ライブレポ:TOUR 2019 aurora ark 最終日 – あの日、東京ドームで何が起きたのか

ーーー2019年11月4日「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark」東京ドーム最終日

予兆は15曲目「新世界」の時からあった。

曲が終わっても、「ベイビーアイラビューだぜ!!」とアカペラで歌い続ける藤原基央。直井由文が途中からアドリブでベースを入れ、遅れて升秀夫のドラムと増川弘明のギターが加わる。

この瞬間、”今日のBUMP OF CHICKENは何かが違う”と確信した。

そしてアンコール後に待っていた、藤原の思いつきではじまった「スノースマイル」「花の名」の即興演奏へと繋がる。BUMP OF CHICKENの歴史的なライブとなった「aurora ark」東京ドーム最終日をレポで振り返る。



BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark セットリスト

2019年11月04日 東京ドーム

SE. aurora arc
01. Aurora
02. 虹を待つ人
03. 天体観測
04. シリウス
05. 車輪の唄
06. Butterfly (Long version)
07. 記念撮影
08. 話がしたいよ
09. 真っ赤な空を見ただろうか (サブステージ)
10. リボン (サブステージ)
SE. aurora arc
11. 望遠のマーチ
12. GO (メロディーフラッグ版)
13. Spica
14. ray
15. 新世界
16. supernova
17. 流れ星の正体

en.01 バイバイサンキュー
en.02 ガラスのブルース

W-en.01 スノースマイル (即興演奏)
W-en.02 花の名 (即興演奏)

その他のセットリストはこちら

前半:冒頭からボルテージMAXの藤原基央

aurora arkの最終寄港地 TOKYO DOME

BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark最終公演がいよいよはじまる。全国各地に音楽を届けた”船”の18回目の寄港地は東京ドーム、座席はサブステージ付近のアリーナ席だった。

オープニングSE「aurora arc」、繊細さとどこか切なさを感じさせるメロディーが会場を包み込む。ステージに設置された巨大スクリーンのシームレスで有機的に繋がる映像は思わず息を飲み込む。没入感がすごい。

1曲目「Aurora」。増川はこの曲でフレットラップを装着していた。今まで付けてこなかった器具、増川は常に成長し続けている。前回のツアーPATHFINDERの「fire sign」でも初めてスライドバーを使用したり、彼自身の演奏技術の引き出しを増やそうとしていることがわかる。2曲目「虹を待つ人」では藤原の声のテンションが高い。藤原「聴こえるか東京!?全部出せよ!!」と煽りに観客のボルテージがMAXに。明らかに藤原のテンションが高い、最初に感じたのはこの時だった。3曲目「天体観測」、PATHFINDERと同じく、この曲を冒頭に持ってくるセットリストは総攻撃感があって好きだ。

aurora ark BUMP OF CHICKEN シリウスのライブ2019年11月04日 aurora ark 4曲目「シリウス」を演奏中の写真。このツアーではバンド史上初の火炎演出が入った。 This photo is directly embedded from Twitter@boc_official_



CHAMAのMC(コール&レスポンス)、スタッフまで煽るところに男気を感じる。4曲目の「シリウス」では直井は5弦ベースを弾くBセトリの「シリウス」とAセトリ「月虹」ではステージ上で火炎が立ち上がる演出がある。近年の演出の変わりように抵抗感もあったがaurora arkではむしろ綺麗だなと思ってきた。スタッフの発案だとわかるし、CHAMAの父・直井守氏の「演出なんかいらない、音楽一本で勝負しろ」という少年期の教えはすでに4人の体にDNAレベルで染み込んでいる、だから心配ない。

余談だが「月虹」と「シリウス」を同日に演奏しないのは5弦ベースのチューニングが違うのが理由だと思われる。BUMP OF CHICKENのライブ機材はライブ中に同一楽器のチューニングを変更することはほぼなく、1つのチューニング・機材に対して同じセッティングの楽器を2本(メイン・サブ)用意する。5弦ベースは3-4本持っているはずだがライブ用として使われている楽器数は1-2本に限られていること、機材担当者(テック)の負担を考慮して「月虹」「シリウス 」は別日に演奏している。機材リスクが緩和できればいつか同日に演奏されることもあるだろう。

