BUMP OF CHICKENの「時空かくれんぼ」は2007年発売のアルバム「orbital period」の収録曲です。
「時空かくれんぼ」は静かさと激しさの二面性を持つサウンドアプローチと6/8拍子のリズムが特徴となっています。
「時空かくれんぼ」の歌詞の意味について、作詞作曲した藤原基央さん自身が「わからない曲」と明かしています。
一体「時空かくれんぼ」はどのように作られたのでしょうか。この曲の意味や歌詞解釈について解説・紹介します。
「時空かくれんぼ」基本情報
作詞・作曲 | 藤原基央 |
編曲 | BUMP OF CHICKEN & MOR |
作曲時期 | 2007年 |
収録作品 | 2007年10月19日 アルバム「orbital period」 |
ライブ初披露 | 2008年1月10日 「ホームシック衛星」ZEPP TOKYO |
「時空かくれんぼ」の意味
「時空かくれんぼ」の曲名に意味ついて、作曲者である藤原さんは明かしていません。ただし”過去現在未来を横断してアプローチする”という歌詞の内容を踏まえた曲名だと伺えます。
「時空かくれんぼ」という曲名は全ての作詞を終えた後に付けられました。他の曲名候補もあったものの、最初に思いついたのが「時空かくれんぼ」だったと明かしています。
それでは「時空かくれんぼ」はどのように作詞作曲されたのでしょうか。
「時空かくれんぼ」の作曲背景
『orbital period』発売時のBUMP OF CHICKEN embedded from Excite Music
6/8拍子をテーマに作曲した藤原基央
「時空かくれんぼ」は2007年にボーカル・藤原基央さんによって作曲されました。《6/8拍子の曲をやりたい》という藤原さんのアイデアから曲作りが始まりました。
藤原 – これは割と珍しくわかりやすいテーマがありました。『8/6をやってみたいな』、と。
MUSICA 2008.01 vol.9
自然に生まれてくるアイデアを膨らませる作曲が多い藤原さんですが、テーマ設定をした上で作ることもあります。例えば《ローコードで勢いのある曲》というコンセプトで「sailing day」が作られたこともありました。
洋楽に多い6/8拍子
6/8拍子は主に洋楽のハードロックの楽曲などで使われるリズムです。 6/8拍子はBPMが早いと軽快な雰囲気、ゆっくりだと壮大なバラードを演出します。参考までにAerosmithの「Cryin’」を載せます。
藤原基央がこだわったイントロのコード進行
藤原さんは「時空かくれんぼ」のイントロのコード進行をこだわったと明かしています。
藤原 – Cのキーなんですけど、イントロだけ聴いたらGがトニックに聴こえないかなあと思って弾いてたんです。
What’s IN? 2008.01 vol.247
トニックとはキーと同じ音階を指します。つまりCキーの時はC(ド)の音、Dキーの時はD(レ)お音です。
C・・・トニック
F・・・サブドミナント
G・・・ドミナント
一般的に曲の最後にキーの音(トニック)に戻ると安定感があります(BUMP OF CHICKENの初期楽曲には意図的にサブドミナントで終わる楽曲が多かったです)。
イントロのコード進行は<F→C→G>ですので本来Cに戻る方が着地感が出ますが、Gsus4(Cの成分が混ざったG)を着地コードにすることで「Gがトニックに聴こえないか」と藤原さんは考えました。
また<F→C→G>という進行はGキーにおけるブルーススケールのコード進行です(例:バイバイサンキューのアウトロ)。Cキー/Gキー両方に重なる領域のコード進行を使うことで、ブルージー感と着地感の両方を演出しています。
ということで早速比較してみました!
