BUMP OF CHICKENの楽曲「友達の唄」の歌詞の意味と制作背景について解説します。
「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 」の主題歌として書き下ろされた「友達の唄」。作詞作曲を手掛けたボーカルの藤原基央さんがのび太のことを考えて書いた楽曲です。
「友達の唄」に込めた思いとは何か、のび太に対する気持ちとは何か。そのエピソードを解説していきます。
「友達の唄」基本情報
作曲時期:2010年秋
録音時期:2010年秋
リリース:2011年2月23日 「友達の唄」 M-01
アルバム:2014年3月12日 アルバム「RAY」
ライブ初披露:2011年12月5日「GOOD GLIDET TOUR」 渋谷AX公演
「ドラえもん」の主題歌オファーと観賞会
2009年12月下旬、BUMP OF CHICKENのメンバーはボーカル・ギター藤原基央さんの自宅に集まり、お酒を飲みながらDVD観賞会を行いました。
鑑賞したDVDの中に「映画ドラえもん 〜のび太と鉄人兵団」(80年代版)も含まれており、ほろ酔いになったメンバーはこの映画に感動しながら一緒に時間を過ごします。
翌年、「映画ドラえもん」製作側から「のび太と鉄人兵団」のリメイク版主題歌のオファーをもらい、一連の流れの偶然にメンバーは驚いたそうです。
2010年秋頃、「COSMONAUT」制作中のスタジオ横の会議室で書き始めたのが「友達の唄」です。楽曲としては「三ツ星カルテット」の次に書かれた曲になりました。
藤原基央が愛読していた「のび太と鉄人兵団」
昔、藤原さんは学校を休んだ日に「のび太と鉄人兵団」の漫画をお母さんから渡され、繰り返し読んでいました。2010年、リメイク版のオファーをもらった際、藤原さんが最初に思いついたシーンは地下鉄の階段で佇むリルルをのび太が発見するシーンだったといいます。
藤原 – その中でも特に… “リルルが地下鉄の階段のところに腰かけて思い悩んでいるところをのび太くんが発見する” っていうシーンが僕本当に大好きで。
出典:80.0 kHz TFM「BUMP LOCKS!」 2/21放送
画像埋込:「お気楽な日本美術」様より
藤原さんはこのページの言葉と絵を思い浮かべながら「友達の唄」を書いていきました。曲を聴きながら漫画版を読んでみると、藤原さんの気持ちを追体験できるのではないでしょうか。
「友達の唄」の歌詞の意味
「友達の唄」の歌詞は、”藤原基央からのび太へ”という視点から生まれました。
藤原 – あの頃のダメだったオレ、うまくいかない自分とか。そういう時も、のび太はずっと近くにいて友達でいてくれたっていう気が勝手にしてて…。なんかこう、のび太への気持ちが炸裂していって.
出典:80.0 kHz TFM「BUMP LOCKS!」 2/21放送
人生の様々な場面で “のび太が寄り添ってくれていた” と感じた藤原さんは、その気持ちを詞に綴っていきます。
藤原 – 自分から見たのび太、さらにのび太を通して、「ドラえもん」という作品を感じながら曲を書いていって。
出典:音楽ナタリー
ちなみに藤原さんは「雨」「雨の日」という言葉を”うまくいかないこと”や”自分でコントロールできないネガティブな事象”の比喩として使う傾向があります(参照「天体観測」)。
天体観測 3:00〜
予報外れの雨に打たれて 泣き出しそうな
君の震える手を 握れなかったあの日を
引用元:天体観測 / 藤原基央 (2001年)
冒頭の <雨の日なんて何度もある> という歌詞のくだりはまさに藤原さんの心模様を写していますね。
友達の唄 0:35〜
あなたが大きくなるまでに
雨の日なんて何度もある
その中の一度は一緒に濡れた事
忘れちゃうかな
引用元:天体観測 / 藤原基央 (2010年)
人生では誰もがうまくいかない事が起こりうる中で、一緒にダメだった、一緒に悩んだということの嬉しさと、いつかは忘れてしまう寂しさを表しているように思えます。
のび太への思い、友達への思い
LOVE.@boc_official_ pic.twitter.com/fFWNPW1OYS
— CHAMA (@boc_chama) October 20, 2019
藤原さんの思いはのび太だけに収束せず、BUMP OF CHICKENのメンバー、友人、家族など周囲の人々への感情も内包していったと明かしています。
藤原 – (友人、家族など)そういう人たちと人生の中の何パーセントなんですかね? 共有できてるんだなっていう、はい。その奇跡的なことが切なくなって…
