BUMP OF CHICKENの「ダイヤモンド」は2000年にリリースした楽曲で、バンプにとってメジャーデビューシングルとなりました。
「ダイヤモンド」はメジャーレーベルから契約の話を受けて、世の中の汚い部分を感じつつも「全部良い曲で片付けてやる」という思いの中で制作されました。
メンバー公認の”メッセージソング”として、強いメッセージ性と4人の意思が感じられるバンドの重要な曲となっています。この記事では「ダイヤモンド」の歌詞の意味や解釈、制作エピソードについて解説します。
「ダイヤモンド」基本情報
作詞・作曲 | 藤原基央 |
編曲 | BUMP OF CHICKEN |
作曲日時 | 2000年前半 |
リリース | 2000年9月20日 『jupiter』 |
ライブ初披露 | 2000年7月23日「サマーポキール2」大阪府心斎橋 CLUB QUATRO |
「ダイヤモンド」はBUMP OF CHICKENのメジャー第1弾シングルとしてリリースした楽曲です。ライブでの演奏回数も非常に多く、BUMP OF CHICKENの歴史の中でもとても重要な楽曲です。
「ダイヤモンド」のタイトルの由来
藤原 – “ダイヤモンド” っていう言葉は、どっからともなく出てきた感じで。眠い時に”眠い”って言う気持ちだったんじゃないですか。その詞がとても”ダイヤモンド”然としてたから”ダイヤモンド”って言葉が出てきたんだと思うし。
出典:Space Shower TV インタビュー
「ダイヤモンド」のタイトルは歌詞を書いた後につけられたことがわかります。
「ダイヤモンド」の別タイトル
ちなみにもうひとつ迷ったタイトルがあったそうです。
藤原 – もう一個タイトル候補あったんですよ。そのタイトルで俺は迷ったの。でも、これ多分誰にも言ってないな俺。次書こうかなと思ってるから(笑)
既存曲になったのかなっていないのか不明です。例えば「宝石になった日」や「ディアマン」などは近い意味だと思います。
カップリングの「ラフメイカー」と「ダイヤモンド」のどちらをシングルの表題曲にするか、スタッフの間で意見が分かれていました。最終的に「メッセージソング」いう意味合いが強いダイヤモンドをシングルA面に決まりました。
「ダイヤモンド」の作曲エピソード
BUMP OF CHICKENとトイズファクトリーの関係
BUMP OF CHICKENが契約しているレコード会社は株式会社トイズファクトリーです。所属事務所はインディーズ時代からマネジメントを務める株式会社ロングフェローになります。
2000年初頭のインディーズアルバム「THE LIVING DEAD」の制作前後からBUMP OF CHICKENの周りには多くのレコード会社による接触が入ります。しかしレコード会社との契約交渉(報酬契約、プロモーション計画、A&R等)は当時20歳前後で音楽の事しか頭にないメンバーを悩ませ、精神状態は極限に追い込まれていきました。
「バンプはアルバム制作中です。そっとしてあげてください」と守っていたのが、マネジメント事務所である株式会社LONGFELLOW(ロングフェロー)です。某出版会社の社員であるM女史は1997〜1998年頃からライブハウスに足を運びメンバーを守る形でこの事務所を立ち上げました。
そんな中、暗黙のルールを破って開けたのがTOY’S FACTORY (トイズファクトリー)です。トイズファクトリーは既にこの頃Mr. Childrenを擁する一巨大レコード会社です。LONGFELLOW側は「暫くそっとしておく」というルールを破ったトイズ側に対して猛抗議をしますが、メンバー側はトイズ側の熱意に対して悪くない感情を持っていました。
そんな中、書かれた曲がダイヤモンドです。
直井 -「THE LIVING DEAD」で終わった感あったから。で、その時に契約の話もいろいろあったし。で、その契約の話全て終わってくれたおかげで、やっとシングルがだせるねって。リハでもそんな困った曲じゃないし。藤原も笑顔だったし。
『終わってくれたおかげで』という言い方が気になります。契約の中身には本人たちは関心がなかった事が伺えます。
そして『やっとシングルが』という言い方です。つまり本来もっと早くリリースできる状態にあった(したかった)が、契約云々の事情によりリリースが9月になったということです。それまで好きなようにリリースし、好きなようにライブをやってきたメンバーにとって、初めて”大人の事情”に飲み込まれたときかもしれません。
