作詞作曲:藤原基央
作曲時期:2011年1月20日前後
ゼロは2011年10月に発売したBUMP OF CHICKEN21枚目のシングル曲です。この曲はSQUARE ENIX製作のPSP用ソフト「FINAL FANTASY 零式」の主題歌として起用されています。楽曲のタイトル「ゼロ」もゲームソフトの「零式」に因んで命名されました。
「ドラえもん」映画主題歌に続くオファー
「ゼロ」が発表されるまでの流れ
2010年 | 12/15 | 6th Album「COSMONAUT」リリース |
12/28 | 藤原、「サザンクロス」を書く | |
2011年 | 1/20頃 | 藤原、「ゼロ」を書く |
2月初旬 | 藤原、「ドラえもん」0号試写会を観に行った帰りにメンバーにゼロを聴かせる | |
2 – 9月 | レコーディング | |
10/19 | 21st single 「ゼロ」リリース |
2010年春先、アルバム「COSMONAUT」制作に向けて作曲やレコーディングをしていたメンバーに映画「ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団」と「FINAL FANTASY零式」の主題歌のオファーが立て続けに届きます。その状況にメンバーは夢なんじゃないかと驚いたそうです。
藤原 – 「COSMONAUT」を作りながら、ドラえもんの曲はいつぐらいにできる?みたいに言われて。で、「まあまあまあ」って言いながらそのうち”友達の唄”が書けて。で、FFの歌はいつできる?ってずーっと言われ続けていて(笑)。
ROCKIN’ ON JAPAN Vol.389
そして「COSMONAUT」をリリースした翌月(2011年1月20〜21日)、ボーカル・ギターの藤原基央さんはスタジオでゼロを書き下ろしました。
ちなみにゼロの前に「サザンクロス」という曲を書いていますが、それを「零式主題歌」として出さないんですね。やはり詞の内容とメロディに対して「テーマに合った曲を書き下ろす」というこだわりがあるようです。
FINAL FANTASY × 藤原基央 & BUMP OF CHICKEN
メンバーの4人のうち3人(藤原、直井、増川)がゲーム好きというバンプ。屈指のRPGゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズも彼らにとって大きな思い入れがありました。
藤原さんは「FINAL FANTASY」〜「FINAL FANTASY Ⅹ」まで10作品を全クリしており、中でも「FINAL FANTASY Ⅲ」は6回もクリアしたそうです(笑)さらにゲームの内容だけでなくゲーム音楽(BGM)への思い入れが強く残っています。
藤原 – まず曲が大きいと思いますね。植松(伸夫)さんの曲。
ROCKIN’ ON JAPAN Vol.389
以前、ZIPのインタビューでも「FFやドラクエのゲーム音楽に影響を受けている」と答えていた藤原さん。実際にTALES OF THE ABYSSのゲームサントラまで担当するほど好きな様子が見えます。
FFVIIIをやりながら「俺たち主題歌やれないかな?」
1998年、東京でベーシストの直井由文(チャマ)さんと同居していた時は「FINAL FANTASY Ⅷ」を一緒にやっていました。ゲーム内で流れる主題歌を聴きながら 、いつか自分たちも主題歌をやれたらなんて妄想をしていたそうです。
藤原 – (インディーズの)CDとかまだ作ったことないときかな、たぶん。もしかしたらデモテープはあったかな、っていう感じの時で。バカだからね、「俺たちが主題歌とかやれないかな?」みたいな。
ROCKIN’ ON JAPAN Vol.389
メンバーが10代の頃に描いた夢が、13年の時を経て叶うなんて本当に素晴らしいことだと思います。
FINAL FANTAYとBUMP OF CHICKEN
1998年 | 直井と藤原が同居している時、「俺たちで主題歌やれないかな」と妄想をする。 | |
2005年 | 9/8 | メンバー、ゲーム映画「FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN」試写会 @VIRGIN TOHO シネマズ 六本木ヒルズ SCREEN7に参加する。この時、ゲームプロデューサー野村哲也氏と知り合い、後日食事に連れて行ってもらう。 |
