BUMP OF CHICKENの「voyager」「flyby」歌詞の意味と制作エピソードを紹介します。
「voyager」と「flyby」はアルバム『orbital period』の収録曲で、BUMP OF CHICKENの歌詞ありの楽曲としては一番短い曲です。
作曲をした藤原基央さんは2曲をひとつのストーリーとして書きました。「voyager」「flyby」は一体どのようにして生まれてきたのでしょうか。この記事では本人インタビュー情報をもとに解説します。
「voyager」「flyby」基本情報
作詞作曲 | 藤原基央 |
作曲時期 | 2007年10月以前 |
録音時期 | 2007年10月 |
リリース | 2007年12月19日「orbital period」 |
ライブ初披露 | 2008年5月17日 「ホームシップ衛星」さいたまスーパーアリーナ公演 *「flyby」のみ |
「voyager」の意味
「voyager」は1977年NASAによって打ち上げられた惑星探査機「ボイジャー1号」を意味します。ボイジャーは藤原さんのお気に入りのモチーフで2018年のシングル「話がしたいよ」の歌詞にも登場しています。
「flyby」の意味
「flyby」(フライバイ)は別名スイングバイともいい、衛星を遠くへ飛ばす際に惑星の引力を活用して加速度を増す宇宙空間における航法を意味します。
1979年に木星に接近通過(flyby=フライバイ)を行い、木星での重力アシストを使って土星に向かいました。「voyager」「flyby」の曲名はこの出来事に由来しています。
「voyager」「flyby」作曲エピソード
「voyager」は1分19秒、「flyby」は1分56秒と歌詞のあるものとしてはBUMP OF CHICKENの中で一番短い曲です。このような短さになった背景には、最初から2曲に役割が与えられていたためです。
「orbital period」のために生まれた2曲
2007年夏フェス出演以降、BUMP OF CHICKENの4人は「時空かくれんぼ」「ひとりごと」「arrows」「かさぶたぶたぶ」のレコーディングを行い、アルバム完成を意識するようになりました。
「orbital period」完成直前インタビュー「ROCKIN’ ON JAPAN」 2007年12月号
藤原さんがアルバムタイトルを「orbital period」に決めた後、ディレクターからアルバムの表紙と背表紙となる2曲をリクエストされます。
実際に書き始めたのは10月に1日スタジオを押さえて作曲・録音されました。書く前は重たい気持ちながらも、作曲をはじめたらサラッと書き上げたと言います。
“orbital period” の概念が呼んだ歌詞
作曲から遡ること半年前、2007年4月11〜13日の3日間、藤原基央さんの誕生日を祝う”藤ロック・フェスティバル”がメンバーで企画されます。
この時、藤原さんはメンバーに「28年で大きな周期を迎え、同じ曜日で誕生日を迎えること」をメンバーに共有し、朝まで盛り上がりました。
藤原 – それ(28年周期) をメンバーに話した時に、僕と同じかそれ以上に食らいついてきて。その、感動してるのが、嫌ぁなくらいに伝わってきて(笑)「だからバンプ・オブ・チキンやってんだろうなあ」と思ったんですけど。
出典:2008.01 MUSICA vol.9
この時の”BUMP OF CHICKENのメンバーだから共感できた” という盛り上がり、明け方4人で散歩した記憶や感情をもとに「voyager」「flyby」の2曲が書かれました。
メンバーにとっても特別な曲のようで、ギタリスト・増川弘明さんは以下のようにコメントしています。
増川 – 出来る過程がいろんなストーリーが前提にあった上での2曲だったんで、ホントにゾクっとしました。
出典:「What’s IN!?」2008年1月号
普通の人なら「で?」で終わってしまうような発見を、とても喜んでくれて共感してくれるメンバーに特別な感情を抱いたと言い、「voyager」「flyby」の作曲背景にはそのような出来事がありました。
「voyager」「flyby」制作エピソード
藤原基央がよく弾いていたギターのフレーズ
直井 – 「何だ?この懐かしい気持ちは?」と思ったら、フジ君がずうっと弾いていたものだったんですよね。すごいメロディアスなフレーズなんですよ。ソロでいいじゃんっていうくらいのね。
2008.01 MUSICA vol.9
四六時中ギターを触れている藤原さんは手グセのフレーズがいくつもあり、「voyager」「flyby」のギター・フレーズはそのひとつから生まれました。ちなみに「スノースマイル」「花の名」も藤原さんの手グセのギターフレーズから生まれています。
私も好きなフレーズでよく何気なく弾いてしまいます・・・ということで下手くそですが弾いてみました。
(演奏 by管理人)
演奏だけでも楽曲として成立してしまうくらい素敵なメロディですね。
2種類のアコースティックギターを使い分けたレコーディング
曲名 | 使用楽器(藤原) | 演奏部分 |
「voyager」 | Martin D-45 1968 | 全編 |
「flyby」 |
Martin O-18 1943 | 冒頭 (0:00~)と終盤(1:05~) |
Martin D-45 1968 | 終盤(1:05~) |
「voyager」使用機材
「voyager」ではMartin D-45を低音域・中音域・高音域の3つに分けて別録りしています。
