5th Album『orbital period』歌詞・楽曲解説

楽曲解説「ひとりごと」優しさの純度を問う藤原基央

5th Album『orbital period』
アルバム「orbital period」

「ひとりごと」はBUMP OF CHICKENの『orbital period』に収録されている楽曲です。今回は「ひとりごと」の歌詞の意味、解釈、制作エピソードについて紹介します。



「ひとりごと」基本情報

アルバム「orbital period」

作詞・作曲藤原基央
編曲BUMP OF CHICKEN & MOR
作曲時期2007年
録音時期2007年夏以降
収録作品2007年12月19日 アルバム「orbital period」
ライブ初披露2008年1月11日 「ホームシック衛星」ZEPP TOKYO公演

「ひとりごと」の作曲背景

2007年、ボーカルの藤原基央さんは「ひとりごと」を作曲します。ギターを弾き語りながらメロディと詞を同時作る方法で書かれました。これは「ガラスのブルース」からかなり初期から行わているスタンダードな作曲法です。

 

聴き手への意識が強くなる中での作詞

「orbital period」の制作時、インディーズ期や「jupiter」の頃までと比較して、藤原さんは聴き手の存在を強く意識するようになったといいます。

藤原 – 俺、毎回、聴いてもらう時は『生きるか/死ぬか』みたいな気分ですよね。聴き手がいてこその音楽だという思いは以前より強くなっていて、それ以降にこの”ひとりごと”を作ったので

MUSICA vol.9 2008年1月号

「ひとりごと」は曲を届けることの意識が強くなった後に書かれ、歌詞の内容にもそれが反映されています。

 

表現力のリミッターが外れていく

「ひとりごと」の歌詞は抽象性、独白の世界が際立ち、言語化できない藤原さんの心の図像をそのまま書き起こした歌詞が特徴です。

 

ひとりごと “0:47″〜
ねぇ君のために生きたって 僕のためになっちゃうんだ
本当さ 僕が笑いたくて 君を笑わせてるだけなんだ
ごめんね

 

しかし藤原さんは”よそ行き”の文章ではなく、自分の心の中の難解な思いを難解なまま書き出すことにします。

 

藤原 – (表現力の)リミッターが外れると、難解なものは難解なまま届ける状態になるから。それをわかりやすく届けようとすると、真実から遠ざかることになるし。

MUSICA vol.9 2008年1月号

 

伝えたいことが伝わるかわからない、伝えるための表現がわからないという葛藤を経て、”心のままに詞にする”という作詞法をとった藤原さん。これはorbital period以降の作詞に影響を与えるきっかけでした。

 

「スノースマイル」に登場する男女藤原は<君のいない道を>という主題を伝えやすくするために男女を歌詞に登場させた。それをラブソングと解釈するインタビュアーの発言があり、インタビュー中に藤原本人が否定する出来事があった。

関連記事「スノースマイル」- ラブソングではなく藤原基央が伝えたかった意味

ひとりよがりな価値観を届けるということ

MUSICA vol.9 2008年1月号 

藤原 – この曲の前にできた”時空かくれんぼ”のあたりから、独りよがりの極みの中で書いてんじゃねえかな?って思ってて(中略) 当たり前のように俺とリスナーは同じ感覚を共有してるって思ってたし。

MUSICA vol.9 2008年1月号

 

ひとりよがりな価値観/言葉を詞にすることに対して、藤原さんは不安を感じました。特にメンバーに最初にプリプロ音源を聴かせる時は恐怖を覚えたといいます。

 

藤原 – とにかく怖かった。白装束を着ている気分で、まずはメンバーのいるプリプロのスタジオに持って行った思い出があります。

MUSICA vol.9 2008年1月号

 

心のままの詞「ひとりごと」の前に書いた「時空かくれんぼ」から”心のままを詞にするモード”が始まる。

関連記事:時空かくれんぼ vol.1 – 藤原自身も説明できない歌詞の世界



元のタイトルは『(心の)外の中』

藤原 – 最初に付けたタイトルが”外の中”だったんです(笑)。そん次に、じゃあ”心の”って付けてみたら余計わけわかんなくなって(笑)。

ROCKIN’ ON JAPAN 2008.02

 

