楽曲解説「記念撮影」-「写真」ではなく「撮影」の根源的な理由を求めた歌

「記念撮影」はBUMP OF CHICKENが2017年にリリースしたシングル曲です。

ループするサウンドトラックとアンニュイな歌詞が印象的な楽曲です。この記事では「記念撮影」の制作背景と歌詞の意味を解説します。



「記念撮影」基本情報

作詞・作曲 藤原基央
編曲 BUMP OF CHICKEN & MOR
作曲時期 2017年1月〜2月頃
録音時期 2017年2月〜4月頃
シングル 2017年7月5日 配信リリース
アルバム 2019月7月10日『aurora arc』
ライブ初披露 2017年9月16日「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」千葉県幕張メッセ公演

「記念撮影」作曲エピソード

結成20周年イヤー終盤に書いた曲

「CUT」2019年7月号「aurora arc」インタビュー

「記念撮影」は2016年2月から2017年2月にかけて、”BUMP OF CHICKEN 結成20周年イヤー”の終わる頃に書かれた曲のひとつです。

2017年1〜2月頃、ギター・ボーカルの藤原基央さんによって「記念撮影」が作曲されました。『aurora arc』収録作品の「流れ星の正体」「リボン」「ジャングルジム」も同じ時期に生まれています。

「記念撮影」の意味

「写真」という言葉を意図的に避けた作詞

藤原基央さんは雑誌のインタビューで「写真」という言葉を意図的に使わなかったことを明かしています。

藤原 – 僕としても考えた自覚はあって、それは『写真』って言わないようにしようというところですね。

引用元:CUT 2019年7月号 p.22

藤原さんは写真という形態が時代によって変わりやすい言葉よりも、撮影するという行為自体に着目しました。

藤原さんは常にBUMP OF CHICKENの楽曲に普遍性を持たせようとしています。過去の楽曲でも、電話の着信音を着メロではなく「ベル」と表現したり、自転車ではなく「車輪」と表現しています。

写真は紙だったり、デジタル画像だったりフォーマットがバラバラのため、色褪せない普遍的な行為として「撮影」という行為を取り上げたと明かしています。

「撮影する」という行為への本質的な問いかけ

藤原 – この時は写真の歌を歌いたかったんじゃなくて、撮影するっていう行為のことを歌にしたんだよね。撮影するっていう行為の持つ意味というか、人をそうさせる理由みたいなもの?

引用元:MUSICA 2019年8月号 p.34

藤原さんは “なぜ人は記念に撮影するのか” という行為そのものへの問いを根源的に掘り返そうとしました。

ギルド」は “人が生きるのにライセンスがいるのか”という問いから生まれ、「ひとりごと」は “やさしさとは何か” という問いから生まれました。

あたりまえを疑うことで本質を詞にしていくスタイルは藤原さんの得意とする手法であり、BUMP OF CHICKENの歌詞が深い理由でもあります。

「記念撮影」の歌詞は、写真自体の物質的な意味ではなく、撮影という行為の動機についての本質的な問いから生まれました。

藤原基央が導き出した答え

人が記念撮影する理由について、藤原さんが導き出した答えは「未来に残そうとしている」でした。

藤原 –  (写真を撮影する動機について)で、俺がこの曲で歌にしているのはそこなの。・・・きっと、未来の自分に何か残そうとしてるんだろうなって、そういう切実な思いがあるんだろうなって思うんだよ。

引用元:MUSICA 2019年8月号 p.34

未来の自分に見せたいのか、その瞬間を忘れたくないのか、撮影という行為の根源的な部分を藤原さんなりに解釈した歌詞が独特の世界観を作り出しています。

いつか終わる”魔法”の瞬間

記念撮影  1:10〜
ねえ きっと 迷子のままでも大丈夫 僕らはどこへでも行けると思う
君は知っていた 僕も気づいていた終わる魔法の中にいたこと

引用元:記念撮影 / 作詞作曲 藤原基央 (2017年)

撮影しようとしている瞬間を含めた一定の時間を”魔法”と表現しています。藤原さんの言葉えらびのセンスが光りますね。

“魔法”は色々な解釈ができると思います。連続的で区切りのない「時間」や「空間」が移りゆく様を”魔法”と表現しているとも、感情に訴えかける特別な「空気感」を”魔法”と比喩しているとも捉えられます。

記念撮影  3:28〜
君は笑っていた 僕だってそうだった 
終わる魔法の外に向けて
今僕がいる未来に向かって

引用元:記念撮影 / 作詞作曲 藤原基央 (2017年)

撮る瞬間、被写体は未来の自分と向き合っている、いつか今を見返す自分に向かって残そうとしている、そんな風に読み取れる歌詞です。*筆者の個人的な解釈です

「記念撮影」制作エピソード

ループするギタートラック




「記念撮影」は、曲の始まりから終わりまで同じコード進行が繰り返される、BUMP OF CHICKENの楽曲でも珍しい曲です。他には「レム」「voyager」だけです。

同時に弾くと不協和音になる音を分散させて弾く、特殊なアルペジオを使っています。これは2010年以降のBUMP OF CHICKENの楽曲で見られるようになり「キャラバン」「宝石になった日」で使用されています。

