『FLAMEVEIN』は1999年3月に発売されたBUMP OF CHICKENの1stアルバムである。現在市販で購入できる最も古いアルバムとなっている。
同アルバムは公式ディスコグラフィーとしてはファーストアルバムとして記載されているが、当初は曲数の少ないミニアルバムとして構想されていた。
記念すべき1stアルバムの発表から20周年を迎えるにあたり、アルバム制作エピソードについて解説する。
『FLAME VEIN』基本情報
タイトル | 「FLAME VEIN」 |
リリース | 1999年3月18日 |
楽曲成立時期 | 1995〜1998年 |
制作時期 | 1stセッション:1998年夏〜秋 2ndセッション:1998年12月〜1999年1月 |
レコーディングスタジオ | 1stセッション:原宿の地下にあるスタジオ(詳細不明) 2ndセッション:Bazooka Studio 東中野 |
収録曲 | 1. ガラスのブルース 2. くだらない唄 (楽曲解説) 3. アルエ (楽曲解説) 4. リトルブレイバー (楽曲解説) 5. ノーヒットノーラン (楽曲解説) 6. とっておきの唄 7. ナイフ (楽曲解説) (8. バトルクライ) 隠しトラック:DANNY |
『FLAME VEIN』の意味 – マグマの流れるような血管
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『FLAME VEIN』は直訳すると「炎の血管」で、アルバムタイトルはレコーディング中のメンバーの血管が浮き出てる様子から命名された。
藤原 – 演奏中にそれぞれ血管が出てたの。手とか首とか。 必死だったのかもしんないね。なんかマグマみたいなもんが流れてるって、そういう実感があって。それで『FLAME VEIN』になったんだよ。
出典:BUMP OF CHICKEN ヒストリーブック
現在でも藤原基央はライブ中に血管が浮き出ることがあり、プレス写真やライブ映像などでも確認できる。まさに『FLAME VEIN』は彼らの血と骨と肉がそのまま表現されたタイトルと言えよう。
CDジャケットの撮影場所:巣鴨ホワイトロード
巣鴨にあるリハーサルスタジオ Whiteroad Music Studioで撮影された。「ガラスのブルース」のPVもこの時の映像が使われている。(あまり知られていないかも?)。(あまり知られていないかも?)
撮影時期は1998年10〜12月頃で、藤原の着ているセーターは1998年10月のインストアライブでも着用している。
手書きの歌詞カードとアルバイト先のカフェ
FLAME VEINの歌詞カード(画像引用元:https://pbs.twimg.com/)
藤原は19歳の頃、下北沢にあったSpace Shower Branchでアルバイトをしており手書きの歌詞カードを認(したため)めていた。
藤原 – 落書きみたいのが好きだったってのと、ああいうアートワークが流行ってたから、これやっとかなきゃ評価もらえないべみたいな(笑) だから描いたんだけど。
引用:BUMP OF CHICKEN ヒストリーブック
当時のインディーズ界隈では自作の絵をジャケットにしたり、ポップ体のバンドロゴが流行していた。
「19」のビジュアル担当 326氏も同時代に下北沢の路上で自作の絵を販売していた、というとイメージしやすいかもしれない。
幻のミニアルバム(4曲入り)案
『FLAMEVEIN』は7曲入り(『FLAMEVEIN+1』は8曲入り)だが、元々は4曲入りのミニアルバムとしてリリースされる予定でレコーディングでされた。
・「くだらない唄」
・「ノーヒットノーラン」
・「とっておきの唄」
「FLAME VEIN」未発表段階の雑誌インタビューでも、活動欄に「Mini Album 今春リリース予定」と記載されておりギリギリまで4曲収録で考えていたことが伺える。
1999年1月 トラックダウン (1日)
1998年12月の2日間で「ガラスのブルース」「くだらない唄」「ノーヒットノーラン」「とっておきの唄」の4曲で録音し、1999年1月にポスプロ作業を1日で仕上げた。
なぜこんなに早く録音できたのか?
