7th Album『RAY』歌詞・楽曲解説

楽曲解説:firefly vol.1 黄金の光とバンド活動の軌跡

firefly 7th Album『RAY』
シングル「firefly」

「firefly」はBUMP OF CHICKENの通算23枚目のシングル曲です。

 

タイトルの「firefly」とは英語で「蛍(ホタル)」を意味します。BUMP OF CHICKENの楽曲では珍しく全国ツアーの期間中に作曲されました。

 

藤原さんはなぜ「firefly」を全国ツアーの間に書いたのか。「firefly」に込めた思いは何か。今回は「firefly」の歌詞の意味と制作エピソードについて紹介します。



「firefly」基本情報

作詞・作曲 藤原基央
編曲 BUMP OF CHICKEN & MOR
作曲時期 2012年5月16日頃
録音時期 2012年6月
収録作品 2012年9月12日 シングル「firefly」
2014年3月12日 アルバム「RAY」
ライブ初披露 2013年8月3日「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」

「firefly」作曲背景

「firefly」は2012年5月16日、ボーカル・ギターの藤原基央さんによっって書かれました。

全国ツアー「GOLD GLIDER TOUR」の間に書かれた曲

全国ツアー「GOLD GLIDER TOUR」4月7日幕張メッセ公演の様子 画像埋込元:music.funplus.co.jp

2012年4月〜7月、BUMP OF CHICKENは全国ツアー「GOLD GLIDER TOUR」の期間中でした。「firefly」はこのツアーの合間に作曲されました。藤原さんは、それまではツアー中に作曲する余裕がなかったといいます。

 

藤原 – 「ホームシップ衛星」のときはライブが週2回とかで、東京にいる時間が長くあったんですね。でも、当時はライブのことで頭がいっぱいで、曲を作ることが全くできなかったんです。

出典:natalie music

 

ライブ活動中の基本的なスケジュールは、土日にライブ、平日に休養&スタジオ練習となります。

ツアー期間中のスケジュール例

(これは一例です。ライブハウスツアーの時には公演日に現地入り、公演直後に東京に戻る場合もあります。またMY PEGASUSまでは平日夜のライブが多くありましたが、会場規模拡大とともに動員数確保の観点から土日が多くなりました。)

「ツアー中に曲を書く」という目標を設定

embedded from @boc_gazou

ツアー期間はライブ活動に専念、制作期間は作曲活動に専念と活動パターンを分けてきた藤原さんですが、「ツアー中に曲を書く」という目標立てて「GOLD GLIDER TOUR」のツアーに臨みました。

 

藤原-  今まではそれ(曲を書くこと)を試そうともしてなかったから、今回はやってみようと思ったんです。それで、ツアー中に曲を書くという目標を立てて。書ける、書けないは別にして、スタッフにお願いして、とにかくツアーの合間にスタジオに入ってみようと。

Natalie Music

 

ツアーの合間にスタジオに入った藤原さん、2012年4月からスタートしたGOLD GLIDER TOURの最中にCOSMONAUTの頃にあった言葉にコードとメロディーをつけます。

 

藤原 – その時点で歌いたかった言葉を紡いでいく感覚ですよね。ただ、この曲の歌詞に書いたようなことを歌いたいという思いは「COSMONAUT」の頃からあって。それがドーンと出てきた感じです。その言葉がコードを呼んでっていう。

2012.09 natalie music

 

2012年5月に1曲書き上げます。これがfireflyでした。

 

ちなみに・・・

作曲ではなく制作という意味では、夢の飼い主プレゼントはツアーの合間を縫ってレコーディングされました。またfirefly以降でもツアー中に作曲・制作された楽曲が存在します。

 

ツアー中に作曲・録音された楽曲
ハルジオン:録音(?):surf porkin’
彼女と星の椅子:録音(?):surf porkin’
夢の飼い主:録音:MY PEGASUS
プレゼント:録音:ホームシップ衛星
firefly:作曲・録音:GGT 2012
You were here:作曲・録音 WP 2014
アリア:作曲・録音 BFLY

