楽曲解説:ハンマーソングと痛みの塔 vol.2 – レコーディング編・ドラム録りに苦労した升 –

この記事は前回書いた「楽曲解説:ハンマーソングと痛みの塔 vol.1 – 自宅マンションでの熱唱 」の続きです。

2006年の秋頃に書かれた「ハンマーソングと痛みの塔」は作曲後、藤原さんの自宅に直井さんと升さんが集まり、藤原さんの熱唱という形で初披露されました。今回はその後のレコーディングとライブ演奏について解説します。




制作年表(レコーディング)

2006年秋 藤原、「ハンマーソングと痛みの塔」作曲。藤原がメンバーを呼びかけ直井、升が藤原宅に集まり、その場で熱唱する。
翌日、プリプロ音源を作成。何曲かまとめて録音しようということになり、一旦寝かせる。
2007年3月 レコーディング at 一口坂スタジオ
3/13 ベーシック部分のレコーディング。が、ドラム録りがうまく行かず翌日に持ち越し。
3/14 改めてドラム録りをする。ドラムレコーディングは夜10時まで行うが結局この日も納得いくテイクが録れず持ち越し。升、ストイックである。


プリプロ制作

藤原基央さんの自宅での初披露の翌日、さっそくメンバーはプリプロ版の制作を行います。その流れで本番レコーディングに臨むものだと思っていたメンバーですが、「2、3曲まとめて録音する」というスタッフの方針により、一旦この曲は寝かされることになります。そして2006年の内に藤原さんは「才悩人応援歌」と「飴玉の唄」の2曲を書きました。

本番レコーディング

2007年3月、都内の一口坂スタジオにて「ハンマーソングと痛みの塔」 「才悩人応援歌」 「飴玉の唄」の3曲のレコーディングが開始されました。

2007年3月13日

◆ベーシック録り

この日はドラムやベースなどのベーシック部分のレコーディングを完了する予定でしたが、升さんのドラム録りが上手く行かず、翌日に持ち越すことになります。

2007年3月14日

◆ギター録り予定 ベーシック録りに変更

– 午後 レコーディング開始

升さんが延々とドラムを叩く横で藤原さんがスティックを振りアドバイスします。途中でヘフナーのバイオリンベースを抱えたCHAMAさんも参加し、升さんを鼓舞します。増川さんはミキシングルームで升さんのドラムに合わせてギターストロークしました。

– 19時 夕食休憩

中華デリバリーで藤原さんは中華丼、升さんはたまごとキクラゲ炒め定食を頼みます。

– 21時 レコーディング再開

延々と叩き続けて疲れる升さんをCHAMAさんが時折鼓舞しますが、結局この日もドラム録りが成功せずに終了します。

– 22時10分 レコーディング終了

よくインタビュー等でメンバーは升さんのことをストイックと形容しますが、本当にその通りだと思います。予定では1日で済むドラム録りを3日以上かけています。

BUMP OF CHICKENのアルバムは、「納得のいくテイクを録る」というメンバーの強い信念と、日程変更や費用加算を気にせず「メンバーに納得いくプレイをしてもらう」というスタッフ側の深い理解の基に生まれているんですね。

「MUSICA vol.2」FACT (2007.06)

※音楽雑誌「MUSICA vol.2」を参考にしました。レコーディング潜入取材としてより詳しく掲載されています。

時間のかかった升のドラム録り

上記のように升さんのレコーディングには時間がかかりました。この曲は2ビートのシンプルなリズムなため、むしろ音の強弱やリズムの揺らぎが伝わりやすくなってしまいます。長い試行錯誤の中で音とリズムを理解することに努めました。

升 – その曲に必要とされるビートを理解するのに時間がかかった曲でしたね。– (中略) – 新しいことをやろうとは別に意識的には全然ないんですけどね。でもその曲に求められているものをいろいろやっていくと新しい挑戦になるんですよね。

Excite Music 2007 インタビュー

升 – 単純なスキル以前の、音の意味というものを知ることがまず必要だなと思った。細かい音でもなんでも、その1音が何を表しているかというのを理解しないで叩いたら、それは何もよいことがないってわかりました。

Musica vol.9 2008.1

BUMP OF CHICKEN的思想の「曲が求める音」という哲学を体現している発言ですね。ハンマーソングと痛みの塔の音源にそのドラムが入っていると思いながら聴いてみると、また一味ちがった楽しみ方ができるのではないでしょうか。




藤原からプレゼントされたベースを使う直井

この曲のベースラインは非常にダンサブルでノリノリなのが特徴です。チャマさんは、藤原さんから誕生日にプレゼントされたヘフナー製バイオリンベース(Karl Höfner 500-1)を使ってレコーディングしました。

直井 – ヘフナーでミュートして減衰を早めて。ポール・マッカートニーのベースもすごい踊れるじゃないですか、ダンサブルだし、どこかメロディアスだし。

WHAT’s IN!? 2008.01 No.247

バイオリンベースをプレゼントされて早速ビートルズの”青盤”を完コピした直井さん。とても気に入っているようですね。ちなみにこのベースは「かさぶたぶたぶ」のレコーディングにも使用されています。

藤原さんの仮歌のテイクで「どんどん強く」と縦の抑揚を聴いているため、リズム隊はそれを下から突き上げるような気持ちで録音をしました。

ギターソロと木琴のミックス

2:41~の間奏部分ではアコースティックギターのソロの裏で木琴が鳴っています。アコギと木琴というオーガニック素材の楽器の音色が曲調の雰囲気に合っていますね。

藤原- ギターソロと一緒に鳴っているやつですね? あれは木琴です。いきなり「ちょっとやってみてよ」ってディレクターに言われて、やってみたんですよね。

exite music 2007 

ディレクターは藤原さんを困らせようと木琴を叩かせたようですが、藤原さんはいとも簡単にOKテイクを鳴らしてしまいます。藤原さんの楽器のセンスの高さが伺えます。

ライブ演奏記録

2008年 
ホームシック衛星ツアー 22回 / 22公演中
ホームシップ衛星ツアー   19回 / 19公演中
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2008

2015年
BUMP OF CHICKEN Special Live 2015 at 大阪インデックス5号館
BUMP OF CHICKEN Special Live 2015 at 横浜アリーナ

ライブ映像

2015年のSpecial Live at 横浜アリーナでの演奏は、8thアルバム『Butterflies』の特典Blu-rayにフル映像で収録されています(ホームシック衛星の様子は一部だけSSTVで放送)。

半音下げで演奏

CD音源ではレギュラーチューニングAキーですが、ライブでは2008年・2015年ともに半音下げのA♭キーで演奏されています。

使用機材

2008年・2015年ともに藤原さんはSonic Stratcasterのローズウッド(黒)指板で演奏しています。

イントロの違い

2008年のツアーでは原曲通り藤原さんのギターストロークから始まりましたが、2015年は升さんの2ビートドラムから藤原さんが合わせるように入りました。

以上、楽曲解説ハンマーソングと痛みの塔: レコーディング・ライブ編 を紹介しました。エピソードを読んで楽曲を聴いてみて、また新しい発見ができたらいいなと思います。ありがとうございました。