BUMP OF CHICKENの楽曲「R.I.P.」の歌詞の意味と制作背景について解説します。
「R.I.P.」とは《安らかに眠れ》を意味する英語 “Rest In Peace”の略です。作詞作曲を手掛けたボーカルの藤原基央さんは歌詞を書いて最後に「R.I.P.」というタイトルを付けました。
藤原さんはなぜで死者を弔う言葉である “R.I.P.” を曲名に付けたのでしょうか。そのエピソードを解説していきます。
「R.I.P.」基本情報
作詞作曲 | 藤原基央 |
作曲時期 | 2009年8月 |
シングル | 2009年11月25日「R.I.P. / Merry Christmas」 |
アルバム | 2010年12月10日「COSMONAUT」 |
ライブ初披露 | 2010年4月10日 「BUMP OF CHICKEN SECRET」 |
「R.I.P.」作曲のきっかけ
「R.I.P.」は2009年8月に藤原基央さんが作曲しました。
藤原 – だいたい8月くらいにできましたね。
出典:Bay-FM「PONTSUKA!!」2009年11月22日 ON-AIR
プロデューサー・MOR氏から「シングル曲を書いて」と言われた藤原基央さんは、スタジオで数十分で「R.I.P.」を書き上げます。
藤原 – それから「シングルでも速い曲が良い」って言われて、じゃあ速いけどゆっくり聴こえる歌メロにしようと思ったり、音のテーマが自分の中で決まっていって。そうやって「R.I.P.」が出来ていったんです。
藤原 – スタジオでギターを持ってあぐらをかいて、そこでもう詞もメロディもコードも同時に出てきた感じです。まっさらな状態から作り始めたんですけど、完成までは早かったですね。
引用元:音楽ナタリー
実は「シングル曲」をテーマに書かれたのは「分別奮闘記」でした。しかし「分別奮闘記」は曲調がシングルっぽくないという理由で別の日に出来上がったのが「R.I.P.」でした。
「R.I.P.」の歌詞の意味
「R.I.P.」の意味
「R.I.P.」の意味は英語の “Rest In Peace” の頭文字をとった略称で、日本語で <安らかに眠れ>という言葉で訳されます。
藤原基央が幼少期に見た「R.I.P.」の文字
藤原さんは小さい頃に見た映画で “R.I.P.”という言葉が墓標に刻まれるシーンがあり、印象的に残っていたといいます。
藤原 – いつかその言葉について書いてみたいな、唄ってみたいなって思ってた言葉なんだけど、R.I.P.もそれと同じで。レスト・イン・ピースっていうよりかはR.I.P.っていう、あのお墓に彫られた状態。
出典:「MUSICA」2009年12月号
先に歌詞を書き上げた後、”これしかない”という気持ちで「R.I.P.」というタイトルを付けました。
「R.I.P.」同様、藤原さんは印象的な言葉を自分の哲学に落とし込んでBUMP OF CHICKENの楽曲として昇華させることがあります。代表的な楽曲は「カルマ」と「メーデー」が挙げられます。
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何に向けた「R.I.P.」なのか
藤原さんは”R.I.P.”は何に対するものなのか、自分でもよくわからなかったと言います。
藤原 – まぁあらゆることに対する”R.I.P.”、「安らかに眠れ」で・・・そこはあんまり言わないでおきたいんだ、ごめん。聴いた人のイメージが正解になると思うから。というか、実は本当にわかんないんだよ。なんで”R.I.P.”ってついたのか、何に対しての”R.I.P.”なのか。
出典:「MUSICA」2009年12月号
別のインタビューでも”R.I.P.”の詳細について名言を避けています。
藤原 – 「なんで『R.I.P.』なのか」ということについては、言おうと思えば言えるんですけど。でも、言わないでおこうかな、と思っているんです(笑)
引用元:音楽ナタリー
普段から”曲の解釈は聴いた人の自由”と述べている藤原さんならではの配慮だと言えます。
「尻尾の生えた友達の墓」
R.I.P. 1:59〜
母の日の朝 父さんとシャベルで
尻尾の生えた友達の墓
引用元:R.I.P. / 藤原基央 (2009年)
