っていうのがずっと頭の中にあったので。

引用:natalie music

開放弦を混ぜて弾くギターソロは「カルマ」のCメロのオブリガードなどで使用されている手法です。

別々に録音したディレイのアルペジオ

BUMP OF CHICKENの新境地のサウンド

「魔法の料理〜君から君へ」「pinkie」のストリングスのレコーディング(2010年2月)引用元:弦一徹ブログ様より

BUMP OF CHICKEN さんの「魔法の料理〜君から君へ〜」と「pinkie」をレコーディングしました

引用元:GENITTETS BLOG

「pinkie」はそれまでのBUMP OF CHICKENの楽曲と一線を画したサウンドが特徴です。イントロ〜1コーラス目をまるまるストリングス(弦楽器)主体で演奏されています。

ストリングス(弦楽器)は「花の名」で最初に導入され、同曲ではバンドサウンドを盛り立てる役割でした。「pinkie」ではメインのパートとして弾かれています。ヴィオラのピッチカート(ミュートして撥弦する音)、ポリリズムに入るピアノも非常に特徴的です。

「pinkie」ライブ演奏記録


2018年2月10日さいたまスーパーアリーナ公演 ハンドマイクで「pinkie」を歌う藤原  Image embedded from rockinon.com

演奏回数 38回
初披露 2017年9月16日「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」幕張メッセ
最終演奏 2017年3月18日「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」マリンメッセ福岡
演奏ツアー 2017年「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」*全公演演奏
2024年「BUMP OF CHICKEN TOUR 2024 Sphery Rendezvouz

発表から7年半を経て初演奏!藤原がハンドマイクを持ち花道を歩き歌う!

「pinkie」は2017-2018年に開催された全国ツアー「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」で初めてライブ演奏されます。実にリリースから7年後の出来事でした。

初披露は2017年9月16日幕張メッセ公演。イントロが流れた瞬間に会場がざわめき、藤原さんがハンドマイクを持った瞬間にまたざわめき、花道を歩き始めた瞬間にまたまたざわめくというファンにとっては驚きの初披露となりました。

BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER 全公演セトリ

実はツアー1週間前からバレていた初披露

PATHFINDERの1週間前、増川さんのエフェクターの写真には「25.PINK…」とセットされたeventideのエフェクターが写っており「pinkie」が演奏されることが予想されていました。

藤原基央&増川弘明のツインリードギター

ギターソロでは増川弘明さんがメロディーパート、藤原さんがハモリパートを演奏しています。ギターソロとしてツインリードが披露されたのはこの曲と「プレゼント」(WILLPOLIS 2014 ver.) が挙げられます。

「pinkie」ライブ映像

映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER STUDIO COAST」 (会場限定販売)

映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER SAITAMA SUPER ARENA」

「pinkie」はライブハウス公演、アリーナ公演の2種類の映像作品に収録されています。以上、BUMP OF CHICKENの「pinkie」の歌詞の意味や楽曲解説を紹介しました。春の季節に似合う1曲だと思いますのでみなさんが聴くきっかけになればと思います。

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