カップリング曲

楽曲解説「ほんとのほんと」 誰もが人を傷つける凶器を持っている

firefly カップリング曲
シングル「firefly」

「ほんとのほんと」はBUMP OF CHICKENの「firefly」に収録されているカップリング曲です。

アコースティックギターを主体としたバンドサウンドのミディアムナンバーで、素朴なサウンドの中で歌われるエモーショナルな藤原基央さんのボーカルが魅力的です。

今回は「ほんとのほんと」について紹介します。



「ほんとのほんと」基本情報

シングル「firefly」

作詞・作曲 藤原基央
作曲時期 2012年6〜7月頃
制作時期 2012年7月
リリース 2012年9月22日 シングル「firefly」M-02
ライブ初披露  未演奏

「ほんとのほんと」作曲エピソード


Rappeta様のピアノBGM本当に素晴らしいのでぜひ聴いてください
「ほんとのほんと」は2012年7月頃、藤原基央さんによって作曲されました。同年4月から開催した全国ツアーを終えた頃の時期です。

カップリング用として書いた「ほんとのほんと」

2012年、BUMP OF CHICKENは全国ツアー「BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012」を回ります。

ツアー期間中に曲を書くことを目標にしていたボーカル・ギター藤原基央さんは、同年5月に「firefly」を作曲します。そして「firefly」を9月にシングルリリースすることが決まり、カップリング収録曲の選定をすることになりました。

藤原 – ツアー直後ですね。カップリングは、さっき言った他にあるいくつかの未発表曲のどれかにしようかなとも思っていたんですけど、やっぱり「firefly」に対するカップリングの曲作りをちゃんとしたいなと思って。

後にアルバム「RAY」収録曲となる「morning glow」「(please) forgive」も未発表曲としてあり、スタッフからは「相性が合うものをカップリングにするのはどうか?」という提案もされました。しかしカップリング曲として新曲を作りたかった藤原さんの強い意思により、曲作りが行われます。

藤原 – “書けるかどうかわからないけど、カップリング作業のために曲作りやりたいです”って言ってスタジオ入って書いたのが「ほんとのほんと」ですよ。

引用元:Bay-FM「PONTSUKA!!」2012年9月2日 O.A.

藤原さんは間に合わせでカップリングにすることに抵抗感があったといいます。1つのリリースに対する楽曲への尊重が感じ取れます。

BUMP OF CHICKENの楽曲にはカップリング曲として生まれた曲が幾つか存在します。​

リリースCD 収録内容
オンリーロンリーグローリー」(2004年)
カップリング曲として「乗車権」を制作
※曲の主張が強くアルバム曲収録へ変更
プラネタリウム」(2005年)
カップリング曲として「銀河鉄道」を作曲
supernova/カルマ」(2005年)
カップリング曲として「supernova」を作曲
HAPPY」(2010年)
カップリング曲として「pinkie」を作曲
「firefly」(2012年)
カップリング曲として「ほんとのほんと」を作曲

 

「ほんとのほんと」歌詞の意味

「ほんとのほんと」は詞がメロディーを引っ張る形で生まれました。「本音」や「言葉」を相手に伝える時、私たちは相手を不意に傷つけてしまう、逆に自分が傷ついてしまうことがあります。そんな一日に何百回、何千回と繰り返される行為の中の危うさを歌っています。

藤原 – この曲で表現したかったのは、誰でも誰かを傷付ける能力をちゃんと持っているってこと。何気なく発した言葉でもしっかり誰かのことを傷付けることがある。場合によっては相手を再起不能にまで追いやることができる言葉を、誰でも放つことができるじゃないですか。それは凶器を持って歩いてるようなもので。

「凶器」という言葉がシリアスで辛辣な印象を受けますね。余談ですが「凶器」という単語で振り返って見ると10代の時に書いた曲「ナイフ」が思い浮かびます。

ほんとのほんと / BUMP OF CHICKEN

尖った言葉が的確に 胸を貫いて 転がって冷えた

何もできないよ 震えながら 押さえつけていくのだろう

 

