楽曲解説:望遠のマーチ vol.2 自分で生み出した羽根で飛んできたということ

「望遠のマーチ」はBUMP OF CHICKENが2018年に発表した楽曲です。藤原基央さんの熱い歌声と疾走感溢れるブルージーなビートが特徴的な曲になっています。



STADIUM TOUR “BFLY” 全国ツアー中に書かれた「望遠のマーチ」

2016年7月16日 STADIUM TOUR 2016 “BFLY” at 横浜日産スタジアム 1日目。Photo embedded from Twitter@boc_chama

2016年6月、ボーカル・ギターの藤原基央さんは都内スタジオで「望遠のマーチ」を書きます。4都市6公演の全国ツアー「STADIUM TOUR 2016 “BFLY”」の期間中だった為、いつも以上にリスナー・観客の顔を感じながら書きました。

藤原 – この曲に関しては作ってる最中に明確に、要するにリスナーに向けて作ってるって感覚が明確になったと思うんですよ。

出典:MUSICA 2019年8月号 p.38

2016年7月17日、横浜日産スタジアムでのツアーファイナルのMCで「望遠のマーチ」に言及しています。

藤原MC – 「アリア」以外にも『…』やべぇタイトル言っちゃダメなんだまだ。まだメンバーにも聴かせてないからさ。そう、それが1曲あるし。…あともう1曲あんだよ(笑)

2016.07.17 STADIUM TOUR “BFLY” at 横浜日産スタジアム

このうち1つは同年発表される「アンサー」です(プレスリリース前だったので曲名を言えませんでした)「望遠のマーチ」はこのMCから2年間寝かされることになります。

「望遠のマーチ」のタイトルの意味





「望遠のマーチ」というタイトルは「希望」「絶望」「いこうよ」の歌詞を凝縮した言葉です。

藤原 – <希望 絶望>の『望』は『望遠鏡』の『望』だなぁと思って、『望遠鏡』って言葉が出てきて。で、『望遠鏡』って言葉は『遠くを望む』と顔て、そこに鏡をつけたものなんだな、と。

引用元:MUSICA 2018年8月号

藤原さんは文字や言葉に対する感覚が鋭いと思います。昔「アルエ」で「怖」の漢字を分解して「ハートに巻いた包帯」という歌詞をつけたのにも通じるところがありますね。

「マーチ」の部分は<いこう いこうよ>という言葉に多数の人へ呼びかけているイメージを持ちマーチ(行進)の言葉をつけました。

『自分だけの光は暗闇の中でしか見つけられない』

望遠のマーチ  1:10〜
夜を凌げば 太陽は昇るよ
そうしたら必ず また夜になるけど

引用元:望遠のマーチ / 作詞作曲 藤原基央 (2018年)

なぜ「太陽は昇るよ」と書いた後に「そうしたら必ず また夜になるけど」の一行を足したのかについて次のように答えています。

藤原 – 「夜を凌いで朝になる」っていうだけでは、光しか歌ってないない。でも人はただ光を見たって、その中で自分だけの光なんて絶対見つけられないじゃないですか。真っ暗の中にしか光は見つけられないじゃないですか。

引用元:MUSICA 2018年8月号

藤原さんは「上を向いて歩こうよ、やまない雨はないよ」と行った表面的な励まし方をしません。「下を見なければ穴に落ちるし、雨は必ず降る。」それを理解させた上で「でも晴れる日は来るよ」と書くのが藤原さんの歌詞ではないでしょうか。

新世界」にも書かれている「ネガティブさに向き合う」表現こそが作詞家・藤原基央の真髄だと思いますね。

『その羽根で飛んできたんだ』を歌詞に入れた理由

Photo bembedded from Twitter@boc_chama 

望遠のマーチ  1:10〜
絶望 希望 羽根は折れないぜ
もともと付いてもいないぜ

引用元:望遠のマーチ / 作詞作曲 藤原基央 (2018年)

