1990年代1st Album『FLAMEVEIN』インディーズ期

BUMP OF CHICKEN「とっておきの唄」歌詞の意味と制作エピソード

1990年代

「とっておきの唄」はBUMP OF CHICKENのアルバム『FLAME VEIN』収録曲です。

「とっておきの唄」は19歳の藤原基央さんが作曲したストレートなラブソングで、BUMP OF CHICKENのメンバー本人たちも「特別な時にしか演奏しない」と話す楽曲です。

この記事では「とっておきの唄」の歌詞の意味、解釈などを紹介します。



「とっておきの唄」
基本情報

「FLAME VEIN」(1999年3月)

作詞・作曲 藤原基央
作曲時期 1998年夏〜秋頃
収録作品
  • 1998年 3曲入りデモテープ
  • 1999年3月「FLAMEVEIN」
  • 2004年4月28日「FLAME VEIN+1」
ライブ初披露  1998年9月15日 千葉LOOK公演(確認可能な最古の演奏記録) 

 

「とっておきの唄」
作曲エピソード

1998年秋、「とっておきの唄」は19歳の藤原基央さんによって作曲されます。

この頃のBUMP OF CHICKENはどんな状況だったのでしょうか。

藤原基央が19歳で作曲した
「とっておきの唄」

1998年、BUMP OF CHICKENはライブ活動を東京に拡大し、デモテープ「NO REASON」が下北沢インディーズシーンでチャート入りするなど徐々にライブシーンを席巻していきます。

1998年10-11月頃のBUMP OF CHICKENの4人(左から藤原、増川、升、直井)。「とっておきの唄」を作曲して1〜2ヶ月後の様子。

春にバンド初のワンマンライブを開催し、夏〜秋にバンド初となるCD作品『BUMP OF CHICKEN』のレコーディングを行います。

さらに音楽事務所ブリッジとマネジメント契約を締結に向けて動いており、本格的なインディーズ・シーンでの躍動が始まる頃です。



「とっておきの唄」はこの時期に誕生した楽曲です。

1998年千葉LOOK公演での初披露

1998年9月15日、BUMP OF CHICKENは千葉LOOKでの2マン・ライブ(with スパイパス)に出演し、200人を動員します。

1998年9月15日にBUMP OF CHICKENが「とっておきの唄」を初披露した千葉LOOKのステージ(画像引用元:natalie

2バンド目に登場したBUMP OF CHICKENは全12曲を演奏し、3曲目「とっておきの唄」の演奏前に藤原さんは”新曲”として紹介します。

「とっておきの唄」演奏前MC
藤原 – じゃあ新曲やります、「とっておきの唄」

1998年9月15日千葉LOOK MC

1998年千葉LOOKライブで配布されたセットリスト。3曲目に「とっておきの唄」の記載が確認できる。

藤原さん本人が「新曲」と発言していることから、「とっておきの唄」の演奏は0〜1回前後の演奏状況だったと思われます。(1公演前が8月30日、2公演前が7月27日のため “新曲”と表現するなら8月以降と思われる)

このことから1998年夏〜秋頃が「とっておきの唄」の作曲時期と推定されます。

2013年10月29日「WILLPOLIS」 武道館公演MC

2013年10月29日日本武道館MCにて新曲「ray」について語る藤原基央(イメージ)。このMCの直前に「とっておきの唄」を披露している。

2013年10月29日、全国ツアー「BUMP OF CHICKEN TOUR 2013 “WILLPOLIS”」ファイナル・日本武道館公演で9年ぶりに「とっておきの唄」演奏します。演奏後、藤原さんは以下のMCをしています。



藤原 – 15年くらい前に書いたのかなこの曲。

2013年10月29日 日本武道館公演 MCより

2013年の15年前=1998年で、前述のエピソードとも合致します。「とっておきの唄」は藤原さんが19歳で作曲した楽曲であることを裏付ける発言です。

 

「とっておきの唄」
歌詞の意味

「とっておきの唄」は19歳の藤原基央さんの青さが残るストレートな表現が印象的な歌詞です。

メンバーが直接言及したインタビューはほぼ現存していないものの、可能な限り遡れるエビデンスから歌詞の解説をします。

「リトルブレイバー」に登場する”とっておきの唄”

