5th Album『orbital period』歌詞・楽曲解説

楽曲解説:かさぶたぶたぶ 隠し曲候補から生まれたアルバム曲

5th Album『orbital period』
アルバム「orbital period」

かさぶたぶたぶ:基本情報作詞作曲:藤原基央
作曲時期:2007年夏頃
録音時期:2007年10月頃
録音場所:一口坂スタジオ Studio 3
リリース:2007年12月19日 「orbital period」

「かさぶたぶたぶ」はBUMP OF CHICKENの『orbital period』に収録されている楽曲です。

 

「かさぶたぶたぶ」は歌詞が泣けるとバンプファン以外にも有名な曲で、かさぶたの「僕」とひざ小僧の「君」の出会ってから消えるまでの切ない物語になっています。

 

今回は「かさぶたぶたぶ」の制作エピソードや歌詞の意味について紹介します。



「隠しトラック」として書いた「かさぶたぶたぶ」

2007年夏、「花の名」「メーデー」の2枚のシングルリリースが決定していたとき「隠しトラック」が不足する事態になりました。「花の名」には既に出来上がっていた隠し曲「柿」を収録することが決まりましたが、新たに「メーデー」用のシークレットを書く必要がありました。

 

シングル「メーデー」(2007年10月)

藤原 – いろんなアイデアが出たんですよ。『みんなにわかるものがいいよね』とか、『ちょっと突き放したほうがいいじゃない』とか…(笑) まとまらなくなってきて『30分で、4人で1人1曲ずつ書いてみようよ』って。

2008.02.05 ON AIR TFM「BUMP LOCKS!」

 

BUMP OF CHICKENのメンバーはミーティングで隠しトラックの方向性を練り、正規楽曲よりも深い議論をしているといいます。今回は意見がまとまらず4人で各自作曲した結果、次の曲が出来上がりました。

 

作曲者 曲名 結果
升秀夫 「おてんばタヅコ」 お蔵入り  升が自宅で聴いている
直井由文 「スターダストホール」 「メーデー」隠しトラックとして収録
藤原基央 「かさぶたぶたぶ」 「orbital period」アルバム曲に昇格
増川弘明 「ござる、ござるよ」 未完成、お蔵入り*

 

藤原 – ものすごい猟奇的なものだったり、ものすごいシュールなものだったり、ものすごいポップなものだったり、色々とあったんですけど。

2008.02.05 ON AIR TFM「BUMP LOCKS!」

 

直井さんの「スターダストホール」がめでたく隠しトラックとして収録され、「おてんばタヅコ」は藤原さん曰く「諸事情により闇に葬られ」、増川さんの「ござる、ござるよ*」はお蔵入りになります。猟奇的な曲が「おてんばタヅコ」でしょうか。

*歌詞の内容から「ゼロ」(2011年) に収録される隠しトラック「恋の陰陽師」の元ネタになったと思われる

 

ライブで演奏できるシークレットトラック

茶目っ気の多いメンバー 

藤原 – 僕はじゃあちょっとその、“DANNY”が入ったような、そういう感じで(ライブで)できるような曲をやってみようかなあって感じで

ROCKIN’ ON JAPAN vol.327 2008年2月号

 

「FLAME VEIN」の隠しトラック「DANNY」のようにライブで演奏できる隠しトラックを作ろうという意識がありました。「かさぶたぶたぶ 」は同様にライブで披露するイメージを持って作曲されました。

 

 

「orbital period」全曲解説 「ROCKIN’ ON JAPAN」2008年2月号

 

かさぶたの消える運命を綴った歌詞

「かさぶたぶたぶ」の歌詞はかさぶたの「僕」とひざ小僧の「君」が出会ってから消えるまでを綴っています。かさぶたは出血した時に生まれ、怪我が治ると小さくなって最後は消えてしまいます。つまり、かさぶたは自分が消えてなくなることが「君」にとって良いことだという切なさを、生まれた時から内包している存在なのです。

 

藤原 – かさぶたの生まれた意味というか、生涯目標っていうのは、消えた時でしか達成できないっていう、それがもう切なすぎてですね。

ROCKIN’ ON JAPAN vol.327 2008年2月号

 

藤原 – かさぶたが生まれた理由というか、かさぶたの目的が成就する時ってかさぶたが消える時なんですよね。すごい強烈な印象を残してですね、俺の作詞活動の礎になってるくらい。

2008.02.05 ON AIR TFM「BUMP LOCKS!」

 

藤原さんは小さい頃の原体験からこの感覚をずっと持っていたといいます。いつか曲にしてやろうと心の片隅にあったこの感覚が、隠しトラックを作る30分に引き出されて書いたのが「かさぶたぶたぶ」です。小さい頃にかさぶたを見て切なさを感じることに天才詩人と呼ばれるセンスが伺えます。

アルバム曲として録音へ

藤原 – 別にふざけて書いたわけじゃないんですよ。でもシークレットっていう何でもありな部分でできちゃうから書けた曲だとも思ってて

2008.02.05 ON AIR TFM「BUMP LOCKS!」

 

「メーデー」用の隠しトラックとして書いた「かさぶたぶたぶ」ですが、制作スタッフやメンバーの意見によりアルバム曲としてきちんとレコーディングすることになります。

 

藤原 – これはちゃんと録って、シングルなりカップリングなり、他に使い方があるじゃないか!って言われて。『かさぶたぶたぶだよ?』って言ったら、『かさぶたぶたぶ』でいいじゃないかっていわれたんです。

引用:「MUSICA」2008年1月号 

 

