6th Album 『COSMONAUT』

楽曲解説「angel fall」制作エピソード – ゴスペルをテーマに書いた曲

6th Album 『COSMONAUT』

「angel fall」 はBUMP OF CHICKENのアルバム「COSMONAUT」の収録曲です。

ボーカル・ギターの藤原基央さんの優しい歌い出しから始まり、ゴスペル調のコーラスワークが魅力的1曲です。この記事ではこの曲の解釈や解説、紹介を行います。




「angel fall」基本情報

アルバム「COSMONAUT」

作詞・作曲 藤原基央
編曲 BUMP OF CHICKEN & MOR
作曲時期 2009年夏
アルバム 2010年12月10日「COSMONAUT」
ライブ初披露 2011年12月6日 「GOOD GLIDER TOUR 2011-2012」at 渋谷AX

 

「angel fall」歌詞の意味

「angel fall」曲名の意味

世界自然遺産 カナイマ国立公園にあるエンジェルフォール

embedded from 4 travel.jp 

「angel fall」は南米ベネズエラにある滝、エンジェル・フォールの名前から取られました。世界最大の落差(979m)を誇り、滝壺がない滝として有名です。

 

藤原 – パッと思いついた。大きな滝で、俺の大好きな滝の名前なんだよ。場所はカナイマ国立公園、ベネズエラ!滝の上から下まで1kmくらいあってさ、途中で霧が霧散しちゃうから滝壺がないの。実際見た事はないんだけど、前からすげぇなって思ってて。(中略) 歌詞を書き終わった後に(タイトルを)どうしようかなぁって考えた時に、パッと思いついたんだよね。

 

藤原さんは自分が好きなものをインスピレーションをタイトルにつけることがあります。曲名では「ダンデライオン」「宇宙飛行士への手紙」や「jupiter」「ユグドラシル」といったアルバム名もその時気になっていた言葉や、好きなものから付けられています。

 

テーブルマウンテンと「星の鳥」

藤原さんはカナイマ国立公園から多くの影響を受けています。このエンジェルフォールが位置するギアナ高地は有名なテーブルマウンテンがあります。

カナイマ国立公園テーブルマウンテン(左)とスコアブック「orbital period」裏表紙(右)

藤原 – しかもエンジェルフォールがある山自体もすごいんですよ。テーブルマウンテンっていう山なんだけど、本当にテーブルみたいなの。

このテーブルマウンテンは「orbital period」期のBUMP OF CHICKENのキービジュアルとして何度か登場しました。以下で確認することができます。

映像作品「orbital period」(2008年5月)の円盤部分
公式バンドスコア「orbital period」(2008年10月)の裏表紙の部分

この大地のキービジュアルにも、エンジェル・フォールらしき滝の形が映っています。

このビジュアルにどこまで藤原さんが関与しているかは不明ですが、「angel fall」が書かれる1年前からエンジェル・フォールという存在を認知していたことがわかります。




歌詞について言明を避ける藤原基央

歌詞中には滝に関係する詞は一切出てこず、曲名と詞の内容の関連性については明かされていません。

藤原 – この曲については・・・ざっくりとさせておいてください。焦点が当てにくい曲なんですよね・・・。 

「angel fall」作曲エピソード

2009年夏頃、「angel fall」はボーカル・藤原基央さんによって作曲されます。この曲はそれまでのBUMP OF CHICKENの楽曲とは違う作曲の方法でつくられました。

テーマ作曲時代に作られた曲

embed from twitter@boc_chama

2009年の夏頃、新しい作曲方法(テーマ作曲)で曲作りをはじめます。

この手法は、それまで自宅で自分ひとりで推敲に推敲を重ね、曲を作ることができない藤原さんの様子を見たBUMP OF CHICKENのプロデューサー・MOR(森徹也)氏が生み出したアイデアです。

MOR氏はスタジオを予約し、藤原さんに即興でテーマを与えて、藤原さんがその場で応えるように曲を書くという流れが始まりました。こうして幾つかのテーマ曲が生まれます。

テーマ テーマから生まれた曲
クリスマス 「Merry Christmas」
シングル1 分別奮闘記
シングル2 R.I.P.
pinkie
ゴスペル 「angel fall」




作曲テーマ「ゴスペル」

このときプロデューサー・MOR氏が出したお題は「ゴスペル」でした。

藤原 – 元々はプロデューサーに 「ゴスペルを書いて」 ってリクエストされて、きっと『supernova』みたいな曲のことを言ってるんだろうなと思って。俺は俺で、跳ねものがやりたいと思ってて、じゃあ跳ねものでゴスペルやればいいか、みたいな感じになった。

「ゴスペル」と「跳ねモノ」を掛け合わせ、藤原さんは「angel fall」を作曲します。

BUMP OF CHICKENの楽曲において《ゴスペル》をテーマにした曲はいくつか存在し、「angel fall」は3曲目です。

ゴスペルをテーマにした楽曲 収録アルバム
「Ever lasting lie」 「THE LIVING DEAD」(2000年)
「supernova」 「orbital period」(2007年)
「angel fall」 「COSMONAUT」(2010年)
「spica」 「aurora arc」(2019年)