BUMP OF CHICKENのインディーズ楽曲に「リトルブレイバー」があります。「とっておきの唄」と同じく『FLAME VEIN』収録曲です。

その「リトルブレイバー」の歌詞に《とっておきの唄》という単語が2度登場します。

リトルブレイバー  0:43〜
「とっておきの唄」を聴かせてあげれれば
ナミダも止められる

引用元:リトルブレイバー(1998年)

リトルブレイバー  1:21〜
「どうにかして ひなたで
とっておきの唄 を聴かせてあげよう」
だからもう泣かないで

引用元:リトルブレイバー(1998年)

「リトルブレイバー」は1998年10月にリリースした自主制作CD『BUMP OF CHICKEN』収録されており、制作時期(8〜9月頃)を考慮すると「とっておきの唄」より先に完成していた可能性が高いです。

1st CD「BUMP OF CHICKEN」(1998年10月24日)

つまり「リトルブレイバー」の歌詞《とっておきの唄を聴かせてあげよう》が先に存在し、藤原さんは新曲に「とっておきの唄」と名付けたことが想定されます。

BUMP OF CHICKENのインディーズ時代の楽曲制作年表の図。インタビュー、ライブ記録、デモテープをもとに筆者が構成(2026年版)クリックにて拡大

BUMP OF CHICKENの楽曲には”劇中劇”を連想させる仕掛けがあります。

  • 「Danny」(犬)が「Grwon up person」に登場する
  • K」の登場人物・”絵描き”が「ベストピクチャー」の主人公として登場する
  • 車輪の唄」の登場人物・”手を振る人”が「銀河鉄道」に登場する

など、藤原基央さんの書く歌詞は繋がった世界観が特徴です。「とっておきの唄」はその中でも《別に書いた歌詞を曲名にする》という点ではさらに特徴的といえます。

涙をとめるタメにある唄

「とっておきの唄」と「リトルブレイバー」は歌詞が対応する箇所があります。

リトルブレイバー  0:43〜
「とっておきの唄」を聴かせてあげれれば
ナミダも止められる

引用元:リトルブレイバー(1998年)

とっておきの唄  0:17〜
単純な僕の単純な唄
涙を止める為にある唄

引用元:とっておきの唄(1999年)

「リトルブレイバー」で《涙も止められる》、「とっておきの唄」で《涙をとめるタメにある唄》と、藤原さんは2曲ともテーマを合致させています。

藤原さんが最初から『とっておきの唄を書く』という意思を持って作曲した可能性を読み取れます。

「とっておきの唄」はラブソング

「BUMP OF CHICKEN」というキーワードでサジェスト検索すると「ラブソング」「公認ラブソング」「ラブソンじゃない」といったキーワードが散見されます。

結論からいうと藤原さんは「とっておきの唄」がラブソングであると認めています。

とっておきの唄  2:21〜
よくある LOVE SONG
でも二人の前だけで特別であればいい

引用元:とっておきの唄(1999年)

そもそも歌詞の中で《LOVE SONG》と謳われています。

さらに「とっておきの唄」が演奏された、2017年12月9日「BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER」宮城公演で藤原さんが以下のMCをしています。

曲目「とっておきの唄」演奏前
藤原 – 男の人の声で「結婚してくてー!」って言われたんだけど。君と結婚できないけど、ラブソング贈ります!

2017年12月9日 宮城公演 MC

「ラブソングおくります!」とって始まった「とっておきの唄」は正真正銘のラブソングです。

「とっておきの唄」対比関係にある「リリィ」

その後、藤原さんは「とっておきの唄」と対比させた楽曲として『THE LIVING DEAD』収録曲「リリィ」を書いたと明かしています。

アルバム「THE LIVING DEAD」

藤原 – “とっておきの唄”に対する”リリィ”とか、”ナイフ”に対する”Ever lasting lie”とか。今言ったのは全部僕の中では対をなしてるんですよ。

「リリィ」について藤原さんは《わがままな僕のラヴ・ソングです》と述べており、『BUMP OF CHICKENのラブソング』として両曲の共通性を見出すことができます。

 

この2曲の対比関係はライブのセットリストからも読み取ることができます。

  • 2002年の全国ツアー「POKISTA 21」では「とっておきの唄」「リリィ」が日替わり枠で演奏されている
  • 2013年の全国ツアー「WILLPOLIS」武道館公演 2DAYSの特別セトリとして「とっておきの唄」「リリィ」が日替わり枠で演奏されている