「羽根は折れない」「もともと付いてもいないぜ」という独特のニュアンスの歌詞、この曲にはこのフレーズがないといけなかったと説明しています。

藤原 – 羽根はもともとついていないよって言ったあとで、『その羽根で飛んできたんでしょ?』って言わないと、この曲は完成しないんですよ。

引用元:MUSICA 2018年8月号

「周りがどうあれ、過去がどうあれ、今生きているのは君自身の力だ」、「ここまで来たのは君自身だ」そんな風に言われているような肯定的で前向きな歌詞です。

個人的な歌詞解釈は積極的に書かないようにしていますが、あえて言うなら「羽根」は藤原さんの書く「歩く」「歩き方」という言葉に近いなと感じます。教わらなかった歩き方で〜

初期を彷彿とさせるブルース・スケールを多用したアレンジ




Photo embedded from Twitter@boc_chama

作曲から2年後の2018年初頭〜春、レコーディングに入ります。この時『妖怪ウォッチ・ワールド』のCM曲として起用されることが決定しています。

「望遠のマーチ」のギターやベースには「ブルース・スケール(ブルー・ノート)」が多用されています。

藤原 – メロディの随所にブルーノートって言う音階が含まれているんですけど。(中略) 要するにブルーノートを使う音楽は自分の音楽体験の原風景にあるものなんですよ。

引用元:MUSICA 2018年8月号

「藤原基央 = ブルース・スケール 」と言い切れるできるほど、藤原さんの音楽制作の根源にこのスケールは組み込まれています。

インディーズ時代から現在のライブまで、藤原さんはほぼ全てのアドリブをブルース・スケールを弾いています。ペンタトニックを弾くより、セブンスの入ったブルージーな感じは適当に弾いてもカッコよく聴こえるからです。

バンド結成初期の英語のオリジナル曲(「デザートカントリー」「18 years story」「Danny」)や『FLAME VEIN』『THE LIVING DEAD』のリフやコード進行の至る所にブルーノートが使わています。

デモ版の「望遠のマーチ」はミドルテンポのファンク調だった

2016年6月に制作した「望遠のマーチ」のデモ音源はミドルテンポで曲調もファンクやソウルミュージックに近いものでした。

藤原 – その時(デモの時)は割とファンク、ソウルの感じだったんですよ。ブルーアイドソウルの感じだったと思う。

出典元:MUSICA 2018年8月号

藤原さんはアコースティックギター1本によるカッティングでファンク調を表現していました。ファンク調のカッティングは完成版のアコースティックギターにも一部名残があります。

2016年夏には直井さんもこのファンク調のデモ音源を聴いています。もし2年間寝かされず、すぐにレコーディングに移っていたら「望遠のマーチ」はファンク調のままアレンジが進められていたかもしれないですね。

ライブ演奏解説

「望遠のマーチ」は2018年12月29日の「COUNTDOWN JAPAN 18/19」で初披露され、その後の全国ツアー、夏フェスで演奏されています。

使用機材藤原基央:Gibson製 Les Paul Special
増川弘明:Gibson製 Les Paul
直井由文:Fender製 4弦ベース

近年では減少しつつある全員メイン機のスタンダードな機材で演奏されています。藤原さんも珍しく歌いながらリフを弾いています(サビ終わりやBメロ途中)

曲中で叫ぶ藤原

この投稿をInstagramで見る

BUMP OF CHICKEN Official Instaさん(@bumpofchickenofficial)がシェアした投稿





2019年全国ツアー「aurora ark」では間奏中に藤原さんが観客に向かって言葉を叫ぶようになりました。

藤原 – 目悪いからあんまりよく見えてねえけどさ、大勢の中の1人だと思ってんじゃねーよ。お前の為に唄ってんだよこの野郎!!

2019.09.12 aurora ark at 大阪府京セラドーム

藤原 – 名古屋!聞こえてるかこの野郎!お前に会いに来たんだよ!「お前ら」じゃない、「お前」に会いに来たんだよ!!

2019.09.21 aurora ark at 愛知県ナゴヤドーム

楽器プレーヤーとして感想をいえば「望遠のマーチ」は演奏していて楽しい楽曲です。特にサビに入るユニゾンフレーズを3人で合わせるのは弾いていて気持ちいですね。

以上、「望遠のマーチ」の解説でした。この記事を読んで新しい聴き方ができたら嬉しいです。ご覧いただきありがとうございました。

アルバム『aurora arc』全曲解説はこちら!