楽曲解説:三つ星カルテット vol.1 – メンバーへ向けた唄 –

6th Album「COSMONAUT」 M-01
作詞作曲:藤原基央
作品発表:2010年12月15日
作曲時期:2010年10月〜11月
レコーディング場所:一口坂スタジオ

三ツ星カルテットは6枚目のアルバム「COSMONAUT」に収録されている楽曲です。5/8拍子と6/8拍子の複合変拍子と変則チューニングのアルペジオが特徴的なサウンドを織りなす、藤原基央さんのセンスが光る1曲です。ライブの間奏では藤原さんが手拍子をオーディエンスに要求するなどライブパフォーマンスに優れている曲でもあります。

変則チューニングのアルペジオはこちらのCMスポットで聴くことができます。

今回は三ツ星カルテットの解釈や考察を紹介します。




スタジオで増川と話しながら弾いていた曲

2010年、COSMONAUT制作のためにメンバー達は日々レコーディングしていました。作曲担当の藤原さんが、それまでにないペースで曲を書いていたため数曲同時並行でレコーディングしているほどの忙しさでした。

ある日、升秀夫さんのドラム録りがうまくいかず予定していたレコーディングスケジュールを変更せざるを得なくなります(さらに同日メンバーで升さんのドラムが何故うまくいかないのか話し合ったそうです)。そのため、翌日予定していた藤原さんが何もすることがなくなり、増川さんと別の曲(おそらくbeautiful glider)のギターについて相談していました。二人ともギターを手にしながら話している時、藤原さんはギターのフレーズを弾きはじめました。

藤くんって、曲を書き始めるなぁっていう雰囲気がわかるんですよ。この時も、最初は俺が他の曲のギターについて相談してたんですけど、そのうちなんかフレーズ弾き始めて。で、さらにそのうち、紙とペンを探し始めて。それで何か書き始めたから「ああ、これは曲を書き始めたんだなぁ」と思って俺は席を立ったんですけど(笑)- 増川 –

この時藤原さんと増川さんはbeatiful gliderのギターについて相談していたと推測できます。なぜなら三ツ星カルテットもbeatiful gliderも変則チューニングで弾かれているからです。

スタジオの僅かな時間で三ツ星カルテットを書き上げた藤原さんは、試行錯誤していた升さんとベースの直井さんお願いしてブースを使わせてもらいました。

しばらくして(藤原が)戻って来て「秀ちゃん悪ぃ、ちょっと録らしてくれる?」って行って、俺らのことをブースの外に出して、鶴の恩返し状態で藤くんが何かを録り出したんです。それでできた曲が、これ。」- 直井 – 

イヤな話し合いから生まれた詞

上で述べたように、この前日は升さんのドラムがうまくいかず、メンバー全員で話し合いをしていました。おそらく升さんの演奏だけでなく、バンドとしての曲への解釈やレコーディング方針について話し合っていたのだと思います。そして藤原さんはその日の話し合いについて、良い印象を持っていませんでした。

その前日の話し合いが、俺はなんかイヤだったんだよね。もちろん愛情ありきの話し合いだったし、全員が前向きな気持ちで臨んでた作業だったと思うけど・・・でも、バンドの解決方法っていうのはそういうものではないんじゃないか?もっと音の中でって思ってて・・・そうやって前日のことをずっと考えながら、なんとなくギターを弾いていたら生まれた曲なんだけど。– 藤原 – 

具体的にどんな話がされていたのかは不明ですが、藤原さんはファンの私たちが思っている以上に「バンド」という形態にこだわりを持っています。以前PONTSUKA!!で藤原さんがバンドのあり方について、練習をしすぎてメンバーとの食事を断った升さんを叱ったことがありました。

(升に向かって)練習、大事ですよ・・・。そりゃそうでしょうよ・・・。でもね、スタジオで顔見合って練習するってのは、メシの時間とかを通じてね、育まれていくわけですよ。それをお前はね、クリック(リズムキープの電子音)を聞いて練習してるんですからね、お前のバンドのメンバーはクリックなんですかって話ですよ。- 藤原 / PONTSUKAにて –

今回の三ツ星カルテットの時はどんなことが話されたのか不明ですが、やはり「理屈でない」部分について藤原さんは持論と違う認識があり、イヤな気持ちになったそうです。

音楽をやることって、理屈じゃないから。それ(言葉)では絶対に解決できないことも音楽には合って。そこで何をどうできるかが、バンドが続くか続かないかってことに関係していくと思うんだけど・・・そんなことを考えてた。- 藤原 – 

このようなバンドが続くか続かないか、極めてシリアスなことまで考えてしまうほどドラムひとつとっても真摯に向き合っているんですね。ちなみに”僕らはずっと呼び合って 音符という記号になった” という一節はユグドラシル(2004年)の頃から藤原さんの中にあった言葉を使いました。

三ツ星の秘密

タイトルになっている三ツ星はBUMP OF CHICKENのロゴの星を表しています。ではなぜ4つではなく3つなのか、というと「自分から見た星が3つ」だということです。

そこで自問自答しちゃうんです。「俺が本当に星でいいのか」って。だから”魔法の料理〜君から君へ〜”の時の(裏ジャケットの)3つの星は俺から見たバンドなんです。で、願わくは、他のメンバーがこのバンドを見た時に、3つの星のなかに俺がいられたらいいなぁって思ってやったことなんです。だからね、”三ツ星カルテット”もこのカルテットは俺とっては三ツ星なんですっていう意味なんです。 – 藤原 –

<僕らはずっと呼び合って 音符という記号になった>

バンドについて深く話し合った翌日に、こんな曲を聴かせられたらメンバーも一層絆が深まってしまったに違いありません。さらっと書いてしまう藤原さんの優しさやバンドに対する思いを感じられる曲ですね。

藤原基央と三つ星

藤原さんがこの「三つ星」というモチーフを大切にしているかは、所有のギターを見ればわかります。2011年のGOOD GLIDER TOURの頃からメインのレスポールスペシャルのシールドを指すジャック部分に3つの十字のシールを貼っています。さらに2015年頃からアコースティックギターのジャック部分にも貼っており、すごく大切にしている様子がわかりますね。

以上、簡単に三ツ星カルテットについて紹介しました。