5th Album『orbital period』

BUMP OF CHICKEN「supernova」歌詞の意味 – 藤原基央が想う”存在が消えてしまう前”

5th Album『orbital period』

「supernova」はBUMP OF CHICKENの11枚目のシングル曲です。

「supernova」とは英語で《超新星爆発》を意味し、恒星が滅亡する前に最後に放つ大きな光を指します。作詞作曲をした藤原基央さんはこの最後の光に大きな意義を見出し、曲名にしました。

藤原さんはなぜ「supernova」というタイトルをつけたのか、この記事では「supernova」の歌詞の意味と制作エピソードについて解説します。




「supernova」基本情報

作詞・作曲 藤原基央
編曲 BUMP OF CHICKEN & MOR
作曲時期 2005年8〜10月
録音時期 2005年8〜10月
収録作品 2005年11月23日「supernova/カルマ」
2005年12月14日「カルマ/supernova」
2007年12月19日「orbital period」
2013年07月03日「BUMP OF CHICKEN II <2005-2010>」
ライブ演奏回数 149回
ライブ初演奏 2006年1月13日「run rabbit run」ZEPP SAPPORO公演




「supernova」作曲エピソード

「カルマ」のカップリングとして生まれた曲

「カルマ」MV

2005年、BUMP OF CHICKENは「カルマ」のCDリリースが決定しており、藤原基央さんは「カルマ」のカップリングとして「supernova」を作曲します。

 

藤原 – ”カルマ”がシングルって確か決まっていて、そのカップリングの曲を書かなきゃ見たいな感じで書いたのがこの曲だったんです。だから”ロストマン”の時みたいに、そんなに一生懸命ああでもないくでもないとやったわけでなく、わりとサラっとできて。

藤原さんは「カップリング用」としてスタッフに依頼されて書いた曲が過去にもありました。「睡眠時間」「乗車権」「銀河鉄道」などがそれにあたります。(「乗車権」は完成後に曲調を考えてアルバム収録にされました。)

参考:藤原基央がカップリング用に書いた曲

カップリング曲 シングル曲
「乗車権」 オンリーロンリーグローリー
睡眠時間 「オンリーロンリーグローリー」
「supernova」 カルマ
銀河鉄道 プラネタリウム
ほんとのほんと firefly

「天体観測」の頃からあった曲名

藤原さんは歌詞を書いた後、最後に「supernova」という曲名をつけます。藤原さんは「天体観測」の頃から《supernova》という曲を作りたいと考えていました。

藤原 –『天体観測』くらいのときからずっと“supernova”という曲はやってみたいと思ってたんですよ。なので僕の中ではすごい歴史の古い言葉ですね。

藤原さんは「カルマ」「メーデー」「R.I.P.」など特定のキーワードに印象を持ち、それをもとに曲を書いたり、タイトルにつけたりすることがあります。

 

「カルマ」の制作現場でメンバーへ初披露

「カルマ」のレコーディング終盤の日、藤原さんの喉の調子がよくなくボーカル録りを中止する日がありました。代わりに「supernova」のデモ音源をメンバーに聴かせます。

 

藤原 – 「カルマ」の歌入れのときに、まったく声出なくて、「駄目だ、今日歌えねえや」ってなって。でも、せっかくスタジオ取ってるし、時間もったいないし、「あぁ、もう一曲出来てるよ」って。「それのデモを今録っちゃおうよ」ってことでやったんです。

出典:excite music インタビュー 2005.11(リンク切れ)

カップリング用として書かれた「supernova」ですが、レコーディングを経て曲の持つ大きな意味に気付いたメンバーは両A面シングルとして発表することにします。



「supernova」の歌詞の意味

supernova = 超新星爆発

supernovaとは「超新星爆発」を意味する英語の天文学用語です。超新星爆発とは、星の寿命が尽きる際に、大きなエネルギーを放出してしばらく発光し続けながら最期を遂げることを指します。

 

