5th Album『orbital period』

楽曲解説「arrows」- 3回の《一緒にここから離れよう》のそれぞれの意味

5th Album『orbital period』

BUMP OF CHICKENの楽曲「arrows」の歌詞の意味、解釈について紹介します。

 

「arrows」の意味は英語で「矢」を指します。歌詞の中では「弓の唄」というフレーズがあり、「弓」と「矢」が両方出てきます。

 

作詞をした藤原基央さんはなぜ「arrows」というタイトルを付けたのでしょうか。この記事では制作エピソードやレコーディング情報と合わせて解説します。




「arrows」基本情報

 

「orbital period」(2007年12月)

作詞・作曲藤原基央
編曲BUMP OF CHICKEN & MOR
作曲時期2007年
レコーディング2007年夏
収録作品2007年12月19日「orbital period」M-15
ライブ初披露2008年1月10日「ホームシック衛星」ZEPP TOKYO

arrowsの意味とは?

arrow [ˈæroʊ / ˈaɹəʊ]
名詞:矢、矢状のもの、矢印

arrowは英語で「矢」を意味します。

BUMP OF CHICKENの曲名は「arrows」と複数形になっています。内容から、歌詞中に登場する「僕」と「君」の2人を指していると言われています。

<涙と涙が出会ったら架かる 弓の唄> と歌詞がありますが、藤原さんはなぜ「弓」(bow)ではなく「矢」を意味する「arrows」を曲名に付けたのでしょうか。

 

「arrows」の歌詞の意味

3回の《一緒にここから離れよう》は全て違う意味

「arrows」の歌詞は大長編のストーリー性のある詞になっています。

 

藤原基央さんは <一緒にここから離れよう> の詞は3回とも意味が違うとインタビューで説明しています。

 

藤原 – 《一緒に ここから 離れよう》ってのは3回出てきますけど、全部意味が違います。

引用元:「ROCKIN’ ON JAPAN」2008年1月号

 

1:49〜(1回目)これだけあれば当分 お腹減らないな
一緒に ここから 離れよう

3:46〜(2回目)君さえいれば きっと僕でいられるさ
一緒に ここから 離れよう

5:22〜(2回目)これだけあれば きっと僕でいられるさ
一緒に ここから 離れよう

 

藤原さんは普段からインタビューで、”歌詞解釈は”聴き手の自由である”として積極的に自らの解釈を明かすことはありません。そう前置きをしつつ、「arrows」の歌詞解釈について <ハローであり、グッバイである>というヒントを与えています。

 

ハローとグッバイ、出会いと別れ。覚えていること、忘れてしまうこと。BUMP OF CHICKENの歌詞にはそんなテーマを歌った曲があります。「arrows」もまた例に漏れず、同じコンセプトの楽曲です。

 

これは個人的な感覚ですが、1回目の”離れよう”は<逃避>、2回目は<勇気>、3回目は<別れ>なのかな、なんて思いました。

 

捨てられない大切なものを置く<不燃物置き場>という言葉の使い方から、捨てられない夢を描いた「分別奮闘記」にも少し似ているようにも思います。

 

分別奮闘記  0:25〜
君の夢がゴミと化して 早幾星霜
捨ててこそゴミでしょうと勇ましく
見るからにしぶとそうだ 不燃物だろう

引用元:分別奮闘記/ 藤原基央 (2010年)

「arrows」の”荷物”の中身は「夢」だったり「悲しみ」だったり、聞き手の自由に置き換えることができると思います。

「弓の唄」と「arrows」




冒頭で書いた通り、「arrows」の意味は<矢>です。 一方で「arrows」の歌詞に<弓の唄>という言葉が出てきます。「弓」の英語は「bow」です。

 

arrows  5:36〜
涙と涙が出会ったら架かる弓の唄
行きたい場所は全部回った後でまた会えたら
荷物のない体二つでその弓を渡ろう
あんなに近いずっと遠いあの弓を渡ろう

引用元:arrows/ 藤原基央 (2008年)

「矢」はそれ単体では飛ぶことができず、「弓」があって初めて飛ぶものです。

<涙と涙が出会って架かる弓の唄>とは、涙が矢を飛ばす原動力になっていると言い換えることができるのかな、と思います。

迷子の2人と涙の関係性を書いたBUMP OF CHICKENらしい歌詞です。

「arrows」制作エピソード

「arrows」はボーカル・ギター藤原基央さんによって、アコースティックギター1本の弾き語り形式で作曲されました。

スタジオの待ち時間に生まれた即興のアレンジ

藤原さんは「arrows」を書いた後、スタジオにメンバーとスタッフを呼びます。そこでアコースティックギター2本とボーカルのみのシンプルなテープを聴かせる予定でした。

 

BUMP OF CHICKENのメンバーは全員揃っていたものの、聴いてもらいたいスタッフが来ておらず時間が余ったため、即興でキーボードやエレキギターの音を追加したバージョンを制作します。

 