5曲目の「車輪の唄」では藤原のアドリブイントロがまた変わっていた。カントリーぽさが増したような雰囲気だったと思う。

メンバー紹介MC。6曲目「Butterfly」はロングバージョンの演奏。巨大スクリーンに映し出される風景(中南米のジャングルやブラジルのコルコバードのキリスト像)印象的の陽気感が印象的だった、陽気感が。

7曲目「記念撮影」:BUMP OF CHICKENの生演奏BGM

BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark 記念撮影2019年11月04日 aurora ark 7曲目「記念撮影」を演奏中の写真。コラボMVが終始流れてメンバーにはスポットライトが当たっていない。 This photo is embedded from Twitter@boc_official_

7曲目「記念撮影」。カチッカチッとシャッター音からはじまり、歌より先に「ONE PIECE」とのコラボ映像 (TVCM「日清 HUNGRY DAYS」仕様MV)が流れ始める特別バージョンだ。もう、これは息を飲んだ。メンバーへのスポットライトはほぼない。BUMP OF CHICKENの「記念撮影」生演奏をBGMにして、観客全員が同じ映画を観ていた。終わった後、拍手もそこそこに「映画みたい」「すごい」とざわついていたのが印象的だった。この日の藤原は攻める攻める、歌メロのアレンジがすごい。全国ツアーで育った「記念撮影」の最新形態を感じながら、藤原基央の”音楽の更新”をリアルタイムに受け取ることができる、その幸せな時間を噛み締めた。



セットリストが半分終わったと藤原プチMCの後、8曲目「話がしたいよ」。藤原はこの曲の歌を始める直前に「あぁ…」と声の出るため息をついた。藤原の言葉にならない”思い”が溢れたため息だと感じたし、脱力的な状態で書いた「話がしたいよ」にふさわしいため息だと感じた。

サブステージ

ハンドマイクで歌い上げる藤原基央

メンバーがサブステージにやってきた、なかなか近い。そういえば移動途中でメンバーの1人が車椅子の観客に抱擁して優しかった。9曲目「真っ赤な空を見ただろうか」では冒頭部分をハンドマイクで歌う藤原。この曲をハンドマイクで歌うのはこのツアーが初めてだ。増川と藤原の2人が呼吸を読みあって奏でる1番Aメロ、アドリブで時間をかけて歌い上げる、中腰になりがなら歌う藤原はまるでブルースシンガー、シャンソン歌手のようだった。余談だが、聞こえて来る生ドラムとメインスピーカーのタイムラグが著しい、0.3秒は離れていた。アリーナ会場では高い演奏技術とイヤーモニターの必要性を改めて感じる。

増川MC。増川の(ボキャブラリー的な意味で)引き出しに対して、藤原が「お前引き出すもの1つしかないじゃん、つまり壺じゃん」みたいなことを言ってた。藤原と直井の会話はお客さん向けなのに対し、藤原と増川の会話は二人だけのノリを見せてくる。そして升秀夫の紹介MCと生声挨拶。

10曲目「リボン」の前に藤原が一言。「昨日 “ダイヤモンド” という古い曲をみんなに聞かせられたこと、”真っ赤な空を見ただろうか” と言うそこそ古い曲を聞かせられたこと」に対しての思いを述べていた。「リボン」でも2番で新しいメロ変えをしていた。

サブステージを降り、メインステージへ移動するメンバー。あ、MORだ。藤原がひとりの長髪の男性の身体を掴み、無理やりモニターカメラに映そうとする。周りの観客は「誰?友達?」と囁くが、この男性こそBUMP OF CHICKENのプロデューサーMOR(森徹也)氏だ。逃げようと会うるMOR氏をよそに、にんまり笑顔の藤原。