特筆すべきは「曲が望む形」を追究している藤原さんが「跳ねものをやりたい」という発言をしている点です。理想主義を基本におきながらも、自分のやりたい音楽、趣味・嗜好を優先することがあることがわかります。

藤原基央の好きな《AB構成》×《オンコード》の楽曲

藤原 – つくづくこういうの好きだな、俺。って思った。AB構成のオンコードっぽい感じが

AB構成とは、基本的にAメロとBメロのみで構成される曲のことで「リリィ」「プラネタリウム」「グッドラック」「Smile」「新世界」などがそれにあたります。AメロまたはBメロ、もしくはその両方がサビを兼ねている曲です。

オンコードとはルート音(基幹音)を変えずに、上の和音だけを変えるコードで、響きに安定感をもたらせる効果があります。藤原さんの初期の曲「ガラスのブルース」「アルエ」「ナイフ」のイントロにはじまり、「ベンチとコーヒー」「fire sign」「supernova」のAメロなどBUMP OF CHICKENの楽曲の随所で使われています。

作曲段階で藤原さんの音楽的嗜好が反映されている曲が「angel fall」です。




「angel fall」制作エピソード

2010年7月27日、28日の2日間に「angel fall」のレコーディングが実施されました。

embedded from twitter@boc_chama

ベーシスト・直井由文さんは以下のように語っています。

直井 – 曲の雰囲気に呑まれた。今まで聴いた事がない曲でびっくりして…。これは本当に自由にやらせてもらったんで、心地いいビートにのって演奏出来て、凄い楽しかった。

引用元:「MUSICA」2011年1月号

「angel fall」は全音符などの長音符を軸としたどっしりとしたバラードのベースです。この曲のアプローチは「RAY」収録曲の「white note」に引き継がれます。

ドラムス・升秀夫さんがデモを聴いた印象はゴスペル神聖な感じだったと言います。

升 – 最初に聴いた時の神聖な感じとか綺麗な感じはちゃんと表現できるものになったと思います。

引用元:「MUSICA」2011年1月号

 

升秀夫の熱いプレゼンによるリズムトラック

「COSMONAUT」レコーディング潜入

レコーディングに向けた下絵となるプリプロ(Pre-Production)の段階で、「angel fall」のリズムトラックは100%打ち込みで決まっていました。

しかし、升さんは密かにドラムパターンを考案して練習します。レコーディング前日に打ち込みを薦めるプロデューサー・MOR氏に対して升さんは自分のドラムを素材にしてサンプリングすることを志願します。

升 – いや、やってみる。俺のドラムを素材にして、サンプリングでリズムを作ったりしたい。

引用元:「MUSICA」2010年9月号

自分の音を入れたいという、BUMP OF CHICKENのドラム担当としての意地が垣間見えます。升さんは連日深夜まで叩いたため疲労が蓄積、足に鍼を打ちながらレコーディングに臨みました。深夜0時でした。

 

「angel fall」ライブ演奏記録

演奏回数 18回
演奏頻度 ★☆☆☆☆
初披露 2011年12月6日 BUMP OF CHICKEN TOUR 2011-2012 “GOOD GLIDER TOUR” 渋谷AX公演
演奏ツアー 2011-2012年 BUMP OF CHICKEN TOUR 2011-2012 “GOOD GLIDER TOUR”
2012年 BUMP OF CHICKEN TOUR 2012 “GOLD GLIDER TOUR”

「angel fall」はアルバム「COSMONAUT」のレコ発ツアーとなる全国ツアー「GOOD GLIDER TOUR」「GOLD GLIDER TOUR」で演奏されています。

「angel fall」ライブ使用機材

ライブでは藤原基央さんはアコースティックギター Gibson J-45を使用し、3番からAのオンコードを味のあるストロークで弾いています。

藤原基央 Gibson J-45
増川弘明 Gibson Les Paul 
直井由文 不明 + MIDIキーボード

ライブでの鍵盤初使用となる曲

midiキーボードを演奏する直井由文 embedded from ure.pia.co.jp

ベーシスト・直井由文さんは「angel fall」の1番でMIDIキーボードを演奏しています。ライブでの鍵盤楽器の生演奏はBUMP OF CHICKEN史上初めてとなる楽曲です。

M-Audio Axiom 25鍵盤

「angel fall」以降、BUMP OF CHICKENのライブでキーボードを使用楽曲が増えていきます。

MIDIキーボード ライブ使用楽曲 使用ツアー・ライブ
angel fall BUMP OF CHICKEN TOUR 2011-2012  “GOOD GLIDER TOUR” 他
虹を待つ人 BUMP OF CHICKEN TOUR 2013 “WILLPOLIS” 他多数
ファイター BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 “BFLY” 他
コロニー BUMP OF CHICKEN Special Live 2015
「Sleep Walking Orchestra」 BUMP OF CHICKEN TOUR 2024 “Sphery Rendezvous” 
「邂逅」 BUMP OF CHICKEN TOUR 2024 “Sphery Rendezvous”

「angel fall」はBUMP OF CHICKENのライブ史においてひとつの転機となった楽曲といえます。

以上、BUMP OF CHICKEN「angel fall」の歌詞解釈、制作エピソードを紹介しました。