7th Album『RAY』歌詞・楽曲解説

楽曲解説「トーチ」 泣いて歌えなかった藤原と全員のアレンジ

7th Album『RAY』

BUMP OF CHICKENの楽曲「トーチ」の歌詞の意味と制作背景について解説します。

 

「トーチ」は英語で「松明(たいまつ)」を意味します。制作してるときにボーカルの藤原基央さんは泣いてしまって歌えなかったそうです。

 

藤原さんはなぜ泣いてしまったのか、「トーチ」の歌詞に込めた思いとは何か。そのエピソードを紹介します。


「トーチ」基本情報

6th Album「RAY」(2014年3月発売) 

トーチ:基本情報作詞作曲:藤原基央
作曲時期:2013年春
録音時期:2013年秋
リリース:2014年3月12日 アルバム「RAY」
ライブ初披露:2014年4月5日 「WILLPOLIS 2014」 千葉幕張メッセ公演

 

2013年春に生まれた「トーチ」

藤原 – 「トーチ」は割と後の方に書いたんじゃないですかね。

出典:2014年3月6日放送 「BUMP LOCKS」

 

2013年春、ボーカルの藤原基央さんは「トーチ」を書き、アコースティックギターでの弾き語りをデモテープに録音しました。BUMP OF CHICKENとして初のベストアルバム発売と初のスタジアムライブ開催(QVCマリンスタジアム「ベストアルバム発売記念ライブ」)を発表した時期の話です。

 

トーチの意味

torch [tˈɔɚtʃ / tˈɔːtʃ]
名詞:松明(たいまつ)、(知識・文化の)光

トーチの意味は英語で松明(たいまつ)です。長い木の棒の先に油を浸した布を巻いて着火し、明かりを灯す道具として世界各地で使われてきました。

 

泣いて歌えなかった藤原

弾き語りで「トーチ」のデモを録る時も、バンドで合わせる時も、藤原さんは泣いてしまい歌うことができませんでした。自分の中で歌詞を消化することができなかったからです。

 

藤原 – みんなで合わせても、一人で弾き語りしても泣いちゃって全然歌えなくて(笑)それはきっといいことなんでしょうけど・・・そこを消化するのにちょっと時間がかかりましたね。

出典:MUSICA  2014.04 

 

藤原さんは、記憶や実体験、経験、感情、現実、非現実が複雑に入り交ざった歌詞だということだと述べています。

 

また「トーチ」はCHAMAさんと升秀夫さんのベーシック部分が固まらず、最終的にメンバー全員でアレンジを決めた紆余曲折がありました。肌で感じた「トーチ」のプロセスに思いをがこみ上がり歌えなかったそうです。

 

藤原 – 4人で合わせながらアレンジ決めていくっていう。(中略) 俺はそういうストーリーも相まって、割と歌えなかったんです。泣けてきて 

 

MUSICAのインタビューでは<君>や<あなた>、<ひとり>について言及していますが、かなり複雑で詩的な発言なので(そして長いので)、変に切り取りをせずに置こうと思います。気になる方は書店で購入されてみてくださいね。

 

「RAY」全曲解説  MUSICA 2014年4月号

 

当時会議で涙を流していたメンバーたち

2013年春はベストアルバム発売について事務所で多くの議論をしたあとの時期です。ベストアルバム発売時のインタビューでこの頃「よく会議で泣いていた」と発言しています。それぞれ4人の人生、BUMP OF CHICKEN、友達というものに対して敏感になっている時期でした。

時期を同じくして書かれた「トーチ」の歌詞や感情にも同じ背景があったのだと思われます。歌詞を書くきっかけがバンドにせよ、外的要因にせよ、2013年初頭〜春は藤原さんにとって多感な時期だったといえます。

 

アレンジを構築していく升と直井

藤原さんは歌とギターだけの「トーチ」のデモテイクを他のメンバーに聴かせました。CHAMAさんと升さんは自宅のPro Toolsで作業し、一緒にスタジオに入りセッションを行ってベースとドラムのアレンジを決めていきました。

 

藤原 – (直井と升の)ふたりがそれぞれリズムのデモを持ってきてプレゼンをする、みたいな。最初がチャマで次がヒデちゃん、みたいなのが何回かあった。

出典:MUSICA 2014.04

 

「トーチ」のようなシンプルな構成の楽曲ほどアレンジの時間がかかるとインタビューで語っています。

「ラストワン」で試行錯誤した経験同じく「RAY」収録の「ラストワン」では直井と升が別々に考えたベースとドラムを組み合わせたため、曲調がバラバラになり藤原にNGをもらっていた。それを受けて「トーチ」は二人三脚でアレンジを構築していった。

 

最終的に全員で演奏を考えた「トーチ」

「トーチ」はBUMP OF CHICKENの楽曲の中でもストレートなアレンジです。そこに辿り着くには紆余曲折を経て完成形に至りました。

 

CHAMAさんと升さんのアイデアは残念ながらうまく固まらず、最終的にメンバー全員で「トーチ」のアレンジを考えていくことにします。

 

