3rd Album 『jupiter』歌詞・楽曲解説

楽曲解説:天体観測 藤原基央が”全ての哲学を込めた”歌詞の意味

3rd Album 『jupiter』

「天体観測」はBUMP OF CHICKENが2001年にリリースした楽曲です。YouTubeのMV再生回数は1億回を突破し、名実ともにバンプオブチキンの代名詞となっている1曲です。

作詞作曲をした藤原基央さんは「天体観測」に21歳当時の全ての哲学を込めたと明かしています。「天体観測」に込めた思いとは何か、この記事では「天体観測」の歌詞の意味や制作エピソードについて紹介します。



「天体観測」基本情報

作詞・作曲 藤原基央
作曲時期 2000年3月〜8月(メロディ部分のみ)
作詞時期 2000年8月〜11月
録音時期 2000年11〜12月
リリース 2001年3月14日 3rd Single「天体観測」

 

「天体観測」作曲エピソード

藤原基央の中にあった「天体観測」の原型

シングル「ダイヤモンド」(2000年9月)

BUMP OF CHICKENのメジャーデビューシングルは「ダイヤモンド」ですが、「天体観測」の原型は「ダイヤモンド」の作曲よりも生まれています。

 

藤原 – ”天体観測”はね、実は”ダイヤモンド”よりも前に、オケと曲はできてたんだよね。ほとんどね。

 

現在では詞と曲を一緒に作ることが多い藤原さんですが、当時は曲(メロディとコード進行)から作り始めることもありました。

 

藤原さんは「ダイヤモンド」「天体観測」「Title of mine」の3曲をラララ〜の歌い方で仮歌のデモを取りました。ラララ〜で歌ったことがなかったため、ディレクターに促される形で仕方なく行った結果、しばし作詞にトラウマが残ったと言います。

 

藤原 – 「THE LIVING DEAD」が出来上がって、”ラフメイカー”ができて、で”天体観測”ってタイトルじゃなかったけど出来上がって。でも詞は書けなくて。で、”ダイヤモンド”ができたという。

 

仮歌の曲名は「どっこいしょ」といい、「ダイヤモンド」のPV撮影の休憩中に同曲を歌う様子がビデオクリップ集「jupiter」に収録されています。

「天体観測」を作詞した経緯

2000年、BUMP OF CHICKENはレコード会社との契約や交渉がありました。世の中の汚い部分を見た藤原さんは、「全部イイ曲で片付けてやる」という気持ちで「ダイヤモンド」を作曲しました。

 

藤原 – 久しぶりに俺のことを歌いてえなっって思って。俺がどうだ、僕がどうだっていう歌を書きたくって。 

 

外的環境に応じる形で作曲した「ダイヤモンド」に対し、「天体観測」は藤原さん自身の内的な歌だと言えます。

 

藤原 – ツアーを回ったこととか、メジャーという土俵に立ったこととか、その頃の状況と密着しながら描いたので、その頃の心境も反映していると思う。

出典:DI:GA

 

全国ツアーやメジャー進出まで、21歳の藤原さん等身大のメッセージが「天体観測」の歌詞に影響を与えていると本人は説明しています。

 

箱根への作詞旅行から帰ってきて生まれた歌詞

藤原 – どっかに泊まって作詞旅行みたいなことをしたら書けるかも?と思って箱根に行くんですけど書けなくって、帰ってきたら書けたっていう(笑)

出典:「Bridge」(2013年)

 

「自分のことを歌いたい」と思った藤原さんは箱根へ赴き作詞を行いますが、完成したのは「Title of mine」という別の曲でした。「Title of mine」は主観的に内的葛藤を吐露する形で作詞され、その内容の重さから歌うことがままならないというエピソードがある曲です。

 

東京に帰り、(「Title of mine」とは逆に)“客観的に内的側面を描く”という意識を持って作詞されたのが「天体観測」でした。

「天体観測」歌詞の意味と解釈

MV「天体観測」スクリーンショット

「天体観測」の歌詞は色々な歌詞考察サイトで独自の解釈が書かれていますが、藤原さんは「詞の解釈は聴き手に委ねる、聴き手の自由である」と述べています。

 

当サイトでは藤原さんが「天体観測」作詞時に込めた思いなどを紹介するにとどめます。藤原さんは「天体観測」の歌詞の中に自分の哲学を込めたと明かしています。

 

藤原 – もう全部全部全部。日常も全部含まれてるし、それから過去も未来も現在も、あと「人とは」とかそういうものとか、いろんな哲学とか、俺なりの。お前は俺は、全部含まれてて。

 

“「イマ」というほうき星”

天体観測  3:00〜
「イマ」という ほうき星
君と二人 追いかけている

引用元:天体観測 / 藤原基央 (2001年)

 

当時、メディアでの自身の発言が前言撤回できないような雰囲気に困惑しつつ、昨日の自分達に縛られないようにしていくことに「天体観測」を引き合いに出しています。

 

藤原 – “天体観測”でも歌ってるけど、まあ、こう、今現在という、その瞬間を大切にしてるバンドなんで、そん時思ってることとかをいうし。で、前はこう言ったから今日はこう言わなきゃな、みたいなこと感げないし。

出典:「Bridge」(2001年)

 

さらに発売直後の全国ツアーでも「天体観測」演奏前に同じようなことを発言しています。

 

藤原 – 世の中、人生、どの瞬間をどのように生きるかだと僕は思います。「天体観測」!

