5th Album『orbital period』歌詞・楽曲解説

楽曲解説「涙のふるさと」 完結していた4行の詞

5th Album『orbital period』

「涙のふるさと」はBUMP OF CHICKENの通算12枚目のシングル曲です。

 

ボーカル・ギター藤原基央さんの書く比喩的な詞の世界観が魅力的な『orbital period』期を代表する楽曲です。

 

この記事では「涙のふるさと」の歌詞の意味と制作エピソードについて解説します。

基本情報

カップリング「真っ赤な空を見ただろうか」

「涙のふるさと」(2006年)

作詞・作曲 藤原基央
編曲 BUMP OF CHICKEN & MOR
作曲時期 2006年春〜夏
シングル 2006年11月22日『涙のふるさと』M-01
リリース 2007年12月19日 『orbital period』M-16
ライブ初披露 2007年7月22日「SET STOCK FESTIVAL’07」広島県国営備北丘陵公演
ライブ最新披露 2018年3月18日「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」福岡県福岡マリンメッセ公演

 

制作スケジュール

 

2006年時系列

2006年4月 トイズファクトリーの会議室に4人がいた時に地震発生。藤原、ワンコーラス歌う。既に「涙のふるさと」のタイトルはついていた。
2006年夏 フルコーラスの詞が完成。サウンドのイメージもあった。
2006年8月8日 c/w「真っ赤な空を見ただろうか」作曲
2006 夏〜秋 レコーディング
2006年11月22日 12th Maxi Single「涙のふるさと」発売

 

Aメロの歌詞とメロディのエピソード

「涙のふるさと」は最初に4行の詞と断片的なメロディのアイデアが別々にありました。そしてある日、藤原基央さんはその2つのアイデアをうまく結びつけます。

 

涙のふるさと  0:18〜
探さなきゃね 君の涙のふるさと
頬を伝って落ちた雫が どこから来たのかを
出かけるんだね それじゃここで見送るよ
ついていけたら嬉しいんだけど 一人で行かなきゃね

引用元:涙のふるさと / 藤原基央 (2006年)

 

しかしBメロやサビといった続きは作られませんでした。Aメロそれ自体で完結していると考えていたからです。

 

藤原 – Aメロができて-その時にもう”涙のふるさと”っていうタイトルは付いてたんですけどーしばらく経過した後に『これを曲にしよう』ってなった時、Aメロだけで完結してると思っていたので

引用元:「MUSICA」 vol.9

 

藤原 – ただ、それはAメロだけで完結したものだったので、そこから先を作る気が起きなくて。

引用元:excite music INTERVIEW with BUMP OF CHICKEN

 

「orbital period」期(2005〜2007年)の藤原さんはとにかく1曲を書くのに時間をかけました。サウンド面で「曲が求める音」を追求したように、作詞面でも推敲に推敲を重ねて、真に伝えたい言葉だけを詞にするようにしていたからです。

 

地震が起きた会議室で「涙のふるさと」を歌う

embed from @boc_chama

 

2006年4月、関東地方で大きな地震が起きます。この日トイズファクトリーの会議室で打ち合わせをしていたメンバーは、その揺れの大きさに身の危険を感じました。

その場にいた人たちの勧めで藤原さんは「涙のふるさと」をギターで弾き語りをします。これがメンバーに聴かせた最初のタイミングでした。

 

直井:とりあえず楽しいことがまだ少し残ってんだったら全部やっとけって感じで、藤君が唄ってくれて、地震のことなんて忘れて。『お前ソレすげーいい曲じゃん!!』てなって…『お前ソレ早くやらしてくれー!!』みたいな

引用元:音 涙のふるさとPVインタビュー

 

 

「会いに来たよ」の歌詞について

春にトイズの会議室で歌ったあと「涙のふるさと」は眠りにつきます。Aメロだけで完結していた曲を少しずつ書き足していき、夏頃にはフルコーラスで完成します。

 

涙のふるさと  1:06〜
会いに来たよ 会いに来たよ
君に会いに来たんだよ
君の心の内側から 外側の世界まで
僕を知って欲しくて 来たんだよ

引用元:涙のふるさと / 藤原基央 (2006年)

サビの<会いに来たよ 会いに来たよ 君に会いに来たんだよ>という繰り返しのフレーズが印象的です。同じ言葉を繰り返すほどの意思が込められているのでしょうか。藤原さんにとっては、自然発生的に生まれて来た言葉に恥ずかしさは感じなかったようです。

