カップリング曲

楽曲解説「夢の飼い主」藤原基央の夢に対する想い

カップリング曲

「夢の飼い主」はBUMP OF CHICKENのシングル『車輪の唄』収録のカップリング曲です。

「夢の飼い主」の歌詞は、夢を生き物に喩えて飼い主との関係性の変化を表したストーリー性のある歌詞の楽曲です。この楽曲はライブとライブの合間に制作されたとても稀な楽曲でもあります。

この記事では「夢の飼い主」の歌詞の意味や制作エピソードを紹介します。




「夢の飼い主」基本情報

9th Maxi Single「車輪の唄」(2004年)

作詞・作曲 藤原基央
作曲時期 2004年
制作時期 2004年9月19〜22日
収録作品 2004年12月1日 「車輪の唄」
2008年6月18日「present from you」
ライブ初披露 2004年12月11日「BUMP OF CHICKEN TOUR MY PEGASUS TOUR FINAL “PEGASUS YOU”」千葉県幕張メッセ国際展示場

「夢の飼い主」は2004年12月発売のシングル「車輪の唄」収録のカップリング曲です。

カップリングアルバム「present from you」にもリマスタリング収録されています。

「夢の飼い主」はいつ、どのように作曲されたのでしょうか。雑誌、ラジオ、ライブMCなどをもとに作曲エピソードを紹介します。

「ユグドラシル」制作時からあった「夢の飼い主」の原型

アルバム「ユグドラシル」

2004年5〜6月頃、BUMP OF CHICKENは『ユグドラシル』を完成させます。その後、ボーカル・ギターの藤原基央さんはすぐにスタッフから新曲を書くように求められます。

 

藤原夢の飼い主は、なんか、とりあえず急げと言われました。「早く書け、早く書け」って。

2004.12.09 TOKYO-FM 80.0MHz 「discord」

 

新曲を急いだ理由は「車輪の唄」のシングルカットが決まっていたためで、藤原さんは既に持っていたいくつかのアイデアを形にして書き上げたのが「夢の飼い主」でした。

 

藤原 – AメロとかBメロとかサビっていう流れはすでに出来てました。「ユグドラシル」の時から出来てました。「ユグドラシル」の時は1曲っていう形になんなかったっすね。そういえば「夢の飼い主」っていうタイトルもあったな。

2004.12.09 TOKYO-FM 80.0MHz 「discord」

2003年初頭の藤原基央さんが書く雑誌連載コラム「Fujiki」には、夢と人間の関係性について書き記しています。この頃には「夢の飼い主」と原型があったことを示唆します。




「夢の飼い主」歌詞の意味

「夢の飼い主」の歌詞は、「夢」と「彼女」の関係性の変化を物語形式(時間の経過)で表現しています。「夢を見つける → 夢の本来の姿を見失う → 夢の本来の姿に気づく」という 流れです。

変わりゆく夢と彼女の関係

1番は彼女と夢が出会う瞬間、そしてそれを夢だと自覚した場面です。

夢の飼い主 0:08〜
生まれた時は覚えてないが呼吸はしていた
理由はないが生みの親はひと目で判った
まだ小さくて白い体すり寄せて見た
彼女もやっとそれに気付いて名前をつけた

引用:「夢の飼い主」 作詞・作曲 藤原基央

 

時間が経つにつれて彼女は夢を人に見せびらかせたり「夢を持っている自分」に満足してしまい、夢と向き合うことを忘れます。

2:19〜
既に名前とは懸け離された姿にされていた
自分の色と動き方を忘れてしまった
彼女もいつかつけた名前を忘れてしまった

引用:「夢の飼い主」 作詞・作曲 藤原基央

 

