アルバム曲(7th Album「RAY」M-04 )2014年
作詞作曲:藤原基央
作曲時期:2010年12月28日前後
サザンクロスは、BUMP OF CHICKENの7枚目のアルバム「RAY」(2014年)に収録されている楽曲です。曲名の「サザンクロス = Southern Cross」(=南十字星)の文字通り、夜空をイメージさせる透き通った音色のアルペジオが印象的な疾走感溢れるナンバーです。
Contents
COSMONAUT発表後最初に書いた曲
COSMONAUT発表後の流れ
2010年 | 12/15 | 6th Album「COSMONAUT」リリース |
12/28 | 藤原、「サザンクロス」を書く | |
2011年 | 1/20頃 | 藤原、「ゼロ」を書く |
COSMONAUT発売前に存在したストック曲
2. morning glow
3. 友達の唄
2010年12月、「orbital period」以来3年ぶりとなる新作(いやー長かった…)「COSMONAUT」がリリースされます。この頃には藤原さんの作曲ペースは格段に上がっており、アルバム発売時点でストックが3曲(!)存在していました。
リリース後はスタッフに「FF零式の主題歌を書いて」とせがまれていた藤原さん。しかし「ゼロ」(FF主題歌)よりも前に「サザンクロス」を書きます。藤原さん本人曰く「2010年のうちに1曲書いておきたいという気持ちがあったのかもしれない」だそうです。
どうやって作詞したかあまり覚えてない
南十字星という素敵なタイトルがつけられたこの曲ですが、藤原さん自身どのような意味を込めて歌詞を書いたかは覚えてないそうです。
藤原 – もうね、これは12月28日ん俺に訊かなきゃわからないことですね。でもすっと出てきたよ。“友達の唄”とかに近いですよね。(中略)まぁ不安だったり、でも勇気を出そうとしていたり、そういう感じなんでしょうね。
musica vol.84
「友達の唄」の次に出来た曲とあって、歌詞の解釈は近い部分を歌っているようです。個人的な印象ですが、私も最初に聴いた時「友達」に対して送っている曲に聞こえました(歌詞というかサビのコード進行が66号線とキー違いで一部同じで、似たような印象を受けました。)
タイトル&歌詞の意味・解釈

南十字星の写真 Don Pettit, ISS Expedition 6 Science Officer, NASA – NASA, modified by Kookaburra wikipediaより
タイトルになっているサザンクロス(Southern Cross)とは南十字星を意味します。南十字星はその昔、航海上の目標として方位を確認する目印の恒星としての役割を担っていました。北半球でいう北極星と同じですね。
なぜタイトルを「北極星」でなく「サザンクロス」にしたのか
南十字星は基本的に南半球でしか観測できません。あるいは北半球の南限地域(日本では小笠原諸島など)のみ見ることができます。つまり藤原基央さんは実物のサザンクロスを(ほとんど)観たことがないはずです。
ただし北極星が一つの恒星に対して、南十字星(みなみじゅうじ座)は4つの恒星から成り立っています。4つの星はバンプのロゴマークにもなっていますし、三ツ星カルテットでも同じモチーフが出てきますね。藤原さんは「目印になる星」であり「4つの恒星」というモチーフを使うべく、北極星でなく、南十字星をタイトルにつけたのではないでしょうか。
歌詞の意味・解釈 – 4つ目の恒星について
三ツ星カルテットは「自分以外の3つの恒星」を目印にするという意味で「三ツ星」と名付けました。ただ今回の南十字星は4つ星ですよね。では4つ目の星は誰を指しているのでしょうか?