升秀夫 – 『FLAME VEIN』の時は、その時ライブで演ってた曲がちょうどあのぐらいやってて、他にライブで聴かせてない曲もやろうって言って、そんでまとめてバッと録った感じですね。
後述の「ノーヒットノーラン」以外の3曲は、ライブでの演奏やデモテープ収録を経験しており、アレンジも決まっていため録音に時間がかからなかった。
わずか3日間で制作されたアルバム
制作スケジュール1998年12月 レコーディング (2日間)
また当時バンドで生計は建てられておらず、制作の時間的制限があったことも理由のひとつであろう。
レコーディングエピソード藤原がボーカル録りをしている最中、升、増川、直井の3人はブースの外でケツを出して遊んでいた。
3曲は自主制作『BUMP OF CHICKEN』のマスター音源の転用
「ナイフ」「アルエ」「リトルブレイバー 」は1st CD『BUMP OF CHICKEN』(1998年10月)に収録されており、収録予定ではなかった。
結果的にトラックダウンをする際に「ナイフ」「アルエ」「リトルブレイバー 」も再収録しようとする案が生まれる。
18-19歳の若さと情熱が溢れるサウンド
自主制作時のマスターを転用しているため、「アルエ」「ナイフ」「リトルブレイバー」の3曲は1st CD『BUMP OF CHICKEN』用に録音された音源と同じである。
つまり「ナイフ」「アルエ」「リトルブレイバー 」は現在入手可能な音源の中で、一番若い時に録られたBUMP OF CHICKENの音なのだ。サウンドは情熱と希望に満ち溢れている。
「ノーヒットノーラン」収録から読み取るバンドの決意
藤原 – 曲は当時あったもので、一番新しかった曲が“ノーヒット・ノーラン”
直井 – たしかそれはほとんど練習はしてない。……今考えるとすげーなー
出典:BUMP OF CHICKEN ヒストリーブック
「ノーヒットノーラン」はライブ演奏よりも先に音源リリースした初のバンド楽曲となった。それまでは基本的にライブで演奏やアレンジを固めた後に音源化と言う流れが基本だった。
初披露時のエピソード1999年3月22日のライブではイントロが始まった瞬間に観客から歓声が上がった。
収録曲を日本語詞曲だけにするということ
「4曲入りミニアルバム」案の4曲目の「ノーヒットノーラン 」は完全新作だった。
ライブ未演奏の新曲を練習時間も取らずにレコーディングするよりも、当時頻繁に演奏していた英語詞曲「18 years story」「グロリアスレボリューション」などを録音する方がクオリティは高くできるはずである。
しかしバンドは「ノーヒットノーラン 」を収録することを決める。自分達がインディーズデビューするアルバムに誰にも聴かせたことのない日本語の新曲を収録することを優先したのだ。
すなわち「BUMP OF CHICKENは日本語詞で勝負をする」という決意が現れているアルバムなのだ。
こんな当たり前のことを書くかというと、BUMP OF CHICKENは1999年は当然として、一番遅くて2000年まで英語詞で演奏している記録が残っている(DANNYを除いて)。
つまり『FLAME VEIN』発売時はファンは「英語詞も日本語詞もやるバンド」として認知していた。そんななかでバンド側は「日本語詞を演奏するバンド」という宣言をこのアルバムでしているのである。
第1回のおわりに
全員19歳(ひとり童貞)で出した『FLAME VEIN』。千葉時代の楽曲も含めたアマチュア時代の集大成と、これからの活動に向けた宣言とも取れるアルバムだといえる。
臼井の雰囲気やたんぽぽ丘の匂いが詰まった詞と音が、誰にでも通じるあの懐かしい情熱と若さを風化させずに届けてくれる。僕は『FLAME VEIN』をそんなアルバムだと思っている。
少なくとも第2回までは書く予定あり。