「ナイフ」はBUMP OF CHICKENの『FLAME VEIN』に収録されている楽曲です。
高校生から演奏されている数少ない日本語曲でインディーズ期を代表する1曲となっています。
この記事では「ナイフ」の制作エピソードや歌詞の意味、解釈などを解説します。
「ナイフ」基本情報

アルバム「FLAME VEIN」
作詞・作曲 | 藤原基央 |
作曲時期 | 1996〜1997年頃(アルエよりも後) |
収録作品 |
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ライブ初披露 | 1997年頃(推定) |
「ナイフ」作曲エピソード
「ナイフ」はBUMP OF CHICKENの全楽曲における最も古い日本語曲のひとつで、メンバー自ら語った「ナイフ」のエピソードは少ないです。
「ナイフ」収録作品
まず「ナイフ」の収録作品を以下に整理します。
ジャケット/作品名 | リリース年 | 収録曲 |
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※真偽不明 |
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![]() 「NO REASON」 |
1997年10月 ※1998年3月再販 |
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![]() 「BOC-000」 |
1998年秋頃 | 「KNIFE〜ナイフ」を含む全12曲 |
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1998年10月24日 |
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![]() no title(ライブテイク5曲入りデモテープ) |
1998〜1999年 |
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![]() 「FLAME VEIN」 |
1999年3月18日 |
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2004年4月28日 | 上記8曲+「バトルクライ」 |
現物確認できたものとして、6作品(1997年「NO REASON」〜2004年「FLAME VEIN+1」)に収録されています。
またDMでの情報提供により”1曲入り英語デモテープ「KNIFE」”の存在が示唆されています。こちらは真偽不明ですが、引き続き情報探しております。
「ナイフ」の作曲時期
BUMP OF CHICKENは、1997年6〜8月にバンド初となるツアー「CHICKEN’S KNIFE(チキンズナイフ)」を開催し、同年10月に「ナイフ」の歌詞の一部《NO REASON》をタイトルにしたデモテープ「NO REASON」を50本限定リリースしています。
BUMP OF CHICKENはデモテープ制作に先行してライブで演奏する傾向があり、1997年夏に開催した「CHICKEN’S KNIFE」ですでに「ナイフ」を演奏していたと考えるのが自然です。このことから、「ナイフ」は遅くとも「Chicken’s Knife」ツアー開催の1997年6月までには作曲されていたと推測できます。
プロトタイプとして英語版が存在する場合、この時期よりもさらに早い時期に原曲が生まれた可能性を示唆します。
「FLAME VEIN」収録曲との関係
『BUMP OF CHICKEN ヒストリーブック』での発言から、「FLAME VEIN」収録曲の完成順が推察されます。
藤原 –(1996年8月当時)英語のオリジナル曲と何曲かの日本語の曲をやってたんだけど。……”くだらない唄”があったかな。”アルエ”はギリギリなかったかも
「アルエ」「くだらない唄」に言及して「ナイフ」には言及していないことから、「アルエ」の方が成立時期は早い可能性があります。”英語のオリジナル曲”に「ナイフ」が含まれていたとしても、曲名に言及しているはずだからです。
「アルエ」制作エピソード
このことから「ガラスのブルース」「くだらない唄」「アルエ」に続く4番目に「ナイフ」に古い日本語詞の曲と言えます。「ガラスのブルース」の次に出来た「BUMP OF CHICKENのテーマ」(「FLAME VEIN」未収録)を入れると5番目になります。
「ナイフ」歌詞の意味
「ナイフ」の歌詞についてもインタビューで言及していることはほぼないものの、古いインタビューからは下記の情報が判明しています。
「NO REASON」歌詞カード(裏面)
Radioheadの影響を受けた歌詞の一部
ナイフ 0:39〜
僕が笑ってたあの日の夕焼け
隠したナイフでもう一度とりもどせ
PROVE YOURSELF
引用元:ナイフ / 作詞作曲 藤原基央 (1999年)
サビの歌詞《PROVE YOURSELF》の一節はRadioheadの楽曲「Prove Yourself」からつけられています。藤原さんは古いインタビューで”パクった”と発言しており、Radioheadに対する影響や憧れを認めています。

Radiohead「Pablo HONEY」1993年
RadioheadはBUMP OF CHICKENのメンバーに影響を与えたバンドのひとつです。ボーカル・藤原さんは自身が10代の時によく聴いていたバンドの1つとして挙げています。ベーシスト・直井由文さんは「Million Dollar Question」を聴いているiTunesの画像を自身のInstagram(ストーリー)にアップしています(2019年3月)。
「Prove yourself」も「Million Dollar Question」のどちらも『Pablo Honey』(1993年)に収録されていおり、メンバーの思い出のアルバムであることを伺えます。
またギタリスト・増川弘明さんは藤原さんと2人でRadioheadのライブビデオを鑑賞し、啓発されて夜中にスタジオに入り、「キャッチボール」の作曲へと繋がりました。
かつての英語詞が残る
「ナイフ」には英語詞が登場し、これはBUMP OF CHICKENのリリース曲における最も長い英語詞です。
ナイフ 0:39〜
KNIFE SHOWED ME THE WAY TO 「MY SELF」
KNIFE SHOWED ME THE WAY TO 「LIVE」
HOLD ON! I REMEMBER and REALIZE MY WISHES.