 

藤原 – ほんとに歌いたいことなんだからしょうがねえじゃん、ていうしかないんだよな。疑問もなければ躊躇もないんだよね、うん、<会いに来たよ>の連呼でいいのか?みたいなこともないし

ROCKIN’ ON JAPAN 2006.12

 

「乗車権」の歌詞を書いた人と同じ人間とは思えないほどの純朴さがあります。藤原さんはサウンド面については「曲の求める音」を究極理念として掲げています。一方で歌詞については、自分の内面から出て来た言葉を包み隠さず詞にしています

 

「涙」の台詞

サビの歌詞には敢えてカギカッコを付けて、まるで「涙」が台詞を発しているかのように感じますよね。藤原さんは、もちろん涙が現実的に声を出すことはないとしながらも、その存在自体に意味があると語っています。

 

藤原 – 完全に涙が意思を持っているわけではないと僕は思います。そういうふうに言ってる気がする、そういう存在なんだろうなと、そのひとしずくがね。その存在自体がその台詞なんじゃねえかなって。

ROCKIN’ ON JAPAN 2006.12

 

藤原 – 運動会の時に、一生懸命走って貰ったバッジとか。自分ちで、すげえ楽しく喋って、すげえいい人だなあとか、そういうグルーヴがお互い生まれて、その人が帰ってったあとに、その人が置いてったタバコの空き箱とかね(笑)それ自体が意味を持つ台詞になる。

ROCKIN’ ON JAPAN 2006.12

 

なんかわかる気がします。ものに対する思い入れというのでしょうか。ものに限らず、音や景色もそれ自体に意味がある時がありますよね。台風前のぬるい空気とか、真っ赤な夕焼けとか、それに対して意味を見出してしまうのが人間かもしれません。

 

夢の飼い主との偶然の繋がり

擬人化というと夢の飼い主を思い浮かべます。歌詞の擬人化との関連は偶然だと思いますが、夢の飼い主との明確な共通点があります。それはBメロのコード進行です。

涙のふるさと
その濡れた頬に 響いた言葉
Cadd9 GonB GonA#  FonA

夢の飼い主
少しはあったかいかな
Cadd9 GonB GonA#  FonA

偶然の一致だと思いますが、Bメロでこのコード進行が使われているのは涙のふるさとと夢の飼い主の2曲だけです。

 

「涙のふるさと」ライブ演奏記録

2007年7月16日HiLine Records 10th Anniversary 〜10年目の夏〜にシークレット出演するBUMP OF CHICKEN(画像埋込元:Barks.jp

演奏回数 40回
演奏頻度 ★★★☆
初披露 2007年7月16日「HiLine Records 10th Anniversary 〜10年目の夏〜」ZEPP TOKYO
最終演奏 2018年3月18日「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」福岡マリンメッセ
演奏ツアー 2008年「ホームシック衛星
2008年「ホームシップ衛星
2013年「WILLPOLIS
2017-2018年「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER

「涙のふるさと」はこれまで40回ライブ演奏されています。2007年夏に全国各地に出演した音楽フェスで初披露され、「orbital period」レコ発ツアー「ホームシック衛星」「ホームシップ衛星」で演奏されました。

「涙のふるさと」アコースティックバージョンで新境地に達したBUMP OF CHICKEN

「涙のふるさと」は、2017〜2018年に開催された「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」でアコースティックバージョンで演奏されました。

 

この時、原曲「涙のふるさと」(G♭)と異なるキーで演奏しました。サウンドが大きく変わるアレンジでしたが、現在の藤原さんの歌声の音域に合わせてキーを変えるという新境地へと達したと言えるでしょう。

 

「涙のふるさと」ライブ映像作品

映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER SAITAMA SUPER ARENA」

「涙のふるさと」のライブ映像は「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER SAITAMA SUPER ARENA」に収録されています。

有料チャンネルでは下記のライブが放送されています。

  • 2007年7月22日「SETSTOCK ’07」広島国営備北丘陵公園
  • 2007年8月04日「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2007」国営ひたち海浜公園

 

以上、BUMP OF CHICKENの「涙のふるさと」の歌詞の意味と制作エピソードについて解説しました。