余談ですが「記念撮影」のイントロと浜崎あゆみさんの「July 1st」(2002年)にイントロが似ていると言われています。

類似箇所

コード進行:(Ⅳ) → (Ⅴ) → (Ⅲ) → (Ⅳ) / (Ⅳ) → (Ⅴ) → (Ⅲ)* → (Ⅵ)
*「July 1st」では5度のシャープ
アクセント:4拍目を伸ばす

作曲したのは元Do As Infinityの長尾大氏です。長尾さんの作る楽曲はこのアルペジオがよく使われています。二人とも同じ音楽的ルーツから影響を受けたのかもしれません。

レコーディング風景

2017年2月25日 ドラム録りを行う升秀夫。時期的に「記念撮影」のプリプロ制作、デモ作成だと思われる。Photo embedded from Twitter@boc_chama

「記念撮影」のレコーディングをする増川弘明

ギターにカポタストを着用していることから「記念撮影」だと推測されます(同時期にカポをつける楽曲がないため)。ただし投稿日はすでにTVCMで「記念撮影」が放送されている時期のため、直井さんが過去の写真を投稿した、CM用の別録り音源を放送したと考えられます。

ライブ演奏解説

3人のチューニングが異なる不思議な組み合わせ

公式動画YouTube「記念撮影」3:09〜 レ3弦5フレット(D) → 7フレット(E) を弾いた後(左図)に3弦4フレット(C#)を弾いている(右図)ことからレギュラーチューニングであることがわかる。



2019年8月20日 3カポをつけて「記念撮影」を演奏する増川弘明 。こちらはハーフダウンチューニング。aurora ark at 新木場STUDIO COAST公演 Photo embedded from Twitter@spice_mu

「記念撮影」は増川さんが半音下げチューニング、藤原さんと直井さんがレギュラーチューニングという異なる調律の楽器を演奏しています。
使用機材藤原基央:Gibson製 Les Paul Special *レギュラーチューニング カポなし
増川弘明:Fender製 Stratcaster *半音下げチューニング+3カポ
直井由文:Fender製 4弦ベース *レギュラーチューニング

弦のテンションの問題、ハイフレットの弾きやすさ、指板の見やすさなど色々な理由がありますが、異なるチューニング楽器を同時演奏するというBUMP OF CHICKEN史上初めての楽曲です。

フロントピックアップを使用する藤原基央

「記念撮影」での藤原基央さんのギターはフロントピックアップを使用しています。アルバム『aurora arc』初回限定版特典収録の「COUNTDOWN JAPAN 18/19」の記念撮影では16:01〜にセンターからフロントに切り替えている藤原さんの手元が映ります。

aurora ark ツアーの記念撮影2019年7月12日埼玉メットライフドーム1日目はフロントピックアップで演奏されたが2日目はセンターで演奏された。セッティングの忘れではなく意図的にセンターで演奏されている。

「記念撮影」MV

「記念撮影」リリックビデオ

公開日 2017年7月5日
Director 東市篤憲 (A4A inc.)
Designer かとうみさと (A4A inc.)
Designer 矢部一芽 (A4A inc.)
Designer 金子侑矢 (A4A inc.)
Project Manager 松永つぐみ (A4A inc.)

「記念撮影」はBUMP OF CHICKEN初となるリリックビデオが制作されました。ディレクションは「BFLY」のアートワークからBUMP OF CHICKENの制作に参画するようになった A4A inc.の代表、東市氏です。

「記念撮影」LIVE MV

公開日 2017年11月22日
Director 東市篤憲 (A4A inc.)
CG Designer 金子侑矢 (A4A inc.)
Project Manager 松永つぐみ (A4A inc.)

「記念撮影」のLIVE MVは全国ツアー「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」千葉幕張メッセ公演の様子が収録されています。

「記念撮影」ライブ演奏記録

演奏回数 49回
演奏頻度 ★★★★
初披露 2017年9月16日「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」幕張メッセ
最終演奏 2019年11月4日「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark」東京ドーム
演奏ツアー 2017年「TOUR 2017-2018 PATHFINDER
2018年「COUNTDOWN JAPAN 18/19
2019年「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019
2019年「TOUR 2019 aurora ark

「記念撮影」はこれまでライブで49回演奏されています。リリース後の総公演数が50回ですので、ほぼ毎回ライブで演奏されている計算になります。

「記念撮影」ライブ映像作品

映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER STUDIO COAST」 (会場限定販売)

映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER SAITAMA SUPER ARENA」

アルバム「aurora arc」*特典Blu-ray/DVD(2018年12月28日「COUNTDOWN JAPAN 18/19」収録)

映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark TOKYO DOME」(通常盤 / 2019年11月4日 東京ドーム公演 収録)


映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark TOKYO DOME」(初回限定版 / 2019年11月4日 東京ドーム公演 及び 2019年10月1日 Zepp Osaka Bayside公演 収録)

 

以上、「記念撮影」の歌詞の意味と楽曲解説でした。この記事を読んで「記念撮影」に新たな発見があれば嬉しいです。ありがとうございました。

2017年2月11日の記念撮影。バンド結成21周年をこの日はお祝いにメンバーで食事をして、さらに別の店でお酒を飲んだ。Photo embedded from Twitter@boc_chama



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