9th Album『aurora arc』

BUMP OF CHICKEN「話がしたいよ」歌詞の意味と制作エピソード

9th Album『aurora arc』

「話がしたいよ」はBUMP OF CHICKENが2018年11月に発表したシングル曲です。

「話がしたいよ」の歌詞は、当時の過密スケジュールに疲れたボーカル・ギターの藤原基央さんの心模様を”バス停に座った視点”から見た景色で書かれた曲です。

藤原さんが「話がしたいよ」に込めた思いとは何か、この記事では「話がしたいよ」の歌詞の意味や制作エピソードについて解説します。



「話がしたいよ」基本情報

作詞・作曲 藤原基央
編曲 BUMP OF CHICKEN & MOR
作曲時期 2018年春
録音時期 2018年7〜8月
収録作品 2018年11月14日 シングル「話がしたいよ/シリウス/Spica」
2019年7月11日 アルバム「aurora arc」
ライブ初披露 2018年10月19日 テレビ朝日系「ミュージックステーション 2時間SP」

「話がしたいよ」作曲エピソード

2018年春〜夏、ボーカル・ギター藤原基央さんは「話がしたいよ」を作曲します。この曲は過酷なスケジュールに疲れた中で生まれたと語っています。

超過密スケジュールと藤原基央にのしかかる疲労

2017年9月〜2018年3月、BUMP OF CHICKENは全国29公演を巡るツアー「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 “PATHFINDER”」 を開催します。

年を跨いで6ヶ月間、全国の都市を移動しながら全身全霊でステージに立つ裏で、藤原さんはタイアップ3曲の「シリウス」「Spica」「望遠のマーチ」の作曲、制作を行います。

PATHFINDERツアーの期間中に制作していた楽曲

曲名 放送開始日 タイアップ作品
「シリウス」 2018年4月4日 TVアニメ『重神機パンドーラ』OP曲
「Spica」 2018年4月4日 TVアニメ『重神機パンドーラ』ED曲
「望遠のマーチ」 2018年6月27日 ソーシャルゲーム『妖怪ウォッチワールド』CM曲

ライブと並行してタイアップ3曲の作曲〜制作にとりかかる真っ只中で、新たに別の書き下ろしのオファーを3曲受け取ります。

スタッフが新たに了承したオファー

曲名 情報解禁日 タイアップ作品
「話がしたいよ」 2018年8月30日 映画「億男」主題歌
月虹 2018年9月26日 TVアニメ「からくりサーカス」OP曲
新世界 2018年12月12日 LOTTE創業70周年記念CM『ベイビーアイラビューだぜ』CM曲

まだ完成していないタイアップが3曲ある中で、新たに別の3曲のオファーを引き受けたことに対して藤原さんはものすごく心労を感じたといいます。

楽器を鳴らすレコーディングと違い、曲を生み出す「作曲」は非常にセンシティブな行為で精神的、体力的に消費を伴うものでした。その結果、藤原基央さんの体力は消耗します。



疲れている状態をそのまま詞にした曲

全国ツアー「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 “PATHFINDER”」の幕を降ろした後、藤原さんは曲作りのスタジオに入ります。しかし燃え尽きてしまったためにスムーズに曲を生み出せない状態になります。

藤原さんはそんな状態を客観的に体力切れだと認知し「今だからこそ書ける曲」を書きます。

藤原 – わりと過密スケジュールだったので、すげえ疲れて。”シリウス” “Spica” 書いて、”望遠のマーチ” 完成させて、『疲れたなぁ…』っていうのがそのまんま曲になった(笑)

引用:ROCKIN’ ON JAPAN 2019年7月号

自分をメタ認知し、疲弊した心理状態を曲にして生まれたのが「話がしたいよ」です。

藤原さんは「話がしたいよ」以外にも〈疲れている時に書いた曲〉〈力の抜けた状態で書いた曲〉を書いています。どれもミディアムナンバーなのは面白い傾向です。

藤原基央が疲れた時、脱力した状態で作曲した楽曲

ベル
(2002年)
「ホリデイ」
(2002年)
「話がしたいよ」
(2018年)
「木漏れ日と一緒に」
(2019年)

「話がしたいよ」歌詞の意味

藤原さんは「話がしたいよ」の歌詞について〈ベンチに座った視点で書いた曲〉と説明しています。果たしてそれはどういう意味なのでしょうか。

ベンチに座るということの意味

藤原さんは雑誌のインタビューなどで曲作りを「素潜り」に喩えています。心の奥深くに潜って潜って握りしめた深層的な心理や情景を浮かんで歌詞にするそうです。しかしタイアップ曲の連続で疲れてしまった藤原さんは、一旦この「素潜り」をやめたと語っています。

藤原 – その体力切れの状態で、素潜りするのはやめてとりあえず『ちょっと待って』って言って、僕はベンチに座ったんですよ。それがきっと”話がしたいよ”におけるバス停だったんだと思うんです。

引用:「CUT」2018年11月号

「素潜り」をやめた藤原さんは心の中にあるベンチに座りました。「メロディーフラッグ」には〈疲れたらちょっとさ そこに座って話そうか〉という歌詞を彷彿とさせます。藤原さんにとって「ベンチ」とは心を休めている時間、場所、状態のモチーフなのかもしれません。