出典:80.0 kHz TFM「BUMP LOCKS!」 2/21放送
「友達の唄」の歌詞は非常に抽象的で表意的な単語の羅列です。これは “ありのままの気持ちを書き綴る”という藤原さんの作詞法のひとつで「ひとりごと」「時空かくれんぼ」から多くなってきた手法です。
プロデューサーMORのアイデアが光るアレンジ
「友達の唄」がレコーディングされた一口坂スタジオ
曲中に鳴っているホーンはデモ音源の段階からアイデアがあり、さらにストリングス、アウトロの長い演奏はプロデューサー・MOR(森徹也)氏のアイデアによるものでした。
この編曲が「友達の唄」のサウンドを特徴付けており、もしこれがなければ “似たような曲” に聴こえたでしょう。MOR氏のアイデアはBUMP OF CHICKENの音楽活動には欠かせない存在となっています。
MORによるアレンジのアイデア (一部抜粋)
「モーターサイクル」 | ループするPV |
「HAPPY」 | バスドラムのリズム |
「友達の唄」 | ストリングス, 長いアウトロ |
「ゼロ」 | 曲名、イントロのサウンド |
「firefly」 | リズム、リムショット、タンバリン、間奏のコーラス |
「ほんとのほんと」 | ピアノの基層低音 |
「友達の唄」PVとロケ地
MV監督 | 番場秀一 |
ロケ地 | 東京都世田谷区用賀周辺 (直井、升、増川のシーン ) 神奈川県横浜市ポートサイド公園 (藤原がギターを持って歩くシーン) 東京都杉並区下高井戸 G-ROKS (4人がスタジオ前で合流、演奏シーン) 他 |
「友達の唄」のPVはバンド4人が新曲を演奏する過程を描いたストーリー仕立ての作品になっています。印象的な藤原さんがギターを持って歩くシーンは神奈川県のポートサイド公園で撮影されました。
同じ日、カップリングの「歩く幽霊」のPVも下高井戸G-ROKSにて撮影されましたが諸般の事情からお蔵入りになっています(東日本大震災の発生により「歩く幽霊」のタイトルがついた映像を公開することを憚ったと推測される)。
「友達の唄」ライブ演奏記録
2012年7月8日 「GOLD GLIDER TOUR 2012」東京都国立代々木競技場 第一体育館 This image is directly embedded from mFound.jp
演奏回数 | 42回 |
演奏頻度 | ★★★☆☆ |
初披露 | 2011年12月5日「GOOD GLIDER TOUR」渋谷AX公演 |
最終演奏 | 2018年3月17日「TOUR 2017-2018 PATHFINDER」福岡マリンメッセ |
演奏ツアー | 2011-2012年「GOOD GLIDER TOUR」 2012年「GOLD GLIDER TOUR 2012」 2014年「WILLPOLIS 2014」 2014年「TOUR 2017-2018 PATHFINDER」 |
「友達の唄」はリリース以降、コンスタントに演奏されています。ツアー全公演演奏ではく2DAYS公演のAセトリ、Bセトリどちらか片方に組み込まれていることが多いです。
「友達の唄」のライブ映像が収録されている「BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012」
「友達の唄」のライブ映像は「BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012」に収録されています。 聴きどころは1番Aメロの藤原さんのアコースティックギター1本による弾き語り部分です。ライブ演奏曲では「スノースマイル」「話がしたいよ」程度しかなく、普段の曲作りやメンバーに聴かせている生歌の雰囲気を味わうことできます。
ライブ演奏機材
Sonic Precision Bass Chama Pink
演奏機材 (2012年) |
藤原基央 – Gibson J-45 |
増川弘明 – Gibson Les Paul Standard 1956 | |
直井由文 – Sonic PB Chama Pink |
「友達の唄」では藤原さんは黒のアコースティックギターを使用しています。直井さんは「smile」「花の名」程度しか登場機会の少ないピンク色のプレジションベースを使って演奏しています。「TOUR 2017-2018 PATHFINDER」でも同機を使用していたのを目視で確認しています。
以上、BUMP OF CHICKENの「友達の唄」の歌詞の意味と制作エピソードについて解説しました。この記事を読んで新しい聴き方を見つけていただければ幸いです。ありがとうございました。