BUMP OF CHICKENの楽曲「虹を待つ人」の歌詞の意味と制作背景について解説します。
2013年8月にBUMP OF CHICKEN初のデジタル配信シングルとしてリリースされた「虹を待つ人」。近年のライブでは高い確率で演奏される楽曲です。
「虹を待つ人」に込めた思いとは何か。インタビューをもとに制作エピソードを解説していきます。
「虹を待つ人」基本情報
- シングル「虹を待つ人」
- アルバム「RAY」
作詞・作曲 | 藤原基央 |
編曲 | BUMP OF CHICKEN & MOR |
作曲時期 | 2012年11月 |
収録作品 | 2013年8月21日 配信シングル「虹を待つ人」 2014年3月12日 アルバム「RAY」 |
ライブ初披露 | 2013年8月3日「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」茨城県国営ひたち海浜公園 |
「虹を待つ人」はBUMP OF CHICKEN初の配信シングルです。2013年における唯一リリースされた新曲となりました(TOUR 2013 “WILLPOLIS” 武道館公演で未発表曲として披露された「ray」を除く)。
「虹を待つ人」作曲エピソード
精力的なライブ活動を行った2012年
BUMP OF CHICKENの年別ライブ公演数をまとめました。2024年の35公演はおよそ10年ぶりの規模です。直近3年間70公演も同じく10年ぶりのハイペースでした。 pic.twitter.com/KdNv3so9ny
— 鳥のつぶやき (@memo_bump) January 6, 2025
2012年、BUMP OF CHICKENは全国で精力的なライブ活動を行います。ライブハウスツアー「BUMP OF CHICKEN TOUR 2011-2012 “GOOD GLIDER TOUR”」、アリーナツアー「BUMP OF CHICKEN TOUR 2012 “GOLD GLIDER TOUR”」で前年12月から7月まで計39本のライブに及びます。
“GOLD GLIDER TOUR”後の充電期間
2012年秋、BUMP OF CHICKENのメンバーはメディアに登場せず、初の映像作品「BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012」に収録される「ガラスのブルース」と隠し映像「Let’s Play Sports」のライブ映像を撮影していた時期です。
ライブ映像作品「BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012」
「虹を待つ人」は、そのような状況下でボーカル&ギターの藤原基央さんによって2012年11月に作曲されました。当時、曲を書いている状況をラジオ番組「PONTSUKA!!」で報告しています。
直井 – 近況はですね、藤原基央君が曲を作ってる最中という。
藤原 – 今年中にもうちょいちょい(作曲を)やれたらいいなあと思ってます。
2012年11月18日 O.A. Bay-FM「PONTSUKA!!」
後にこの曲が「虹を待つ人」だったと雑誌で明かしています。ちなみに「RAY」のアルバム曲「ラストワン」もこの時期に作曲されています。
「虹を待つ人」の歌詞の意味
「生きること」と「コミュニケーション」を歌っている曲
藤原さんは「虹を待つ人」のモチーフを”生きることとコミュニケーション”であると語っています。これは「虹を待つ人」に限らず、BUMP OF CHICKENの楽曲の中心的なテーマになっています。
「虹を待つ人」インタビュー掲載 「MUSICA」2013年10月号
藤原 – いつも通り、生きることとコミュニケーションのことを歌っていると僕は思っていて。
出典:「MUSICA」2013年10月号
過去にもコミュニケーションを歌った曲と明言された曲があります。両A面シングル『モーターサイクル/宇宙飛行士への手紙』のカップリング曲「good friends」です。
最初の1行目の歌詞はイヤホンを耳につける行為
虹を待つ人
眠れなかった体に 音が飛び込んで走る
目を閉じれば真っ暗 自分で作る色
引用元:虹を待つ人 / 藤原基央 (2013年)
この一節は藤原さんがイヤホンを耳につけて目を瞑った体験に由来しています。全体の歌詞については、うじうじとした内省的な部分やフェスのような感じや、様々なエッセンスが入っていると自評しています。