曲の終盤で彼女が夢の本来の姿に気付き涙します。

3:16〜
自分で着せた服を脱がして涙落とした
あぁ そうだったこんなに白い肌をしていた

引用:「夢の飼い主」 作詞・作曲 藤原基央

<あぁ そうだったこんなに白い肌をしていた>の一節が胸に刺さります。

夢を飼い殺しにしてはいけない

藤原さんはラジオのインタビューで「夢を飼い殺しにしてはいけない」と主張しています。

藤原 – 間違っても飼い殺しにしてはいけないと思います、夢を。俺は○○になるのが夢なんだよね」とか肴(さかな)として飼い殺してる奴は一杯いると思います。

2004.12.09 TOKYO-FM 80.0MHz 「discord」

夢は決して他人に見せびらかすためのペットではない、そんな初歩的な大切さを「夢の飼い主」は教えてくれるのではないでしょうか。




藤原基央の夢に対する想い

藤原基央さんにとって、夢とは一体どんなものなのでしょうか。インタビューでは「夢とは残酷であり希望でもあり、向き合う覚悟が求められるもの」だと語っています。

 

藤原 – 『これが夢なんだよね』っていうのをよく聞きました、子供の頃から。でも簡単に諦めたりするんだもんな(笑)。笑っちまうよ、ほんとに。そういうもんじゃねえだろと思うんです。

ROCKIN’ ON JAPAN 2004.12

藤原さんほど「夢」に対してシビアに考えている若者はいるでしょうか。辛辣な言葉で「夢」に対する覚悟を求めています。

 

「夢」の眩しさに耐えられるか

「夢」を視覚性のあるものとしてとらえており、BUMP OF CHICKENの一部楽曲の「眩しさ」や「光」といった歌詞に通じていると明かしています。

 

藤原 -(夢は)もうギラギラしててやばいんです、ほんと。生半可な覚悟で見たら目がつぶれるぐらいの輝きなんです。で、それを見るんです、自分の意志で。

ROCKIN’ ON JAPAN 2004.12  

 

ラジオインタビューでも同様のことを言っています。

藤原 – やっべぇすっげぇ眩しいんだけど、目が潰れんだけど、マジちょっと消えてくんない』って思うくらい眩しいのが夢だと思うし。

2004.12.09 TOKYO-FM 80.0MHz 「discord」

ギルド」には <向き合えるかな たくさんの眩しさと> という歌詞があり、それにも通じるところがあります。

「夢」について歌った楽曲

「夢」への哲学について「グングニル」「続・くだらない唄」でも歌ってきたと藤原さんは明かしています。

 

2ndアルバム「THE LIVING DEAD」

グングニル
容易く 自分自身を値踏みしやがって
世界の神ですら君を笑おうとも 俺は決して笑わない

引用:「グングニル」作詞・作曲 MOTOO FUJIWARA

 

藤原 – 夢を語る奴のことをバカにしたことは一度もないし。そういう奴のために”グングニル”って曲が出てきたりもします。俺は決して笑わないっていう曲です。

ROCKIN’ ON JAPAN 2004.12 

 

続・くだらない唄
この手は振れない 大事なモノを落としすぎた
この眼は余りに 夢の見過ぎで悪くなった

引用:「続・くだらない唄」 作詞・作曲 藤原基央

 

藤原 – そして僕もそういうことをしすぎて目が悪くなりました。夢のみすぎで悪くなりました。そういう歌(続・くだらない唄)も歌ったことがあります。

ROCKIN’ ON JAPAN 2004.12

藤原さんの「夢」に対する考え方は、BUMP OF CHICKENの様々な楽曲に散りばめられて歌われています。

レコーディングエピソード

「夢の飼い主」のサウンドは空間系エフェクターを多用した浮遊感のある音で構成されています。いったいどんなレコーディングを行ったのでしょうか。

ライブ日程の合間に行われたレコーディング

「夢の飼い主」の本番レコーディングされたのは全国ツアー BUMP OF CHICKEN 2004 TOUR  “MY PEGASUS”の真っ最中の2004年9月19日〜22日でした。

 

