「Hello, world!」はBUMP OF CHICKENが2015年にリリースしたシングル曲です。
ボーカル・藤原基央さんは「Hello」と「World」の2つのアイデアを繋げて「Hello, world!」という曲名にしました。
「Hello, world!」の曲名に込められた想いとは何か。「Hello, world!」の歌詞の意味と制作エピソードを解説していきます。
「Hello, world!」基本情報

「Hello, world!/コロニー」(期間限定版)
作詞・作曲 | 藤原基央 |
編曲 | BUMP OF CHICKEN & MOR |
作曲時期 | 2015年1〜12月 |
録音時期 | 2015年1〜3月 |
制作スタジオ | 早稲田Avaco Studio |
収録作品 | 2015年4月22日 シングル「Hello, world!/コロニー」 |
2016年2月10日 アルバム「Butterflies」 | |
ライブ初披露 | 2015年7月31日「BUMP OF CHICKEN Special Live 2015」at インテックス大阪5号館 |
「Hello, world!」の意味

“Hello, world!”と表示されるプログラミング画面(引用元:日本ハッカー協会)
Hello world(ハロー・ワールド)は、多くのプログラミング言語において非常に単純なプログラムであり、プログラミング言語の入門書で、プログラムを動かすためのプログラミング言語の基本文法の解説例として提示される。
「Hello, world!」とはプログラミング初学者がプログラミング言語を使用することで表示させる最初の例題を指すIT用語です。
作詞作曲担当の藤原基央さんは、もともと「Hello」と「World」という2つの曲名アイデアがあり、最終的にそれらを繋げて「Hello, world!」と名付けました。
「Hello, world!」制作背景
2014年秋、BUMP OF CHICKENはタイアップ作品向けの2曲「ファイター」「パレード」の制作を行います。加えて翌春公開予定の映画「寄生獣 完結編」のオファーも含めて、計3曲の制作が予定されていました。
その中で、「Hello, world!」のタイアップ先となるTVアニメ「血界戦線」主題歌のオファーを受け取ります。藤原さんにとってこの頃のスケジュールはタイトに感じました。
アニメーション監督・松本理恵氏との出会いの曲
藤原さんは「血界戦線」のアニメ監督・松本理恵氏と打ち合わせをします。初めて会った2人はお互いのバックグランドを語り合うなどして意気投合します。

TVアニメ「血界戦線」(監督・松本理恵 原作・内藤泰弘)
この時、松本監督からは「歌始まりの曲」というリクエストがあり、それに応える形で藤原さんはスタジオで曲を書くことにします。
以降、松本理恵監督とBUMP OF CHICKENは3作品でコラボレーションを行い、「Hello, world!」は最初の1曲となります。
CM ロッテ「ベイビーアイラビューだぜ」 ×「新世界」
ポケモンスペシャルMV「GOTHA!」×「アカシア」
「Hello, world!」歌詞の意味
最初の4行から書き始めた歌詞
2015年1月、藤原さんは「Hello, world!」の作曲に取り掛かります。最初に書き始めたのは次の4行です。
藤原 – 今年に入ってから曲を書き始めて、いつもどおりスタジオに入って、最初の4行を書きながら歌って。
引用元:2015年4月「Oricon Music」
(※別のインタビューでは2014年12月にフルコーラスを書き上げたと語っており、作曲時期についてはメンバー本人も混同していると思われる)
Hello, world! 0:00〜
扉開けば 捻れた昼の夜
昨日どうやって帰った 体だけが確か
おはよう これからまた迷子の続き
見慣れた知らない 景色の中で
引用元:Hello, world! / 藤原基央 (2015年)
藤原 – “これだ”と思ったらそこから先の方向性が定まるんですよ。だから、サビから書けるときもあるし。それが今回は頭の4行だったんですよね。
引用元:2015年4月「Oricon Music」
他には最初の4行の歌詞から生まれた曲として「涙のふるさと」があります。藤原さん曰く、この4行の内容は当時の自分の状況をそのまま書いたといい、多忙による生活リズムが崩れた状況を伺えます。
「黒い目の人」= 生きている人
Hello, world! 0:00〜
顔を上げて 黒い目の人
君が見たから 光は生まれた
引用元:Hello, world! / 藤原基央 (2015年)
「Hello, world!」のBメロには《黒い目の人》という人物が登場します。リリースから10年後が経った際のラジオ番組「PONTSUKA!!」で〈生きてる人〉の比喩表現だったと明かしています。
藤原 – 「黒い目の人」ってどういうことって訊かれて。これ「生きてる人」って意味の言い換えだったんですね、自分の中でね。
引用元:2025年4月4日 Bay-FM「PONTSUKA!!」
加えて藤原さんは、アニメ「血界戦線」のキャラクターの眼とは関係のない喩えだと説明しています。「モーターサイクル」という曲では、逆に近い意味として「死んだ魚の目」という表現が使われています。「目」をひとつとってもいろいろな意味を生み出す藤原さんの表現力の高さが伝わります。
1コーラスを書き上げた段階でデモを録る
「Hello, world!」は先に1コーラスバージョンをアニメ制作現場に送る必要がありました。1コーラスを書き上げたところで歌詞、メロディ、ギター2本で構成されたデモテープを作成します。
「Hello, world!」制作エピソード

