1st Album『FLAMEVEIN』

楽曲解説「リトルブレイバー」サザンロックと音源制作へのこだわり

1st Album『FLAMEVEIN』

「リトルブレイバー 」はBUMP OF CHICENの1st アルバム『FLAME VEIN』に収録されている楽曲です。

繊細なアルペジオから始まるバンドサウンドが印象的なインディーズ期の珠玉の名曲です。

この記事では「リトルブレイバー」についてコア解説します。



「リトルブレイバー」基本情報

アルバム「FLAME VEIN」

作詞・作曲 藤原基央
編曲 BUMP OF CHICKEN
作曲時期 1998年夏-秋以前
録音場所 東京都渋谷区代々木にある地下レコーディングスタジオ
収録作品 1998年10月24日 1st CD「BUMP OF CHICKEN」(500枚限定生産)
1998〜1999年 ライブテイク5曲入りデモテープ
1999年3月18日「FLAME VEIN」(廃盤)
2004年4月28日「FLAME VEIN+1」

「リトルブレイバー」作曲エピソード

BUMP OF CHICKENのインタビューにおいて「リトルブレイバー」に言及した箇所は非常に少なく、そのため作曲時期や背景などの詳細は未判明です。以下は状況証拠からの考察になります。

「リトルブレイバー」収録作品一覧

「リトルブレイバー」はインディーズ時代からの楽曲でこれまで4作品へ収録されています。

ジャケット/作品名 リリース年 収録曲
「BUMP OF CHICKEN」 1998年10月24日
  • 「アルエ」
  • 「リトルブレイバー」
  • 「ナイフ」

no title(5曲入りデモテープ)
1998〜1999年
  • 「Desert Country」
  • 「アルエ」
  • 「ナイフ」
  • 「リトルブレイバー」
  • 「18 years story」
    ※全てライブテイク。1998年10月24日本八幡ルート14公演収録

「FLAME VEIN」
1999年3月18日
  • 「ガラスのブルース」
  • 「くだらない唄」
  • 「アルエ」
  • 「リトルブレイバー」
  • 「ノーヒットノーラン」
  • 「とっておきの唄」
  • 「ナイフ」
  • (隠しトラック)「DANNY」
「FLAME VEIN+1」 2004年4月28日 上記8曲
+「バトルクライ」

現在確認できる最も古い音源は1998年10月に自主リリースした1st CD「BUMP OF CHICKEN」です。このため「リトルブレイバー」は遅くとも1998年10月には作曲されたと考えられます。また同年10月よりもかなり早く作曲されたという未確認情報があります。

他の「FLAM VEIN」収録曲と比較すると「ガラスのブルース」「くだらない唄」「アルエ」「ナイフ」よりも新しく「ノーヒットノーラン」よりも古い曲となります。「とっておきの唄」との年代比較は不明です。



サザン・ロックに影響を受けたコード進行

作詞作曲をした藤原基央さんは「リトルブレイバー」について、自身の音楽ルーツの1つであるサザン・ロックに影響を受けたと明かしています。

藤原 – “Dから始まったら2つめのコードがCに落ちていく感じ。で、Gに落ち着いてまたDに戻る感じ。(中略) サザン・ロックではけっこう王道とされてるコード進行なんですけど、それがすごく気持ちよかったですね。“リトルブレイバー”とかもまさしくそんな感じです、Aメロとか。 

2004.12.09 TOKYO FM 80.0 MHz 「discord」

藤原さんは、10代の時に死ぬほど聴いたサザンロック・アーティストとして「レーナード・スキナード (Lynyrd Skynyrd) 」「オールマン・ブラザーズ・バンド (The Allman Brothers Band)」を挙げています。

「リトルブレイバー」のAメロはレーナード・スキナードのSweet Home Allabama に影響を受けて作曲された可能性があります。この2曲のAメロのコード進行は同じで、藤原さんはライブのサウンドチェック中に同曲のイントロのリフを弾いたりするなど、藤原さんの身体に染み込んだ1曲であることが伺えます。

サザン・ロックに影響がみられる楽曲「デザートカントリー」「18 years story」「WORST LIFE」といった英語詞未発表曲に多く使われ、日本語詞楽曲ではそれほど使用されていない。

「リトルブレイバー」制作エピソード

BUMP OF CHICKENの最も古い音源のひとつ

1998年10月24日 1st CD「BUMP OF CHICKEN」

「FLAME VEIN」収録音源は1998年10月リリースの自主制作CD「BUMP OF CHCIKEN」の収録テイクを移したものです。つまり「リトルブレイバー」の音源は、現在私たちが聴くことができるものとしては最古のレコーディング音源になります