同じ「凶器」でもナイフに出てくる「KNIFE」はもっとポジティブで、人を強くするため、恐怖に立ち向かうための「武器」です。それに対して人をほんとのほんとに出てくる「尖った言葉」は再起不能にしかねない、まさしく「凶器」として描かれています。

当然、藤原さんはインタビュー時にはナイフのことは頭になかったと思いますが、15年以上もの年月が経って、藤原さんの歌詞が10代の青春ソングから人間の内面を映し出す詞へと深度を増していることがわかります。



「ほんとのほんと」制作エピソード

「ほんとのほんと」の基本的なサウンドは、アコースティックギター、エレキベース、ドラムというシンプルな構成になっています。

同じくアコースティックギターを基調とした「supernova」「ベル」では途中でエレキギターが入ったりします。「ほんとのほんと」では小細工をしていないため、1音1音がごまかしようがない緊張感のあるサウンドを狙ったそうです。

藤原 – もっと豪勢なサウンドにしようと思えば全然できるんです。そうすることでドキドキもワクワクもするんですけど、それによって消えてしまう緊張感みたいなものもあって。この曲は、そういう緊張感を全面に押し出したアレンジをするべきだと僕は思ったんでしょうね。

升 – よく言われることですけど、シンプル=簡単ではないので。むしろ難しい。

引用元:音楽ナタリー

これはアルバム「RAY」のトーチに関するインタビューでも述べていましたね。バンプの場合はシンプルなアレンジの曲ほどより多く練習をしてレコーディングに臨むことが多いです。なんだか陶芸家がシンプルな陶器を作ることに時間をかけているのと似ているなと思います。

隠れた基層低音

藤原 – あれはピアノの音をドーンと弾いて、それをずっと伸ばしてるんです。あとE-BOW(ギターエフェクター)の音も入ってますね。

唯一の小細工として、冒頭から低音のピアノが曲を通して鳴らすことにより曲に重みと、ある種の荘厳さを感じさせる曲スタートになっています。これはプロデューサーのMORさんによるアイデアだそうです。

終わりに連れて熱を帯びていく音

直井 – 前半はとにかくシンプルに抑えながら弾く感じで、後半はプラスアルファのフレーズを作って、ちょっと劇的な動きになるように表現しました。

藤原 (デモの打ち込みの段階で)同じフレーズを叩きながら、だんだん音の表情が熱を帯びていく升くんのドラムが僕の中で聴こえていて。

シンプルに始まったサウンドも、曲の後半になるにつれてダイナミックになって言います。決してエフェクターやエレキギターを重ねたりせず、アコギのピックングニュアンスやストローク、ベースの動きでその熱量の増加を表現しています。

昔のバンプだったら曲の終わりを盛り上げるためにエレキギターを足したりしていたと思います。やはり「恥ずかし島」でアコースティック曲を表現する経験値を増したからこそできる技術なのかもしれませんね。

仮歌のボーカルテイクを採用

楽器がシンプルな構成なので、曲のサウンドに対する歌の比重も必然的に大きくなります。ほんとのほんとのボーカルは、掠れ気味の声と曲の後半に連れて感情的になる歌声が実に素晴らしいと思います。

CDに収録されているボーカルは、もともとプリプロ用に録られたテイクでした。本番レコーディングで歌入れをし直したものの、この仮歌を上回るものではないとメンバーとスタッフで判断したため、仮歌のテイクをCDに入れることにします。

藤原 – 実はプリプロのテイクをそのまま使っているんですよ。本チャンの歌入れもしたんですけど、プリプロのときのボーカルのほうが良くて。

藤原さん曰く”どんな時も手を抜かないで作業していた結果”と評しています。

「ほんとのほんと」ライブ演奏記録

「ほんとのほんと」まだライブでは演奏されたことがありません。もし演奏するとしたら増川さんにギターを任せて、歌に専念する藤原さんという「embrace」のような構成になるのではないでしょうか。

以上、BUMP OF CHICKEN「ほんとのほんと」の紹介でした。