BUMP OF CHICKENのメンバーは隠しトラックでも手を抜かずに向き合ったことによって生まれた曲と評しています。



ビートルズと同じ機材による録音

かさぶたぶたぶ レコーディング「かさぶたぶたぶ」が録音された一口坂スタジオ「Studio3」

「かさぶたぶたぶ」は2007年10月に東京都千代田区にある一口坂スタジオのStudio 3ブースにて録音されました。作業は深夜まで及び深夜3時を超えてレコーディングされました。

 

レコーディング機材はビートルズを彷彿とさせる楽器の数々が使用されています。

藤原 – 使ってる楽器もまんまそう(ビートルズと同じ)なんです。

引用:What’s IN? 2008年1月号

「かさぶたぶたぶ」レコーディング機材(ビートルズ仕様)

ギター(写真左) 1967 Rickenbacker 330 
ギターアンプ (同中央左) VOX社製アンプ
ベース(同右) Hofner Violin Bass *ピック弾き
ベースアンプ ホンダマン
スネア(同中央右) Ludwig Super Classic Black Oyster

直井さんはポール・マッカートニーをイメージしてトバイオリンベースを使用しました。これは藤原さんから誕生日プレゼントにもらったものです。上記以外にも藤原さんはギターは1961年製 Fender Stratcaster (Sunburst)を使用しています。

 

ブライアン・メイを意識したリフを弾く藤原基央

一口坂スタジオ Studio3のコントロールルーム。「かさぶたぶたぶ」の2番で聴こえるリフは写真の場所で藤原が弾いた。




2番Aメロ(0:52〜)から入るギターリフはブライアン・メイを彷彿とさせるサウンドを取り入れています。藤原さんが弾いているこのリフは、1961年製のストラトキャスターを使用して、ピックアップはセンター、エフェクターにワウを利かせて弾いています。

 

藤原 – この曲のレコーディング中に飯食いに行ったんですけど、飯食ってる間に(ワウの)ペダルが少しでも下がったら音が変わってしまうんで、人生で一番の早食いをしました(笑)

 

ひとりでレコーディングブースにいると暴走してしまうので、シールドを長くしてエンジニアやスタッフ達がいるコントロールブースで弾いてリフ作りをしたといいます。

 

ライブ演奏記録

飴玉の唄 ライブ動画2007年 1月11日 ホームシック衛星 at ZEPP TOKYO (Photo by Kazumichi Kokei, embedded from Barks.jp)

演奏回数 47回
演奏頻度 ★★★☆☆
初披露 2007年1月10日「ホームシック衛星」ZEPP TOKYO
最終演奏 2019年10月01日「TOUR 2019 aurora ark」ZEPP OSAKA BAYSIDE
演奏ツアー 2008年「ホームシック衛星」*全公演演奏
2008年「ホームシップ衛星」*全公演演奏
2013年「WILLPOLIS」*4公演のみ (アコースティック)
2019年「aurora ark」*2公演のみ

「かさぶたぶたぶ」はレコ発ツアーとなった「ホームシック衛星」「ホームシップ衛星」で全公演演奏されています。ライブでは観客の合いの手の拍手を煽り、サビの<かさぶたぶたぶ 〜かさぶた!>では合唱を促します。「WILLPOLIS」ではサブステージ、「aurora ark」ではアンコールで演奏されており、メンバー達は観客と一緒に楽しめるお祭り曲として位置付けているとみられます。

ライブ演奏機材

2008年
「ホームシック衛星」
「ホームシップ衛星」
藤原基央 – Gibson Les Paul Special TV Yellow 
増川弘明 – Gibson Les Paul Standard Historic Collection Reissued 1959 (Live Sub)
直井由文 – Sonic Jazz Bass Chama Blue  通称:初号機
2013年
「WILLPOLIS」
*アコースティック
藤原基央 – Gibson J-45 
増川弘明 – Martin D-28
直井由文 – Carruthers Guitars SUB-1
2019年 
「aurora ark」
*2公演のみ
藤原基央 – Gibson Les Paul Special TV Yellow 
増川弘明 – 
直井由文 – Fender Jazz Bass 

2008年のライブでは、増川さんはメイン機ではなくサブ機の1959リイシューモデル・レスポール・スタンダードを使用しています。「ホームシック衛星」「ホームシップ衛星」では「時空かくれんぼ」「かさぶたぶたぶ」等でしか演奏していない珍しい機材です。増川さんの「かさぶたぶたぶ」に対するギタリストとしてのこだわりを感じます。

2013年「WILLPOLIS」ではサブステージでアコースティックセットで演奏されています。楽器は変更されていますがアレンジは原曲と同じです。

 

「かさぶたぶたぶ」ライブ映像

aurora ark zepp osaka bayside2019年10月1日「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark」at Zepp Osaka Bayside 1日目 *This image is directly embedded from Twitter@boc_official_

「かさぶたぶたぶ」のライブ映像は2種類放送されています。

  • 2008年2月12日「ホームシック衛星」 Zepp Nagoya公演
  • 2019年10月1日「aurora ark」Zepp Osaka Bayside公演

いずれも有料チャンネル「スペースシャワーTV」でのライブ特集になります。ライブバージョンでは藤原さんのギターブラッシングで拍手を煽る形で始まります。最近のBUMP OF CHICKENはハモリ(コーラス)も同期SEが強めになっていますが「かさぶたぶたぶ」は同期SEなしの純粋な4人のコーラスワークが聴けます!

 

MUSICA vol.9 「orbital period」全曲解説

 

以上、BUMP OF CHICKENの「かさぶたぶたぶ」の歌詞の意味とレコーディング機材について解説しました。この記事を読んで新しい聴き方を発見していただければ嬉しいです。読んで頂きありがとうございました。

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