2015年2月「Hello, world!」を録音した早稲田AVACO STUDIO(引用元:AVACO Studio)
「Hello, world!」は早稲田にあるAVACO STUDIOで制作します。BUMP OF CHICKENとしては当時あまり使用頻度の多くないスタジオです。
セッションで構築したバンドサウンド
藤原さんはギターと歌だけの「Hello, world!」のデモテープをメンバーへ配り、3日後にはBUMP OF CHICKENのプライベートスタジオでアレンジを決めていきます。
升 – プリプロ前にアレンジの音を実際に出して、曲を詰めていって。セッション的に曲の形を組み立てていく感じですね。
引用元:2015年4月「Oricon Music」
今日はリハでした🙌 pic.twitter.com/U5aJnae3ZY
— CHAMA (@boc_chama) January 14, 2015
2015年1月、BUMP OF CHICKENが楽曲セッション時に使用するプライベートスタジオにて。投稿時期とEコードを押さえていることから「Hello, world!」のリハーサルであることがわかる
増川 – 今回はスピード感が大事だったので、キメとかもスタジオのその場で合わせて修正を入れながら作っていくような手法でした。スピード感とテンションの高さをずっとキープしていくみたいな。
出典:natalie.mu
具体的なレコーディングの様子をギタリスト・増川弘明さんが語ることは珍しいです。バンド全員によるセッション的手法でアレンジ決めをする時には増川さんの弾くベーシックなギターがあることで、藤原さんが試行錯誤する余裕が出てくるため、増川さんの存在は大きな役割を持ちます。
BUMP OF CHICKENの楽曲は、藤原さんとプロデューサー・MOR氏でアレンジのアイデアを出し、各メンバーが音で体現していく流れが多いです。しかし「Hello, world!」では4人でスタジオに入り、セッションを通して細かいアレンジを決めていきます。
本番レコーディング
新曲の「Hello,world! / コロニー」をリリースすることが決まりました🙌発売日は4月22日です🔥詳しくはHPをチェックしてみてください🙏写真はチューブラーベルを叩く基央さん🚧http://t.co/z0L0czDgDn pic.twitter.com/2G1Ypj7cLn
— CHAMA (@boc_chama) March 3, 2015
早稲田Avaco Studioにて「Hello, world!」のレコーディングをする藤原。投稿日時は3月だが2月25日にレコーディングされた。
スピード感のある制作手法で、有機的に絡むギターとドラムのハイハットといったバンド感のあるサウンドが生み出されました。過去に同様の手法で「トーチ」「Smile (Band Ver.) 」も制作されたことがあります。
直井の唸るようなベースライン
「Hello, world!」のベースはBUMP OF CHICKEN初期を彷彿とさせる動くようなスタイルで演奏されています。
ベースを録ってます🚧 pic.twitter.com/PYFpe2zB2C
— CHAMA (@boc_chama) January 28, 2015
直井 – 僕はベーシストとして、ベースのうねり出す位置とかキメの部分にアニソンならではのポイントがあると感じていて。(中略) 僕の場合はアニソンが好きな気持ちがこじれて爆発しちゃった(笑)
出典:natalie.mu
直井さんは「orbital period」〜「COSMONAUT」の時期に自身の動き回るスタイルを封印し、曲を支えるルート弾きを多用してきました。「Hello, world!」では直井さんのテクニックを全開放した唸るようなベースラインを聴くことができます。
“反省部屋”でギターソロを考える藤原基央