バス停のベンチから見えた景色とは

そして藤原さんが休んでいるベンチから見えるモノが「話がしたいよ」の歌詞には書いてあります。

だめだよ、と いいよ、とを往復する信号機

引用:「話がしたいよ」(2018年)/藤原基央

点滅を繰り返す信号機は、まるで何もせずに時間が経過する描写しています。藤原さんはただそれを見ており、自身の外の世界を静観しているかの様子が見て取れます。

2021年に発表した「Flare」に〈いま 青になった信号機〉という一節があります。藤原さんはコロナ禍における社会情勢で全てがストップしている様子などを踏まえて「信号機」という言葉を選んだといいます。つまり藤原さんにとって「信号機」とは行動意欲あるいは行動制限のモチーフだといえます。

その上で「話がしたいよ」の〈だめだよと いいよとを 往復する信号機〉はまさに藤原さんの心理状態を表しています。最後にバスが停まってドアが開くところ、バスに乗ったのか乗らないのかわからないまま終わっているところが詩的です。



CDジャケットとボイジャー1号

シングル「話がしたいよ/シリウス/Spica」

CDジャケットの写真は無人宇宙探査機ボイジャー1号が最後に送信した写真です。ボイジャーから見た地球と言われています。

「話がしたいよ」制作エピソード

「話がしたいよ」のレコーディングを行なった渋谷Bunkamura Studio(画像引用元:Music Man様

「話がしたいよ」の作曲後、2018年7〜8月にレコーディングを実施します。レコーディング場所は東京都渋谷区にあるBunkamura Studioです。「aurora arc」の楽曲のほとんどはこのスタジオで録音されています。

デモテープのボーカルとギターを収録

「話がしたいよ」のボーカルテイクとギターのフレーズはデモテイクの音源を流用しています。

藤原 – 2番から入ってくるエレキギターのフレーズも、俺がデモで弾いたやつをそのまんま使ってます。歌もギターも、『はあ、疲れたなあ…』って言って曲書いて、そのモードで歌ってるし、そのモードで弾いてるし。それが出てるんだよなあ。

引用:ROCKIN’ ON JAPAN 2019年7月号

BUMP OF CHICKENの楽曲はデモとは別に本番RECすることが一般的です。しかし過密スケジュールに心身が消耗した藤原さんはあまり時間をかけずに制作をしたかったという心理状態を感じさせます。別の見方としては、デモ制作段階から手を抜かず、何事にも本気で取り組んでいる制作姿勢が伺えます。

デモテイク/プリプロテイクを使用した楽曲「飴玉の唄」(2007年) 間奏のリフ
「イノセント」(2010年)間奏のシンセサイザー
ほんとのほんと」(2012年)ボーカルテイク
「Spica」ボーカルテイク
「話がしたいよ」ボーカルテイク
「話がしたいよ」2番からのエレキギターのリフ




本番用として録音したテイクと比較して、デモテイクを選んだはずなので本番用のテイクも聴いてみたいですね。

Fender Jazz Masterを使用する増川弘明

 

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ギタリストの増川弘明さんはFende Jazz Masterを使用している写真が残っています。同時期に3カポでGsus4コードを押さえる曲は「話がしたいよ」しかないため同曲だと判ります。撮影自体は夏以前のもので、instagramの投稿はリリース直前の10月に行われました。

マスタリングエンジニアの前田氏のツイートから2018年8月8日にはレコーディングが完了しマスタリング段階に入っていることがわかります。

MV撮影場所・ロケ地・バス停

藤原基央さんのリップシンクの演技が印象的なプロモーションビデオです。モノトーンの衣装が多かった藤原さんですが、ジーンズジャケットを着たラフな服装がかっこいいですね。

バス停:イメージスタジオ109前

PVに出てくるバス停とベンチはセットです。

 

撮影スタジオ:イメージスタジオ109 目黒スタジオ

建築家安藤忠雄氏の作品である「光の教会」をモチーフにしたセットが組まれています。

 

 

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増川さんの奥に映る機材置き場から目黒スタジオ内の「M2 Studio」というスタジオが使用されていることがわかります。

 

屋上:HOXTON STUDIO(碑文谷ばんらいマンション)

embedded from HOXTON Studio 

「話がしたいよ」ライブ演奏記録

演奏回数 26回
初披露 COUNTDOWN JAPAN 18/19 at 幕張メッセ
演奏ライブ 2018年「COUNTDOWN JAPAN 18/19
2019年「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark
2019年「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019
2022年「BUMP OF CHICKEN TOUR 2022 Silver Jubilee
TV出演 2019年10月19日 テレビ朝日系「ミュージックステーション 2時間SP」

「話がしたいよ」はBUMP OF CHICKENのライブで26回演奏されています。

「話がしたいよ」ライブ映像作品

アルバム「aurora arc」*初回特典版付属Blu-ray/DVD
(2018年12月28日「COUNTDOWN JAPAN 18/19」収録)
映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark TOKYO DOME