ただ地球から観測される超新星爆発の光は何万光年、何億光年と離れた位置のものであるため、実際に私たちが爆発の光を目にしている時、既に星は消滅しているのです。

 

カニ星雲の超新星爆発

 

藤原さんはこの「見えているものが既にない」「いなくなった後に気付くこと」に対して切なさや強い思い入れがあると語っています。

 

藤原 – この”supernova”の感覚は、もうちっちゃい頃からあるんです、ほんとに。なくなった時に絶対大事だって思うんだから、そういうものに気付いていきたいんだっていう切ない気持が、ほんとにちっちゃい頃からあります。

 

消えたあとに知る大切さを、今知る

「supernova」の歌詞では、消えたあと、変わったあとに気付く超新星爆発の概念を説明的に歌っています。

君を忘れた後で 思い出すんだ
君との歴史を持っていた事
君を失くした後で 見つけ出すんだ
君との出会いがあった事

引用元:「supernova」詞:藤原基央 

 

そして藤原さんが言いたいことは次の歌詞に集約されています。

 

君の存在だって いつでも思い出せるけど
本当に欲しいのは 思い出じゃない なんだ

引用元:「supernova」詞:藤原基央 

藤原さんは、「なくしたあとに後悔しないために」という予防策ではなく、「なくした後に感じる大切さを、なくす前に気付いてあげよう」と歌っています。

この”今を歌う”概念は、藤原さんが初めて日本語詞で書いた「ガラスのブルース」をはじめ、「天体観測」などBUMP OF CHICKENの楽曲の多くで歌われている大切な概念です。

僕はいつも唄を歌うよ
僕はイマを叫ぶよ

引用元:「ガラスのブルース」詞:藤原基央 

イマというほうき星
君と二人追いかけてる

引用元:「天体観測」詞:藤原基央 




「supernova」制作エピソード

「supernova」のレコーディングは2005年秋に行われました。藤原さん制作のデモテープの段階で大まかなイメージが共有されたため、通常の制作よりも早く本番レコーディングに臨みました。

全員でコーラスを入れたゴスペルをイメージ

藤原さんは「supernova」の作曲時に《ゴスペル》をイメージしました。BUMP OF CHICKENの楽曲には「Ever lasting lie」「angel fall」などゴスペルをテーマにした曲があります。

BUMP OF CHICKENのメンバー全員でコーラスを入れる楽曲としては初期の作品になります。

直井のレコーディングブースに同席する藤原

2005年夏、ウッドベースを入手する直井由文(引用元:旧公式サイト)

2005年夏、愛・地球博でのアコースティックライブ出演のため、ベーシスト・直井由文さんはウッドベースを入手していました。その流れで「supernova」にもウッドベースを使用しようと考えましたが、藤原さんから安易であると指摘を受け、エレキベースに変えました。

直井 – 「この曲にはウッドベースしか合わねえんじゃないか」って、勝手に思っちゃって。ウッドベースしか触ってなかったんですよ、リハでも。

引用元:exciteミュージック(リンク切れ)

 

しかしエレキベースに持ち替えた直井さんの動きが硬くなってしまい、藤原さんはレコーディングブースに一緒に入って打楽器・カホンを隣で叩いてベースを録音しました。

藤原 – パーカッションで使った打楽器があったんですけど、それをペシペシ叩きながら(同じ部屋に)居たんです。なんだかんだで、一番大事なのは“気持ち”ですからね、音楽は。

引用元:exciteミュージック(リンク切れ)

藤原さんはギターだけでなく、ベースやドラムも含めた制作の指揮を執っています。まさにBUMP OF CHICKENのサウンドの中心が藤原さんであることを象徴しています。

 

「supernova」MV

撮影日 2005年10月14日
撮影者 番場秀一
ロケ地 六本木ヒルズアリーナ

PV 六本木ヒルズでシークレット撮影

2005年10月14日、六本木ヒルズけやき坂広場でゲリラ撮影するBUMP OF CHICKEN (出典:excite.jp)