時空かくれんぼとバイバイサンキューにおけるFCG比較
同じF→C→Gのコード進行でも(当然)キーの違いによって聴こえ方の差があります。藤原さんはどちらのキーとも取れるコード進行にしました。
「時空かくれんぼ」の歌詞の意味
藤原基央本人も説明できない内容
「ROCKIN’ ON JAPAN」2008年1月号(アルバム全曲解説)
「時空かくれんぼ」の歌詞は抽象的な表現が多く、当時の雑誌インタビュー3誌(ROCKIN’ ON JAPAN、What’s IN?、MUSICA)では、藤原さん自身も「わらからない曲」と表現しています。
藤原 – “時空かくれんぼ”はね、何がなんだかわかんないんです。なんか説明しようがないんです。
藤原 – 詞に関しては何がなんだかわからないし、「もう、俺はわかってる」っていうよくわからないことしか言えなくて(笑)、ごめんね。
藤原 – これは”ワケわかんない曲書いたな”と思って。
「ユグドラシル」の頃までは、「太陽」「ギルド」のように事象や物事をモチーフにしたりデフォルメしたり、または「車輪の唄」「乗車権」のように物語にしてわかりやすい作詞手法が取られていました。
「時空かくれんぼ」の頃から詞の抽象化、難解化が進行します。言語化できない藤原さんの心の図像をそのまま書き起こした曲となり、同じ『orbital period』に収録されている「ひとりごと」でも同じ歌詞の書き方をしたと明かしています。
《”時空かくれんぼ”を歌っている》という藤原
君に会わなきゃ 今すぐ会いに行かなきゃ
急いで行かなきゃ もう一度ちゃんと言わなきゃ
藤原 – <ちゃんと言わなきゃ>って『何をよ?』って思うんですけど。<もう一度>って、じゃあ『何度目なのよ?』って思うんですけど。もうそれしかないんです。詞を書いてるとそれしかないんです。
出典:「ROCKIN’ ON JAPAN」 vol.327
インターネットで検索すると様々な歌詞考察サイトが出てきますが、藤原さん自身はインタビューで解釈について言及しているものはほとんどありません。藤原さんが唯一明言しているのが「時空かくれんぼについて歌っている」ということです。
藤原 – “時空かくれんぼ”の詞について説明してくれって言われたら、「これは”時空かくれんぼ”のことを歌ってます」って言うしかなくて。「”時空かくれんぼ”と言う行為について歌ってます」と言うしかなくて。
ROCKIN’ ON JAPAN vol.327
藤原さんの言葉をそのまま受け止めることが、曲を解釈する一番の近道だと思います。
「時空かくれんぼ」制作エピソード
打ち込みのデモ音源をメンバーに渡した時のそれぞれの気持ち
藤原さんは「時空かくれんぼ」を作曲後、打ち込みのデモテープを作成して直井さん、増川さん、升さんの3人に聴かせます。
藤原 – 「これが伝わらなかったら、俺って一体何なんだろうな?」って思って。で、一番最初のリスナーである3人に聴いてもらった時は、気が気じゃなかっですね、特にあの頃は。
MUSICA 2008.01 vol.9
「レム」を書いた時も詞が個人的な主張であることから、バンドとして発表するべきか悩んでいたことがありました。
関連記事「レム」– 殺人鬼の気持ちで書いた曲
直井さんは打ち込みで作られた「時空かくれんぼ」のデモ音源を聴いた後、曲を聴き入るばかりで何週間もプレイできなかったと明かしています。
直井 – これはもうホントに熱い、俺の気持ちに火がついた。
What’s IN? 2008.01 vol.247
「時空かくれんぼ」ライブ演奏記録
演奏回数 | 22回 |
演奏頻度 | ★★☆☆☆ |
初披露 | 2008年1月10日「ホームシック衛星」ZEPP TOKYO公演 |
最終演奏 | 2017年10月7日「TOUR 2017-2018 PATHFINDER」新潟朱鷺メッセ |
演奏ツアー | 2008年「ホームシック衛星」(Aセトリ) 2008年「ホームシップ衛星」(Aセトリ) 2017年「PATHFINDER」(1公演のみ) |
「時空かくれんぼ」は2008年に開催された全国ツアー「ホームシック衛星」と「ホームシップ衛星」で演奏されています。同ツアーでは、日替わり曲(Aセトリ)として「ひとりごと」と入れ替わる形で入っています。
同期SEで流しながらの演奏で、BUMP OF CHICKENの楽曲としては初めてギターに3カポを着用して演奏をしました(増川さんのみ)。
PATHFINDER新潟公演で1回のみ演奏!
*2017年10月3日 PATHFINDER 新潟朱鷺メッセ公演での「時空かくれんぼ」演奏の増川
2017年10月、PATHFINDERの新潟朱鷺メッセ公演にて9年ぶりに披露されました。長期間におけるツアーで披露されたのはこの1回のみという貴重な演奏です。同期SEも使用しており、それなりにリハーサルを重ねたはずなのになぜでしょうか。
(個人的には新潟、大阪はセトリがレア感が強い。またツアー後半になると新曲や懐かしい曲を演奏する傾向にある)
— 鳥のつぶやき (@memo_bump) 2016年5月7日
新潟公演では特別な楽曲を披露することが多いと思います(2008年の藤原弾き語り、2012年のバトルクライ)。メンバーの知人から前もってリクエストでも受けていたのでしょうか。PATHFINDER大阪のflyby同様、同期SEも利用しておりきちんとリハーサルを重ねたはずなのに、1公演でのみ披露するのは何かワケがありそうですね。
以上、「時空かくれんぼ」について解説しました。ご拝読ありがとうございました。