1998年8〜9月頃、BUMP OF CHICKENの4人は東京都渋谷区代々木にある地下の録音スタジオで「ナイフ」「アルエ」「リトルブレイバー」の3曲をレコーディングをします。それまでライブハウスや宅録を行っていたメンバーとっては初めての本格的なレコーディング作業でした。

10代の藤原基央さん、増川弘明さんが鳴らすギターアンプの音、直井さんのベースの音、升さんの叩くドラム、少年時代の熱量高いプレイが現れています。若かりし頃のBUMP OF CHICKENの音を知りたい方は必聴の1曲です。

音源制作とライブを明確に分けた楽曲

「リトルブレイバー」は《ライブ演奏と音源作品は別物である》という意識を強く持って制作された楽曲といえます。

ライブテイク5曲入りデモテープ(1998年10月24日公演収録)



1998年8〜9月頃に行われた1st CD「BUMP OF CHICKEN」のレコーディング音源と、同年10月24日のライブテイク音源、この2つの「リトルブレイバー」はアレンジが全く異なります。

簡潔に書くと、レコーディングで難しく弾かれているアレンジが省略されています。具体的には藤原さんはAメロのギターをアルペジオ(分散和音)で弾かずにコードストロークでジャカジャカ演奏し、ギターソロのパート自体がカットされています。

1998年以前の「リトルブレイバー」デモテープから同じアレンジなのか、1st CDを機にアレンジを変えたのかは不明ですが、どちらにせよ「CD音源とステージ演奏は別物である」という意識を強く持っていたといえます。

また、背景として当時バンドがデモテープを制作用に持っていたTASCAM製マルチトラックレコーダーでは録音可能なトラック数に限界がありました。初めてのCD制作では楽器の数が増え、音源作品としての「リトルブレイバー」を録音しようと試みたと考えられます。

カウントに隠された秘密曲冒頭で「ワン、ツー、スリー」という升秀夫さんのカウントから始まる。「ツー」の裏で藤原もしくは直井が「ポイサ」と被せている。「ポイサ」は当時バンド内で流行っていた言葉である<

 

隠し要素のアコースティックギター

「CD音源とステージ演奏は別物である」という意識は音作りにも現れています。

「リトルブレイバー」ではエレキギターのアルペジオの裏に、聴こえるか聴こえないかの音量でアコースティックギターで同じメロディを弾いています。これは10代とは思えないアプローチです。

音の厚みを増すのにエレキギターをいくつも重ねるのではなく、藤原さんはアコースティックギター混ぜることで「キレのある厚み」を演出しています。歯応えのあるハンバーガーを作る時に肉の枚数を足すのではなく、シャキシャキのレタスを足すの同じです。

この「小さな音量のアコースティックギターをエレキギターに混ぜる」という方法はBUMP OF CHICKENの多くの楽曲で使われてる、藤原さんのレコーディング手法の基礎になっています。

アクセントとしてのアコースティックギターの例「乗車権」 (0:47~) *L側、「embrace」 (1:02~)、「真っ赤な空を見ただろうか」 (1:14~) *L側

「リトルブレイバー」歌詞の意味

「リトルブレイバー」の歌詞について、藤原基央さん本人が言及しているインタビューはほぼありません。

画像埋込元:Twitter@miyu_01134tlh

「リトルブレイバー」✖️「とっておきの唄」

「リトルブレイバー」の歌詞にはBUMP OF CHICKENの「とっておきの唄」の曲名がそのまま登場します。

例えば大事な人の泣くスガタに言葉が出なくても
「とっておきの唄」聴かせてあげれれば
ナミダもとめられる

引用元:「リトルブレイバー」/ 藤原基央

「リトルブレイバー」と「とっておきの唄」どちらを先に書いたのかは不明ですが、両曲のつながりを感じさせます。

ちなみに「とっておきの唄」の歌詞に《ナミダを止めるためにある唄》があります。

単純な僕の単純な唄
ナミダを止めるためにある唄

引用元:「とっておきの唄」/ 藤原基央

このことから先に「とっておきの唄」を書き、後から書いた「リトルブレイバー」の中で「とっておきの唄」のタイトルと曲の目的《ナミダを止める》を言及するのが自然な気がします。