「supernova」のMVは六本木ヒルズ・けやき坂広場ステージで撮影されました。2005年7月にポーキングメールでエキストラ募集を行い、直前まで場所が教えられない厳密な大勢で撮影されました。

韓国俳優と間違えられる…

リハーサル中、けやき坂からステージに入るところで通りがけのおばさん集団に「あの人、俳優じゃない!?ほら韓国の…」と当時韓流ブームだった韓国人俳優と勘違いされました。

「supernova」ライブ演奏記録

supernova ライブ2019年10月26日 aurora ark ZEPP SAPPORO公演で「supernova」を演奏する4人。image embbeded from Twitter@boc_chama

演奏回数 149回
演奏頻度 ★★★★★
ライブ初披露 2006年1月13日 「run rabbit run」ZEPP SAPPORO公演
最終演奏 2019年11月04日「aurora ark」東京ドーム公演 
演奏ツアー 2006年「run rabbit run
2008年「ホームシック衛星
2008年「ホームシップ衛星
2011年「GOOD GLIDER TOUR
2012年「GOLD GLIDER TOUR
2013年「WILLPOLIS
2019年「aurora ark
2023年「be there
使用機材


藤原基央 – Gibson J-45 (2012年)
増川弘明 – Gibson Historic Collection ’59 
直井由文 – Sonic Jazz Bass Model (初号機) 他

「supernova」はBUMP OF CHICKENの楽曲全体でも多く演奏されている曲です。特にライブ終盤にセットリスト入りすることが多いです。

ライブで育てていく「supernova」

藤原さんはリリース当時から、「supernova」のライブでの重要性を予見していました。そしてどんな形で育っていくのかを楽しみにしているコメントを残しています。

藤原 – この先、ライヴなどでずっと付き合って行くわけなんですよ。少しずつ、曲と俺らとレスポンスして、喧嘩したり仲良くしたり、上手く行けばお互いを育て合えたり、お互いがお互いを殺し合っちゃったりしながら、関係という歴史が築かれて行くわけですよ。それにすごく興味があります。ずっと将来、「supernova」と俺らがどうなってるのか、一歩一歩の階段を踏んで行くことが楽しみです。

出典:exciteミュージック(リンク切れ)

意図的にセトリ終盤に入れている

BUMP OF CHICKENのメンバーは「supernova」のライブの重要性を考え、必ずセットリスト終盤で演奏しています。

藤原 – ライブでは割と終盤の肝になってくる曲ですね。

即興の歌詞変え

ライブが終わるかも知れない、家に帰って明日になれば「もっと楽しめばよかったな」とか「もっと声を出せばよかったな」とか思ってしまう人もいるかもしれません。そんな人に向けて、藤原さんは最近のライブでは次の歌詞を付けたします。

君の存在だって いつでも思い出せるけど
本当に欲しいのは 思い出じゃない今なんだ
今日なんだ

出典:「supernova」詞:藤原基央 

 

この瞬間が大切だということに今気付こう、というこの歌のメッセージはライブ終盤に演奏することで説得力が増し、さらに会場全体で「ラララ」を歌うことで濃密に共有されます。

「supernova」ライブ映像作品

映像作品「BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012」

映像作品「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 “BFLY” NISSAN STADIUM 2016/7/16,17」

映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark TOKYO DOME」


映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be there at SAITAMA SUPER ARENA」

 

 

もともと「カップリング用」として書いた「supernova」でしたが、こんなにも大きな意味を持つ曲を書いてしまうなんて、藤原さんの作詞の才能にただただ驚かされるばかりです。

 

もしライブで「supernova」の合唱に参加する際に、今回の記事のことを少しでも思い出せばまた違った聴き方が出てくるかもしれません。以上、BUMP OF CHICKEN「supernova」の歌詞の意味と制作エピソードの紹介でした。

もうひとつの合唱曲はこちら!