9月17日 “MY PEGASUS” ZEPP TOKYO公演
9月18日 “MY PEGASUS” ZEPP TOKYO公演
9月19日〜22日 レコーディング(4日間)
9月23日 “MY PEGASUS” ZEPP FUKUOKA公演
9月24日 “MY PEGASUS” ZEPP FUKUOKA公演
12月1日 9th Maxi Single「車輪の唄」リリース

 

ライブの合間を縫った過密スケジュールの中で行われた「夢の飼い主」のレコーディングについて、メンバーは印象的に残っていると述べています。

 

升 – まあ割と僕らにしては、すごい早さで録った感じだからね。あんまり録った時の記憶とかないんだけどね、その時の瞬間がぎゅっと・・・。はい。

2004.11.28 PONTSUKA!!

 

升    – 夢の飼い主は…僕等にしてはすごい制作期間が短く、すごい速さで録った曲だよね。

excite music 2004 「車輪の唄」発売ビデオコメント

 

画像埋込元 @boc_chama

「夢の飼い主」事前にあまり構成を固めないまま、本番のレコーディングでアレンジ決めをしながら制作を進めていきました。

 

升 – ライヴの翌日ってのもあって、全然合わせられなくって、レコーディングでいろいろ決めていった。(中略)叩いてみて、「それだそれだ!もう1回やってみて!」って言われながらどんどん作ってった曲だったと思う。

引用元:MUSICA 2008年6月号

 

「夢の飼い主」は8ビートのロックではない複雑な楽曲で、フロアタムを中心としたビートで進むBUMP OF CHICKENの中でも珍しいアレンジです。

腱鞘炎になりながらギターRECした藤原基央

藤原さんは「夢の飼い主」のギターを録っている時、左腕の腱鞘炎を罹っていました。

 

藤原 – 何か俺、初めて腱鞘炎的なものにかかって。で、ギターを弾いてはアイシングして弾いてはアイシングしての繰り返しでしたね。

excite music 2004「車輪の唄」発売ビデオコメント

 

4年後のカップリングアルバム「present from you」でのインタビューでも、

藤原 – 左手が腱鞘炎だったことは覚えてますね。左手が痛くて。(中略)バレーコード弾く時に親指が突っ張って。その時にリズムがゆるくなっちゃうんですよ。

MUSICA 2008.06

 

またライブの影響からか、喉が万全ではない状態の中でボーカルテイクが行われたと明かしています。満身創痍の中での音が「夢の飼い主」には入っています。

ライブMCでレコーディングの報告

「夢の飼い主」のレコーディングを終えた翌日、福岡で2日間のライブを行います。MCではレコーディングをしたことについてオーディエンスに報告しています。

 

藤原 – 17日、18日と東京でライブやって今日福岡に来て、その間何やってたかっていうと、またレコーディングやってたんですよ。レコーディングやってた時は1曲録ったんだけどね。

2004.09.23 MY PEGASUS at ZEPP FUKUOKA

驚異の月10本のペースでライブをこなすツアーの合間にレコーディングはBUMP OF CHICKENの中でも非常に稀な曲です。

 

「夢の飼い主」ライブ演奏記録

演奏回数 3回
演奏頻度 ★☆☆☆☆
初披露 2004年12月11日「BUMP OF CHICKEN 2004 TOUR FINAL “PEGASUS YOU”」千葉県幕張メッセ国際展示場ホール
最終演奏 2004年12月19日 LIVE at 韓国ソウル ROLLING HALL
演奏ライブ ・BUMP OF CHICKEN 2004 TOUR FINAL “PEGASUS YOU”
・LIVE at 韓国ソウル ROLLING HAL

「夢の飼い主」はこれまでに3回ライブで演奏されています。全て2004年12月でCDリリースに合わせた形での披露となりました。

ストラトキャスターを使用する藤原基央

画像埋込元 oricon news

2004年のライブでは藤原さんは黒指板のソニック製ストラトキャスターを弾いています。

以上、BUMP OF CHICKENの「夢の飼い主」の歌詞の意味やライブ演奏について解説しました。