BUMP OF CHICKENと”虹”の言葉
BUMP OF CHICKENには「虹」を曲名につけたり、「虹」が歌詞に登場する楽曲が多く登場します。以下がその一覧です。
曲名 | リリース年 | |
「ハルジオン」 | 2002年 | 歌詞に登場 |
「arrows」 | 2007年 | 歌詞のモチーフ |
「虹を待つ人」 | 2013年 | タイトルと歌詞に登場 |
「月虹」 | 2019年 | 月の輪が作り出す虹を「月虹」と呼ぶ |
「なないろ」 | 2021年 | タイトルのモチーフ |
「Voyager, flyby」 | 2024年 | 歌詞に登場 |
「青の朔日」 | 2024年 | 歌詞に登場 |
「Iris」 | 2024年 | 虹彩や虹の女神を意 |
古くは「ハルジオン」の歌詞 《虹を作ってた》 から始まり、 最新アルバム「Iris」に至るまで、「虹」はBUMP OF CHICKENの活動の歩みと並行して使われてきたモチーフです。
「虹を待つ人」制作エピソード
シンセを全面的に出した最初のサウンド
BUMP OF CHICKENの楽曲で最初にシンセサイザーを使用したのは「プラネタリウム」ですが、「虹を待つ人」のように冒頭から”ギュイーン”や”ピピーピピー”といったSFX的なシンセサイザーの音が全面的に主体となる楽曲は初めての試みでした。
「虹を待つ人」のレコーディングに参加したシンセサイザープログラマーの木本ヤスオ氏は自身のブログでシンセの音作りについて明らかにしています。
単なるアリもののSEを持って来ることは避け、ベースとなる音色からエディットして作りました。音の長さやらリズムやらSweepするピッチのあがり具合(スタートポイント、エンドポイント、そしてそのカーブまで!)とか。
引用元:木本ヤスオ氏ブログより
新たなプログラムを購入したりするなど、想定以上にシンセ音源の構築に時間がかかったといい、BUMP OF CHICKEN側が求めるものがとても高度であることがわかります。
1959年製レスポールスタンダードで録ったギターソロ
1959年製 Les Paul Standard Cherry Sunburst
「虹を待つ人」のギターソロは藤原さんが1959年製のレスポール・スタンダード・チェリーバーストを使用して弾いています。レスポール・スタンダードというとギタリスト・増川弘明さんのイメージが強いですが、藤原さんも数本所持しています。「morning glow」のイントロのフレーズもこのエレキギターを使用しています。
映画「ガッチャマン」主題歌に起用
「虹を待つ人」は2013年夏公開のSF映画「ガッチャマン」の主題歌に起用されました。前述の通り、「虹を待つ人」は同映画への書き下ろし曲ではなく、主題歌のオファーに対して既に出来上がっていた同曲を提供した形になります。
主演の俳優・松坂桃李さんはBUMP OF CHICKENファンとして有名で、この繋がりをきっかけにツアー「WILLPOLIS」のオープニング映像の声優やアクションモデルを務め、対談を果たす関係になりました。
「虹を待つ人」ジャケット詳細情報

シングル「虹を待つ人」
撮影日 | 2012年7月8日 |
撮影者 | 蜷川実花 |
ロケ地 | 千葉県成田市成田ゆめ牧場 |
「虹を待つ人」はBUMP OF CHICKEN初となるデジタル配信限定シングルです。キービジュアル(ジャケット)は「jupiter」から親交のある写真家・蜷川実花氏の撮影です。
蜷川氏のブログ(外部リンク)に場所は記載されていませんが、背景の建物から成田ゆめ牧場にて撮影されたことがわかります。
「虹を待つ人」PVメイキング
撮影日 | 2012年8月3日 他 |
撮影者 | 番場秀一 |
ロケ地 | 東京都内クラブハウス、千葉県QVCマリンスタジアム |
衣装コンセプト | 藤原基央「ネイティブアメリカン」 増川弘明「ギャング」 直井由文「アメリカの少年」 升秀夫 「パイロット」 |
「虹を待つ人」のPV(MV)は映像監督・番場秀一氏によって制作されました。仮装したBUMP OF CHICKENのメンバーがクラブハウスで演奏するというソウルフルなシーンと、「ベストアルバム発売記念特別ライブ」(2013年8月9日)のシーンを組み合わせて構成されています。
直井 – コンセプトとしては、正体不明のバンドがクラブで音楽をやってて。どこまでも正体不明にしようということで、どんどん勝手に仮装になっていった。
