6th Album 『COSMONAUT』

楽曲解説「魔法の料理〜君から君へ〜」過去との対話を通してイマを歌う曲

6th Album 『COSMONAUT』
シングル「魔法の料理〜君から君へ〜」

「魔法の料理〜君から君へ〜」はBUMP OF CHICKENが2010年4月に発表したシングル曲です。

この曲はNHK「みんなのうた」に起用され、アコースティックギターとハネモノのリズムが心地よい温かみのあるサウンドが特徴となっています。

「魔法の料理〜君から君へ〜」は一体どのように生まれ、どのように制作されたのでしょうか。この記事では曲の歌詞の意味や制作エピソードを解説します。




「魔法の料理〜君から君へ〜」基本情報

作詞・作曲 藤原基央
作曲時期 2009年4月10日
制作時期 2009年〜2010年2月
収録作品
  • 2010年4月21日 シングル「魔法の料理〜君から君へ〜」(c/w キャラバン)
  • 2010年12月10日 アルバム「COSMONAUT」
  • 2013年7月3日 アルバム「BUMP OF CHICKEN II [2005-2010]」
収録時間
  • 6分31秒(シングル版)
  • 6分45秒(アルバム版)
ライブ初披露 2011年12月15日「BUMP OF CHICKEN TOUR 2011-2012 GOOD GLIDER TOUR」Zepp Sapporo

「魔法の料理〜君から君へ〜」は2010年4月にシングルCDとして発売され、アルバム「COSMONAUT」とベストアルバム「BUMP OF CHICKEN Ⅱ [2005-2010]」に収録されています。

「魔法の料理〜君から君へ〜」の作曲背景

ボーカル・ギター藤原基央さんは、2008年の年末に「セントエルモの火」「HAPPY」「66号線」の3曲を作曲した後、なかなか曲が書けない日々が続いていました。




そんな中、プロデューサー・MOR(森徹也)氏は「20代のうちにアルバムを作ろう」と当時29歳だった藤原さんに提案します。

“自分にとっての20代とは” からスタートした作曲

プロデューサーの言葉をきっかけに、藤原さんは20代の自身の過去を振り返り始めます。

藤原 – “20代”っていわれたら、いやがおうにも過去を振り返ることになってきて。そして、いろんなことを振り返りはじめたらこうなっていた、っていう……そういう曲です。

引用:natalie

 

藤原 – 自分の20代ってなんだろうって考えたことがきっかけになりました。メンバーと出会って、バンドを組んで、曲を書いて、全国で音楽を鳴らして(中略)その全部がこの曲のなかに詰まっています。

引用:tower.jp

こうして「魔法の料理〜君から君へ〜」は藤原さん自身の過去と対話する中で生まれ、2009年4月上旬、30歳を迎える直前に作曲されました。

 

「魔法の料理〜君から君へ〜」の歌詞の意味は?

“過去との対話”を通してイマを見ること

「魔法の料理〜君から君へ〜」の歌詞は過去との対話であると作曲者の藤原さんは明かしています。その一方で、単純に懐かしさを覚えるための行為ではないといいます。

藤原 – でも俺の歌のノスタルジーの部分は、懐かしい顔に出会ってアルバムめくってみようぜっていう感じとは、ちょっと違うんです。

引用元:「MUSICA」2011年1月号




この曲で歌われている主題とは過去との対話を通じて《今や現実を見ていくこと》だといいます。

藤原 – はっきり言えることは、“シビアな現実”と“今”を歌っていて、ここで歌っている過去の色々な出来事は“今”に還元されていくってことなんだよね。

引用元:「MUSICA」2010年4月号

 

藤原さんは、文字情報としては過去の事象について言及していても、伝えたい内容としては「今」であることを何度も強調しています。

藤原 – こうやって過ごしてる今が、1秒後、2秒後と過去になっていって(中略)そういうものが待ってるのが未来だと思ってるし・・・だから過去も未来もどっちも『今』って言葉に置き換えられるんだよね。

引用元:「MUSICA」2011年1月号

 

「魔法の料理〜君から君へ〜」で歌われている”イマ”

画像埋込元:bumpofchicken.com

「魔法の料理〜君から君へ〜」で歌っているのはいったいどんな現在なのでしょうか。

(1サビ)
君の願いはちゃんと叶うよ 楽しみにしておくといい
(2サビ)
期待以上のものに出会うよ でも覚悟しておくといい

引用元:「魔法の料理〜君から君へ〜」BUMP OF CHICKEN

1番では《楽しみにしておくといい》と希望を感じさせ、2番では《でも覚悟しておくといい》と覚悟を求めています。

ここに藤原基央の哲学・世界観が表れています。「願いが叶ってよかった」で単純に終わらせるのではなく「願いを叶えるには、そして叶えた状態を続けるには相当な覚悟が必要」と歌うところが藤原さんらしい厳しさ、残酷さです。

この曲では、明るい未来だけでなく、痛みや苦しさも内包した”イマ”を歌っているのだと私は思います。

ちなみに藤原さんはインディーズ時代からインタビューで、「未来」や「夢」に対するシビアな捉え方を明かしています。「」を《生半可な覚悟で見たら目がつぶれるくらいの輝き》とも表現したこともあります。

この曲のラスサビではアグレッシブな演奏とともに楽しみにして でも覚悟してのフレーズが繰り返し歌われ続けることからも、藤原さんがこの言葉に重点を置いていることが読み解けます。