BUMP OF CHICKENのメンバーも2曲を対比関係と捉えていることを感じさせます。

「とっておきの唄」
制作エピソード

現在判明している「とっておきの唄」収録作品は以下の3点です。

ジャケット/作品名 収録曲
1998〜1999年頃配布

  • 「18 years story」
  • 「とっておきの唄」
  • 「Glorious Revolution」
    1998年9月15日千葉LOOK出演ライブテイク

「FLAME VEIN」
1999年3月18日 *廃盤

  • 「ガラスのブルース」
  • 「くだらない唄」
  • 「アルエ」
  • 「リトルブレイバー」
  • 「ノーヒットノーラン」
  • 「とっておきの唄」
  • 「ナイフ」
  • (隠しトラック)「DANNY」
「FLAME VEIN+1」 2004年4月28日*再販版
上記8曲+「バトルクライ」

3曲入りデモテープ収録

「とっておきの唄」はインディーズ時代にライブ音源としてデモテープ収録されています。収録テイクは前述の1998年9月15日千葉LOOK公演です。

3曲入りデモテープ

「とっておきの唄」の楽曲アレンジはこの音源で既に完成しています。

デモテープ音源(ライブテイク)とインディーズ・アルバム『FLAME VEIN』音源を比較しても、演奏のアレンジとギター・パートの弾き分けはほぼ同じです。イントロのフレーズだけがアルバム版では追加されています。

BUMP OF CHICKENのテーマ」「アルエ」が歴戦のライブを経て完成形アレンジに至ったことを考えると、藤原さんは「とっておきの唄」を1度宅録してアレンジを固めてメンバーに渡した可能性を示唆します。

この「とっておきの唄」の編曲プロセスは、次の楽曲「ノーヒットノーラン」も同様であり、音楽家・藤原基央としての楽曲制作の過程の変化が伺えます。

『FLAME VEIN』制作

1998年12月、「とっておきの唄」ライブ初披露から3ヶ月後にBUMP OF CHICKENは4曲入りインディーズ・ミニアルバムの制作に入ります。

収録予定曲

  • 「ガラスのブルース」
  • 「くだらない唄」
  • 「とっておきの唄」
  • 「ノーヒットノーラン」

BUMP OF CHCIKENのメンバーは渋谷区代々木のレコーディング・スタジオ STEPWAY STUDIOにて2日間で「とっておきの唄」を含む4曲を制作します。

私たちが現在聴くことのできる「とっておきの唄」はこのスタジオで録られた音源になります。

「FLAME VEIN」(1999年3月)

後にミニアルバムは収録曲数が7曲となり『FLAME VEIN』としてリリースされます。 10代のメンバーが演奏しているところを想像しながら聴くと解像度が高まるのではないでしょうか。

「とっておきの唄」
ライブ演奏記録

「とっておきの唄」を披露した1998年9月15日千葉LOOKのライブを案内するチラシ

演奏回数 62回(2000年以降)
初披露 1998年9月15日 千葉LOOK 2マン公演
最終演奏 2024年2月11日「BUMP OF CHICKEN
演奏ツアー 1999年「HANSO-DE TOUR’99
2000年「ツアーポキール」*全公演演奏
2000年「サマーポキール2」*全公演演奏
2000年「プロポキール秋」*全公演演奏
2001年「スターポーキングツアーズ 2001」*全公演演奏
2001年「surf porkin’」*全公演演奏
2002年「POKISTA 21」*全公演演奏
2002年「LOVE & PORKIN」*全公演演奏
2003年「NINJA PORKIN

2004年「MY PEGASUS
2013年「WILLPOLIS
2017年「PATHDINDER

2024年「ホームシック衛星2024

「とっておきの唄」は集計可能な2000年以降において62回演奏されています。この回数は「FLAME VEIN」収録曲の中で最も少ない演奏回数です。

2001年「surf’ porkin」ツアーまでは全公演演奏されていましたが、以降は早々にレア曲扱いとなります。現在でも数年に何回か演奏されるものの、聴けた人はラッキーです。

2000年代前半のライブでアンコール曲として披露される際に《特別な時しかやらない曲》といって「とっておきの唄」を演奏したエピソードがあります。メンバー自身も演奏回数が少ないことを自認していることがわかります。

以上、「とっておきの唄」に関するエピソードでした。「とっておきの唄」を聴く上で新しい聴き方ができると思います。ありがとうございました。