2nd Album 『THE LIVING DEAD』

BUMP OF CHICKEN「グングニル」歌詞の意味と制作エピソード

2nd Album 『THE LIVING DEAD』

「グングニル」はBUMP OF CHICKENのアルバム「THE LIVING DEAD」収録曲です。

「グングニル」とは北欧神話・オーディンが持つ槍を意味し、ボーカル・藤原基央さんはゲーム「ファイナルファンタジー」の武器アイテムから着想を得たと明かしています。

藤原さんが「グングニル」の込めたメッセージとは何か、どのように「グングニル」が制作されたのか、この記事では歌詞の意味や制作エピソードを解説します。




「グングニル」基本情報

アルバム「THE LIVING DEAD」

作詞・作曲 MOTOO FUJIWARA
編曲 BUMP OF CHICKEN
制作時期 1999年12月〜2000年1月頃
リリース 2000年3月25日 アルバム「THE LIVING DEAD」
ライブ初披露 2000年3月27日「ツアーポキール」千葉LOOK公演

「グングニル」
作曲エピソード

1999年の12月〜2000年1月、BUMP OF CHICKENはインディーズ2枚目のアルバム制作に臨みます。

特殊な状況で制作された「THE LIVING DEAD」

制作日程は決まったもののレコーディングする新曲が揃っていなかったBUMP OF CHICKENの4人は、先にオケ(演奏)から録り、後から歌のメロディや歌詞を考えるという強行手段でアルバム制作を行います。

藤原 – だからこの時は歌詞をとりあえず後回しにして、(中略)まずはとにかくカッコいいオケだけ考えて

引用:「MUSICA」2024年10月号 vol.210

作曲担当であるボーカル・ギターの藤原基央さんがコード進行を決め、メンバー全員でアレンジをして、録音した演奏に歌とメロディをつけてアルバム曲を制作します。

「グングニル」はこの一連のアルバム制作の中で誕生します(具体的なレコーディングエピソードは後述します)。

「グングニル」曲名の由来

『THE LIVING DEAD』収録曲の作詞が順調に行かなくなった藤原さんは、悩んだ末に物語形式の歌詞で表現することにします(最初に書いたのは「K」)。

物語形式のストーリー性のある歌詞に手応えを感じた藤原さんは、「グングニル」という言葉のイメージから独自の物語を書くことにします。

ゲームのアイテムから名付けた「グングニル」

ゲーム「FINAL FANTASY Ⅷ」に登場する召喚獣・オーディン




藤原さんは自身がプレイしていたゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズに登場する武器・グングニルから名付けたとインタビューで明かしています。

藤原 – ファイナルファンタジーやってて、グングニルって武器出てきて。グングニルって2番目に強い武器で

ゲーム内で1番目に強い槍が「ロンギヌス」(イエス・キリストを突いたとされる聖槍)だったため、「グングニル」にもサイドストーリーがあると想像したそうです。

藤原 – お母さんに電話して『グングニルって槍をインターネットで調べてくんない?』とか頼んだんですよ

分厚い雑誌レベルに情報をまとめてきたお母さんに驚き、そこでわかったのが北欧神話の世界、オーディンの話でした。

「グングニル」という曲名をゲームのアイテムから名付けたという点に藤原さんの若さを感じさせ、作曲に対する緩さが残っていた時代を思わせる楽曲です。

実はBUMP OF CHICKEN初期はイケメンの友人をイメージして名付けた未発表曲などもあり、今よりもずっと気楽に楽曲作りをしていたのです。

「グングニル」の意味

「グングニル」とは北欧神話に登場する最高神オーディンが持つ槍を指します。

北欧神話のオーディン。手に持つのはグングニル。

のちのBUMP OF CHICKENの作品『ユグドラシル』(世界樹)、「asgard」(神々の世界)、「midgard」(人々の世界)も北欧神話に由来しています。