後半 : 全国を巡って育ってきたアレンジ

aurora arc aurora arkツアー This photo is direct linked from Twitter@natalie_mu

2回目の「aurora arc」が流れる。藤原か増川のどちらかが途中からギターフレーズを入れ、「望遠のマーチ」に繋がるアレンジだ。叫ぶようなメロディアレンジ、2番サビで藤原は歌わずにセリフを入れてきたのに驚いた。うろ覚えだが「今日のお前のために!!!お前が歌うんだよ!!!」みたいな感じだったと思う。そしてDメロ、叫び続ける。

巨大スクリーンにはPVをベースとした水彩画が流れる。アリーナ会場はライブというより”コンサート”だと思っている、良い意味で。映像と音楽による幻想的な空間が生み出される。Aセトリ「アリア」のステンドグラスもすごくよかった。

12曲目「GO」。イントロに「メロディーフラッグ」のサビを織り交ぜて歌う藤原。本来D♭キーの「メロディーフラッグ」をC♭キーで歌っていた。キーを変えてまで選んだ理由がきっとあるのだろう。13曲目「spica」はしっとりとした曲の雰囲気と、スクリーンに映し出される緑の大樹が癒しを与えてくれる。藤原のメロ変えはこれまで聴いたことないくらい多かった。2018年2月11日にギター1本で即興演奏した日から、楽曲がメンバーと一緒に育ってきたのを感じた。14曲目「ray」、若干トイレに行きたくなる。藤原アウトロはギターチェンジなしのアルペジオ、セブンスの音を入れて渋くアレンジしていたと思う。

「新世界」で見えた即興演奏の予兆

aurora ark 新世界 BUMP OF CHICKEN ライブ動画参考:2019年11月03日 東京ドーム1日目「新世界」を演奏中の写真 This photo is direct embedded from Twitter@boc_official_

15曲目「新世界」ーーー MVが巨大スクリーンに流れる!最高に楽しくなる曲だ!ペンギンかわいいし、笑顔になってしまう気持ちの良い世界観が最高なのだ!これを観に来たと言っても過言では無い!!!ハンドマイク藤原が花道を歩き回る。PATHFINDERの時より歩きながら歌うことに慣れてきたと思う、時々ハンドマイクで屈みながら歌ったり。ワンポイントで入る8bitサウンドとゲーム仕様のペンギンの動きがもう・・・好きすぎる!

曲が終わったーーーと思ったら藤原は花道の先端からアカペラで「ベイビーアイラビューだ!」と観客にフり、当然観客も応えてレスポンスで歌う。ステージへ戻りながらもう1回、もう1回…ん?藤原終わらせる気あるのか?その瞬間、直井がとっさに察知してベースを入れ始めた!!!こんな即興初めてだ!!!まじか!!!もうSE同期が終わってるのに!!!升、増川が加わり延長戦へ突入。観客もこの異常事態を楽しんでる。藤原がステージに戻ったあたりで、メンバーに手を振り合図を出し2回目の終了。曲の長さを即興で変えることは、終わりがバラバラになる可能性があるので非常に難しい。それをこの日BUMP OF CHICKENはやったのだ。バンドのリミッターが外れ始めていた。



16曲目、「supernova」が始まる前にトイレに。戻ってきた時照明がオレンジ色だったのが綺麗だった。本編ラスト17曲目、「流れ星の正体」。同じコードでも増川は[xx13xx]のローポジションで弾いていて、藤原はハイポジション[x68xxx]でカッティングしていた。2番の増川のアルペジオと直井のハイフレットが繊細に絡む。いつも通りクライマックスで盛り上がり本編終了した。

アンコール:懐かしのバイバイサンキュー

aurora ark 東京ドーム 円盤化2019年11月04日 アンコール前の記念撮影。This photo is embedded from Twitter@boc_official_

