7th Album『RAY』

楽曲解説:グッドラック 別れは必ずやってくるということ

7th Album『RAY』

BUMP OF CHICKENの「グッドラック」は2012年1月発表のシングル曲です。大きくゆったりとした力強いバンドサウンドに藤原基央さんの伸びのある歌声が響く楽曲です。

 

オンコードの連続によるサウンドの秘密と「グッドラック」の歌詞の意味・解釈について解説します。

「グッドラック」基本情報



作詞・作曲 藤原基央
編曲 BUMP OF CHICKEN & MOR
作曲時期 2011年
収録作品 2012年1月18日 シングル「グッドラック」
2014年3月12日 アルバム「RAY」
ライブ初演奏 2011年12月5日 全国ツアー「GOOD GLIDER TOUR」渋谷AX公演

「グッドラック」作曲背景

2回に分けて作った「グッドラック」

「グッドラック」プロモーション時のBUMP OF CHICKEN(2012年)*Embedded image from Music Lounge

2011年、ボーカル&ギターの藤原基央さんは新曲を書き始めます。最初に16小節のコードパターンと「グッドラック」という歌詞のテーマを決めました。

藤原 – まず半分を作ったんですけど、そのとき既に16小節にあた る部分のほかに〈くれぐれも気を付けて〜〉のところのメロディはついていて。

出典:m-found.jp

映画『ALWAYS 三丁目の夕日’64』主題歌

「グッドラック」を半分ほど作った後、親交のある映画監督・山崎貴氏から映画『ALWAYS 三丁目の夕日’64』主題歌の書き下ろし依頼がBUMP OF CHICKENに届きます。制作途中の映像、脚本資料をみた藤原さんは書いている新曲と世界観が同じだと考え、つくりかけの曲を「グッドラック」として完成させました。

山崎貴氏とBUMP OF CHICKENの交友関係はこちら!

 

「グッドラック」の意味

「グッドラック(GOOD LUCK)」とは英語圏で別れ際に相手に送る言葉です。別れの挨拶といっても明日また会う相手に送る言葉ではなく、「いつまた会えるかわからない」「もう会えないかもしれない」という相手に対して幸運を祈る意味で「GOOD LUCK」を使うときがあります。

別れは必ずやってくるということ

グッドラックの意味

藤原 – さよならした人と現在の位置関係。あるいは、いつかは離れてしまうかもしれないけれど、それでもいまは側にいられるということ——。そういうこ とを今回 (グッドラック) も歌っているわけですけど。

藤原基央さんの哲学の中では、誰かと出会うことはいつかは別れることを意味します。1番と2番の冒頭の歌詞 <君と寂しさは きっと一緒に現れた> (0:47~) <手と手をつないだら いつかは離れてしまうのかな> (1:40~) に集約されています。この部分を曲の冒頭に持ってくるストレートさが藤原さんの作詞家としての秀逸さを感じます。

今は一緒にいる(いた)私とあなた

「グッドラック」の歌詞は「寂しさ」だけを書いていません。別れるからこそ今一緒にいる意味があるということ、寂しく感じるのはあなたがいたから、ということ。自分と「君」がいた事実に対するセンシティブな心の動きを歌詞にこめようとしています。「supernova」「ray」にも通じる意味です。


「グッドラック」の制作背景

“16小節で成立するメロディ”がテーマ

グッドラック歌詞解釈

藤原 – 16小節でひとつの塊として成立するようなメロディが何度か繰り返されていく曲を作りたいということで。 

引用元:音楽情報サイト「mFound.jp」

「グッドラック」は2つの要素で構成されています。もともと要素1と2は独立したアイデアとして存在していましたが、山崎貴監督からのオファーを受けて要素1と要素2を合わせる形でひとつの楽曲として完成しました。

 

藤原基央の天才的作曲 – オンコード連発!

「グッドラック」で使用されているコード

C ConE ConG ConA#
Dm7 DonF#
F FonD FonG FonA FM7onG#
G GonB GonC GonD GonF

 

「グッドラック」で特筆すべき点はオンコードの多さです。通常1曲につきオンコードは2~3個なのに対し「グッドラック」では12個も使われています。BUMP OF CHICKENの楽曲で一番多い楽曲で、藤原基央さんの音遊びが伺えます。

オンコードとは?