引用元:ナイフ / 作詞作曲 藤原基央 (1999年)
他には「Ever lasting lie」《Sir, Destiny》や「セントエルモの火」《How are you?》のような短い英語詞が出てくることはあるものの、ここまでがっつりと英語詞が出てくるのは「ナイフ」だけです。英語詞時代のBUMP OF CHICKENを彷彿させます。
英語詞が出てくる他の楽曲例
“Sir Destiny” – 「Ever lasting lie」
“Stage of the ground” – 「Stage of the ground」
“sailing day” – 「sailing day」
“Everybody, every body has a dream” – 「おるすばん」
“How far are you?” – 「セントエルモの火」
「ナイフ」音源制作エピソード
デモテープ作品を除けば、インディーズアルバム「FLAME VEIN」収録音源が聴くことが可能な音源です。
1st CD「BUMP OF CHICKEN」収録が使用されている
「FLAME VEIN」の「アルエ」「リトルブレイバー」「ナイフ」は1998年10月リリースの1st CD「BUMP OF CHICKEN」のレコーディング音源が転用されています。
このため「ナイフ」は市場流通作品という意味において、BUMP OF CHICKENで最も古い音源です。
「ナイフ」ライブ演奏記録
演奏回数 | 75回(2000年以降) |
初披露 | 不明(1997年頃) |
最終演奏 | 2016年2月11日「BUMP OF CHICKEN |
演奏ツアー | 1999年「HANSO-DE TOUR’99」 2000年「ツアーポキール」*全公演演奏 2000年「サマーポキール2」*全公演演奏 2000年「プロポキール秋」*全公演演奏 2001年「スターポーキングツアーズ 2001」*全公演演奏 2001年「surf porkin’」*全公演演奏 2002年「POKISTA 21」*全公演演奏 2002年「LOVE & PORKIN」*全公演演奏 2003年「NINJA PORKIN」 2004年「MY PEGASUS」 2008年「ホームシック衛星」 2016年「20」 |
「ナイフ」は集計可能な2000年以降において75回演奏されています。
最古のオリジナル曲群のひとつということもあり、アマチュア時代、インディーズ時代、メジャー初期においてほぼ全てのライブで演奏されており、BUMP OF CHICKENのライブ活動の歴史とともに歩んでいた曲と評価できます。
一方でキャリアが進むにつれて「ナイフ」の演奏頻度は少なくなり、2016年の20周年記念ライブ「20」で久しぶりに演奏されて以降披露されておらず、レア曲扱いになっています。
1回だけ披露されたアコースティックバージョン
「ナイフ」はアコースティックバージョンで演奏されたことがあります。
2000年4月14日の「THE LIVING DEAD 発売記念インストアライブ」ではアコースティックバージョンで演奏されました。藤原さんはアコースティックギター、増川さんはエレキギターを弾いています。
アドリブによるアレンジが豊富
アマチュア時代から演奏してきた楽曲ということもあり、ライブでのアドリブが多く披露されています。
2002.12.xx LOVE&PORKINツアーの頃のギターソロ
「ナイフ」ライブ映像作品
2016年2月11日の20周年記念LIVE「20」で久しぶりに披露されました。YouTube公式チャンネルのスポット映像でその様子が確認できます。
映像作品「BUMP OF CHICKEN 結成20周年記念Special Live 「20」」 | ![]() |
・直井のサビのベースラインが各小節8拍目の繋ぎが取り除かれる
・藤原のアレンジソロ(ブルーススケール)
直井さんのベースは、サビの8拍目に繋ぎの音階が取り除かれより硬派なサウンドになっています。藤原さんがギターソロはインディーズ期と同じブルーススケールでのアドリブになっています。
以上、「ナイフ」に関するエピソードでした。「ナイフ」を聴く上で新しい聴き方ができると思います。ありがとうございました。