CHAMAのグッズ販促MCと動画撮影+記念撮影。アンコール1曲目はバイバイサンキューだ!PATHFINDERから久しく演奏していない”掘り出し曲”をやるようになったのは本当に正解だと思う。ちなみに前日アンコールの”掘り出し曲”「同じドアをくぐれたら」と「バイバイサンキュー」はどちらも3拍子。これは意図的なものだと思われる(WILLPOLIS 2014の「睡眠時間」「銀河鉄道」でもそうだった)。CD音源の荒っぽい演奏と比べて大人になった感じの演奏、最後は「君ともっとしゃべりたい」と歌詞変えは藤原の今の心境を表しているようだった。アンコール2曲目は「ガラスのブルース」。2番であまり聴かない高いメロ変えをしていた。ソロ後から藤原は歌わず大サビまで観客に歌わせる。一番最後は「僕は精一杯明日(あす)に歌う」と歌詞変えしていた。

アンコール後の藤原MC、そして即興演奏

アンコール後、藤原以外のメンバーが舞台袖に下がる。藤原は観客へ向けてMCをする。「未来のお前に今日歌ったことが届く」「気づいてもらえないかもしれないけど、僕らの音楽がそばにいる」といったニュアンスを丁寧に話していた。

5分くらい話していると「こんなに長く話してんなら、もう1曲くらい歌えばいいよな(笑)」と言い、エレキギターを手に取る藤原。ざわつく観客。

「バンドのかっこいいところ見せてやるよ」ぼそっと呟き、スノースマイルを弾き語り始めた。aurora arkツアーで一度も演奏したことのない曲だ。慌ててバンドメンバーもステージに戻り演奏に加わる。BUMP OF CHICKENの演奏曲は予定調和的な部分が多く、アンコールもパターン化して必ずスタジオ練習されきた。しかしこの「スノースマイル」は本当に即興、BUMP OF CHICKENの真のバンド力を見た瞬間だった。

これだけで終わらない。「もう1曲くらいいけるかな」と呟き「花の名」を歌い始める藤原。直井、升は盛大に入りを間違え、増川はコードを思い出せない状態だった。増川が弾けなくなると、直井が本来弾かないベースを弾きながら、増川に指板を見せるようにアドバイスする。それでも藤原はギターをあえて弾かず、増川にギター弾かせた。普段のパートではない、増川がコード弾きをした形の「花の名」はとてもネイキッドなアレンジだった。下手くそだけど心のこもった演奏はBUMP OF CHICKENの原風景だ。演奏後に増川の演奏をいじるMCをした直井の優しさ。

そして本当にライブが終わった。

後のPONTSUKA!!で実は別の曲をやろうとしたという。Gコードを押さえながら考えていたのでおそらく「ダイヤモンド」(演奏頻度が多く非SE同期曲)。

リミッターの外れたBUMP OF CHICKEN

BUMP OF CHICKEN aurora ark blu-ray2019年11月04日 公演終了後。This photo is embedded from Twitter@boc_official_

即興演奏は過去にいくつか例はある。一方で「演奏できるのにしなかった」こと曲もあった。2012年7月14日「GOLD GLIDER TOUR」最終日(宮城公演)で新曲「firefly」を披露するかメンバーは議論していた。当日リハーサルでも演奏し、形にはなっていたものの「納得のいくレベルで聴かせたい」という主旨の理由でお蔵入りとなった。それだけライブで演奏することに”条件”をつけてきたのがBUMP OF CHICKENだ。

しかし今回、その条件は尽く打ち破られた。CHAMAは曲の合間にベース鳴らしたり(最近は少なかった)、藤原は「新世界」を延長したり、そして即興で2曲歌ったり。自縄自縛から解放され、純粋に音楽を楽しもうとしているのではないだろうか。それは近年のセットリストにも現れているようにも感じる。

バンド結成から22年に入り、BUMP OF CHICKENはまた新しいフェーズに入ろうとしている。このリミッターの外れたBUMP OF CHICKENの作る音楽が、パフォーマンスが、遊びがとても楽しみである。



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