 

何度も”イマ”を歌ってきた藤原基央

BUMP OF CHICKENの楽曲には“イマを歌う唄”が多くあります。初めて日本語で書いた楽曲「ガラスのブルース」からすでに登場しています。

1st Album「FLAME VEIN」1999年

僕はいつも唄を歌うよ
ボクはイマを サケブよ

「ガラスのブルース」/ BUMP OF CHICKEN

 

バンドを代表する楽曲「天体観測」でも同様に歌われています。

シングル「天体観測」2001年

「イマ」とほうき星
君と二人追いかけている

 「天体観測」/ BUMP OF CHICKEN

この他にも「今」を歌った曲、「今」という時間概念に言及したインタビューが散見され、藤原さんの創作活動の大きな軸となっているテーマといえます。

 

幼少期の体験に関する言葉がいくつも登場

確か赤だった筈だ三輪車 どこまでだって行けた
ひげ爺がくれた熊は よく見たら犬だった

引用:「魔法の料理〜君から君へ〜」BUMP OF CHICKEN

 

歌詞には、「正義のロボット」「三輪車」といった藤原さんの幼少期を彷彿とさせる言葉が登場します。”ひげじい” とのエピソードについてインタビューで明かしています。

 

藤原 – ときどきお手紙をくれたんですけど、絵が上手だったので絵も描いてあって、そのハガキの文章の締めくくりに「ひげじいより」って書いてあって。実は僕自身は「ひげじい」って呼んだことはないんですけど。

藤原さんは絵を描くのが上手く、BUMP OF CHICKENの作品でも「THE LIVING DEAD」「ユグドラシル」のジャケットを手がけています。絵に関する才能はおじいさんに由来するのかもしれません。

NHK「みんなのうた」への起用

「魔法の料理〜君から君へ〜」はNHK Eテレ「みんなのうた」(2010年4月〜5月)に起用されました。

「俺だけのうた」って仮タイトルを付けようと思えば付けられますよ、って。それが「みんなのうた」で放送されるなんて大丈夫か? と思いました(苦笑)

引用:natalie

戸惑いを覚えつつも、かねてから”童謡を書きたい”と語る藤原さんにとって夢が叶う形となりました。

「魔法の料理〜君から君へ〜」レコーディング

「魔法の料理〜君から君へ〜」のレコーディングに関する情報はあまり語られていません。レコーディングに参加したストリングス担当の弦一徹氏のブログに制作に言及している記事があります。

 

BUMP OF CHICKEN さんの「魔法の料理〜君から君へ〜」と
「pinkie」をレコーディングしました

BUMP OF CHIKENさんと弦一徹ストリングスの出会いは
「花の名」でした

こちらもお楽しみくださいね

引用:2010年2月18日 弦一徹ストリングスOFFICIALサイト

「pinkie」(シングル「HAPPY」のカップリング曲)と同じセッションでストリングスのレコーディングが実施されたことがわかります。ちなみに前奏のストリングスとベルの長さは収録形態によって異なり、シングル版では19秒、アルバム版では39秒になっています。

2010年2月のラジオ番組「PONTSUKA!!」で、ベースの直井由文さんが「僕らもまだ(楽曲の)全貌が見えてない」と話していることから、当時から前奏について複数のパターンを検討していたことが伺えます。

「魔法の料理〜君から君へ〜」ライブ演奏記録

「魔法の料理〜君から君へ〜」が初披露された六本木ヒルズアリーナでの招待制シークレットライブ(画像埋込元:rockinon.com




演奏回数 7回  
演奏頻度 ★☆☆☆
初披露 2010年4月10日「BUMP OF CHICKEN SECRET」六本木ヒルズアリーナ
最終演奏 2023年2月19日「BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be there」福岡マリンメッセA館
ライブ 2010年「BUMP OF CHICKEN SECRET
2011年「BUMP OF CHICKEN TOUR 2011-2012 GOOD GLIDER TOUR
2012年「BUMP OF CHICKEN TOUR 2012 GOLD GLIDER TOUR

2023年「BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be there
TV出演 2021年 NHK総合「SONGS」

演奏機材

藤原基央 – Gibson Les Paul Special 
増川弘明 – Gibson Les Paul Standard 
直井由文 – Sonic Jazz Bass (黄色)

「魔法の料理〜君から君へ〜」はこれまで7回ライブで演奏されています。2011〜2012年のツアーでアンコール曲として演奏されていて、シングル曲としては演奏頻度が少ない楽曲です。

ライブバージョンではエレキギター主体のサウンド

「魔法の料理〜君から君へ〜」のレコーディング音源ではアコースティックギターの響きが良く聞こえるバンドサウンドですが、ライブバージョンの間奏や大サビでは、藤原さんがかなり激しくギターを弾いており、ロックテイストのミディアムナンバーになっています

「魔法の料理〜君から君へ〜」ライブ映像

映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be there at SAITAMA SUPER ARENA」
  • NHK「SONGS」(2021年2月11日放送)

「魔法の料理〜君から君へ〜」はNHKの音楽番組「SONGS」にてライブ版で披露されています。バンドとしては生オーケストラとのライブ演奏は初めてです。

以上、BUMP OF CHICKEN「魔法の料理〜君から君へ〜」の歌詞の意味と制作エピソードの紹介でした。