「レム」はBUMP OF CHICKENの『ユグドラシル』に収録されている楽曲です。藤原基央さんによる人間の内面をシニカルな語り口調で捉えた歌詞が印象的で、当時の音楽誌に「アルバムの中でもっとも”凶暴な曲”」と評されました。
過去のインタビューに基づいて、レムを紹介します。
「レム」基本情報

アルバム「ユグドラシル」(2004年)
作詞・作曲 | 藤原基央 |
編曲 | BUMP OF CHICKEN |
作曲時期 | 2003年 |
録音時期 | 2003〜2004年(「太陽」よりも後) |
収録作品 | 2004年8月25日 アルバム「ユグドラシル」 |
ライブ演奏 | なし |
「レム」の意味=レクイエム
「レム」はレクイエム(requiem = 鎮魂歌)という意味です。藤原さんはこの詞を書く時、殺人鬼の気持ちになって作詞に臨みました。
藤原 – これ、前のインタビューでレクイエムって言いましたっけ?(殺人鬼の気持ちで書いたことについて)確か愛があるからと付け加えた気がしますね。やっぱ殺したんじゃないかなぁ。
藤原さんはこの曲の詞を書くには「殺人鬼の視点になるしかなかった」といいます。
「愛」とその反対
「批判する人を批判」「冷めている人を冷めた目で見る」など、上辺だけの表層的な態度や行為よりも深層的な人間の心を書き出そうとしています。
藤原 – 他者がいる時の行動だと思うんだけど、どれが愛でどれがその逆なのか、よくわかんないんですよ(笑)。どうやったら近寄ったことになって、どうやったら拒絶したことになるのか、もしくは離れたことになるのか、よくわからないです。
愛情とは相手を寛容するだけではありません。「愛があるから叱る」「愛ゆえに厳しくする」というように、相手に苦痛を与えることも愛情のひとつとも言える時がありますよね。
「ねぇ 優しさってなんだと思う」という詞で始まる「ひとりごと」(2007年)にも通じます。
関連記事:ひとりごとvol.1 ひとりよがりな価値観を届けるということ
「レム」は愛か、その逆か
「レム」は「愛」なのか「その逆」なのか。明言はしていませんが、藤原さんは次のように述べています。
藤原 – ”レム”がどっちに作用してるかって全くわからないですけど・・・だけど最後にちゃんと近づいてはいるんだよな、そういえば。
レム 3:39〜
現実と名付けてみた妄想 その中で借り物競走
走り疲れたアンタと 改めて話がしたい
心から話してみたい
引用元:レム / 作詞作曲 藤原基央 (2004年)
最後の3行で相手に対して近づいています。
「レム」を収録するか悩む
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「レム」を書きあげた後、藤原基央さんはレコーディングすることに2つの理由で悩みました。
BUMP OF CHICKENの曲として
「レム」は個人的な主義主張でないかと藤原さんは考えました。この曲をBUMP OF CHICKENの作品として発表することは直井さん、増川さん、升さんの作品になることを意味します。
「車輪の唄」は、この曲の収録について悩んでいた夜、似たようなコード進行でジャカジャカ弾いている時にできた曲です。
弾き語りの楽曲として
もう1つの理由は、バンドサウンドで録音しないということです。インディーズ時代のデモテープに収録されている「Let it be」や「Grown up person」、『THE LIVING DEAD』収録の「Opening 」 「Ending」を除けば、BUMP OF CHICKENの楽曲は全て4人の楽器演奏で作られていました。
1999年頃、藤原さんは業界人からのソロとしての引き抜きを断った経緯があり、4人での作品づくりにこだわっていた過去もあります。
そんな中、「曲が求める形にする」という『ユグドラシル』以後の藤原さんの大きな基準となる考え方が藤原さんを後押しし、弾き語りで収録されることになります。
直井 「レムに対して責任を取れます」
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藤原基央さん以外の3人は「曲が求める形」のために自分たちが演奏に参加しないことを前向きにとらえます。
直井 – (藤原が)”レム” 弾いてる時でも、その曲ができた時でも自分の曲にしか思えない。だからその曲になにがあっても責任を取れます。だから俺、いつでもベースは持ってました。もう全部用意しときました。アンプもシールドも全部。ドラムも全部組んであったし、いつでも入られる準備はありました。
藤原さん単独でのレコーディングの時も、直井由文さん、升秀夫さん、増川弘明さんの3人はスタジオでベースやドラムをセットしていました。「レム」はBUMP OF CHICKENの楽曲なのです。
「曲の求める音」理念を体現した『ユグドラシル』
4th Album『ユグドラシル』「曲の求める音を奏でる」を至上命題に制作されたアルバム。前作「jupiter」に比べサウンドは精細かつ洗練され、BUMP OF CHICKENの制作活動の根幹となる理念を体現した最初の1枚。
直井 – 前だったら俺は絶対弾いちゃってたと思う。それはエゴになっちゃんうんですけど。でも、今は曲がいってることがよくわかるから、弾く必要がほんとねえなって思うんです。
3人には自己主張や目立ちたいという気持ちは全くありませんでした。「全ては曲のため」、これが『ユグドラシル』を名盤にせしめた基本理念です
「レム」以降、「Everlasting Lie – Acoustic version」「睡眠時間」など藤原さん単独による楽曲に繋がります。これによりにBUMP OF CHICKENのサウンドが広がりました。
まとめ – BUMP OF CHICKENの「レム」
「レム」はBUMP OF CHICKENの楽曲においてサウンドと歌詞の両面で大きな転換を迎えた曲といえます。
この曲を聴く時に、こんな経緯があったことを思い出すと新たな曲の聴き方ができるかもしれません。以上、「レム」の解説でした。
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