一方、未確認情報で1998年の早い時期には「リトルブレイバー」が存在していたという情報もあるため、「リトルブレイバー」「とっておきの唄」の2曲の作曲順については情報が必要になります。

「リトルブレイバー」✖️「ナイフ」

「リトルブレイバー」より先に書かれた「ナイフ」に《勇気の出る唄》という一節があります。

朝の匂いの夢を見るよ
「勇気の出る唄」を思い出すタメに

引用元:「ナイフ」/ 藤原基央

推測の域になりますが「勇気の出る唄」とは歌詞全体を通して「勇気」を主題としている「リトルブレイバー」の可能性があります。

有名な「リリィ」における「バトルクライ」の詞の引用、「銀河鉄道」における「車輪の唄」の情景描写のように、藤原基央さんは曲中に別の楽曲を示唆する趣向があります。「ナイフ」「とっておきの唄」「リトルブレイバー」はそのプロトタイプといえます。

 

2012年 「GOLD GLIDER TOUR」コンセプトムービーに登場

2012年の全国ツアー「BUMP OF CHICKEN 2012 “GOLD GLIDER TOUR”」では、オープニングで流れた山崎貴監督のコンセプトムービーに登場する飛行船として「LITTLE BRAVE号」が登場します。

古い楽曲「リトルブレイバー」をあしらったネーミングをするあたり、BUMP OF CHICKENのメンバーも思い入れの強い曲名であると思われます。

 

「リトルブレイバー」ライブ演奏記録



演奏回数 154回(2000年以降)
初披露 1998年以前
最終演奏 2024年2月24日「BUMP OF CHICKEN TOUR “ホームシック衛星2024″」
演奏ツアー 1999年「HANSO-DE TOUR’99」
2000年「ツアーポキール」*全公演演奏
2000年「サマーポキール2」*全公演演奏
2000年「プロポキール秋」*全公演演奏
2001年「スターポーキングツアーズ 2001」*全公演演奏
2001年「surf porkin’」*全公演演奏
2002年「POKISTA 21」*全公演演奏
2002年「LOVE & PORKIN」*全公演演奏
2003年「NINJA PORKIN

2004年「MY PEGASUS
2006年「run rabbit run
2008年「ホームシップ衛星

2011-2012年「GOOD GLIDER TOUR
2012年「GOLD GLIDER TOUR
2014年「WILLPOLIS 2014
2019年「aurora ark
2022年「Silver Jubilee at Makuhari Messe」
2023年「be there
2024年「ホームシック衛星2024

「リトルブレイバー」は非常に長期間にわたりコンスタントに演奏されています。

2000年代は不動のセトリ曲として本編で演奏されています。2008年以降は主にアンコール曲として演奏されることが多い曲です。

「リトルブレイバー」特別版が多数存在する

「リトルブレイバー」は冒頭に即興の弾き語りを加えたスペシャルバージョンが存在し、2001〜2003年の3年間演奏されています。

リトルブレイバー特別版の演奏公演
2001.04.06  *何為版 at 大阪BIG CAT
2001.08.07  *何もなくて版 at 名古屋E.L.L
2001.09.14  *大切なもの版 at 大阪BIG CAT
2001.09.20  *殺されかけた版 at 赤坂BLITZ
2002.12.05  *三日月版 at ZEPP FUKUOKA
2003.xx.xx  *確認中
2003.06.11  *暗闇版 at 赤坂BLITZ

コラム記事「未発表曲vol.2:6種類のリトルブレイバー 「三日月版」「暗闇版」「何為版」…

演奏前に弾く藤原の即興ギター

藤原さんはライブで「リトルブレイバー」のイントロを弾く前に、ギターで即興のメロディを演奏することがあります。

このメロディは毎年微妙に変わりますが、最も多く演奏されたのは2004年の「MY PEGASUS」〜2006年「run rabbit run」まで演奏されたバージョンです。

他にも「バイオリン奏法」を試したり、何も加えず原曲を弾いたり、藤原さんのその時々の精神状態で演奏が異なります。その違いを見つけるのも、ライブのひとつの楽しみ方ですね。

「リトルブレイバー」ライブ映像作品

 映像作品「BUMP OF CHICKEN LIVE 2022 Silver Jubilee at Makuhari Messe」
ライブ映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR ホームシック衛星2024 at Ariake Arena
2024年4月24日「ホームシック衛星2024」Ariake Arena – Day1 収録 

以上、「リトルブレイバー」について解説しました。この記事を読むことで「リトルブレイバー」を聴く時に新しい発見があれば幸いです。