2011年 | 10/19 | 21st single 「ゼロ」リリース |
イラスト資料を観てインスピレーションを膨らませる
藤原さんはSQUARE ENIXのチームと打ち合わせをします。そこではストーリーやキャラクター設定、イラスト画が載っている分厚い資料を渡されました。スクエニ側は曲のイメージについては特に触れてこなかったようです。
藤原 – 先方から「こういう曲にしてほしい」とか「テンポはこのくらいで」とか具体的な要望は特になかったんですよね。ああ、任せていただけるんだと思って。
http://natalie.mu/music/pp/bumpofchicken06/page/2
スクエニ側の藤原さんに対する信頼はすごいですね。もし出来上がった曲が「かさぶたぶたぶ」みたいな楽曲だったらどうしたんだろう…とくだらない心配をしてしまいます。笑
イラスト以外にもストーリーのあらすじやキャラクターの設定などが書かれた分厚い資料だったそうですが、歌詞の内容が作品に沿いすぎないように、あえてイラストの印象からくるインスピレーションだけを大事にしたそうです。
藤原 – イラストのイメージと自分がミュージシャンとして、BUMP OF CHICKENとして表現したいことを曲にしていくといういつもと同じ流れでしたね。
http://natalie.mu/music/pp/bumpofchicken06/page/2
雑誌のインタビューでも同様のことを述べています。
藤原 – だからイラストが全てです。最初の設定イラストみたいなのを観て、あとは自分の中にある死生観とかそういうものが本当に絡み合って、ポンと出た感じなんじゃないかと思います
ROCKIN’ ON JAPAN Vol.389
*分量が多いため歌詞の解釈については、別記事にて掲載予定です。
ちなみに公式設定画集なるものの販売されています。藤原さんもこの中にある画を見てインスピレーションを膨らませたのでしょうか。
曲名もゲームになぞらえて命名
曲名はプロデューサーMORさんの「ゲームタイトルの”零式”にちなんでゼロにしよう」と提案で「ゼロ」に決まります。
意外に藤原さん以外の人、しかもメンバー外の人が付けたタイトルで決まっちゃうんですね(笑)。シザースソングという曲名をロストマンに変えたりしていたくらい、曲名に思い入れがあるのかなと思っていましたが、今ではそうでもないのかもしれません。
メロディの付け方
イントロ
ゼロのイントロはマイナーのオンコードによるアルペジオによる重い響き、途中から入ってくるパイプオルガンと打楽器により民族的かつ荘厳な印象をもたせます。
藤原さんは最初に頭の中でこのイメージを作り、それをギターでコード付けしていきました。想像した通りに当てはまったそうです。
藤原 – 半音下げのAマイナーのキーなんですけど、そこにDが必ずでてくるみたいな確信もあって。で、やっぱりDは入って、それもだから、入れるぞって入れる感じじゃなくて、『ほらやっぱり入ってた』みたいな感じ。
ROCKIN’ ON JAPAN Vol.389
歌のメロディ
イントロのフレーズとは逆に曲中の歌メロはコード進行をもとに膨らませていきました。
藤原 メロディはコードが呼び寄せたものですね。メロディが先にあってそこにコードがついていくパターンもあるし、メロディとコードが同時というパターンもあるんですけど。今回はコード先行型だったと思います。最初から自分の中でマイナー調からはじまり、サビでメジャー展開になると感じていて。(中略)Aマイナーの、流れの中でDコードが出てきて。で、サビはCで歌うことが最初から決まっていたような……。おかしなことを言ってるようですけど、そういうものなんですよね(笑)。
藤原さんがどのようにメロディを考えるのか、今まであまりインタビューで言及している箇所がありませんでしたので、とても貴重ですね。
インディーズの頃は先にコード進行だけを決めて、後からメロディと詞をつけることもあったそうですが、メジャーになってからもそのような作曲方法をしていたとは意外です。
こうして書いた「ゼロ」は弾き語りのデモテープに録音され、藤原さんはメンバーに聴かせます。レコーディングでも試行錯誤やたくさんの試みが合ったようです。詳細は「楽曲解説 ゼロ vol.2 – レコーディング編」をしばしお待ちください。
以上、今回は「ゼロ〜作曲編」を紹介しました。