前回の記事「ゼロ vol.1 – 作曲編」では、SQUARE ENIXからオファーをもらってから藤原さんが曲を書くまでを紹介しました。この記事では、バンドによるゼロのレコーディングについての様子を紹介します。
藤原の家にゲームをやりに行くメンバー
1月20日前後にスタジオでFF零式のイラストを見ながら書き下ろした「ゼロ」。それから数日後、BUMP OF CHICKENのメンバー全員で映画「ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団」の0号試写に招待されます。バンプは主題歌として「友達の唄」を書き下ろしています。
その試写会を観た帰り、メンバー全員で藤原さんの家にゲームをやりに行きます(!)4人で藤原さんの家に…相変わらず仲がいいですね(笑)ゲームをあまりしない升さんまでいるのが珍しい!
増川さん、直井さん、升さんの3人を自宅に招いた藤原さんは、そこで初めて「ゼロ」のデモ音源を聴かせました。
藤原 「映画ドラえもん」の試写を観に行ったあとだったよね。
直井 そうそう。仕事の帰りに、メンバーで藤くんの家にゲームをしに遊びに行って。ふと藤くんが「『零式』の主題歌ができたよ、聴く?」って言うんですよ。こっちはまだできていないと思っていたから、「え!?」ってなって。また高めの声で(笑)
いつもなら、歌詞を見せながらCDプレーヤーで流すだけですが、藤原さんはおもむろにDVDプレーヤーを起動します。主題歌のイメージを伝えるために、零式のプロモーション映像を流しながらその横でゼロのデモ音源を流しました。
試写会を4人で観て、4人で藤原さん家でゲームして、4人でデモ音源を聴く。本当に仲のいい高校生が遊びの延長でやっている感じがして、いいなと思います。隠しトラックの「Believe」の様子そのままですね。
古代民族的なイントロ
ゼロのイントロはAマイナーのオンコードで紡がれるアルペジオが印象的です。イントロの裏でパイプオルガンのようなメロトロンの音が鳴っていたり、ウドゥと呼ばれる打楽器で古代的な、民族的な演出がされています。これはプロデューサーMORさんのアイデアが採用されました。
メロトロン
お姉さんからプレゼントされた「ウドゥ」
ウドゥは藤原さんが20代前半の頃にお姉さんから誕生日プレゼントとして貰ったものをレコーディングに使用しました。マニアックすぎる楽器の贈り物にメンバーの間では”ネタ”になっていたそうです。
特別なことはせず、いつもどおりのリズム隊
ベースの直井さんやドラムの升さんは、零式の主題歌だからといって特別なアレンジの詰め方はせず、「BUMP OF CHICKENの曲」として向き合っていきました。
直井 – レコーディングに入ってからは「零式」のことは忘れていました。フレーズに関しても、プリプロの時点で音が緻密に入っていたので。自然体でプレイすることができましたね。
升 – 作り方としてはいつもと変わらないです。1曲とちゃんと向き合って、その曲で自分は何をするべきなのかを感じて、ドラムを叩くという。
ちなみに直井さんの「ゼロ」のベースはライブごとに、その時の雰囲気で変えています。古い曲でベースラインが変わったりすることはありますが、「ライブごとに変える=特に決めていない」というのは珍しいです。ピンポイントのフレーズ以外はアドリブ重視にしているようです。
寝かせながらのレコーディングで完成
アレンジが決まり、徐々にレコーディングを開始します。ボーカルは仮歌で、間奏のブルースハープのアイデアもない状態の全体の6~7割程度の段階まで進めていきました。打楽器ウドゥのレコーディングを済ませてから数日後、大震災が起こりました。
一旦ゼロのレコーディングは中断して「smile」の制作に入ったり、しばらくして別の曲作りを始めたりしました。途中他の制作をしながら、ゼロのレコーディングを進めていくという形で行われ、ボーカルテイクは9月頃に録音されました。
藤原 – 歌なんてのはもうほんと、1週間ぐらい前に録ったばっかで。それで、昨日ミックスが終わって今に至るみたいな感じですね、はい。
ROCKIN’ ON JAPAN Vol.389 10月号
寝かせつつ、寝かせつつのレコーディングを経てゼロは完成していきました。
ライブ演奏記録
2011-2012 | GOOD GLIDER TOUR | 全公演演奏 |
2012 | GOLD GLIDER TOUR | 全公演演奏 |
2013 | WILLPOLIS | 全公演演奏 |
2014 | WILLPOLIS 2014 | ファイナルのみ1回演奏 |
ベースライン
先ほど書いた通り、ベースの直井さんライブごとにフレーズをアドリブでマイナーチェンジしています。初ライブ映像作品となったGOLD GLIDER TOUR 2012にも収録されていますが、「動かしすぎて後悔している(笑)」というようなことをインタビューで述べていました。
増川のギターソロ
原曲ではハーモニカが流れる間奏部分をライブでは増川さんのギターソロにアレンジされています。このソロは藤原さん考案ではなく、増川さん自身で考えたフレーズだと思われます。非常に基本的なペンタトニックスケールで演奏されています。
以上、ゼロのレコーディング編でした。2017年のツアーでは果たして演奏されるのでしょうか?楽しみですね!