出典:日本テレビ系「ZIP!」
仮装のコンセプトはメンバー各自に考案し、藤原さんはソウルフルなものを追求した結果「ネイティブアメリカン」に辿り着きました。PVメイキングの様子は日本テレビ「ZIP!」でも紹介されました。
「虹を待つ人」ライブ演奏記録
「虹を待つ人」aurora ark ZEPP BAYSIDE OSAKA公演 (2019年10月)
初披露 | 2013年8月3日「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」国営ひたち海浜公園 |
演奏ライブ | 2013年「ベストアルバム発売記念特別ライブ」 2013年「WILLPOLIS」 2013年「RADIO CRAZY」 2013年「COUNTDOWN JAPAN 13/14」 2014年「BUMP OF CHICKEN LIVE AT STUDIO COAST」 2014年「BUMP OF CHICKEN Live in Taiwan」 2014年「WILLPOLIS 2014」 2015年「BUMP OF CHICKEN Special Live」 2015年「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」 2015年「COUNTDOWN JAPAN 15/16」 2016年「STADIUM TOUR 2016 “BFLY”」 2016年「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016」 2017年「TOUR 2017-2018 PATHFINDER」 2018年「COUNTDOWN JAPAN 18/19」 2019年「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」 2019年「TOUR 2019 aurora ark」 2023年「TOUR 2023 be there」 2024年「TOUR 2024 Sphery Rendezvous」 |
「虹を待つ人」は「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」で初披露されて以来、リリース後は高確率で演奏されており、現在のBUMP OF CHICKENの定番曲になりつつあります。
「虹」のイントロのグライドするシンセが、配信音源と違って、めっちゃどデカく使われていました。
前述のシンセサイザー・プログラマーの木本氏はライブで流す同期SEのレベルの違いを指摘しています。BUMP OF CHICKENのメンバーや舞台監督を含む製作陣が、ライブでの楽曲の表現を大事にしている証と言えます。
MIDIキーボードを演奏する直井由文
midiキーボードを演奏する直井由文 embedded from ure.pia.co.jp
演奏機材 |
藤原基央 – Gibson J-45 (2013年) / Martin 00-15M (2019年) |
増川弘明 – Gibson Les Paul Standard | |
直井由文 – Sonic TJT-373C (2013年) / Fender Jazz Bass (2019年) / MIDI Axiom 25鍵盤 |
「虹を待つ人」のライブバージョンはベーシスト・直井由文さんがキーボード(Axiom 25)を演奏する数少ない楽曲です。イントロのグロッケン(鉄琴9のような音色の音を鍵盤で再現し、途中からベースで参加しています。
藤原さんのギターは初披露時は黒色のGibson J-45を使用していましたが、現在はMartin 00-15Mのギターを使用しています。アコースティックギターを変える楽曲は珍しいです。
「虹を待つ人」ライブ映像作品
上記の購入な映像作品以外では下記公演のライブ映像が放映されました。
- 2013年8月3日「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」国営ひたち海浜公園
- 2015年12月31日「COUNTDOWN JAPAN 15/16」千葉幕張メッセ
- 2019年8月10日「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019」国営ひたち海浜公園
以上、BUMP OF CHICKENの「虹を待つ人」の歌詞に意味や制作エピソード、ライブ映像について解説しました。