楽曲解説:キャッチボール vol.1 – 増川のギターとバドミントンから生まれた曲 –

3rd Album「jupiter」 収録 / M-04
作詞作曲:藤原基央
作曲時期:2000年冬〜2001年

キャッチボールは3枚目のアルバム「jupiter」に収録されているアルバム曲です。ギターの増川弘明さんとボーカル・ギターの藤原基央さんによる共作で、BUMP OF CHICKEN唯一、作詞作曲者に増川さんの名前がクレジットされています。増川さんの考案のギターリフと二人の微笑ましい様子が歌詞に反映されている、ファン必聴の曲です。

今回はキャッチボールの解釈、解説を紹介します。




増川、藤原の家に遊びに行く

1999年から2003年、増川さんはバンドと学業を両立していました。増川さんはギターを持って大学に行くと「あ、バンドやってるんだ?」とか「バンド名教えてよ」と声をかけられるのが面倒だったそうです。

確かにサークルやバンド活動でギターを持っている大学生はどこにでもいますが、まさか50万枚以上売り上げるバンドのギタリストが大学に通っているとは周囲の学生も思わなかったでしょうね(当時はメディア露出も少なかったですし)。

2001年のある日、増川さんは藤原さんの家に夜遊びに行きます。そこでRADIO HEADのビデオを小さなテレビで二人で観ていたそうです。すると画面の中の熱いパフォーマンスに影響を受けた増川さんと藤原さんは、急遽タクシーに乗って深夜にやっているスタジオを探して入りました。学生の深夜のテンションって感じで、いいですね(笑)。

そこで増川さんが「こんなリフあるよ」といいながらリフを弾きだしました。ただしその1曲目のリフは藤原さん曰く”攻めすぎていた”ため(笑)、ボツになります。

そうこうして増川さんが出した2曲目のパターンが、キャッチボールのAメロのコード進行、リフでした。

「ん、一番最初にやろうよ!みたいに持ちかけたのは俺で。「いいリフがあるんだよ」みたいな(笑)」 -増川 – 

増川が弾いてたリフがあって。これどうかなって弾くわけでなく、適当にずっとひとりでぼーっと弾いてる感じなんで、増川がね。聴こえるか聴こえないかくらいの音量で(笑) – 藤原 – 

わかります(笑)。実は私もバンド経験者なのですが、あまり演奏が得意でない(けれども良い友人)とスタジオに入ったとき、自信なさげに、でも自分のリフだぞ?ってアピールするようなしないような人、いるんです(笑)。私は結構気に入ったリフがあったら「どうかな?」って口に出すんですんが、やっぱり大人しい人だったり、増川さんみたいに目の前に圧倒的なスキルを持つギタリスト藤原さんがいたら、ちょっと奥しちゃいますよね。

なんだか、どこにでもいる仲良しバンドの風景で安心します。

その聴こえるか聴こえないかのリフを藤原さんが「良いじゃん、それ。やろうよやろうよ」って懸命に拾ってあげると、増川さんはこう答えます。

うん?ま、別にいいけど。じゃあ、どうする? – 増川 – 

増川さん、面白すぎます(笑)増川さんは2003年頃までかなりインタビューでもイケイケに答えるほど(悪く言えば)調子に乗っていましたし、プライドも高かったと思います。それは幼なじみで組んだバンドで、たまたま藤原さんがギターが上手いだけで、自分もバンドのメンバーとして自負があったからです。

増川さんに限らず、直井さん、升さんもメディアの関心の対象やファンの人気の対象が藤原さんであることは知っていましたし、だからこそ「自分とって藤原基央はただの幼なじみ」という強がりが出てるのです。特に2002年頃までのインタビューを見ると如実に読み取れます、本当に。

それは強がりは、キャッチボールのインタビューをする鹿野さんが、「藤原基央と密室で作曲すること」を増川さんに質問した答えからも表れています。

「ん?すごい楽しかったっすよ?あ、でもべつに、あいつが作ってる作業を見るのは、そんなに俺の中で新鮮なことでもないわけで。– 増川- 

精一杯の強がりというか、鹿野さんへの反抗を感じます。でも増川さん含め、他のメンバーの気持ちはすごいわかります。幼稚園から一緒だった存在が、一緒にライブハウスでやってきた仲間が、一人だけ持ち上げられているんですから。

そりゃーね、「自分のギターが(ベースが)(ドラムが)良いからメジャーに上がったんだ」と思いますよ。少なくとも2017年現在はそんな状況は乗り越えて、互いが互いを尊敬し、必要だと思っているからこそBUMP OF CHIKCENの音楽が私たちの元に届いているんだと思います。互いの良いところ、互いのダメなところ、醜いところを認め合った(きっかけはユグドラシル)、それだけでも4人は平等かつ対等に素晴らしい能力を持っています。

バトミントンから生まれた歌詞

こうして深夜のテンションで弾かれた増川さんのリフから曲が生まれました。作詞ももちろん二人で行いました。

『これはお前が持ってきたやつだから』とかいう感じで。一生懸命書いてたんだけど、俺はやっぱ、いかんせんね、上手く書けなくて。それをあいつがうまく拾ってくれて、これにしてくれたじゃないけど – 増川 –

まあ詞の中でキャッチボールやっているけど、ああいう感じでバドミントンやってて。で、そんなかでああいうキャッチボール見たいなものが行われてて。実際に曲を作っている最中にも、とりにくい変化球をね、いっぱい投げてきたので、俺は必死こいてとるっていうか。 – 藤原 – 

作曲中のキャッチボールと言っていることから実際のキャッチボールではなく、言葉のキャッチボールだったり音のキャッチボールだったりを指しているのだと思います。増川さんのリフを拾って、形にしてあげたり、詞をまとめてあげたり、増川さんが投げる”変化球”を藤原さんが一生懸命拾ってあげている様子が微笑ましく、”いつまでも続いていく”と良いなと思います。

ちなみに3日間くらいでキャッチボールを書きました。作詞をしているときは人で箱根に行き、コテージのようなところに泊まっていました。外は嵐の中で、1時間ほどで1番の歌詞を藤原さんは書き上げました。

ライブ演奏記録

キャッチボールはjupiterのレコ発ツアー POKISTA 21で演奏されました。今のところこのツアー以来、15年間演奏されていません。

ちなみに・・・余談ですが、CDに入っているギターソロは増川さんが弾いていると思います。これは今まで沢山バンプの曲を聴いてコピーしてきた経験の中で、このソロの音、弾き方は藤原さんにはない音の響きだからです。歌詞を書くよう促すくらいですから、ギターソロを弾かせるよう促すことはむしろ自然な考えかもしれません。そうすると、BUMP OF CHICKENの中でもとくに稀な、増川さん考案のソロが入っている曲といえます。

以上、キャッチボールの解釈、解説紹介でした。