カップリング曲

楽曲解説「銀河鉄道」荷物の置き場所を守ることの意味

カップリング曲

BUMP OF CHICKENの「銀河鉄道」という曲を知っていますか?

「銀河鉄道」は2008年に発売したアルバム「present from you」に収録されている楽曲です。その神秘的な曲名とストーリー性のある歌詞が人気な隠れた名曲となっています。

「銀河鉄道」がどのようにして生まれたのか、この記事では制作背景と歌詞の意味について解説していきます。




「銀河鉄道」基本情報

タイトル 銀河鉄道
収録時間 6分37秒
作詞・作曲 藤原基央
編曲 BUMP OF CHICKEN & MOR
作曲時期 2005年3月以降
録音時期 2005年4月〜5月
収録シングル 2005年7月21日 「プラネタリウム」
収録アルバム 2008年6月18日 「present from you」

「銀河鉄道」の制作背景

2005年春、BUMP OF CHICKENのニューシングル「プラネタリウム」をリリースすることが決定します。

カップリング曲が必要になりましたが、当時のストック曲は秋にリリース予定の「カルマ」だけだったため、カップリングする新曲を書く必要がありました。

藤原さんは「そんなすぐには出来ないだろう」と思いつつ作曲をしたところ、わずか一晩で「銀河鉄道」を書き上げます。

 

藤原 – わりと長いスパンで考えてたら、あっさり書けちゃったんで。一晩で。 (中略)3時間くらいで、ホントに。

引用元:「B-PASS」2005年9月号

 

2005年3月の「PONTSUKA!!」では1曲(「プラネタリウム」)のデモ制作を行っていると話しており、「銀河鉄道」の作曲時期は3月以降と推測されます。

『ユグドラシル』から『orbital period』までの藤原さんの作品は、推敲を重ねて何日〜何ヶ月も費やすなど比較的完成まで時間がかかる楽曲が多いです。

その中で物語のある歌詞を半日で書き上げたという点では、『orbitale period』期の作品の中で、「銀河鉄道」は作曲スピードの早さという点において特異的な楽曲であると言えます。

車輪の唄」「ギルド」も比較的短い作曲期間でした。藤原さんにとって物語調の歌詞の方が作詞しやすいのかも知れません。

「銀河鉄道」の曲名の意味

曲名の「銀河鉄道」とは一体どんな意味なのでしょうか。

「銀河鉄道」と聞くと、宮沢賢治の小説「銀河鉄道の夜」や松本零士の漫画「銀河鉄道999」のようなイメージが頭に思い浮かびますが、果たして関連はあるのでしょうか。

藤原さんは雑誌のインタビューで、他の「銀河鉄道」の作品からは影響を受けていないと語っています。

 

藤原 – これも宇宙にレールが引いてあったりするわけではなくて。要は(銀河鉄道)999じゃないんです。でも、現実でもない。

引用元:「B-PASS」2005年9月号

 

(タイトルは宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」から?)

藤原 – いや、全然知らないです。

引用元:「MUSICA」2008年7月号 vol.15

 

知らないわけないでしょう!って感じですよね(笑)藤原さんはたまにこういうところあります。「銀河鉄道」という語感だけ引用したようです。

「銀河鉄道」の歌詞の意味

歌詞の世界のつながり

銀河鉄道 / BUMP OF CHICKEN

自転車を漕いで手を振る人 見送りたい人がいるのだろう

相手を思うならやめてやれよ ちょっと恥ずかしすぎるだろう

 

「銀河鉄道」の歌詞には、前作「車輪の唄」に登場する <電車を自転車で追いかけながら手を振る人> が登場します。

 

車輪の唄 / BUMP OF CHICKEN

離れていく 君に見えるように

大きく手を振ったよ

 

藤原さん自身もこの話をインタビューで言及しており、「銀河鉄道」と「車輪の唄」は公認の作品のつながりと言えます。

 

銀河鉄道 / BUMP OF CHICKEN

真っ赤なキャンディーが差し出されている

驚いたけど貰ってみる

 

ファンの間では『orbital period』収録の「飴玉の唄」とも繋がっているとも言われています。BUMP OF CHICKENの世界観が繋がってい様子が読み取れます。

不思議な世界を走る列車

藤原さんは「銀河鉄道」とは宇宙だけを走る列車でなく、現実(だけど現実でもない)世界にも停まる列車であり、何でもありの「不思議な世界」という設定だと明かしています。

藤原 –  “車輪の唄”ってのは朝焼けから始まって、あとは街が賑わうまでの時間経過を書いてる曲なので、この”銀河鉄道”は厳密にいうと、朝日が昇ったあたりの時間にその駅(車輪の唄の駅)を通過することになるんですけど。その辺りから時間帯がちょっとおかしくなってくるわけです。(中略) 時間軸的にも空間的にも不思議なんですよ。電車の中にも、外側、景色の側にも不思議が存在してて。だからなんでもいいんです。




誰もが持つ荷物の置き場所

銀河鉄道 / BUMP OF CHICKEN

誰もがそれぞれの切符を買ってきたのだろう

荷物の置き場所を必死で守ってきたのだろう

 

