楽曲解説:涙のふるさと vol.1 – 完結していた4行の詞

涙のふるさと
作詞作曲:藤原基央
作詞作曲日:2006年春〜夏
リリース日:2006年11月22日
ライブ初披露:2007年7月22日 SETSTOCK FESTIVAL 07 at 国営備北丘陵公園
ライブ最終披露:2018年3月18日 PATHFINDER at 福岡マリンメッセ

「涙のふるさと」はBUMP OF CHICKENの通算12枚目のシングル曲です。比喩的な詞の世界観とエコーのかかった深みのあるボーカルが魅力的な、orbital period期を代表する楽曲です。また製菓メーカー LOTTE「Airs(エアーズ)」のCM曲としてタイアップもされました。今回は「涙のふるさと」の作曲背景と詞の解釈について紹介します。




楽曲制作までの流れ

2006年時系列

2006.04.xx トイズファクトリーの会議室に4人がいた時に地震発生。藤原、ワンコーラス歌う。既に「涙のふるさと」のタイトルはついていた。
2006 夏 フルコーラスの詞が完成。サウンドのイメージもあった。
2006.08.08 c/w「真っ赤な空を見ただろうか」作曲
2006 夏〜秋 レコーディング
2006.11.22 12th Maxi Single「涙のふるさと」発売

最初の4行とメロディ

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涙のふるさとは最初に4行の詞と断片的なメロディのアイデアが別々にありました。そしてある日、藤原基央さんはその2つのアイデアをうまく結びつけます。

探さなきゃね 君の涙のふるさと
頬を伝って落ちた雫が どこから来たのかを

出かけるんだね それじゃここで見送るよ
ついて行けたら嬉しいんだけど 一人で行かなきゃね

しかしBメロやサビといった続きは作られませんでした。Aメロそれ自体で完結していると考えていたからです。

藤原 – Aメロができて-その時にもう“涙のふるさと”っていうタイトルは付いてたんですけどーしばらく経過した後に『これを曲にしよう』ってなった時、Aメロだけで完結してると思っていたので

MUSICA vol.9 2008.01

藤原 – ただ、それはAメロだけで完結したものだったので、そこから先を作る気が起きなくて。

excite music INTERVIEW with BUMP OF CHICKEN

orbital period期(2005〜2007年)の藤原さんはとにかく1曲を書くのに時間をかけました。サウンド面で「曲が求める音」を追求したように、作詞面でも推敲に推敲を重ねて、真に伝えたい言葉だけを詞にするようにしていたからです。

地震が起きた会議室で「涙のふるさと」を歌う

embed from @boc_chama

*トイズもしくはHIP LAND GROUPの会議室と思われる。私の知ってる会議室と違う…。

2006年4月、関東地方で大きな地震が起きます。この日トイズファクトリーの会議室で打ち合わせをしていたメンバーは、その揺れの大きさに身の危険を感じました。

その場にいた人たちの勧めで藤原さんは「涙のふるさと」をギターで弾き語りをします。これがメンバーに聴かせた最初のタイミングでした。

直井:とりあえず楽しいことがまだ少し残ってんだったら全部やっとけって感じで、藤君が唄ってくれて、地震のことなんて忘れて。『お前ソレすげーいい曲じゃん!!』てなって…『お前ソレ早くやらしてくれー!!』みたいな

音 涙のふるさとPVインタビュー

2006年の春はストックが0曲、本当に寡作な時期でした。今のようなリリースペースが嘘みたいですね。




「会いに来たよ」の歌詞について

春にトイズの会議室で歌ったあと、しばらく眠りについていた涙のふるさと。Aメロだけで完結していた曲を少しずつ書き足していき、夏頃にはフルコーラスで完成します。

「会いに来たよ 会いに来たよ
 君に会いに来たんだよ
 君の心の内側から 外側の世界まで
 僕を知って欲しくて 来たんだよ」

この曲はサビの<会いに来たよ 会いに来たよ 君に会いに来たんだよ>という繰り返しのフレーズが印象的です。同じ言葉を繰り返すほどの意思が込められているのでしょうか。藤原さんにとっては、自然発生的に生まれて来た言葉に恥ずかしさは感じなかったようです。

藤原 – ほんとに歌いたいことなんだからしょうがねえじゃん、ていうしかないんだよな。疑問もなければ躊躇もないんだよね、うん、<会いに来たよ>の連呼でいいのか?みたいなこともないし

ROCKIN’ ON JAPAN 2006.12

乗車権の歌詞を書いた人と同じ人間とは思えないほどの純朴さがあります。藤原さんはサウンド面については「曲の求める音」を究極理念として掲げています。一方で歌詞については、自分の内面から出て来た言葉を包み隠さず詞にしています

「涙」の台詞

サビの歌詞には敢えてカギカッコを付けて、まるで「涙」が台詞を発しているかのように感じますよね。藤原さんは、もちろん涙が現実的に声を出すことはないとしながらも、その存在自体に意味があると語っています。

藤原 – 完全に涙が意思を持っているわけではないと僕は思います。そういうふうに言ってる気がする、そういう存在なんだろうなと、そのひとしずくがね。その存在自体がその台詞なんじゃねえかなって。

ROCKIN’ ON JAPAN 2006.12

藤原 – 運動会の時に、一生懸命走って貰ったバッジとか。自分ちで、すげえ楽しく喋って、すげえいい人だなあとか、そういうグルーヴがお互い生まれて、その人が帰ってったあとに、その人が置いてったタバコの空き箱とかね(笑)それ自体が意味を持つ台詞になる

ROCKIN’ ON JAPAN 2006.12

なんかわかる気がします。ものに対する思い入れというのでしょうか。ものに限らず、音や景色もそれ自体に意味がある時がありますよね。台風前のぬるい空気とか、真っ赤な夕焼けとか、それに対して意味を見出してしまうのが人間かもしれません。

夢の飼い主との偶然の繋がり

擬人化というと夢の飼い主を思い浮かべます。歌詞の擬人化との関連は偶然だと思いますが、夢の飼い主との明確な共通点があります。それはBメロのコード進行です。

涙のふるさと
その濡れた頬に 響いた言葉
Cadd9 GonB GonA#  FonA

夢の飼い主
少しはあったかいかな
Cadd9 GonB GonA#  FonA

偶然の一致だと思いますが、Bメロでこのコード進行が使われているのは涙のふるさとと夢の飼い主の2曲だけです。

さて、こうして「涙のふるさと」のフルコーラスが完成します。「カルマ/supernova」を出してストック曲が0曲期間がようやく終了します。次はいよいよレコーディングとタイアップについて触れていきたいと思います。ご拝読ありがとうございました。