ひとりごと “2:48″〜
ねぇ 優しさって知ってるんだ 渡せないのに貰えたんだ
きっとさ 人と人との間の心の外の中だけに在るんだ
ひとりごと

 

優しさとは何かを問い続けてきた詞の終盤に、その居場所を示す部分です。元のタイトルにもなっている通り、この部分は藤原さんにとって大きな要素であることがわかります。

 

「人と人との間の心の外の中」、いったいどこなんでしょうか。「無意識のうちに」とかが一番当てはまるのかなと思います。主観です。

 

優しさの純度について

藤原さんは「純度100%の優しさ」を受け取ったこと記憶があり、それが何なのかをずっと考えていました。

 

藤原 – でも僕はそのやさしさをどうやら知っていて。ほんと純度100%のものを。(中略) 1回から2回以上。それは一体なんのかなっていう、なんなのかねーってずっと考えてた。

ROCKIN’ ON JAPAN 2008.02

 

藤原さんは「優しいね」と言われることに対して、優しいという現象自体がそんな簡単なことでいいのかと思うところがありました。それらの優しさとは違う、純度の高い優しさを考える中で、小学校の頃の思い出や色々な人々との思い出を駆け巡りながら歌詞を書いたのです。



夏フェス以降のレコーディング

2007年9月以降、「時空かくれんぼ」「ひとりごと」「arrows」の3曲をレコーディングします。夏フェス出演が終わった後の期間でした。

プロデューサーのアイデアを却下して残したスネアのリズム

embedded from Twitter@boc_chama

この曲は藤原さんがシーケンサーでおおよそのアレンジを詰めて持って来ました。スネアをハイハットのように連打するパターンも藤原さんのデモ音源の段階から入っていました。

 

升 – 何回も何回もやって、最後に藤原の歌が入った時にその必然性というか鳴るべくして鳴ってる音だなと強く思いました。

MUSICA vol.9 2008年1月号

 

升さん、かっこいいですね。これに対してプロデューサーが何度か対案を提示したそうです。しかし直井さん達メンバーはこれを断ります。

 

直井 – 何回かウチのプロデューサーが違うパターンを提示したけど、これだけは絶対崩さないようにしようと。

WHAT’s IN? 2008年1月号 No.247

 

プロデューサーの意見を却下してまで残したリズム、改めてそこに重点を置いて聴いてみたくなります。

 

『COSMONAUT』以降、プロデューサーの意見がバンドに影響を与える割合が大きくなります。タイトルを付けたり、リズムを作ったり、シンセサイザーを弾いたり。メンバーがプロデューサーと意見が割れる少ないエピソードです。

関連記事:メンバー vol.6 – プロデューサーMORの正体

ライブ演奏記録

embedded from tfm.co.jp

使用機材

2008年
藤原基央Gibson Les Paul Special (2カポ) 
増川弘明Gibson Les Paul Standard (2カポ)
2016年藤原基央Gibson J-45 (2カポ)
増川弘明Gibson Les Paul Standard (2カポ)

ホームシック衛星(2008年) 
ホームシップ衛星(2008年) 
・BUMP OF CHICKEN 20周年記念ライブ 20 (2016年)

『orbital period』のレコ発ツアーとなったとなった「ホームシック衛星」「ホームシップ衛星」ではAパターンのセトリ曲として演奏されました(Bパターンでの対応曲は『時空かくれんぼ』)

 

藤原さんがエレキギターの時はクランチサウンドがベーシックな音域を響かせることで全体的にバンド感のあるサウンドになっています。

2016年、8年ぶりに演奏!藤原はエレキからアコギへ!

2016年の20周年記念ライブ『20』では8年ぶりに演奏されました。『20』ではアコースティックギターを使用しています。藤原さんのギターがアコースティックギターに代わり、音の粒が綺麗になった洗練されたサウンドが聴けました。

 

この模様はBlu-ray/DVD「BUMP OF CHICKEN Special Live 20」に収録されています。

 

以上、「ひとりごと」について解説しました。またライブで聴ける日が来るといいですね!ご覧いただきありがとうございました。




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