そんな時だからこそ、藤原さんは(偶然にも)「ダイヤモンド」と名付けた意味があるといいます。
藤原 – 詩の中にも出てないしね、ダイヤモンドってね。最後にタイトルついたんですよ、”ダイヤモンド”は。あの時期はね、汚ねえもんいっぱい見たわけですよ。契約とかも。それで、その不満が如何の斯うのではなくって、より純粋に、より音楽好きだって気持ちと、リリースするからには伝えてぇんだなっていう。周りの汚ねぇもんと対比してどんどんどんどん、全部いい曲でカタつけちまえと、そういう気持ちで出てきたものが、”ダイヤモンド”
言われてみれば、歌詞の中にはダイヤモンドという単語は出てきません。また、ダイヤモンドを連想させるような言葉もありません。普通、この詩の内容だけだったら「ダイヤモンド」と名付けられないのではないと思います。やはり、この曲を書いた時の周囲の状況が大きく影響していたんですね。
コンビニに忘れた「ダイヤモンド」の歌詞ノート
「ダイヤモンド」を作曲した藤原さんは、早速レコード会社に歌詞をFAXで送るよう言われます。
コンビニのコピー機に付属していたFAXサービスを利用した藤原さんは、歌詞ノートをコンビニに忘れたまま帰宅してしまいます。
帰宅後に気づいて慌てて取りに戻った藤原さんはポエムが書いてあるものを誰かに見られるのが恥ずかしかったそうです。
インディーズ最後のワンマンライブでのMC
2000年7月23日サマーポキール2 大阪心斎橋CLUB QUATTRO公演にて初披露されます。メジャーデビューの情報解禁後初めてのライブだったこともあり、この時の観客の胸にはBUMP OF CHICKENの4人が、音楽が、変わってしまうのではないかという不安がありました。
藤原 –ひとつだけ約束しろ!俺らは変わらない!疑うな!
2000.07.23 サマーポキール2 at 心斎橋CLUB QUATTRO
そんな不安を消しとばすかのように強くMCした後、ダイヤモンドを披露しました。この時の出来事についてはインタビューでも語っています。
藤原 – インディーズの頃からたくさんのファンについてきてもらって、メジャーに出ていく今だからこそ歌っておく必要があるじゃないかな、と思ったんですよ。
出典:「トーキンロック」#17
2018年現在、ハンドマイクの藤原さんや煌びやかな舞台演出を見ると変わったように思えるかもしれません。でも「曲を伝える」という根源的な部分では変わっていないのかもしれませんね。
メジャーとインディーズの違い
そもそもメジャーとインディーズの違いとはなんでしょうか。
簡潔に説明するとメジャーとインディーズの違いは、CD作品の発売元となるレコード会社が「日本レコード協会」に所属しているか、していないかです。メジャーレーベルとインディーズレーベルでは流通、権利、使用料などの仕組みが異なり、一般的にメジャーは販売力のあるアーティストが所属しています。
メジャーレーベルは自社がレコーディングスタジオを所有していたり、制作費やプロモーション費を負担してくれたりするなどのメリットがあります。
ただし誰でもインターネットを通して音楽配信できる環境が整備され、CDの売れない現代では、<メジャー = 成功している> という概念は崩れつつあります。
「ダイヤモンド」ライブ演奏記録
演奏回数 | 247回 |
演奏頻度 | ★★★★★ |
初披露 | 2000年7月23日「サマーポキール2」大阪府心斎橋クラブクアトロ |
演奏ツアー | 2000年「サマーポキール2」 2001年「スターポーキングツアーズ2001」 2001年「Surf Porkin’」 2002年「POKISTA21」 2002年「LOVE & PORKIN」 2003年「NINJA PORKING」 2004年「MY PEGASUS」 2006年「run rabbit run」 2008年「ホームシック衛星」 2008年「ホームシップ衛星」 2011-12年「GOOD GLIDER TOUR」 2012年「GOLD GLIDER TOUR」 2013年「WILLPOLIS」 2014年「WILLPOLIS 2014」 2017-18年「PATHFINDER」 2019年「aurora ark」 |
ライブバージョン
ダイヤモンドは発表以来、ほとんどのツアーやライブで演奏されました。2003年くらいからオリジナルのイントロが付け足されるようになりました。
以上、バンプのメジャーデビューシングル、ダイヤモンドについて考察して見ました。ライブで聴く時にこのエピソードを思い出しながら聴くと、新しい一面が見えるかもしれませんね。