増川 – シンプルなデモを聴いて、そこから4人でいろいろやり始めたっていうシリーズの、かなりわかりやすい例なんじゃないですかね。

出典:MUSICA  2014.04 

 

アルバム「orbital period」(2007年) 〜「RAY」(2014年) の楽曲の多くは、藤原さんとプロデューサー・MOR氏がデモ段階で編曲の方向性を決め、メンバー各自がそれを再構築していく制作形式です。

 

これに対し「Butterflies」(2016年) は、藤原さんがデモを作り3人が別のスタジオで練習するという手法で制作されます (シングル曲を除く) 。「トーチ」は「Butterflies」への布石となる1曲といえます。

 



リハーサル中に付け足した大サビ


「トーチ」はデモテープとCD音源で曲の長さが異なります。リハーサル中に勢いがつき「大サビをもう1回繰り返そう!」とその場でメロディと歌詞を付け足しました。

 

増川 –  “トーチ”は曲のムードとかはそのままなんですけど、尺が伸びたり、いろいろあって

藤原 – 尺が伸びるにつれ、歌詞も増え。

増川 – そういうものがデモの現場で一緒になされていって、楽しかったですね。

出典:MUSICA 2014.04 

 

「トーチ」にはバンドで曲を作る楽しみという初期衝動が現れています。10代の頃に直井さんの家で曲を作ったベースラインに即興でメロディを作った「彼女と星の椅子」のメロディを作ったようなBUMP OF CHICKENの源流が垣間見ることができます。

 

前日にリクエストされたベースライン

トーチ 直井由文 ベースEmbedded image from Twitter@boc_chama

レコーディングを翌日に控えた最終セッションで、藤原さんは直井さんのベースにリクエストをします。藤原さんが間奏の動くベースラインのアイデアを伝えて、直井さんは急遽本番前にベースラインを変更しました。

 

それがこのイントロのベースラインです!

 

バンド全員でセッションを繰り返しアレンジを決めていく、ここ数年ではBUMP OF CHICKENにはあまりない曲作り手法でした。近年のBUMP OF CHICKENの楽曲の中でも、すごくバンドらしさが溢れる曲ではないでしょうか。

 

「RAY」収録作品の作曲日

「RAY」収録曲の生まれた日は以下の通りです。「トーチ」は全収録曲の中でも終盤に制作された曲でした。

2009年8月7日 (please) forgive
2010年7月 morning glow
2010年秋 友達の唄
2010年12月28日 サザンクロス
2011年1月20日頃 ゼロ
2011年3月 「smile」
2012年5月 firefly
2012~2013年上半期 虹を待つ人」
2012~2013年上半期 「ラストワン」
2013年春 「トーチ」
2013年夏~秋 「ray」

*レコーディング日ではなく藤原の作曲した日付

 

ライブ演奏記録

トーチ BUMP OF CHICKEN ライブEmbedded image from Twitter@boc_chama

演奏回数 36回
演奏頻度 ★★☆☆☆
ライブ初披露 2014年4月5日 「WILLPOLIS 2014」幕張メッセ公演
最終演奏 2018年3月17日「PATHFINDER」福岡マリンメッセ公演
演奏ツアー 2014年「WILLPOLIS 2014
2017年「PATHFINDER
その他:LIVE at 新木場STUDIO COAST, LIVE at 台湾
使用機材
藤原基央 – Tokai Les Paul Special モデル*青色  (2014年) 
Gibson Les Paul Special Historic Collection 黄色  (2017年) 
直井由文 – Fender Jazz Bass (2014年)
増川弘明 – Gibson Les Paul Historic Collection ’59 (2014年) 

「トーチ」は全国ツアー「WILLPOLIS 2014」と「PATHFINDER」で演奏されています。「RAY」収録のアルバム曲では唯一2回以上のツアーで披露されました。

青レスポールを使用する藤原基央

青レスポール ギター 藤原基央

Tokai製の青レスポールを持つ藤原基央 Photo embedded from Twitter@boc_chama

藤原基央さんが青色のレスポールスペシャルを弾く数少ない楽曲です。「WILLPOLIS 2014」では青色スペシャルを使用しましたが、「TOUR PATHFINDER」ではメイン(黄色)のギターに戻っていました。

 

機材解説:青色レスポールスペシャル2012年「GOLD GLIDER TOUR」での「ハルジオン」から使用され「トーチ」「You were here」などで使用されている。青色のギターは2種類ありトーカイ製とSonic製のレスポールスペシャルモデルを青色にリフィニッシュ塗装している。

「トーチ」ライブ映像収録作品

映像作品「BUMP OF CHICKEN WILLPOLIS 2014」

2015年2月4日 「BUMP OF CHICKEN WILLPOLIS 2014」

「トーチ」のライブ映像は「BUMP OF CHICKEN WILLPOLIS 2014 [Blu-ray/DVD]」で視聴可能です。見どころは藤原さんが3番Aメロでギターを弾かずに、ベースとドラムに歌をのせるライブバージョンのアレンジです。すごく歌詞が入ってきます!

 

以上、トーチについて紹介しました!