藤原さんの書く「グングニル」ではグングニルの持ち主を「騎士」と表現しています。

グングニル
死に際の騎士
その手にはグングニル
狙ったモノは必ず貫く

引用元:「グングニル」 (2000年) 作詞・作曲 MOTOO FUJIWARA

実際にはオーディンは神であり騎士ではないため、やはり藤原さんの中ではファイナルファンタジーの登場キャラクターのイメージで歌詞の世界を描いていることがわかります。

↑再掲

しかし!北欧神話の要素はほとんど「グングニル」の歌詞の内容には影響を与えていないのが面白いところです(「槍」、曲名としてのみ登場)。次の項で説明します。

「グングニル」歌詞の意味

“宝の地図”から読み解く航海のイメージ

「グングニル」の物語は、“宝の地図”を持つ人物が自前の船で航海に出発し、嵐に飲まれていく世界です。

主人公は宝の地図の夢物語を信じ、精神的な逆風が立ちはだかろうともその夢を信じ抜く場面が描かれています。

グングニル
どこまでも胡散臭くて 安っぽい宝の地図
でも人によっちゃ それ自体が宝物

引用元:「グングニル」 (2000年) 作詞・作曲 MOTOO FUJIWARA

自前の船で〈朝焼けの海に帆を貼った〉主人公は宝の地図を信じて航海に出ます




町の人々に宝の地図を馬鹿にされ、罵られ、呪われながらも嵐と向き合い続けます。

グングニル
誰もが遠ざかる船を呪い出し
「願わくば高波よ 悪魔となれ」

引用元:「グングニル」 (2000年) 作詞・作曲 MOTOO FUJIWARA

その後、〈誰もがその手を気付けば振っていた〉とあるように主人公の夢を信じる姿は、周囲を変えていく力を持ちます。

グングニル
世界の神ですら君を笑おうとも
俺は決して笑わない
船は今 嵐の真ん中で

引用元:「グングニル」 (2000年) 作詞・作曲 MOTOO FUJIWARA

ここで表現されている「俺」は作詞者としての藤原基央さんとも、主人公自身とも読み取れます。

さて北欧神話の要素はどこに行ったのでしょうか?

ヴァイキングの物語からパイレーツへ

北欧神話どこいった?と感じた方に、藤原さんの思考回路を説明します。

おそらく藤原さんはお母さんから教えてもらった資料の中に「ヴァイキング」(北欧を中心に10世紀に活動した海賊)の言葉を見つけ、「航海」「海賊」のテーマを着想したと思われます。藤原さんがたどり着いた「海賊」のイメージは以下だったと考えられます。

南米カリブ海で活動した海賊 (= pirates)に変わっているのです。VikingとPiratesを混同したのか、意図的に転換したのかは不明ですが、北欧神話の要素が少ないのはこのためです。(カリブの海賊も商船や島を襲う略奪者であることは間違いないですが・・・、この後説明します)

漫画「ワンピース」と「グングニル」

さらに言うならば藤原さんの頭の中ではこうなっています。

海賊漫画・「ワンピース」。主人公・ルフィがひとつなぎの大秘宝 “ワンピース” を探しにいく物語です。

ルフィがフーシャ村を旅立つ様子(作・尾田栄一郎 /「ONE PIECEは人生の教科書①〜船出〜」様より画像埋込)

物語の冒頭ルフィは小さいボートで出発し、周囲に馬鹿にされながらも”ワンピース”を見つける夢を持って大海原を航海する冒険者でした。

グングニル
そいつはひどい出来栄えだが
こつこつ地道に作り上げた自前の船

引用元:「グングニル」 (2000年) 作詞・作曲 MOTOO FUJIWARA

「グングニル」制作は1999年12月〜2000年1月のため、単行本で言うと単行本12巻の収録内容に当たります。

その収録内容が以下の部分です。

「ONE PIECE」100話 (集英社「週刊少年ジャンプ」1999年37・38号)作・尾田栄一郎(画像埋込元:「MAX/神アニメ研究家@道楽舎」様より埋込)

グングニル
ホントにでかい 誰もが耳疑うような
夢物語でも 信じ切った人によっちゃ
自伝になり得るだろう

引用元:「グングニル」 (2000年) 作詞・作曲 MOTOO FUJIWARA

なんだか「グングニル」の世界観に見えてきませんか?