普通に考えれば、4つ目の星は藤原さんですね。ただもう一人だけ藤原さんにとっての「恒星」になりうる人物がいるんです。もちろん作詞者の藤原さん自身しか答えはわからないですが、戯言・妄想で書いて観ます。読みたくない方は飛ばしてください(笑)
4つ目の星=BUMPの5人目のメンバー”通称あいつ”
唯一のバンプ公式元メンバーの人で、初期のポンツカでは名前も呼ばれていました。直井さんや増川さんなどオタクメンバーの中で浮いていた感じでしたが、もともと藤原さんとは仲が良かった人物でした。1年ほどで脱退しますが一緒に合宿に行ったりして経験を共有しています。お別れをしたりさよならを言ったり、歌詞の内容とも合っているかな・・・と妄想してみました。バンプオブチキンのメンバーであったことは紛れもない事実ですから、彼ら同様「恒星」になれる存在ですね。
どんな今を生きていますか 僕の唄が今聴こえますか
サザンクロス / BUMP OF CHICKEN
妄想はさておき、少なくとも歌詞からわかることは、藤原さんがしばらく会っていない人物であり、さよならを言った人物であり、約束をした人であるということです。色んな解釈ができると思います。
一口坂スタジオで最後に録った(バンドサウンドの)曲

一口坂スタジオ Photo by Jaco Ten
BUMP OF CHICKENはjupiter後半の楽曲から都内にある一口坂スタジオをレコーディングスタジオとして使用していました。続くユグドラシル、orbital period、COSMONAUTも全てここのスタジオで録音された音源です。
しかし2012年の営業停止が決まり、BUMP OF CHICKENのバンドのレコーディングとしては「サザンクロス」が最後のレコーディングになりました。但し、サザンクロスの後にGOLD GLIDER TOURのオープニングSE用楽曲「GOLD」のレコーディングが行われており、それが本当の意味での最後の一口坂スタジオ楽曲になります。GOLDは映像作品「GOLD GLIDER TOUR」で確認できますが音源化されていないので、音源という意味では「サザンクロス」が最後にといえますね。
COSMONAUTからRAYへ
COSMONAUTではモーターサイクルや透明飛行船などのようにキメ細かいリズムアレンジが特徴的で、リズムというものに対してバンド全体で理解を深めた作品でした。サザンクロスではそのバンド内の楽曲づくりの特徴が次第に新しい趣向に変わっていく過度期の作品と言えます。
藤原 -リズムで仕掛けを作って表現していってますね。だけど、2拍目、4拍目のアクセントで聴かせていこうっていう気持ちも少し出始めてる。流行が移り変わる狭間にいる楽曲っていうか。
musica vol.84
fireflyのインタビューでも2拍目と4拍目(=「ニーヨン」)にアクセントを置く方法を取っています。
藤原 – この曲はニーヨン(2拍目、4拍目にアクセントを置くこと)を使って遊んでみようとデモを作ってるときに思いましたね。
http://natalie.mu/music/pp/bumpofchicken08/page/3
つまり「RAY」のアルバムはニーヨンを重点的に使ったアルバム・・・なのでしょうか。単純に”裏打ち”という意味ではなさそうですが・・・。音楽理論をもっと勉強します。
間奏はベースに合わせて生まれた
1番のサビ〜2番Aメロの感想やアウトロのギュイーンというギターのフレーズは直井さんのベースから生まれました。
藤原 – あそこはベースを聴いてから作ったフレーズだったんで、ベースありきだったよね。
Musica vol.84
この部分、ベースの直井さんもスライドさせてギュインギュイン鳴らしています。morning glowのイントロとは同じ手法ですが、morning glowに比べてサザンクロスは「無機質」なグルーブで表現しました。
アルペジオのギターはジャガーを演奏
Aメロで流れる繊細なアルペジオの音色はジャズマスタージャガーという種類のギターを使用してレコーディングしました。レコーディングで演奏しているのは藤原さんですが、ライブでは増川さんが緑のフェンダー製ジャガーを使用していますね。*ジャズマスターではなくジャガーの誤りでした。
緑色のジャガーを持つ増川さん
早速リハなう〜🚧
写真は昨夜の増川さん📸 pic.twitter.com/Ai4vu019MQ— CHAMA (@boc_chama) 2017年2月11日
ライブ演奏記録
サザンクロスの演奏記録と回数
2014年 | WILLPOLIS 2014 | 22回 |
LIVE at Studio Coast | ||
LIVE at Taiwan | ||
WILLPOLIS 2014 FINAL |
サザンクロスは2014年のツアー中に演奏されました。全セットリスト入りしており22回演奏されています。2014年以降は演奏されていません。
ライブ使用機材
増川さんは緑色のジャズマスターを使用しています。バンプの場合、レコーディングでシングルコイルのギターで弾いていてもライブでは増川さんがハムバッカー(主にレスポール)で弾いているのがほとんどです。レコーディングで使用したジャズマスターをライブでも演奏するというはなかなか珍しいです。
この曲での増川さんのパートはアルペジオの連続とブリッジミュートでかなり忙しいです。その様子は映像作品「WILLPOLIS 2014」で確認することができます。
直井さんが紡ぎ出すリズミカルで動きの早いベースライン、増川さんの光るアルペジオ、升さんのトリッキーなドラム、それぞれが有機的に結びついて独特のグルーヴを生み出しています。またライブでこの曲が演奏されたらいいですね。
以上、サザンクロスについての紹介でした。