藤原曰く「反省部屋」という狭さのブース(引用元:AVACO STUDIO)
藤原さんは「Hello, world!」のギターソロを考える時に、スタジオ内に会った狭いブースのなかでひたすら弾いて考えていました。藤原さんたちは”反省部屋”と名づけていました。
狭い部屋でタイトな音を表現した升秀夫のドラム

「Hello, world!」のドラムを録音したブース(引用元:AVACO STUDIO)
「Hello, world!」のドラムは”反省部屋”とは違う別室で録音されました。
升 – ドラムの音をタイトめに録りたかったんで、狭い部屋でさらに周りをギッチギチに囲って録ったんですよ。すごい圧迫感あって。録り終えたあとはすごい開放感があって。
引用元:2025年4月4日 Bay-FM「PONTSUKA!!」
このように「Hello, world!」の録音エピソードが語られることで、当時の様子を想像できるのはありがたいですね。
ボーカル別テイクの「Hello, world! (TV Size ver.)」
3形態でのCDリリース
「Hello, world!」は「コロニー」(映画「寄生獣 完結編」主題歌)とともに両A面シングルとして収録され、3形態でリリースされました。
- 「Hello, world!/コロニー」(通常盤)
- 「Hello, world!/コロニー」(期間限定版)
- 「コロニー/Hello, world!」(期間限定版)
限定盤特典として初のスタジオライブ映像を収録
期間限定版には「Hello, world!」と「コロニー」のスタジオライブ映像が1曲ずつ特典収録されています。
直井 – “特典何か入れましょうか?”ってなった時に、アイディア色々でたんですけど、あまりいいものが浮かばなくって、結局、“ミュージシャンだからライブで!”って感じで決めました!
出典:2015.04.20 O.A. TFM「SCHOOL OF LOCK!!」
これがBUMP OF CHICKENとして初のスタジオライブとなりました。
「Hello, world!」ライブ演奏記録
2016年7月「BFLY」at 横浜日産アリーナ embedded from Twitter@boc_chama
演奏回数 | 16公演 |
初披露 | 2015年07月30日「BUMP OF CHICKEN Special Live 2015 」インテックス大阪 |
最終演奏 | 2016年07月17日「BFLY」横浜日産スタジアム |
演奏公演 | 2015年「Special Live 2015 」*全公演演奏 2015年「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」 2015年「COUNTDOWN JAPAN 15/16」 2016年 結成20周年記念ライブ「20」 2016年「BFLY」*全公演演 2021年「Studio Live Silver Jubilee」 2022年「Silver Jubilee at Makuhari Messe」 2024年「ホームシック衛星2024」 |
演奏機材 |
藤原基央 – Gibson Les Paul Special 1960 Historic Collection |
増川弘明 – Gibson Les Paul Standard Historic Collection | |
直井由文 – Fender Jazz Bass |
「Hello, world!」は16回ライブで演奏され、2015〜2016年の2年間に集中的に披露されました。これとは別に無観客で2回(CD特典映像のスタジオライブ、NHK「SONGS」)演奏されています。
増川弘明のギターソロアレンジ
「Hello, world!」のライブバージョンでは、増川さんがアレンジギターソロを披露しています。
原曲(演奏:藤原基央)
「Hello, world!」ライブ映像
購入可能な上記作品以外にも有料放送やテレビなどでもライブ映像がオンエアされました。
- 2015年8月08日「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」(WOWWOW)
- 2016年2月13日「SONGS」(NHK)
以上、BUMP OF CHICKENの「Hello, world!」の歌詞の意味や制作エピソードについて紹介しました。この記事を読んで新しい聴き方を見つけていただければ幸いです。ありがとうございました。