つまり「グングニル」という楽曲の世界観は、ファイナルファンタジーのグングニル→北欧神話→ヴァイキング(海賊)→海賊(パイレーツ)→漫画「ワンピース」にたどり着いた、これが正体です。

「槍」「騎士」「船」「宝探し」、どんな要素でも拾ってとにかく歌詞を完成させようとする藤原基央さんの思考過程を見て取れると思います。



「グングニル」レコーディングエピソード

「THE LIVING DEAD」のレコーディングが行われたaLIVE RECORDING STUDIO(東京都世田谷区)

1999年12月〜2000年1月、BUMP OF CHICKENのメンバーは東京都世田谷区にあるaLIVE RECORDING STUDIOで「グングニル」をレコーディングします。

前述の通り、まずはオケ(演奏)から録音を始めます。インタビューで語り継がれるほどの特殊な制作環境のため、『THE LIVING DEAD』のアルバム曲は以下の特徴があります。

  • リズム:シンコペーションやキメ(ブレイク)が多い
  • ギター:オブリガード(ギターリフ)を豊富に使用
  • ベース:バンプ史上最もメロディアスなベースライン

完成形のイメージが湧かないまま制作したことで、独立したインストゥルメンタル楽曲のようなサウンドが特徴になっており、「グングニル」もこの特徴を帯びています。

キメを意識した「グングニル」の演奏

直井 – “K”とか”グングニル”のキメは早めにあったんですよ

藤原 – オケだけでドラマチックにしようとしちゃうんだよね。歌詞がないのに情緒を表現しようとするからさ、謎の情緒がすげぇあるの

引用:「MUSICA」2024年10月号 vol.210




キメとはすべての楽器で合わせたリズムパターンを演奏中に入れることで、休符やユニゾンフレーズ使用したものが多いです。

BUMP OF CHICKENのオリジナル曲はキメを意識したものが多く、「K」「続・くだらない唄」「ベストピクチャー」でもわかりやすく入っています。

2番で倍の長さにしたAメロのコード

藤原 – “グングニル”は1番のAメロと2番のAメロとでーーーー

増川 – 倍になってる(中略)なかなかないよね。Aメロを2回繰り返してるんじゃなくて、それのコードを倍(の長さ)にしてるっていうやり方は

引用:「MUSICA」2024年10月号 vol.210

「グングニル」のAメロは1番と2番で同じコードで弾く小節数が倍になっています。オケから作る中で、マンネリ化しないように少しでも工夫を凝らしているのがうかがえます。

「MUSICA」2024年10月号

倍になったAメロでも同じメロディを歌うことができる、見事にハマる歌い方ができる藤原さんのメロディセンスの高さを感じます。

「グングニル」ライブ演奏記録

演奏回数 102回
初披露 2000年3月27日「ツアーポキール」千葉LOOK公演
演奏ワンマンライブ 2000年「ツアーポキール」*全公演演奏
2000年「プロポキール秋」*全公演演奏
2001年「スターポーキングツアーズ 2001」*全公演演奏
2001年「surf porkin’」*全公演演奏
2002年「POKISTA 21」*全公演演奏
2002年「LOVE & PORKIN」*全公演演奏
2003年「NINJA PORKIN
2004年「ヒゲ・ポーキン(フェニックス・ポーキン)」
2004年「BUMP DAY FREE LIVE IN SAKURA」
2008年「BUMP OF CHICKEN TOUR 2008 “ホームシック衛星”
2017年「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 “PATHFINDER”
2023年「BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be there

「グングニル」はBUMP OF CHICKENのライブで102回演奏されています。2000〜2002年頃までのワンマンライブではほぼ全公演演奏されています。

イベント出演の際には1〜2曲目に演奏することが多く、メンバーにとっても自信のある楽曲であったと伺えます。

「グングニル」ライブ映像作品

 映像作品「BUMP OF CHICKEN PATHFINDER at STUDIO COAST
映像作品「BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be there at SAITAMA SUPER ARENA

以上、BUMP OF CHICKENの「グングニル」の歌詞の意味と制作エピソードについて解説しました。