藤原 – (時間が余って)オルガンも弾いたし、エレキのアルペジオも弾いたし、ベースの部分を低音鍵盤だけで弾いたり・・・ドラムレスだし、いろいろやってみたんです。

出典:「What’s IN?」2008年1月号

 

鍵盤で弾いたベースを再現するために、BUMP OF CHICKEN史上初の5弦ベースを使用することになりました。他のインタビューでも同じことを語っています

 

藤原 – そこのスタジオにあったキーボード借りていろいろ入れてみたり、調子に乗ってエレキとかもいろいろ入れてみたりしたら、そのうちその鍵盤でベース音も入れちゃって、ドラムレスだったんだけどドラムがなくて・・・

出典:「What’s IN?」2008年1月号

 

ドラムレス、つまりドラムのないデモテープを作った結果、ゴスペルっぽさのある雰囲気のアレンジに仕上がりました。

 

藤原 – そういう音になるとね、異常にゴスペル・ライクなテイクが1個出来上がって(笑)。その雰囲気のまま来たっていう感じですね。

出典:「MUSICA」2008年2月号

 

「arrows」のレコーディングでは、このゴスペルの印象をそのまま楽曲にしていきました。まさに偶然の時間を活かしつつ生まれたサウンドです。

BUMP OF CHICKENの楽曲にはゴスペルをモチーフにしている楽曲があり、これまでインタビューで明かされた楽曲として「Everlasting lie」「supernova」「angel fall」があります。

BUMP OF CHICKEN初となる5弦ベースの使用

「arrows」はBUMP OF CHICKENとして初めて5弦ベースが使われた楽曲です。

 

5弦ベースでは、4弦ベースよりも1オクターブ低い D♭の音を奏でることができます。近年は5弦ベースを使用する楽曲も増えてきていますが、全て「arrows」が原点となっています。

 

ベーシスト・直井由文さんが「arrows」のレコーディングで使用した5弦ベース・Sadowskyは、藤原基央さんから誕生日プレゼントとして贈られた機材です。

 

5弦ベースの使用は弦ノイズが発生するために難しかったといいます。BUMP OF CHICKENとしてサウンドの幅を広げた楽曲といえるでしょう。

固定概念を捨てて再構築したドラム

ドラム担当の升秀夫さんは「arrows」のリズムを考えるときにかなり苦労しました。

 

制作に入る前、藤原基央さんから「ジャズ聴いといて!」というリクエストが入り、一方でディレクターからは別のバンドのCDを聴くようアドバイスがありました。

 

苦しみながら直井さんと一緒に考えた升さんのドラムのアレンジに対して、藤原さんは「あんまり良くないね」と厳しい意見を出します。

 

藤原さんから<ドラムセットという概念を1回捨てて、また組み立てる>というアドバイスをもらい、再度熟慮して構築したのが「arrows」のドラムです。

 

仲は良くても音楽に妥協しない、BUMP OF CHICKENのメンバーの関係性が垣間見えるエピソードです。

最後に加えたイントロのフレーズ

藤原さんは「arrows」のアレンジの方向性が固まった後に、イントロを思いつきました。藤原さんはこのイントロを<アッパーなイントロ>と表現しています。

 

BUMP OF CHICKENのイントロはAメロ・Bメロなどのコード進行を転用することが多いですが、「arrows」のイントロは本編と関係性のないコードを使用した独立色の強いフレーズです。

 

「arrows」ライブ演奏記録

2008年「ホームシップ衛星」ツアーの様子(画像埋込元 rockin.com

演奏回数42回
演奏頻度★☆☆☆
初披露2008年01月10日「ホームシック衛星」ZEPP TOKYO
演奏ツアー2008年「ホームシック衛星
2008年「ホームシップ衛星
2022年「BUMP OF CHICKEN LIVE 2022 Silver Jubilee at Makuhari Messe 2/10-2/11」

「arrows」はこれまで42回ライブで演奏されています。2022年「BUMP OF CHICKEN LIVE 2022 Silver Jubilee at Makuhari Messe 2/10 – 2/11」で14年ぶりに演奏されました。

『orbital period』アルバム曲の演奏頻度

曲名20082013201420152016201720192022
「才悩人応援歌」
「ハンマーソングと痛みの塔」
「時空かくれんぼ」
「かさぶたぶたぶ」  
「ひとりごと」
「飴玉の唄」
「arrows」
「flyby」

※「voyager」は未演奏

「arrows」演奏機材


演奏機材

藤原基央 – Gibson J-45
増川弘明 – Gibson Les Paul Standard 1958
直井由文 – Sadowsky 5 Strings

「arrows」は直井由文さんがライブで初めて5弦ベースを使用した楽曲です。2008年のライブでは、レコーディング機材と同じサドウスキーを弾いています。

藤原基央さんはGibson J-45のアコースティックギターを使用しています。

「arrows」ライブ映像

  • 2008年2月7日「ホームシック衛星」熊本Battle Stage(SSTV)

 

以上、BUMP OF CHICKENの「arrows」の歌詞の意味、解釈、制作エピソードについて紹介しました。この記事を読んで、新たな「arrows」の曲の良さを感じてもらえたら嬉しいです。




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