1弦〜4弦を部分的に収録し、LとRに定位を分けることでよりステレオ的に響かせる特殊な制作が行われました。
藤原 – このアルペジオはどうしても全部定位をバラバラにして弦1本ずつで作ってみたいっていうのがあって
出典:「What’s IN!?」2008年1月号
そ同じアコースティックギター1本で録音したにも関わらず、分散させてレコーディングしたことにより数本分の音が耳に広がってくるようなサウンドが生まれています。
「flyby」使用機材
「flyby」の冒頭部分はMartin D-45 1968を使用しています。「プラネタリウム」から使用しているこのギターで繊細で指の押弦の強さの影響を受けやすいながらも、低音の鳴りが良いというのが藤原さんの評価です。
藤原さんとマーティンとマーティン🎶💯 pic.twitter.com/bh3rwvwlHM
— CHAMA (@boc_chama) May 6, 2017
上記で演奏しているのが「flyby」で使用されたMartin D-45です。こちらに加え、終盤部分では「voyager」で使用したMarting O-18もミックスされています。
10代から使用しているエフェクターを使用
「flyby」のバンド演奏部分ではギターにBOSS OS-2を繋いで音作りがされました。このエフェクターは藤原さんが10代の頃から使用しているもので、長年使っていたこれを掘り起こし、電池を入れてライトが点いた瞬間感動したといいます。1997年頃にはOS-2を使用していたことが確認できるので、16-17歳の頃のバンプの音が蘇っていると思うと感慨深いですね。
リリースから8年後にCHAMAさんがTwitterで解説しています。
練習ナウ。藤くんの足元はこれ一個。10代の頃から使ってるBOSS OverDrive/Distortion OS-2⚡️flybyもこれ一個で録ったのでした⚡️ pic.twitter.com/w7zRThixRF
— CHAMA (@boc_chama) March 16, 2015
直井はFender Precision Bassを使用
曲名 | 使用楽器(直井) | 演奏部分 |
「flyby」 | Fender Precision Bass 1959 (白) | 中盤 (0:27~) |
ベーシストの直井由文さんは「flyby」のレコーディングではFender製プレジションベースを使用しています。「stage of the gruond」「ベンチとコーヒー」で使用しており粗く太い音を出したい時に使われる傾向が多かった・・・が近年ではそれがSonic製プレベ(ピンク)にポジションを奪われているためレアな感じです。アンプはホンダサウンドワークスの本多氏に買わされた?(本人談)ホンダマンを使用し、”シビア”な感じで弾いたと明かしています。
「smile (Band ver.)」のMVで直井さんが弾いているのがFender Precision Bass 1959です。
ライブ演奏記録
演奏回数 | 7回 |
演奏頻度 | ★☆☆☆☆ |
ライブ初披露 | 2008年5月17日「ホームシップ衛星」さいたまスーパーアリーナ公演 |
最終演奏 | 2017年11月27日「PATHFINDER」Zepp Osaka Bayside公演 |
演奏ツアー | 2008年「ホームシップ衛星」*5公演 2014年「WILLPOLIS 2014」*1公演 2017年「PATHFINDER」*1公演 |
使用機材 |
藤原基央 – Gibson Les Paul Special TV Yellow |
増川弘明 – Gibson Les Paul Standard Historic Collection 1958 |
「voyager」は今まで1度も演奏されていません。仮に演奏されるとしたら「flyby」と1曲に繋げてアレンジされると予想しています。
非常にレアなライブ演奏曲
「flyby」は「ホームシップ衛星」から7回演奏されています。1分55秒はライブ演奏曲としては最短クラスです(厳密には英語詞未発表曲に2分未満の楽曲がありました)。演奏は本編ラスト、あるいはアンコール(ラスト曲)で6回披露されており、特別な位置付けであることがわかります。
全7回のうち4回が大阪公演の謎
「flyby」の演奏7回のうち4回が大阪で披露されています。「ホームシップ衛星」の追加公演5回は不思議ではありませんが、直近2回「WILLPOLIS 2014」「PATHFINDER」がどちらも大阪公演、ライブハウス公演であることが特徴的です。
特に2017年11月27日のPATHFINDER ZEPP OSAKA BAYSIDE公演ではダブルアンコール曲として演奏されています。ダブルアンコールは会場の盛り上がりにメンバーが応え、演奏しやすい「ガラスのブルース」「DANNY」「ダイヤモンド」がセオリーです。ダブルアンコールでなぜ演奏回数の低い曲なのか、しかも同ツアーでは一切演奏していない楽曲であり、短い曲である「flyby」なのかBUMP OF CHICKENのセオリーから外れています。
以前から大阪公演では珍しい楽曲を演奏することが多く、これはプライベートな交友関係によるものと推測しています。特に直井さんの親戚はインディーズ時代から大阪のライブハウスに見にきており、メンバー側がチケットを用意していました。
MUSICA vol.9 「orbital period」全曲解説
以上、「voyager」「flyby」の楽曲解説とエピソードを紹介しました。またいつかライブで披露されるといいですね。