何に対する”R.I.P.”なのかの名言を避ける一方、「R.I.P.」の歌詞に出てくる <尻尾の生えた友達> は猫であると明かしています。
(「そういえば『ガラスのブルース』に出てくる猫も、星になったっけ」と思い出して。)
藤原 – はい。そのとおりです。ま、猫ちゃんですね(笑)。
引用元:音楽ナタリー
BUMP OF CHICKENの代表曲「ガラスのブルース」には<ガラスの眼を持つ猫は星になったよ>という歌詞があります。「ガラスのブルース」と「R.I.P.」に出てくる猫は同じ猫なのでしょうか。
余談ですが、藤原さんの実家では黒蜜糖という名の黒猫が飼われていました。しかし黒蜜糖は2000年代中頃まで生きていたようですので、「R.I.P.」の歌詞に出てくる猫は別の猫だと思われます。
黒蜜糖がジャケットになっているインディーズ・シングル「LAMP」(1999年)
30歳になって書ける「R.I.P.」
藤原さんは「R.I.P.」は30歳に到達したからこそ書けた詞だと説明しています。
藤原 – もし20歳の頃の自分にこの曲(「R.I.P.」)を聴いてもらうことができたとしたら、全く意味がわかんないだろうなと。ある程度大人にならないと、理解できない部分て往々にしてあるんじゃないか、と。
出典:テレビ東京「JAPAN COUNTDOWN」2009年11月28日放送分
年齢を重ねることで色々なものを拾って、捨ててきたことで「安らかに眠れ」という感覚が芽生えてきたのだと思います。
「R.I.P.」と同時期に描かれた「魔法の料理〜君から君へ〜」や「透明飛行船」も自身の少年期の思い出にまつわる歌詞が登場しており、30歳の藤原さんは過去を振り返るタイミングだったのかもしれません。
「R.I.P.」制作エピソード
変拍子が特徴的なサウンド
「R.I.P.」の最大の特徴は変拍子のリズムです。サビ前、Cメロ、ギターソロ後の演奏パートでは7拍子を使用しています。
藤原 – あとは、ポップに響くけど変拍子、というアレンジもやってみたいとか、そういう色々が全部「R.I.P.」には詰まってます。
藤原さんは「変拍子は入れればいいってわけではない」とし、「R.I.P.」では曲に求められたからこそ使ったと言います。
大活躍のヴィンテージのレスポール
Gibson Les Paul Custom 1968
藤原さんは入手した黒色の1968年製レスポールを「R.I.P.」のレコーディングで大活躍したと話しています。
藤原 – 今回、ピックアップがハムバッカーの、本物のレスポールをゲットできて……それがすげぇ大活躍で。歪ませてみたり、間奏の変拍子のところでゴリゴリ鳴らせてみたりとかして。
出典:「MUSICA」2009年12月号
「R.I.P.」制作中に書いた「ウェザーリポート」
「R.I.P.」のプリプロ音源制作中、藤原さんはスタジオで「ウェザーリポート」を作曲しています。
「R.I.P.」PVとロケ地
MV監督 | 番場秀一 |
ロケ地 | 長野県諏訪市「旧清掃センター」(諏訪市上諏訪13338-111) |
「R.I.P.」のPV(MV)は長野県諏訪市上諏訪「旧清掃センター」で撮影されました。この日の朝に東京を出発したBUMP OF CHICKENのメンバーですが移動のバスの中で腹痛に襲われたというエピソードがあります。
直井さんが撮影で使用しているベースはSonic製 SRBです。「飴玉の唄」「イノセント」のライブなどで使用されている同機材はメディアに露出することはほとんどない機材です。
撮影時のエピソード
ゴミ処理場の廃墟を使用しましたが、埃がずっと舞っていました。撮影時以外は終始マスクをしていて、数日経っても喉がイガイガしていたと振り返っています。
映像にはメンバーの後方に柱が映っていますが、実はこれもセットです。メンバーたちもどこからがセットかわからないまま撮影していました。
一睡もせずハイテンションだった増川
撮影前日はメンバーは深夜2時に帰宅、翌朝5時集合というハードスケジュールでした。増川さんは一睡もせず、ロケバスで藤原さんと2人でゲームを撮影場所に着くまでやっていました。
直井 – ヒロと藤くんが「一睡もしてねえよ・・・」とかつって。なのに出発したらこいつら何を考えたのか、キャッキャキャッキャ言って! “PSP”バチコン点けて!ずっと着くまでやってんの!!!
