時空かくれんぼ
作詞作曲:藤原基央
作曲・録音時期:2007年xx月
リリース:2007年12月19日
ライブ初披露:2008年1月10日 ホームシック衛星 at ZEPP TOKYO
ライブ最終披露:2017年10月3日 Pathfinder at 新潟朱鷺メッセ
『時空かくれんぼ』はBUMP OF CHICKENのアルバム「orbital period」に収録されている楽曲です。静と動の対照的なサウンドと6/8拍子のリズムが特徴的なアルバム曲です。この記事では時空かくれんぼの曲の意味や歌詞解釈について解説・紹介します。
Contents
藤原、6/8拍子をテーマに作曲
「時空かくれんぼ」は6/8拍子の曲をやりたいという藤原基央さんの思いから生まれました。6/8拍子は主に洋楽のハードロックの楽曲などで使われるリズムです。
藤原 – これは割と珍しくわかりやすいテーマがありました。『8/6をやってみたいな』、と。
MUSICA 2008.01 vol.9
藤原さんはまれに○○な曲をやりたい、という音楽的な趣向から楽曲を作る時があります。”降りてくる”、”生まれてくる”言葉を使う傾向がある作詞作業とは対照的です。
6/8拍子の楽曲 – Merry Christmas, 分別奮闘記,三ツ星カルテット(イントロ)
3/4拍子の楽曲 – バイバイサンキュー, 同じドアをくぐれたら, 銀河鉄道, You were here
6/8拍子の洋楽
6/8拍子はBPMが早いと軽快な雰囲気、ゆっくりだと壮大なバラードを演出します。参考までにAerosmithのCryin’を載せます。
構成的に似てますよね(笑)。イントロで歪み、Aメロでクリーンのアルペジオからサビでまた歪み、このパターンがセオリー的なアレンジなんでしょうか。
静と動の対照的なサウンド
イントロでジャーンと楽器隊が鳴り(動)、Aメロでは機械的な3連符アルペジオ(クリーントーン)に収縮します(静)。そしてサビで全て表打ちのドラム、歪みギターとまた熱を帯びる(動)という対照的な構図になっています。
title of mineなどpinkieなど静かなアルペジオからサビで激しくなる楽曲は珍しくありませんが、ここまで対照的に構成されているのは「時空かくれんぼ」の特徴かと思います。
イントロのコード進行とトニックへの意識
藤原 – Cのキーなんですけど、イントロだけ聴いたらGがトニックに聴こえないかなあと思って弾いてたんです。
What’s IN? 2008.01 vol.247
イントロのコード進行には藤原さんなりの意識がありました。トニックというにはキーに対する基調的な主音の事で、Cキーの時はC、Dキーの時はD….とキーに一致します。
C・・・トニック
F・・・サブドミナント
G・・・ドミナント
一般的に曲の最後にキーの音(トニック)に戻ると安定感があります(BUMP OF CHICKENの初期楽曲には意図的にサブドミナントで終わる楽曲が多かったです)。
イントロのコード進行は<F→C→G>ですので本来Cに戻る方が着地感が出ますが、Gsus4(Cの成分が混ざったG)を着地コードにすることで「Gがトニックに聴こえないか」と藤原さんは考えました。
また<F→C→G>という進行はGキーにおけるブルーススケールのコード進行です(例:バイバイサンキューのアウトロ)。Cキー/Gキー両方に重なる領域のコード進行を使うことで、ブルージー感と着地感の両方を演出しています。
ということで早速比較してみました!
