angel fall
作詞作曲 藤原基央
作曲時期:2009年夏
リリース:2010年12月15日「COSMONAUT」収録
ライブ初披露:2011年12月06日 SHIBUYA AX
ライブ最終披露:2012年07月08日 国立代々木競技場第一体育館
「angel fall」 はBUMP OF CHICKENのアルバム「COSMONAUT」に収録されているアルバム曲です。ボーカル・ギターの藤原基央さんの優しい歌い出しから始まり、ゴスペル調のコーラスワークが魅力的1曲です。この記事ではこの曲の解釈や解説、紹介を行います。
テーマ作曲時代
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2009年、藤原さんは新しい作曲方法を試します。プロデューサー(MOR)から与えられたお題で曲を書く「テーマ作曲」です。
自宅で作曲していると、納得するまで何度も筆を止めたり書き直してしまい、中々完成しない日々が続いた藤原さん。そんな状態を見かねたプロデューサーMORはスタジオを予約し、藤原さんに即興でテーマを与えて、藤原さんがその場で応えるように曲を書くという流れが始まりました。結果、作曲ペースが格段に上がります。
ゴスペルとAB構成
藤原さんは「桜」、「クリスマスソング」、「シングル曲」などのテーマに加えて「ゴスペル」のテーマをもらいます。そして書かれたのが「angel fall」です。
藤原 – 元々はプロデューサーに 「ゴスペルを書いて」 ってリクエストされて、きっと『supernova』みたいな曲のことを言ってるんだろうなと思って。俺は俺で、跳ねものがやりたいと思ってて、じゃあ跳ねものでゴスペルやればいいか、みたいな感じになった
「曲が望む形」を追究している藤原さんが「跳ねものをやりたい」という発言をしているのは意外です。曲の姿第一主義である藤原さんも、自分の作りたい音楽というのが時々あるということですね。藤原さんは時折ゴスペルをテーマに曲を作る時があります。
ゴスペルを意識した作曲
Ever lasting lie (2000)
supernova (2005)
angel fall (2010)
spica (2018)
プロデューサーに与えられたテーマにせよ、「曲が望む形」よりも藤原さん自身の好みがにじみ出ていることがわかります。
藤原 – つくづくこういうの好きだな、俺。って思った。AB構成のオンコードっぽい感じが
AB構成とは、基本的にAメロとBメロのみで構成される曲のことで『リリィ』や『プラネタリウム』、『GOOD LUCK』、『Smile』などがそれにあたります。AメロまたはBメロ、もしくはその両方がサビを兼ねている曲です。
オンコードとはルート音(基幹音)を変えずに、構成する和音だけを変えるコードで、響きに安定感をもたらせる効果があります。藤原さんの初期の曲『ガラスのブルース』や『アルエ』、『ナイフ』のイントロで多用され、イントロ以外でも『ベンチとコーヒー』(Aメロ)や『fire sign』(Aメロ)、『supernova』(Aメロ)でも使用されています。
これまで何度もインタビューで”曲が望む”アレンジを作ると述べていた藤原さんですが、実際は自身の音楽的嗜好がかなり反映されているのですね。
藤原 – この曲については・・・ざっくりとさせておいてください。焦点が当てにくい曲なんですよね・・・。
ベネズエラに実在する滝 – Angel Falls
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angel fallというタイトルはベネズエラにある滝の名前から取られました。世界最大の落差(979m)を誇り、滝壺がない滝として有名です。
藤原 – パッと思いついた。大きな滝で、俺の大好きな滝の名前なんだよ。場所はカナイマ国立公園、ベネズエラ!滝の上から下まで1kmくらいあってさ、途中で霧が霧散しちゃうから滝壺がないの。実際見た事はないんだけど、前からすげぇなって思ってて。(中略) 歌詞を書き終わった後に(タイトルを)どうしようかなぁって考えた時に、パッと思いついたんだよね。
藤原さんが単純に好きなもののを曲名にすることがあります。「jupiter」や「ダンデライオン」、「宇宙飛行士への手紙」などです。
歌詞中には滝に関係する詞は一切出てこず、曲名と詞の内容が無関係です。全て”曲のため”と言っている藤原さんも「パッと思いついた」ものをタイトルにすることもあるようです。
テーブルマウンテンと星の鳥
藤原さんが影響を受けたのは滝だけではありませんでした。このAngel Fallsがあるギアナ高地はテーブルマウンテンの形状をしています。
embed from Plum Heart様
これ、ファンの皆さんなら既視感がありますよね。そう、Blu-ray/DVD『GOLD GLIDER TOUR 2012』のオープニングムービーに出てくるアレです。
藤原 – しかもエンジェルフォールがある山自体もすごいんですよ。テーブルマウンテンっていう山なんだけど、本当にテーブルみたいなの。
熱帯地域に凛として佇むテーブルマウンテン。星の鳥の形です。ちゃんとangel fallらしき滝が写っています。
レコーディングエピソード
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直井 – 曲の雰囲気に呑まれた。今まで聴いた事がない曲でびっくりして…。これは本当に自由にやらせてもらったんで、心地いいビートにのって演奏出来て、凄い楽しかった。
生音録りを志願する升秀夫
升秀夫さんはリズムトラック制作に苦労します。もともとは打ち込みだけでリズムトラックを作る予定でしたが、サンプリングの素材を自分で叩いた音にすることを志願します。BUMP OF CHICKENのドラム担当としての意地が垣間見えますね。
升 – 叩いたものをエディットして組み合わせたのは初めてだった。最初に聴いた時の神聖な感じとか綺麗な感じはちゃんと表現できるものになった
2010年7月27-28日にかけて2日間レコーディングに臨みますが、升さんは連日深夜まで叩いたため疲労が蓄積、足に鍼を打ちながら(!)のレコーディングでした。最終的にレコーディング終了は7月28日の深夜0時でした。
ライブエピソード
ライブでは2011 – 2012年に開催された2本のツアー GOOD GLIDER TOUR、GOLD GLIDER TOURで演奏されています。
使用機材
藤原基央 | Gibson J-45 |
増川弘明 | Gibson Les Paul |
ライブで鍵盤を演奏するCHAMA
ベースの直井さんはライブでMIDIキーボードを演奏しており、担当楽器以外の演奏はBUMP史上初めての試みでした。2番まで演奏パートがなく手持ち無沙汰だったため、何かできることをしようという中での取り組みだと思われます。
以上、angel fallにの解釈・解説を紹介しました。