 

こうやってみるとfirefly以降はツアー中に曲を自然にかけるようになっていますね。藤原さんの中でひとつの壁を乗り越えた1曲といえるでしょう。




解釈 – バンドの軌跡

embed from @boc_gazou

当然捕まえようとして 届きそうで届かなくて
追いかけていたら 物語になった

分かれ道もあって 真っ暗に囲まれて
微かな金色に 必死でついていった

 

fireflyの歌詞は、これまでのライブ活動をしてきた自分たちの喜憂、過去から現在までを振り返っているように読み取れます。

はじまりは千葉の小さいライブハウスで活動していたBUMP OF CHICKEN。<分かれ道>は藤原さんの引き抜きや進学・就職、<真っ暗に囲まれて>とは自分達の知らないところで話が進むこと、騙そうと近づいてくる業界人もいたことを暗示しているように思えます。

 

解釈 – 対バン相手の解散

 

藤原 – 欲望から生まれた大切な夢を、どうしても諦めなければいけなかった人たちがいる。道が閉ざされたら、切実な思いがあるほどその事実を受け入れるにはすごく時間がかかる。ただ、それでも勇気を出して諦めることは、歌詞には「黄金の覚悟」と書いていますけど、それはすごく輝きのある行為で

natalie music 

 

インディーズ時代の対バン相手
fla-foa;2005年解散
syrup16g:2008年解散 (その後再結成)
SUPER BUTTER DOG:2008年解散
BURGER NUDS:2004年解散 (その後再結成)
THE BEAT CRUSADERS:2010年解散

 

インディーズ時代の対バン相手のほとんどが解散しています。自ら音楽を退いた人、レコード会社との契約を打ち切られた人、メジャーデビューにまで届かなかった人、様々な理由で音楽を諦めることになりました。親交の深かったSyrup 16gBURGER NUDSジャイアントステップSUPER BUTTER DOGといった多くのバンドも解散してしまいます。(syrup 16gは再活動中)

 

embed from @boc_gazou

色々と難しくて 続けること以外で
生きていること 確かめられない
報われないままでも 感じなくなっても
決して消えない 光を知ってる

 

ここでの「光」は「黄金の光」であり、黄金は文字どおりGOLD GLIDER TOURにかけていますね。

 

色々な人が去り、色々なものを犠牲にしてここまできたけれど、ひたすら「続ける」ことをしてきたBUMP OF CHICKEN。暗闇を駆け抜けてきた今、その眼前には多くの観客が広がる GOLD GLIDER TOURまでたどり着きます。これまでの自分達と仲間達、過去と今を歌った唄といえるのではないでしょうか。

 

※夢に対して藤原さんはシビアな考え方を持っています。夢の飼い主の記事で詳しく説明しています。

 

GOLD GLIDER TOUR 2012 徳島公演でのMC

Embed from natalie music

2012年5月19日、GOLD GLIDER TOUR 2012 徳島県アスティとくしま公演の恥ずかし島(サブステージ)の上で藤原さんがMCをします。

 

藤原 – 実は3日ぐらい前に曲が書けたんです。まだメンバーにも聴かせてないんですよ。  

2012.05.19 GOLD GLIDER TOUR 2012 at アスティとくしま

本当はメンバーにも内緒でこのMCをするつもりだったのですが、この日のリハーサル中にスタッフが「あの新曲どうなった?」とメンバーの前で藤原さんに話しかけたため、メンバーにはサプライズとはなりませんでした。藤原さんが新曲を書けたとMCするのは珍しく、ファンの歓声が湧き上がりました

 

以上、fireflyについて作曲の経緯と歌詞解釈を紹介しました。この曲を聴くときにこんな裏エピソードがあったんだと思いながら聴くと、新しい曲の見え方ができると思います。

 

次回はレコーディング編を紹介予定です。ご拝読ありがとうございました!