時空かくれんぼとバイバイサンキューにおけるFCG比較
同じF→C→Gのコード進行でも(当然)キーの違いによって聴こえ方の差があります。藤原さんはどちらのキーとも取れるコード進行にしました。
藤原自身、説明できない歌詞
『orbital period』発売時のBUMP OF CHICKEN embedded from Excite Music
時空かくれんぼの歌詞は抽象的な表現が多く、藤原さん自身、当時の雑誌インタビュー3誌(ROCKIN’ ON JAPAN、What’s IN?、MUSICA)でも「わらからない曲」と表現しています。
藤原 – “時空かくれんぼ”はね、何がなんだかわかんないんです。なんか説明しようがないんです。
ROCKIN’ ON JAPAN vol.327
藤原 – 詞に関しては何がなんだかわからないし、「もう、俺はわかってる」っていうよくわからないことしか言えなくて(笑)、ごめんね。
MUSICA 2008.01 vol.9
藤原 – これは“ワケわかんない曲書いたな”と思って。
What’s IN? 2008.01 vol.247
この頃から詞の抽象化、難解化が進行します。言語化できない藤原基央さんの心の図像をそのまま書き起こしたような曲です。
“時空かくれんぼ”を歌っている
君に会わなきゃ 今すぐ会いに行かなきゃ
急いで行かなきゃ もう一度ちゃんと言わなきゃ
藤原 – <ちゃんと言わなきゃ>って『何をよ?』って思うんですけど。<もう一度>って、じゃあ『何度目なのよ?』って思うんですけど。もうそれしかないんです。詞を書いてるとそれしかないんです。
ROCKIN’ ON JAPAN vol.327
藤原さんが唯一明言しているのが「時空かくれんぼについて歌っている」ということです。「時空かくれんぼ」のタイトルは作詞後に付けられ、他の候補もありましたが最終的に最初の案(時空かくれんぼ)に戻って決まりました。
藤原 – “時空かくれんぼ”の詞について説明してくれって言われたら、「これは”時空かくれんぼ”のことを歌ってます」って言うしかなくて。「”時空かくれんぼ”と言う行為について歌ってます」と言うしかなくて。
ROCKIN’ ON JAPAN vol.327
モチーフがどうとか、きっかけがどうとか、比喩がどうとか情報を排除してシンプルにこの曲を受け止めるのが良いのかもしれません(他の曲にも言えると思います)。
打ち込みのデモ音源をメンバーに渡す
embedded from instagram@bumpofchickenofficial
「時空かくれんぼ」を作曲後、打ち込みのデモテープを作成して直井さん、増川さん、升さんの3人に聴かせます。
藤原 – 「これが伝わらなかったら、俺って一体何なんだろうな?」って思って。で、一番最初のリスナーである3人に聴いてもらった時は、気が気じゃなかっですね、特にあの頃は。
MUSICA 2008.01 vol.9
レムを書いた時も詞が個人的な主張であることから、バンドとして発表するべきか悩んでいたことがありました。
直井さんは打ち込みのデモ音源を聴いた後、聴き入るばかりで“何週間も”プレイできませんでした。リップサービスだと思いますが、ベーシスト魂が揺さぶられたのは事実のようです。
直井 – これはもうホントに熱い、俺の気持ちに火がついた。
What’s IN? 2008.01 vol.247
ライブ演奏記録
演奏ツアー
ホームシック衛星 (2008年) *Aセトリ
ホームシップ衛星 (2008年) *Aセトリ
PATHFINDER (2017年) *新潟公演1回のみ
「時空かくれんぼ」は『orbital period』をひっさげたホームシック衛星ツアー、ホームシップ衛星ツアーで演奏されました。同期SEで流しながらの演奏です。BUMP OF CHICKENの楽曲としては初めて3カポを使用しました(増川のみ)。
PATHFINDER新潟公演で1回のみ演奏!
*2017年10月3日 PATHFINDER 新潟朱鷺メッセ公演での「時空かくれんぼ」演奏の増川
2017年10月、PATHFINDERの新潟朱鷺メッセ公演にて9年ぶりに披露されました。長期間におけるツアーで披露されたのはこの1回のみという貴重な演奏です。同期SEも使用しており、それなりにリハーサルを重ねたはずなのになぜでしょうか。
(個人的には新潟、大阪はセトリがレア感が強い。またツアー後半になると新曲や懐かしい曲を演奏する傾向にある)
— 鳥のつぶやき (@memo_bump) 2016年5月7日
経験上、新潟で特別な楽曲を披露することが多いと思います(2008年の藤原弾き語り、2012年のバトルクライ)。メンバーの知人から前もってリクエストでも受けていたのでしょうか。PATHFINDER大阪のflyby同様、同期SEも利用しておりきちんとリハーサルを重ねたはずなのに、1公演でのみ披露するのは何かワケがありそうです。
以上、時空かくれんぼについて解説しました。ご拝読ありがとうございました。