「ギルド」のインタビューで、”権利”について深く言及して<電車に乗っていいのは切符を買ったから>と例を挙げていたことを思い出します。

 

藤原さんは5〜6歳の頃、父親と姉の3人でスキー旅行に行きました。バス停で帰りのバスを待っている間に、お父さんが列を外れて出かけます。すると幼い姉弟を目にもしなかった大学生5〜6人が割り込みし、戻ってきた藤原さんのお父さんが大学生たちに一喝するという出来事がありました。藤原さんはこの時の出来事がすごく印象に残っているそうです。

 

藤原 – 俺と姉ちゃんはずっとそれ聞いてて、子供心ながらにすごい感じたことがあったんですけど、みんな荷物の置き場所だったりとか、必死に守ってるんですよね、本当に。親父にとっては俺たちが荷物だったんでしょうね。大事な荷物だったんでしょうね。

 

藤原さんが話すエピソードにお父さんが登場するのは珍しいです。家族との思い出もBUMP OF CHICKENの歌詞の形成に影響を与えていることがわかります。

 

「銀河鉄道」の荷物のくだりは、身体的な存在だけでなく経験、記憶、家族、財産、罪と行った生きる上で経ていく「それぞれの荷物」を奪われないように守っていることを表現していると言えます。

 

「銀河鉄道」レコーディング

藤原の才能が詰まったデモ音源

「銀河鉄道」を一晩で書いた後、藤原さんはすぐにデモテープに録音しBUMP OF CHICKENのメンバーに渡します。デモ音源は2本のアコースティックギターだけでパーカッションと和音を表現した作品でした。

 

直井 – 俺はラッキーなことにプリプロヴァージョンも聴けてるから。カッティングとかで表現してるんですよ、この人は。ドラムの感じをジャカジャカジャスズジャジャジャスって、アコギでミュート奏法ってやってるんですよ。

引用元:「MUSICA」 vol.15 2008年7月号

 

藤原さんのギターの上手な点は音のメリハリのつけ方です。アコースティックギターをまるで打楽器のようにリズムを鳴らすことができます。「銀河鉄道」のデモテイクを聴いてみたいものです。

強弱だけで勝負したリズム

BUMP OF CHICKENの4人は「銀河鉄道」のバンドアンサンブルについて深く話し合って決めていきました。

ドラムの升秀夫さんは「物語の場面をリズムで表現しよう」と提案します。不眠続きだったベーシストの直井由文さんがスタジオで寝ている間にデモ音源を制作しました。

自転車に乗って手を振る人を見る場面、真っ赤なキャンディを渡す場面、それぞれのシーンごとに合わせたリズムをドラムで表現します。中にはドラムロールを録った部分もあったそうです。

最終的に話し合った結果、もっとシンプルなパターンにしてドラムの叩く強弱だけで場面を表現することにしました。

 

藤原 – みんなで話して、結局のところ生楽器の強弱だけっていうことになったんだよね。

升 – どういうプレイをするかっていうよりも、何を思ってプレイするかっていうのが大事だったというか。

引用元:「MUSICA」 2008年7月号

 

この頃は「人形劇ギルド」の構想があったので、場面転換などのアイデアが豊富にあったのでしょうか。

 

ライブ映像作品「BUMP OF CHICKEN WILLPOLIS 2014」には、小さなサブステージでオーガニックアレンジの「銀河鉄道」の演奏を観ることができます。そこでは強弱だけのアレンジが見事に反映されていますので、ぜひ観てみてください。

レスリーアンプを使用したギター

ギターのレコーディングを行う藤原さんは、レスリーアンプ(レスリースピーカー)と呼ばれる特殊なアンプを使用して「ペラいギター」を表現しました。

サビの後のキーボードのような音はレスリーアンプを使用してギターで弾いています。「ホリデイ」以降の流れとして、必要なところに必要な音を入れるレコーディングが出来ていると自覚しているそうです。

「銀河鉄道」ライブ演奏記録

演奏回数 26回
演奏頻度 ★★★☆☆
ライブ初披露 2006年1月13日「run rabbit run」ZEPP SAPPORO公演
最終演奏 2022年7月03日「BUMP OF CHICKEN LIVE 2022 Silver Jubilee at Makuhari Messe」幕張メッセ
演奏ツアー 2006年「run rabbit run」*全公演演奏
2014年「WILLPOLIS 2014
2022年「BUMP OF CHICKEN LIVE 2022 Silver Jubilee at Makuhari Messe」*全公演演奏

「銀河鉄道」はこれまで26回演奏されています。WILLPOLIS 2014ではサブステージで演奏されており、直井由文さのウッドベース(アップライトベース)によるバージョンはとても秀逸でした。

「銀河鉄道」ライブ映像作品

映像作品「BUMP OF CHICKEN WILLPOLIS 2014」

 

以上、BUMP OF CHICKEN「銀河鉄道」の歌詞の意味と制作エピソードについて紹介しました。この記事を読んで「銀河鉄道」の歌詞解釈のお手伝いができれば幸いです。