出典:2001年4月1日 ライブMCより

 

「天体観測」には「予報外れの雨」「宛名のない手紙」といった幾つかの詩的なモチーフが登場しますが、「イマ」という表現はひとつの重要なワードになります。

 

「僕らは星を追いかけている」

藤原さんは別のインタビューで、常に「イマ」できることをしている、その事実を客観的に歌ったのが「天体観測」だと述べています。

 

藤原 – どんな時であれ、僕らは星を追いかけているんだと。そう。それでいいんだと。そういう歌ですね。別にそれがいいとも言わないし、悪いとも言わないし。そういうもんなんだよと。それが言いたかったんです。

引用元:TALIKIN’ ROCK #20

 

「天体観測」レコーディングエピソード

多数のギターによる重厚感のあるサウンド

「天体観測」BUMP OF CHICKEN レコーディング「天体観測」のマスターテープ。マスタリングの日付は12月19日の仕上がりとなっており制作作業は2000年11月〜12月初旬と推定される。画像埋込:https://twitter.com/yasmanmaeda

「天体観測」のサウンドトラックは、歪みのエレキギターをミックスさせた厚みのある音やギターのオブリガードが曲の終始に入っているのが特徴です。

 

一方で、次のシングル「ハルジオン」のレコーディングでは「天体観測」の音の数の多さを “音の洪水”と評して自省しており、以降、BUMP OF CHICKENの楽曲は洗練された音数で厚みや表現力を生むようになります。

 

関連記事:「ハルジオン」天体観測に対する反省から生まれたサウンド

音作りにこだわった増川弘明のギター

増川 – ギターの音もすごい時間かけて作ったりしました。難しいリズムだったんで、果たして弾けるのかって言う不安もあったんで、できたときは嬉しかったです。

出典:DI:GA

 

増川さんの弾いているパワーコード中心のギターは重厚感のある音色で「天体観測」のサウンドを支えています。直井さんの動き回るベースに代わって、楽曲の土台を作り出すギターです。

 

テクノサウンドを意識した直井由文のベース

MV「天体観測」スクリーンショット

「天体観測」のベースは直井由文(CHAMA)さんによって演奏されています。BUMP OF CHICKENの楽曲は「FLAME VEIN」から「jupiter」にかけてメロディアスで派手に動き回るベースラインが特徴で、「天体観測」では”テクノミュージック”を意識してプレイしました。

 

直井 – 俺が『天体観測』で表現したかったのはテクノだし、『Stage of the ground』で表現したかったのはジャズっていうね(笑)

 

別のインタビューでも同じように答えています。

 

直井 – フジ君が作ってきたのを最初聴いたときに、これはテクノにしたいなと思ったんですよ。

出典:DI:GA

 

「天体観測」の動き回るベースは2001年の全国ツアーのみ原曲CDどおりに演奏されました。翌年から直井さんは同曲でコーラスを務めるようになり、現在までライブでのテクノベースを封印しています。

「天体観測」PV

監督 番場秀一
撮影日 2001年2月4日
ロケ地 東京都狛江市多摩川住宅周辺

「天体観測」のMVのロケ地は東京都狛江市周辺で撮影され、番場秀一監督によってディレクションされました。出演している4人の子役さんは、2005年「supernova」のMVにも出演しています。

スノースマイル」のPVは「天体観測」のPVの数年後の世界というコンセプトで制作され、繋がりのあるストーリー構成になっています。

ライブ演奏記録

演奏回数 343回  (発表後408公演のうち)
演奏頻度 ★★★★★
初披露 2001年3月10日「ネオストリームライブ vol.2」渋谷AX公演
最終演奏 2024年4月25日「ホームシック衛星2024」有明アリーナ
演奏ツアー 下記を除く全てのツアー
未演奏ツアー 2002年「LOVE & PORKIN
アンコールで数回だけ披露したツアー 2002年「POKISTA 21
2003年「NINJA PORKIN

「天体観測」はほぼ全てのツアーでライブ演奏されています。統計の取れる2000年以降のライブでは「ガラスのブルース」よりも演奏されている楽曲です。

「天体観測」を封印した時期

「天体観測」が異例のロングヒットを呼び新しいファン層が増え、若かりし尖っていたBUMP OF CHICKENは、敢えて「天体観測」を演奏しない時期がありました。

 

藤原 – 「特別この曲は」ということではなく。

直井 – その後ツアーがあったんですけど、あえてやらないみたいな。尖っちゃって(笑)

出典:2013年7月5日 日本テレビ系「ZIP!」

 

リリースした翌年の2002年「POKISTA 21」から2003年「NINJA PORKING」にかけてはアンコールでたまに演奏するレア曲として披露しています。また2016年の20周年記念特別ライブ「20」のようにライブ1曲目に演奏することもありました。

 

「天体観測」ライブ映像

 

映像作品「BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012」

アルバム「RAY」初回限定版特典DVD(2013年8月9日「ベストアルバム発売記念ライブ」収録)

映像作品「BUMP OF CHICKEN WILLPOLIS 2014」

映像作品「BUMP OF CHICKEN 結成20周年記念Special Live 「20」」 

映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER STUDIO COAST」 (会場限定販売)

映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER SAITAMA SUPER ARENA」

映像作品「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 “BFLY” NISSAN STADIUM 2016/7/16,17」

アルバム「aurora arc」*特典Blu-ray/DVD(2018年12月28日「COUNTDOWN JAPAN 18/19」収録)

映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark TOKYO DOME」


 映像作品「BUMP OF CHICKEN LIVE 2022 Silver Jubilee at Makuhari Messe」
 映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2022 Silver Jubilee at Zepp Haneda(TOKYO)」
映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be there at SAITAMA SUPER ARENA」

 

以上、BUMP OF CHICKENの「天体観測」の歌詞の意味と制作エピソードについて紹介しました。「天体観測」を聴くときに、こんなエピソードがあったのだと思い出してもらえれば、きっと新しい曲の見え方が出てくると思います。