増川 – もうね、午後2時くらいでエンペラータイム入ってたからね(笑)
引用:Bay-FM「PONTSUKA!!」2009年11月09日 ON AIR
撮影終了後も、バスの中で藤原さんとゲームをしていたという増川さん。「R.I.P.」にはそんな増川弘明さんが映っています。
藤原の私服のカーディガン
「R.I.P.」のMVで藤原さんが着用しているカーディガン、衣装ではなくて藤原さんが購入した私物のカーディガンです。映像加工で緑色に見えますが、実際は水色に近いとのことです。
「R.I.P.」ライブ演奏記録
2010年4月10日 六本木アリーナで開催された「BUMP OF CHICKEN SECRET」で「R.I.P.」が初披露された(画像引用元:rockin.com)
演奏回数 | 46回 |
演奏頻度 | ★★★☆☆ |
初披露 | 2010年4月10日「BUMP OF CHICKEN SECRET」六本木ヒルズアリーナ |
最終演奏 | 2016年2月11日 結成20周年特別記念ライブ「20」千葉県幕張メッセ |
演奏ツアー | 2010年「BUMP OF CHICKEN SECRET」 2011-2012年「GOOD GLIDER TOUR」 2012年「GOLD GLIDER TOUR 2012」 2013年「WILLPOLIS」 2014年「BUMP OF CHICKEN LIVE AT 新木場STUDIO COAST」 2014年「WILLPOLIS 2014」 2016年 結成20周年特別記念ライブ「20」 |
「R.I.P.」は2010年から2014年にかけて集中的に演奏されています。初披露は2010年のシークレットライブ「BUMP OF CHICKEN SECRET」です。2011〜2012年のライブハウスツアー「GOOD GLIDER TOUR」では全公演演奏されました。以降はアンコール枠、日替わり枠として演奏されています。
「R.I.P.」ライブ演奏機材(E-BOWの使用)
演奏機材 (2016年) |
藤原基央 – Gibson J-45 + E-BOW |
増川弘明 – Gibson Les Paul Standard 1956 | |
直井由文 – Sonic Fender Jazz Bass |
「R.I.P.」はBUMP OF CHICKENのライブ演奏曲で唯一、藤原さんがライブでE-BOWを使用する楽曲です。
E-BOWとはギター弦を振動させる手のひらサイズの機械で、イントロで浮遊感のあるキーボードのような音を演出しています。藤原さんは使用した後にポケットにしまっています。藤原さんはHEET SOUND製のPLUS E-BOWを使用しています。
ということで再現してみました!
「R.I.P.」ライブバージョン前奏 (演奏:管理人)
E-BOWを前の小節の終わりから入れてくるあたりが藤原さんらしいという感じです。音源とは違う音が楽しめるのもライブの醍醐味ですね。
「R.I.P.」ライブ映像作品
映像作品「BUMP OF CHICKEN 結成20周年記念Special Live 「20」」 |
以上、BUMP OF CHICKENの「R.I.P.」の歌詞の意味と制作エピソードについて解説しました。この記事を読んで新しい聴き方を見つけていただければ幸いです。ありがとうございました。
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