楽曲解説 : レム vol.1 – 殺人鬼の気持ちで書いた曲 –

BUMP OF CHICKENの楽曲「レム」はユグドラシルに収録されている藤原基央さん弾き語りの曲です。当時のレビューではアルバムの中でもっとも”凶暴な曲”と評され、人間の内面をシニカルな語り口調で捉えた歌詞が印象的な曲です。過去のインタビューに基づいて、レムを紹介します。

基本情報
4th Album 「ユグドラシル」(2004年) 収録 M-10
作詞作曲:藤原基央
作曲時期:2003-2004年
embrace、オンリーロンリーグローリーよりも後
車輪の唄と同じ時期、
乗車権よりも前に書かれた曲




レム = レクイエム

レムはレクイエム(鎮魂歌)のことです。藤原さんはこの詞を書く際、殺人鬼の気持ちになって作詞作業に臨みました。

– 藤原 – これ、前のインタビューでレクイエムって言いましたっけ?(殺人鬼の気持ちで書いたことについて)確か愛があるからと付け加えた気がしますね。やっぱ殺したんじゃないかなぁ。

この曲の詞を書くには殺人鬼の視点になるしかなかったといいます。批判する人を批判して、冷めている人を冷めた見方をしており、上辺だけの表層的な態度や行為よりも深層的な人間の心を書き出そうとしています。

– 藤原 –  他者がいる時の行動だと思うんだけど、どれが愛でどれがその逆なのか、よくわかんないんですよ(笑)。どうやったら近寄ったことになって、どうやったら拒絶したことになるのか、もしくは離れたことになるのか、よくわからないです。”レム”がどっちに作用してるかって全くわからないですけど・・・だけど最後にちゃんと近づいてはいるんだよな、そういえば。

レムを発表するか悩む

この曲を書いた藤原さんはこの曲をレコーディングすることに2つの理由で悩みました。1つはレムをBUMP OF CHICKENの曲として発表するべきかということです。自然発生的に書いたレムは、歌詞の内容からバンドと関係なく自分個人の主義主張であると藤原さんは考えました。この曲をBUMP OF CHICKENの作品として発表することは直井さん、増川さん、升さんの作品になることを意味します。

(ちなみに同じアルバムに収録されている車輪の唄は、この曲の収録について悩んでいた夜に、似たようなコード進行でジャカジャカ弾いている時にできた曲です。)

もう1つの理由は、バンドサウンドで録音しないということです。インディーズ時代に発表したデモテープ(Let it beやGrown up person)、THE LIVING DEADの表紙であるOpening / Endingを除けば、BUMP OF CHICKENの楽曲は全て4人の楽器演奏で作られていました。1999年頃、藤原さんは業界人からのソロとしての引き抜きを断った経緯があり、4人での作品づくりにこだわっていた過去もあります。そんな中、藤原さんを後押ししたのは「曲が求める形にする」という、ユグドラシル以後の藤原さんの大きな基準となる考え方でした。




直井 -” レムに対して責任を取れます。”

そして直井さんたち他の3人は、「曲が求める形」のために自分たちが演奏に参加しないことを前向きにとらえます。そこにはTHE LIVING DEADの頃のようなエゴな考えは全くありませんでした。

-直井-  “asgard”、”midgard”、”レム”、”睡眠時間”に関して藤原のソロワークだとは思わないってことですね。俺らは、(他のバンドと比べて)変わってるかもしんないけど誰がどのプレイをしている時でも、だいたいスタジオにいます。珍しいらしいです。

– 中略 –

(藤原が)”レム”弾いてる時でも、その曲ができた時でも自分の曲にしか思えない。だからその曲になにがあっても責任を取れます。だから俺、いつでもベースは持ってました。もう全部用意しときました。アンプもシールドも全部。ドラムも全部くんであったし、いつでも入られる準備はありました。前だったら俺は絶対弾いちゃってたと思う。それはエゴになっちゃんうんですけど。でも、今は曲がいってることがよくわかるから、弾く必要がほんとねえなって思うんです。

このレムをきっかけに、”Everlasting Lie – Acoustic version” や “睡眠時間”など藤原さんが単独でレコーディングした楽曲が発表されることになり、BUMP OF CHICKENのサウンドが広がりました。

レムはBUMP OF CHICKENのサウンドと歌詞の両面で大きな転換を迎えた曲になります。以後の作品づくりの重要なコンセプトとなる”曲が求める形”を体現しているとても意味のある1曲となりました。この曲を聴く時に、こんな経緯があったことを思い出すと新たな曲の聴き方ができるかもしれません。

– 了-