オンコードとは1つのコード(和音)に別のルート音(基幹音)を足したコードです。例えば「ConE」は「C」コードを「E」音に乗せた(オンした)コードという意味になり、こうすることで通常のコードにはない複雑な響きを出す効果を持ちます。

オンコードのイメージ図

グッドラック コード

 

わかりやすいイメージでいうと、通常コードが色調が単色なのに対し、オンコードは2つの色を混ぜることで表情豊かなグラデーションを生み出すことができる、とでもいえるしょうか。「グッドラック」はこのようなオンコードが多用されています。

同じフレーズを熱量を増して叩いていくドラム

ドラムスの升秀夫さんは「グッドラック」のレコーディングでGretch1960′ Kitを使用し、スネアにはラジオキングを使用しました。

基本的には同じフレーズを歌詞が進むにすれて熱量を帯びていくように叩いたとインタビューで語っています。

升 – 基本的に同じフレーズで、徐々に徐々に熱さが出てくるという表情をつけているんですけど、難しかったです。挑戦でした。

出典:「Rhythm & Drum Magazine」2014年4月号

 

グッドラック MV(PV)に豪華俳優陣出演

embedded from Pinterest

「グッドラック」のPV(MV)は山崎貴氏が監督しました。限定盤CDには山崎氏が「グッドラック」を聴いて書き下ろしたシナリオによる約35分のショートムービーが収録されており、「Always 三丁目の夕日 ’64」に出演する吉岡秀隆、染谷将太らの豪華俳優陣が出演しています。

ショートムービーのシナリオ染谷将太、山下リオ、前田公輝らが演じる高校生が化学教師(吉岡秀隆)と映画製作・上映に挑戦する物語。屋上の演奏シーンではBUMP OF CHICKENのメンバーと高校生は別世界で互いに見えてないという設定。

 

「グッドラック」ライブ演奏記録

グッドラック MV2012年1月31日 「GOOD GLIDER TOUR」ZEPP TOKYO公演。このツアーではCD発売前に「グッドラック」が演奏された。 Photography by Kazumichi Kokei, this image is embedded from natalie.mu

演奏回数 48回
演奏頻度 ★★★☆☆
ライブ初披露 2011年12月5日 「GOOD GLIDER TOUR」ZEPP TOKYO公演
最終演奏 2013年10月24日「WILLPOLIS」北海きたえーる公演 *アコースティックバージョン
演奏ツアー 2012年「GOOD GLIDER TOUR
2012年「GOLD GLIDER TOUR
2013年「WILLPOLIS*アコースティック
使用機材


藤原基央 – Gibson J-45 (2012年), 
増川弘明 – Gibson Historic Collection ’56 (2012年), Martin D-28 (2013年)
直井由文 – Sonic Precision Bass Model (Chama Pink) 

増川弘明オリジナルのギターソロ

ギタリスト・増川弘明さんはGibson Historic Collection ’56を使用しています。「ray」「ギルド」で使用するギターです。「GOLD GLIDER TOUR」(2012年) のライブ演奏では増川さんによるオリジナル・ソロが加えられました。アドリブの特徴から増川さん考案と断定でき、増川さんの音楽家としてのセンスが披露される希少なギターソロです。

アコースティックセットでの演奏

「グッドラック」は2011〜2013年に48回演奏されています。全国ツアー「WILLPOLIS」でサブステージ(恥ずかし島)でアコースティックバージョンとして披露され、サビまで藤原さんのボーカルと増川さんのギターの2人によるデュオ演奏というリアレンジバージョンでした。

ストリングスバージョンが会場に流れる

限定盤には映画「ALWAYS 三丁目の夕日 ’64」の音楽担当の佐藤直樹氏による「グッドラック〜ストリングス ver.」が収録されており、「GOOD GLIDER TOUR」開演前の会場BGMはこの楽曲が使用されていました。

唯一のメンバー以外の権利帰属曲ストリングスバージョンは別曲として管理されており、JASRACデータベース上の権利者は佐藤氏となっている。カバー曲を除けばBUMP OF CHICKENの楽曲で唯一である。

ライブ映像収録作品

映像作品「BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012」

「グッドラック」のライブ映像は「BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012[Blu-ray/DVD]」で視聴可能です。

 

この記事をサウンドや歌詞の意味を考えるときの参考にして、ぜひ新しい聴き方ができれば幸いです。以上、BUMP OF CHICKEN「グッドラック」の解説でした。